メギド72オリスト「太古の災厄と新生する憤怒」   作:水郷アコホ

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25「不明」

 早々に幻獣退治を終え、酒場への途に着く一行。

 モラクスとベレトが白けた顔でダラダラ歩きながら愚痴をこぼす。

 

 

モラクス

「何だったんだよ……勝手にやられちまうなら俺達が出る意味無かったじゃんか」

 

ベレト

「全くだ。とんだ肩透かしを食らわせおって、ふざけた幻獣どもだ」

 

フォラス

「まあそうクサるな。それはあくまで結果論ってもんだ」

「俺達が行かなきゃ、クラゲが異常気象でやられたりしなかったかも知れないだろ」

 

モラクス

「そうかあ? 結局戦ってないんだから、俺達が行っても行かなくてもクラゲのやる事は一緒じゃね?」

「『やってやるぜ』ってなった時には片方は眼の前でカチコチになっちまうし、もう一匹は目の前で真っ二つだったじゃねえか」

 

フォラス

「ああ確かに、フォトン体が凍結するなんて滅多に見れるものじゃなかったな。もう片方は、ありゃ『かまいたち』ってやつかね」

「まあそれはともかく、一応は奴らの前に俺達が立ち塞がっただろ」

「それでクラゲの進行方向が少し変わって、その時にたまたま異常気象に捕まったって可能性もある」

 

ソロモン

「それに結果がどうなったって、俺達が何とかしなくて良いって理由にはならないよ、モラクス」

 

モラクス

「そりゃあ、アニキの言う通りだけどよお……」

 

ベレト

「理屈など聞いておらん、無能な召喚者め!」

「これでは土産話の1つにもならんではないか。この落とし前どうつけてくれる!」

 

ソロモン

「いや、俺は悪くないだろ……」

 

ウェパル

「土産話って、ポーに?」

「何か急にポーに構うわね、ベレト」

 

シャックス

「何だか何だか、すっかり仲良しさんだよね!」

 

ベレト

「そ、そんなんではない!」

「あいつは儂の臣下だ、家来だ! 武勇伝の1つも知らしめねば体裁がつかんだろうが!」

 

ウェパル

「なに勝手に人を尻に敷こうとしてんのよ……ポーもいい迷惑じゃない」

 

ベレト

「勝手ではないっ!!」

 

フォラス

「まあまあ、冷えるしまずは帰って飯にしようぜ。喧嘩の続きはその後だ」

 

バルバトス

「……」

 

ソロモン

「バルバトス? さっきから静かだけど、どうしたんだ?」

 

バルバトス

「ああ。ちょっとね」

「俺達がクラゲを見つけた時、近所の奥方が現場に居合わせただろう?」

 

ソロモン

「ああ。確か、初日に酒場でもてなしてもらった時にも居た人だよな」

 

バルバトス

「幻獣が自爆する時、遠かったとは言えベレトの要領で俺が盾になって、落ち着いてもらうために少し話をしたんだ」

 

ソロモン

「そういえばクラゲを倒した後、バルバトスだけ俺達から少し離れてたな」

「もしかして、何か情報が?」

 

バルバトス

「確証の持てる内容では無かったけどね。一考の価値は充分にあった」

 

 

 バルバトスの回想。

 幻獣の一方は突如、傘部分のてっぺんから凍結し落下、自爆。

 もう一方は不意に風が吹いたかと思うと絵を切り分けたように綺麗に二分され自爆。

 困惑したり周囲の警戒に移ったりの仲間達をひとまず置いて、バルバトスが婦人をなだめている。

 

 

助けてもらった婦人

「本当にありがとうございます」

「この間も、あなたに似たキレイな金髪の方に助けて頂いて、もう何とお礼を行って良いか……」

 

バルバトス

「あなたの笑顔と美貌をお守りできる事が何よりの褒美ですよ、マダム」

「(ミカエルと似た者扱いされるのは正直、遺憾だけどね……)」

 

助けてもらった婦人

「まあ、お上手なんだからぁ」

「でも本当に困っちゃうわねぇ。もう3日も続けて怪物が出るなんて、今までこんな事なかったのに……」

 

バルバトス

「きっと今に俺達が何とかしてみせますよ。あなたのお顔を曇らせたままなんて、この世界全てに申し訳が立たないからね」

「(確か、酒場でヤブさんも似たような事を言っていたな)」

「(3日連続……丁度、俺達がロンバルドに到着してからだが、考えすぎか?)」

 

助けてもらった婦人

「いやですよ、こんなオバサンからかって♪」

「これからも頼りにしてるわね。この辺りはみんな、あの怪物にどうして良いか慣れてない人たちばかりですから」

 

バルバトス

「ん? 失礼ですが、慣れていないとは?」

「確か、怪物はもう随分前から現れ続けて、異常気象と共に慣れてしまっていると聞いていましたが……?」

 

