メギド72オリスト「太古の災厄と新生する憤怒」   作:水郷アコホ

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11「大空洞への道中」

 例の牛のような家畜を借りて、大空洞調査のため車を走らせる一行。

 現在、道中で何度目かの幻獣と戦闘中。

 

 

ウェパル

「次!」

 

 

 ウェパルが銛を長く持ち、的確に幻獣の核を抉っては退避するヒットアンドアウェイで戦果を稼いだ。

 

 

ソロモン

「今回は寒波じゃないお陰か、ウェパルも絶好調みたいだな」

「バルバトスやフォラスほどは安全にはいかないけど、それでも充分にダメージを抑えられてる」

「それに、ウェパルほど的確にはいかないけど、ベレトもいい感じだ」

 

ベレト

「団子になっておるとは都合がいい!」

 

 

 ウェパルの戦法を理解したベレトも旗竿の下部を握り、腰を入れたフルスイングで幻獣を叩き伏せていく。

 衝撃さえ届けば、脆い幻獣の体は核を保持しきれない。3匹連なった幻獣をまとめて仕留めた。

 物理的な爆風をあえて抵抗なく受けて木の葉のように吹っ飛ばされる事で、重なって迫るフォトン爆風の影響からも離脱する、少々強引な戦法で消耗を防いでいる。

 

 

モラクス

「うっし、これで全部だな」

 

シャックス

「ふいー、疲れた疲れた……」

 

ソロモン

「ありがとう。モラクスもシャックスも、すぐにフォトンを補給する。ゆっくり休んでくれ」

 

ウェパル

「はあ。初日に馬車で駆け抜けた時はすぐだったのに、幻獣が湧いただけでこんなに……」

「(それにしてもこの爆発の仕方、どこか覚えがあるのよね……ん?)」

「っ!? ソロモン、後ろ!」

 

ソロモン

「えっ!?」

 

 

 振り向くと、ソロモンの背後に討ち漏らした幻獣の最後の一体。

 仲間達は戦闘に専念していて距離を空けてしまっていた。間に合わない。

 そこへ、轟音と閃光がソロモンの目に飛び込む。

 

 

ソロモン

「うっ!」

「(しまった。『また』落雷か──!)」

 

 

 雲ひとつ無い青空から稲妻が一条降り注ぎ、幻獣に直撃していた。

 幻獣に耐えきれるはずもなく、透き通った体の内にある核が焦げて砕けた。

 

 

ミカエル

「ハアッ!」

 

 

 殆ど瞬間移動のていでミカエルが幻獣とソロモンの間に割り込み、ソロモンを突き飛ばして距離を離した。

 そのままソロモンの盾になって爆風を受けるミカエル。

 一連の事象の後、尻もちついたソロモンが見上げる先では傷一つなく無意味なポーズを決めるミカエルが立っていた。

 

 

ウェパル

「(ホッ……)」

 

ソロモン

「いてて……助かったよ、ミカエル。怪我はないか」

 

ミカエル

「ノープロブレム。ヴィータを守るのはハルマの責務だからね」

 

ウェパル

「だったら最初からそんな感じで、あんた1人で幻獣片付けてくれても良いんじゃないの?」

 

ミカエル

「ノンノンノー。私の役目はヴィータを守ること。幻獣と戦う事ではない」

 

ソロモン

「(もしかしてミカエルがついて来たのって──)」

「(俺達に戦闘を丸投げできるから、その場で決めただけだったりして……?)」

「とりあえず──戦闘は終わりました。もう出てきても大丈夫」

 

 

 集まってくる仲間達の無事を確認して、馬車に呼びかけるソロモン。

 馬車から人影が2つ出てくる。

 

酒場の男性

「いやあ、あの怪物相手に連戦までとは。本当にお強いんですなあ」

 

ポー

「お怪我ありませんか! 簡単なお薬ならありますから」

 

 

 更にもう2つ出てくる。

 

 

バルバトス

「あの様子なら心配はいらないよ、ポー。それにこう見えて、治療は俺の担当でもあるしね」

 

フォラス

「遠距離役を護衛に回すって聞いた時は正直少し不安だったが──みんな戦い方に慣れてきたみたいだな」

 

ソロモン

「ああ。2人に頼ってばかりってわけにもいかないからな」

「異常気象も収まった。周辺の幻獣はあれで最後みたいだ。だけど引き続き、油断せず行こう」

 

モラクス

「にしても、すげータイミングだったよな。出発の準備が出来てすぐって所で幻獣が出てきたんだから」

 

シャックス

「でもでも、さっきの異常気象って、とってもキラキラでキレイだったし、もうちょっと見れても良かったかも?」

 

