メギド72オリスト「太古の災厄と新生する憤怒」   作:水郷アコホ

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13「大空洞入口」

 防寒具の装着を終え、ロンバルド大空洞へ突入する一行。

 ガイードが先頭に立って一行を案内している。

 

 

ガイード

「皆さん、ちゃんとついて来てますね」

「まずここが、ロンバルド大空洞のいわば『休憩所』です」

 

モラクス

「すっげー、急に広くなった。どんだけ掘ったらこうなるんだ?」

 

シャックス

「うほほー、洞窟の中なのにすっごく明るいよ。早速、探検探検~♪」

 

バルバトス

「モラクス」

 

モラクス

「おう」

 

 

 先行しようとするシャックスをモラクスが取り押さえる。

 

 

シャックス

「うえぇ~、モラクスなんでなんで~!」

 

モラクス

「『絶対に1人で行動するな』って入る直前に言われたじゃんかよ!」

 

バルバトス

「ちゃんと聞いてたか確かめたし、復唱もさせたって言うのに……相変わらず清々しいよ」

 

ガイード

「浮ついちゃうお客さんも珍しくないですが、こればかりは皆さん自身でも気を付けるよう頼みます」

「こういう咄嗟の行動ってのは予想がつきませんし、あっしらプロでもたまにやらかすものですんで」

 

バルバトス

「まったく申し訳ない。彼女については僕らが全面的に責任を持つから、いっそ気にしないでくれ……」

 

ベレト

「おい、さっさと道を開けんか。後がつかえとるぞ」

 

バルバトス

「おっとすまない。モラクス、そのままシャックスと一緒に脇へ──」

 

 

 他の仲間たちも続き、開けた空間に出る。

 軽く宴会でも開けそうなくらいに広く、片隅に簡素な小屋まで建っている。

 岩の所々から飴のような透明感のある色合いの鉱物が突き出しており、ぼんやりと光りに包まれている。

 

ミカエル

「アンビリーバブル……!」

 

ウェパル

「へえ。悪くない眺めね。……けふっ」

 

バルバトス

「大丈夫か、ウェパル? また寒さに負けたりは……」

 

ウェパル

「見くびらないで。マスクしてても空気が冷たくて、ちょっと咳き込んだだけ」

「厚着した分、だいぶマシよ。頭痛もしないしね」

 

バルバトス

「それはよかった」

「寒波が来た時はきっと、気圧なんかも急激に変化して、それで体調を崩したんだろうな。頭痛も恐らくそのせいだ」

 

 

 南極観測隊のような服装の一行。

 これならベレトも文句ないようで、大人しく洞窟の幻想的な光景を見渡している。

 

 

フォラス

「おい、ソロモン。ボケッとしてるなよ。置いてくぞ」

 

ソロモン

「……え? あ、ああごめん!」

 

 

 最後にフォラス、ソロモンと続き、殿のポーまで「休憩所」に入った所で説明が続く。

 

 

ガイード

「ここは、そこのポーの一件以来、大勢でも屯できるように一際広く掘り出した場所なんですよ」

「あの時は家に帰るのも惜しいって連中でごった返してましてね」

 

ポー

「その節はどうもご迷惑を……」

 

ガイード

「と、まあここまでお客に説明するたびの毎度のやり取りです」

「今では観光中に体調崩したお客さん運んだり、調査終わりに寄り合って一杯引っ掛けたり、まあ色々ですよ。ハッハッハ」

 

バルバトス

「すると、あの小屋は詰め所みたいなものかな」

 

ガイード

「そういう事です。ちょっと失礼しますよ」

 

 

 一行から離れて、小屋の入口に立つガイード。扉をノックする。

 少し間をおいて、昨夜に酒場で会った青年が中から出てきた。

 

 

酒場の青年

「はいはい。王都の皆さんの案内ですね」

 