助けてもらった婦人

「ああ。この辺りはね、怪物が出てからもう何ヶ月も経ちますけど、怪物が来る事は滅多に無かったんですよ」

「集落の他の方だと、怪物がすぐ近くまで現れたりでてんてこ舞いらしいんですけどね」

「こっちでは見かけるとしても、空のずっと高い所を漂ってるとかばかりで、蚊帳の外って言うのか……」

 

バルバトス

「……なるほど。どういうわけか、怪物は集落の中でもどの辺りに現れるか偏りがあると」

「そして、今までこの近辺に立ち寄る事は殆ど無かった」

「だから怪物と遭遇してしまった時、どうして良いかわからなくなってしまう……」

 

助けてもらった婦人

「そうなのよ。きっとこれからも怪物がこの辺りに出てくると思うの」

「その時は、情けないとは思うけれど、どうかお願いしますわね」

 

バルバトス

「お気になさらず。この身に代えてもお守りすると誓いますよ」

「時に……この一帯に怪物が現れるようになった時期と言うのも、もしかして?」

 

助けてもらった婦人

「ええ、一昨日から。怪物が現れるたびに、立ち眩みがしたかと思うと二階の窓の前なんかをフワフワと……」

 

バルバトス

「なるほど。それはさぞ、不安だったことでしょう」

 

 

 回想終わり。

 バルバトスとソロモンの会話に戻る。

 

 

ソロモン

「普段、クラゲが現れなかった場所にもか……」

「人里に乗り込んでくるクラゲの数が増えてきたって事か?」

 

バルバトス

「恐らくそれはない。今朝、俺が聞き込みした時にはそれらしい話題は出なかった」

「脅威の物量が増えたなら、まず何より打ち明けたい不安のはずだからね」

 

ソロモン

「確かに。じゃあ、バルバトスは何か別の心当たりが?」

 

バルバトス

「恐らく……ルートが変わった」

 

ソロモン

「ルート? クラゲ達は適当に漂ってるんじゃなく、決まった進路を辿ってるって事か?」

 

バルバトス

「あくまで推測だけどね」

「だが、そう考えれば幾つか辻褄が合う。例えば、大空洞の通路は人が一列に移動する事を想定して比較的狭く掘られているだろう?」

「一般論で考えれば、そんな迷路を無軌道に流されて、地上まで簡単に行き着けるだろうか」

 

ソロモン

「言われてみれば……本当に適当に飛んでるなら、絶対どこかで詰まったりすると思う」

 

バルバトス

「昨日、ガイードさんが『人に寄り付いてる』と言ってたろう」

「多分あれは気のせいじゃなく、何か『目標物』があるからだ」

「その『目標物』に引き寄せられるように移動しているから、結果として人里までの進路を踏破する確率が上がっているんだ」

 

ソロモン

「え……でも待ってくれバルバトス、それって……!」

「ガイードさんが『人に寄り付く』って言ってたのって……大空洞の中だろう?」

「大空洞の中で『目標物に寄り付いてた』って、それってつまり……!」

 

バルバトス

「そういう事だよ」

「『目標物』はあの時、大空洞を調査した俺達、ガイードさん、ポーの誰かが所持していた。そうと気付かずにね」

「更に言えば、『目標物』はロンバルド特有のものでは無いかもしれない」

「幻獣が連日人里を襲撃し始めたのも、普段現れない区域に幻獣が現れたのも、全て一昨日からだ」

「3日で答えを出すのも性急かもしれないけど、全ては俺達がロンバルドに到着してからなんだよ」

「『目標物』の反応が増したから、幻獣が人里の座標を感知しやすくなり、その進路も更新されたんだと思う」

 

ソロモン

「じゃあ……俺達がここに来たから、住民の危険が増してる?」

 

バルバトス

「可能性はある。だからこそ、俺達は今朝まで以上にこの事件と真摯に向き合わねばならない」

「後で俺からフォラス達にも話しておくよ。もしこの推測が当たりなら……」

「この『目標物』、早急に特定しなければマズいからね」

 

ソロモン

「……俺達のせいで騒ぎを大きくしたと思うと胸が潰れそうになるけど……気にしてばかりも居られないな」

「わかった。説明はバルバトスに任せるよ。続きは帰ってから考えよう」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 酒場に帰り着いた一行。入口の前に人影が1つ立っている。

 

 

ミカエル

「やあ、君たち。無事そうで何よりだ」

 

ソロモン

「ミカエル!? どうしたんだ、外で突っ立って……」

 

ウェパル

「追い出された?」

 

シャックス

「やっぱり……かわいそかわいそ~……」

 

バルバトス

「(『やっぱり』って……)」

 

ミカエル

「ノンノンノー。万一に備えて、君達の帰るべき場所を守らんとしていたのさ」

 

フォラス

「この寒空の中でか? 普段のお前さんからすると、随分と慎ましいと言うか、地味と言うか」

 

ミカエル

「ただ幻獣退治を丸投げするばかりでは、流石に立つ瀬が無いというものさ」

「それにこの程度の環境、ハルマにとってはまだまだ快適なくらいだよ。ドンッウォーリー」

 