モラクス

「いや、幻獣が一緒じゃ楽しんでる暇ねえって!」

 

酒場の男性

「ダイヤモンドダストって言うんですがね。朝早くなら週に2,3度くらいは見られるんで、ポーにでも起こしてもらうと良いですよ」

 

ポー

「いつでも遠慮なくどうぞ!」

 

シャックス

「うぅ。朝かぁ~……」

 

フォラス

「しかし……しつこいようだが、本当にポーに大空洞の案内役任せちまって大丈夫だったのか?」

 

酒場の男性ガイード

「心配してくれる気持ちはわかりますが、大空洞通って30年のこのガイードが太鼓判押しますよ」

「この子は案内役としては元より、洞窟調査隊としてもそんじょそこらの大人よりずっと頼りになりますから」

 

 

 出発直前のやり取りを回想する一行。

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 集落に現れた幻獣を退治し、酒場に戻った一行。

 最初に幻獣襲来を告げに駆け込んだ男性がポーに包帯を巻かれていた。

 

 

ガイード

「おお。流石は皆さん。昨夜と言い、本当に怪我1つなく帰られるなんアイテテテテッ」

 

ソロモン

「いえ、被害を出さないだけでも結構手間取っちゃって……っていうか、どうしたんですかその怪我?」

 

ヤブ

「そいつ、うちに飛び込んだ拍子に玄関突き破ったでしょう。その時に手ぇ擦りむいたんですよ」

「ガイード、皆さんの案内終わったら、修理手伝えよな」

 

ガイード

「おいそりゃ無いぜヤブよぉ! ちょっと蝶番剥がしちまっただけだろ?」

「こっちだって怪物に家の窓枠吹っ飛ばされてるんだぜ?」

 

ヤブ

「うちはうち、よそはよそだ」

 

ガイード

「お前は俺の母ちゃんかっての!」

 

ソロモン

「そう言えば、酒場の斜向いの家の窓が割れてたな……」

「あっ、『皆さんの案内』って事は、この人が?」

 

ヤブ

「ええ。ガイードってモンです。こいつが大空洞で皆さんのお手伝いをしますので」

「普段はこの通り間抜けですが、腕は腐れ縁の私が保証しますよ」

 

ガイード

「一言余計だっての」

 

バルバトス

「ちょっと良いかい。斜向かいのお宅がそこのガイードさんの家だとしてだ──」

「奴らは、家屋まで襲うのかい? 奴らの戦い方は物を壊すには向いていないように感じられるが」

 

ガイード

「あれ? 皆さん方、戦ってて気づきませんでしたか?」

 

ヤブ

「バカ言えガイード。『そうなる』前に倒しちまうくらい腕が良いって事だろうよ」

「いえね。正確には、あいつらが直接何かするわけじゃありません。ただ──」

「あの異常気象、怪物自身も襲うんですよ」

 

フォラス

「異常気象が……幻獣を襲う?」

 

ヤブ

「今の所、皆さんが見てきたのは北国らしい異常気象ばかりでしょうが、そればかりでも無いんですよ」

「雲も無いのに雨が降ったり雷が落ちたり、火種もないのにボヤが起きたり、嵐みたいに風が吹き荒れたりね」

「そういった諸々が怪物を直撃する事がありまして。そうするとほら、あいつら時々自爆するでしょう?」

「爆風で窓や壁が壊れたり屋根に穴が空いたりと──元々頑丈な家が多いんで大事にはなってませんが、まあ堪ったもんじゃありません」

 

ウェパル

「それ、もう異常気象ってレベルじゃなくない?」

 

フォラス

「つっても、他に適当な言葉も余りないしな」

「『天変地異』なんて呼ぶには、今の所は被害も微妙だ」

 

モラクス

「幻獣が異常気象起こしてるのに自滅してるってことか?」

 

バルバトス

「いや、それは思い込みかもしれない」

「確かに幻獣と異常気象は何らかの関係がある事は見て取れるが、幻獣自ら異常気象を起こしているという確証はない」

「考えてみれば、あの幻獣にそこまでの力があるかも怪しいしな。異常気象自体は結果であって、別の原因があるのかもしれない」

 

ソロモン

「(ミカエルがロンバルドに来た理由も、もしかしたら『異常気象の原因』にあるのかも──)」

「あれ、そう言えばミカエルは?」

 

ポー

「あっ、さっきのお客さんでしたら、馬車で先に待ってるって言ってました」

 

ベレト

「あの変態ハルマめ、当たり前のように先回りしおって……!」

 