ガイード

「おう、今日はミハルか。案内役は俺とポー。お客さんは全部で8人だ」

 

ミハル(酒場の青年)

「ガイードさんにポー……お客さん8人で合わせて10人と──」

「はい、確かに。お気をつけて」

 

バルバトス

「なるほど。観光客の出入りの記録と管理をしているわけか」

 

ガイード

「ええ。整備したと言っても危険には変わりありませんからね」

「後は無断で入ろうとするお客を止めたり、怪我人が出た時の応急手当てとかに。集落の者で交代で詰めてるんですよ」

 

モラクス

「それって大丈夫なのか? 今はこの中から幻獣が外に出てきてるんだろ?」

 

シャックス

「ハイハーイ、光るキノコや植物とかも見当たらないのに何で明るいんですかー? ふしぎふしぎ!」

 

モラクス

「いや畳み掛けんなって」

 

ガイード

「怪物が出た時は、集落と一緒ですよ。向こうは適当に漂ってるだけですから」

 

ミハル

「ここが埋まるくらいの群れでも無ければ、集落には悪いですけど無視ですね」

「さっきも結構な数出て行ったので、近くを飛ばれて目眩を起こさないよう小屋の奥に避難してました」

「基本、1人か2人しか居ないんでどうにも出来ないですし、連中も放っとけば外に出るか奥に引き返すかで勝手に出ていくので」

「まあ、もう慣れっこですが、それでも不意に出くわすとドキっとはしますね」

 

バルバトス

「半ば台所のネズミ感覚だな……」

 

ガイード

「ここが明るいのは、辺り一面そうなんで解りにくいかもしれませんが、『水晶』のお陰ですね」

 

フォラス

「水晶ってえと、ここにもそこら中から生えてる石の事か?」

「水晶くらい王都とかにもあるが、光る物は見たことねえな……」

 

ガイード

「ひとまずの名前ですよ。石自体の見た目が水晶っぽいんで『水晶』で通してます」

「この水晶1つ1つが光ってて、この先でもそこかしこに生えて辺りを照らしてるんです。お陰で昔からランタン要らずなんですよ」

「でも、触る分には気を付けてください。その辺の岩よりよっぽど滑りますし、尖ってるやつは切れ味も良いですからね」

 

ウェパル

「そういえば、そこら中が濡れてるか凍ってるかしてるわね」

 

バルバトス

「酒場でも話したが、洞窟ってのは浸透した雨水や染み出した地下水の影響を受けやすいからね。湿気の出口も無いし」

「足元も所々、岩に紛れて水晶が埋まってる。これじゃあポーじゃなくても落ちて不思議はないな……」

 

ガイード

「石が光ってるのは、随分昔に住んでた学者先生が言うには『大地の恵み』が関係しているそうで」

「何でも、大地の恵みは大量に集まると光って見えるとかで、地下水脈から溶け込んだ大地の恵みが水晶に溜まってると書き残しています」

 

モラクス

「じゃあこれ、フォトンが俺達の目に見えてるって事か?」

「でも俺達、フォトンがめっちゃある場所とか何度も見た事あるけど、アニキ以外に見えた事なんて──」

 

バルバトス

「だが、現にこうして光って見えているなら、『今までとは違う』と考えるしかないだろう」

「アガレスの故郷の『夜輝石』や、フォトンが結晶化したフォトンタイトと言う例もある」

「この水晶の中にも、フォトンを受けて発光する物質が含まれているんじゃないかな」

 

ポー

「ふぉ、と、ン……?」

 

フォラス

「大地の恵みをそう呼ぶ所もあるんだ。かなりマイナーだが、俺らの間じゃそう呼ぶのが自然になってるのさ」

「まあ専門的な話だ。適当に聞き流しといてくれ」

 

ウェパル

「フォトンが見えないって前提自体、程度問題って考える事もできるんじゃない?」

「古き血筋だって、遡っていけばフォトンが見えないだけで遠縁なんて幾らでも居るでしょうし──」

「案外、フォトンを見る能力くらいは、殆どのヴィータが持ってたりしてね……」

 