ウェパル

「どうでもいい事聞くけど、車引くのって、あの牛みたいなのでしょ。『馬車』で良いの?」

 

ヤブ

「昔は色々呼んでたんですが、結局用途が馬車と一緒だしって事で『馬車』に落ち着いちゃったんですよ」

 

ソロモン

「とにかく、集落まで幻獣が来たって事は、大空洞への道中にもまだ幻獣が残っている可能性が高いはずだ」

「大空洞の調査も予定にあることだし、馬車での移動中に倒しちゃおう」

 

ヤブ

「やつら、現れてから何時間かくらいでどっかへ行っちまうものですから、無理に相手せず一休みされてからでも良いのでは?」

 

ソロモン

「いえ。その間に残りが集落までやって来る事を考えれば、放ってはおけません」

「ガイードさんの安全は俺達が責任持ちますから、一緒について来てもらえますか?」

 

ガイード

「そういう事なら喜んで。あっしも仲間たちに土産話が出来るってもんですよ」

 

ポー

「じゃあ、私も準備してきますね。おとうさん、あとよろしくね」

 

ヤブ

「おう。皆さんに迷惑かけるんじゃねえぞ」

 

ソロモンたち

「え?」

 

ポー

「大丈夫ですー。昔のおとうさんより上手だってガイードさんも言ってくれてますー」

 

ガイード

「そうだそうだ、言ってやれポー!」

 

ヤブ

「ほう……言ってくれるじゃねえかガイードよぉ?」

 

ソロモン

「ちょ、ちょっと待った! ポーも付いてくる気か!?」

 

ポー

「はい。安全のため、案内役は昔から一組に二人以上って決められてるので」

 

ヤブ

「驚くのはごもっともですが、ポーも立派なロンバルドの案内役ですので」

「帰ってきてからも、ポーの両親と一緒に元気に調査を続けてきましてね」

「それからメキメキと上達して、まあ私ほどじゃありませんが、充分一人前として通用するだけの腕はありますよ」

 

フォラス

「つっても、大空洞の中でも怪物と戦うかもしれないんだぞ?」

「ポーには悪いが、他に適任は──」

 

ヤブ

「あちこち声はかけておいたんですがね。昨日今日とこの騒ぎですから」

「どこも異常気象の後始末やら何やらで忙しいはずです。それにお恥ずかしながら、私も余所からの怪物に蹴飛ばされた時の怪我で、一線を退いた身でして」

 

ガイード

「ハハッ、何が「私ほどじゃありませんが』だよ。いい歳こいて子供相手に張り合ってんじゃねえっての」

 

ポー

「もー、私だって明後日には12なんですからね!」

 

ガイード

「いやいや、幾らなんでも12なんてまだまだ──」

 

ソロモンたち

「じゅ、12っ!?」

 

ヤブとガイード

「え?」

 

ウェパル

「ちょっと待って。その子、どう見ても10歳にもなってないわよね?」

 

ポー

「そ、そんなあ!?」

 

フォラス

「いやすまん、悪気は無いんだが……」

「背丈もそうだし、本当に12くらいの子どもなら、骨格というか顔立ちだってもっとこう……」

 

バルバトス

「いや待てよ? そう言えば、『奇跡の御子』では娘は転落した当時7歳だったと」

「それから現在まで既に数年って事は……」

 

ポー

「ですから、確かに落っこちたのは7歳の時ですし、私はちゃんと11歳ですってば!」

 

ガイード

「あ、そうそう。そういやそうだよ。ポーが起きてから1年くらいは全然背丈が伸びねえって、みんな心配してたっけ」

 

ヤブ

「ああ、あったあった。『まあそんなもんだろ』って思ってたらすっかり忘れてた。そういや全然伸びねえな」

 

ポー

「伸びてるもん! ほんのちょっとだけど確実に伸びたもん!」

 

ベレト

「いくら何でも『忘れてた』で済ます問題では無かろうが……」

 

ガイード

「でも、俺の祖母ちゃんなんかも背丈がポーぐらいしかありませんでしたし、それで立派に大空洞の調査やってましたしねえ」

 

ヤブ

「まあロンバルドじゃこのくらい何てこと無いですし、子どもが可愛いままで居てくれるなら何よりでしょう」

 

ヤブとガイード

「ハッハッハッハ!」

 

ポー

「も~~!」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 牛の引く馬車でのやり取りに戻る。

 

 

フォラス

「まあ何だかんだで結局こうなったんだ。あんたらがそう言うなら、こっちも誠心誠意で信頼させてもらうさ」

「しっかし……もうすぐ12って言われても、どうも未だに信じられねえ」

 

バルバトス

「生まれつきの疾患で性徴が途絶える例を聞いた事があるけど、そういった病の場合、異常な低身長が見られるらしい」

「ポーの場合、7歳までは適正の体格だったらしい。そうなると、これも生還後の変化の1つってことになるのかな……?」

 

ガイード

「まあ難しい事はわかりませんが、ポーがああやって元気なら、あっしらとしちゃ他の事なんて些細なものですよ」

 

フォラス

「あれはあれでまた、7歳でも12歳でも珍しいほどの世話焼きっぷりだけどな」

 

ポー

「どうぞ。ブランケットたっぷり持ってきましたんで!」

「お二人は、あの怪物と戦ってると特に疲れてしまうと聞いてますから、たっぷり休んで下さい」

「ミルクも温め直してますから是非!」

 

モラクス

「いや、だから、俺達はアニキに回復してもらってるから、ちょっと疲れたくらい──」

 

シャックス

「うわっほーい、フカフカぬくぬくー!」

「すぴ~……」

 

モラクス

「寝るの早っ!」

 

ベレト

「(よし。しばらくはこいつの注意もモラックスどもに向いてくれるだろう)」

「(あいつに迫られると何故だか調子が狂って拒絶しきれん。どうも苦手だ……)」

「(それにあいつ、あのダサい上着を馬車に積み込んでおる……絶対、儂に着せる気だ……!)」

 

バルバトス

「眠れとまでは言わないが、モラクスも好意に甘えて休んでおくと良い」

「集落の異常気象が去ったと思いきや、すぐ周辺では異常気象が継続中だった──」

「こうして道中の異常気象も鎮めたからって、洞窟まで幻獣が一匹も居ないとは限らないからな」

 

ソロモン

「バルバトスの言う通りだ。だから、大空洞へは予定よりゆっくり移動しようと思う」

「異常気象が思った以上に厄介で満足に戦えないせいか、これっぽっちの道でもう何十分もかかってるしな。いっそ開き直ろうと思う」

「不服もあるかもしれないけど、幻獣を見落としたり先にこっちが潰れちゃあ元も子もないからさ」

 

ウェパル

「わざわざこっち見なくたって文句なんて言わないわよ。別にいいんじゃない?」

「さっさと済ませるに越したこと無いけど、だからって余計な無茶するのはもっとイヤだし」

 

ソロモン

「ごめん、つい……」

 

ウェパル

「だから別にいいってば」

「それより、本命の大空洞にはもっと大量に居るかも知れないのよね……こんなに面倒な幻獣退治もそうそう無いわね」

 

ソロモン

「でも、流石に洞窟の中までは異常気象も起こらないだろうから、そこはまだ気が楽かな」

「ここまで何度も落雷とか、突然幻獣が燃え上がるとかで困らされたけど──」

 

ガイード

「いえ、ありますよ。しょっちゅう」

 

ソロモン

「え!?」

 

ガイード

「あっし自身、その場でエライ目にあったんで間違いありません」

 

フォラス

「まあ、異常気象って名前自体、あくまで便宜的なもので、実態は幻獣絡みの超常現象だからなあ」

 

ガイード

「雷が横に落ちたり、地割れが起きたと思ったら熱湯を吹き出してすぐ塞がったり、足元から岩の柱が突き出したと思ったら引っ込んだり──」

「仲間内から聞いた話まで入れたら幾らでもありますよ」

 

ソロモン

「そんな……」

 

ウェパル

「……もう帰る?」

 

ソロモン

「か、帰らないよ! それでも行かなきゃ解決しようが無いだろ!」

 

ポー

「ハッ……!」

「ちょ、ちょっと待って下さい、ウェパルさん!」

 

ウェパル

「は? 私?」

 

ポー

「右の頬っぺたのとこ、擦りむいてるじゃないですか!」

 

ウェパル

「右……?」

 

 

 拭ってみると、固まりかけた僅かな血と土埃が指に付いた。

 

 

ウェパル

「ああ、爆風で小石か何か掠ったのね」

「別に触っても痛みさえ無いし、このくらい──」

 

ポー

「ダメですよ、ロンバルドにも破傷風くらいあるんですから」

「消毒液持ってきてますからジッとしててください……!」

 

ウェパル

「あんた集落出てからずっとその調子じゃない。そっちこそ少し休んで──」

「待って。そのにじり寄るのやめなさい。そのくらい自分でできるから……ちょっと、こら……!」

 

フォラス

「ハハ、相手が子どもとあっちゃあウェパルも形なしだな」

 

ポー

「もうすぐ12歳ですから!」

 