ソロモン

「ウェパルの考え……何となく、賛成かも」

 

バルバトス

「お、専門家の意見が来たか」

「いまいちパッとしない答えだが、さっきからフォラスに呼ばれてたりした所からすると……?」

 

ソロモン

「ああ。もう入口通ってすぐから、別世界みたいなフォトンの密度だ。呆気にとられてたよ」

「自然に溶け込んでるのが普通のフォトンなら、ここはフォトンが自然の形を形成してる──そんな印象だな」

 

ミカエル

「イグザクトリー! 全ての生命を拒絶するかの如き環境にありながらその実、ここはある種、ヴァイガルドのどこよりも『力』に満ち溢れている」

 

ウェパル

「そういえば、こいつもハルマだから見えるのよね」

 

バルバトス

「言うなれば、見えているのは岩ではなく、岩の形をしたフォトン──ってところか。良いね、壮大な表現だ」

「じゃあ、この『水晶』はどうだい?」

 

ソロモン

「俺の目にも光って見えてる。多分、皆が見ているのと同じような『光景』だ。それに──」

「本当に、見たこともないほどフォトンが詰まってる。凝縮されすぎて1つ1つのフォトンが見分けられないくらいだ」

 

バルバトス

「パッと見でフォトンを識別できない密度の光──そういう意味で『賛成かも』か」

「古き血筋を持ってしても『飽和』するほどのフォトン量、その代わりに一帯が枯渇した大地……これも1つの奇跡かな」

 

ミカエル

「まさにミラクル。土地に住む命に超常の力を与えても、フォトンを生む土地だけは、ただそこに『あるがままに生まれた』ものだ」

「ハルマとメギドの技術を結集しても、『そういう土地だからそうなった』としか結論できないだろうね」

 

ウェパル

「ピーキーすぎて有り難みも飽和しちゃってるけどね」

「正直、インフレすぎてイメージがついていかないし」

 

バルバトス

「推測の域は出ないが夢がある。それで良いんじゃないかな」

 

ウェパル

「結局、いつもの『仮定の上の仮定』じゃない。たまには実になる話もしたいわね」

 

 

 話している間に手続きが終わったらしく、ミハルが軽く挨拶を交わして小屋の戸を閉じた。

 

 

ガイード

「皆さん。どうやら、あの怪物は洞窟に引き返した分も結構いるようです。まだまだお力を貸していただく事になるかもしれません」

「体調に変化のある方がいたら、今のうちに申し出て下さい」

「こっから先はいわゆる『大自然の脅威』ってやつですし、そこで戦闘なんざ、あっしらも経験の無い事ですから」

 

ポー

「おトイレとか、必ず今のうちに済ませてくださいね」

「真面目に、一苦労とか言うレベルじゃないので!」

 

モラクス

「(やっぱり、出してる真っ最中から凍ったりすんのかな……)」

 

フォラス

「さっきから様子見てた限りじゃあ、誰も心配無さそうだ。よろしく頼むぜ」

 

ガイード

「了解です。まずは引き続き、あっしが先頭に立ちますんで、怪物どもが現れたらよろしく頼みます」

 

 

<GO TO NEXT>

 

 




※ここからあとがき

 感想からいただいたご意見を参考に、話の終わりの表現を変えてみました。
 原作のストーリーの締めに表示される「TAP TO NEXT」にしようかと思いましたが、そうなると、看板に偽り無いよう次話リンク張るべきかなと。
 そうすると毎回リンクを用意するのも手間なので「GO TO NEXT」としました。
 お手数ですが、次話への移動は各位手動でよろしくお願いします。

 なお調べた限りでは、氷点下50℃まで冷え込んだとしてもモラクスが考えるような事にはならないそうです。
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