フォラス

「おっと、わりいわりい」

「さて、と──今なら少し余裕もありそうだな」

 

モラクス

「お、フォラス便所か?」

 

バルバトス

「こらこら。女の子の前で下品な言葉は慎みたまえよ」

 

フォラス

「違えよ。ガイードさん、馭者やるんならちょっと付き合っても良いかい?」

 

ガイード

「構いませんよ。何か気になる事でも?」

 

フォラス

「ああ。こう見えて俺は学者でな。ちょっと四方山話でも聞ければとね」

 

ガイード

「大した事で無くてよければ。学者先生の期待に添えるかは解りませんがね」

 

フォラス

「大歓迎だ。歴史と民俗学が分野でね。そういう話ほど興味深いのさ」

「つうわけでソロモン、ちょっと席外すぜ。ベレト達の面倒は頼んだ」

 

ベレト

「ぬぐっ……」

「(言い返したいが……迂闊に大声を出して小童に目を付けられるのも癪だ……)」

 

ソロモン

「わかった。何かあったらすぐに知らせてくれ」

 

フォラス

「あいよ。そんじゃあな」

 

 

 ガイードと共に幌を出ていくフォラス。

 

 

ミカエル

「……」

 

ソロモン

「(ミカエル、いつも通り余裕そうにしてるけど、妙に静かだな)」

「(そういえば集落を出てから、さっきみたいな咄嗟の時以外にろくに喋ってないような……何か、様子を伺っている?)」

 

 

 馬車の外。牛を歩かせるガイード。その隣にフォラス。

 

 

フォラス

「なるほど。馬ほど最高速度は出ないがタフネスはあるってわけか」

「この大人数に調査用の装備まで積み込んで、しかもこの寒さと坂道でも余裕そうだ」

 

ガイード

「ええ。多分、元は牛だったのを『掛け合わせ』でもしたんでしょうが、生憎と記録みたいなのは残ってないもんで」

 

フォラス

「いや、いいっていいって。それを調べるのこそ学者の役目だ」

「つまり、今までここに滞在してた学者も、目当ては大空洞ばかりだったって事だろう? 集落研究に先鞭つけられるとありゃあ願ってもねえ」

「……とまあ、それもそれで気になるんだが──こっちはただの『建前』でな」

 

ガイード

「と言うと、他に聞きたい事でも?」

 

フォラス

「ポーの事でな。ちょっと聞きづらいつうか……聞いて良いのかも、もしかしたら怪しい話だ」

 

ガイード

「ふむ──まあ、見ての通りの数奇な子ですしね。聞くだけなら気にやしませんよ」

 

フォラス

「ありがとさん。出かける前の、酒場でのやり取りなんだがな──」

「ヤブさんチラッと言ったろ。『ポーの両親』って」

「ポーも『おとうさん』って呼んでたから、てっきりヤブさんが父親なんだと思ってたが──実の親から出てくる表現じゃないように思えてな」

「勘違いだったら本当に済まないんだが──『別に居る』んじゃないかって気になっちまってな。2人揃って」

 

ガイード

「ああ。それですか。お察しの通りですよ」

「ヤブはポーを預かってるだけです。親どころか、一緒に暮らしてまだ2年かそこらですよ」

 

フォラス

「親御さんとは離れて暮らしてるって事か」

「でも預かってるって事は、親御さんは今どこに? それに面倒見てもらってるからって『おとうさん』なんて──」

 

ガイード

「そっから先は、まあヤブ抜きに話しちまうのはちょっと」

 

フォラス

「そ、そうだな。すまねえ……」

「なあ……これ、ヤブさんに聞いちまっても大丈夫かな?」

「不躾なのは承知だが、俺もポーと同じ……いや、『見た目』同じくらいの娘が居てな」

「事情があるみたいなら、万に一つでもあの子の地雷踏むようなマネだけはしたくないんだ」

 

ガイード

「そのへんは多分、心配いりませんよ。戻ったら俺からもヤブに説明しときます」

「ポーもすっかりあの調子だし、きっと気兼ねなく話してくれるでしょう」

 

フォラス

「……すまねえな」

 

ガイード

「いいえ。例の『奇跡』以来、ポーは集落みんなの我が子みたいなもんですから。気持ちはわかります」

 

 

 徐々に大空洞が見えてきた。

 

 

 




※ここからあとがき

 最近クロケルをお迎えしたばかりだったもので、ポーと二つ名が被っていると気付きませんでした。
 12月9日時点で初めて知りました。
 従って、クロケルの出番はありませんし、毛ほども話に絡まりません。
 下調べが足りなかった事をクロケルファンの方々に予めお詫び申し上げます。
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