バルバトス

「(ガブリエルやカマエルが同意するか、だいぶ怪しいところだけどな)」

 

ベレト

「ハルマなんぞその辺で寒風干しにでもしておけ。さっさと中に入るぞ」

 

モラクス

「そういや夕飯これからなんだった! もう腹ペコだぜ」

 

フォラス

「何だかんだ、腹ごなしの散歩くらいにはなったかね」

 

シャックス

「やっほーい、ごはんごはんー!」

 

 

 ミカエル共々、店内へ足を運ぶ一行。

 ウェパルが、先程までミカエルが立ち尽くしていた地点を見つめている。

 

 

ウェパル

「……」

 

バルバトス

「ウェパル。もしかして、君も気付いたのかい?」

 

ウェパル

「『ミカエルの足跡が殆ど無い』って事なら」

 

バルバトス

「まさにそれの事だ」

「本当にあの空飛ぶクラゲに備えていたのなら、店の裏手や隣近所まで巡回するのが妥当なはずだからね」

「だがミカエルの物と思しき足跡は、幻獣の襲来を告げにここに帰った時の物だけだ」

 

ウェパル

「最初っから幻獣は建前で、ここで棒立ちしてるのが目的だった……ってのも納得いかないけどね」

「これも例の隠し事?」

 

バルバトス

「恐らくね」

「ミカエルだけが知る『何か』が起きる可能性があったんだろう」

「そしてその『何か』は、玄関前に居れば充分に察知できるものだった」

「外に出たのは、『何か』を警戒する自分をポー達に怪しまれないためと言った所か……」

 

ウェパル

「何にしても一回吐かせでもしないと、これ以上疑ってみたって何も進展無いんじゃない?」

 

バルバトス

「……そうだな。今日はひとまず休養に専念するとして、いっそ明日にでも──」

 

ソロモン

「おーい、二人とも、何してるんだー?」

 

バルバトス

「おっと。済まない、今行く」

「(……とりあえず今のミカエルの件も、後でソロモンに話しておくか)」

 

 

 玄関前で2人を気にして立ち止まっている仲間達。

 立ち話を中断して合流し、酒場へ帰還した。

 

 

バルバトス

「(……ウェパル自身、気付いているだろうか)」

「(今、彼女は『尻込み』した)」

「(秘匿された情報は聞き出すのが手っ取り早いのも事実。そう考えれば一見、ウェパルらしくもあるが……)」

「(だがさっきのウェパルは、自ら違和感に気付いていながら、一歩でも核心に近づこうという……自ら考えるという意思を手放した)」

「(余計な事に消極的ではあっても、なおざりにはしないのがウェパルのはずだ)」

「(絶対におかしい。事件を解決する意思は確かなのに、まるで事件の『何か』に至る事を避けているかのようだ)」

「(仲間の微妙な変化は気付けるのに、このチグハグさの正体は自覚さえ難しい……俺達は、何を『されている』んだ……?)」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 店内では、テーブルの1つに既に幾つかの料理が並べられていた。

 その席の片隅で、ポーが大人しく座って待っていた。

 ついでに、離れた席でガイードが先んじて料理を貪っている。

 ヤブがガイードの空いた皿を了解も取らずに台所に持ち帰っている。

 

 

ポー

「あ、皆さん!」

 

ガイード

「おお、ご無事で何よりです」

 

モラクス

「また先に食ってるよこのオッサン……」

 

ヤブ

「本当に昔から空気読まねえんだから……」

 

ガイード

「何だよ、俺が言った通りすぐに戻って来なすったんだから良いじゃねえかよ!」

 

ポー

「そんなことより、お姐さん!」

 

 

 ポーが立ち上がるなり、自分の席の隣に用意した『ドテラ』を抱えてベレトに歩み寄る。

 

 

ベレト

「ぐぬっ……ま、またソレか!」

 

ポー

「『またソレか』じゃありません、また裸足で外に飛び出したりして!」

「お姐さんは人に心配される前に、もっと自分を労るべきです!」

 

ベレト

「んなっ……!?」

「お、おま……ぬ、ぅぬぅぅぅ……!」

 

 

 何か言い返そうとしたようだが、歯切れが悪いベレト。

 

 

ソロモン

「まあ俺が言うのもなんだけど、見てて『寒そうだな』って心配になる事は何度かあったし……」

 

フォラス

「ベレト以外は酒場に居た時から上着とか借りて暖かくしてたから、尚更なあ」

 

ウェパル

「ポーはあんたの何なんだっけ?」

 

ベレト

「う、うるさい! 魚の分際で冷やかすな!」

「ポーもよせ、にじり寄るな! せ、せめてあの肩掛けとかにせんか!」

 

ポー

「ダメです。お姐さんはただでさえ薄着なんですから、皆さんと同じじゃ足りないはずです」

「変な意地張って凍えちゃったら元も子もないんですからね!」

 

ベレト

「儂をただのヴィータと侮るな! あの程度なら屁でもない!」

「それに、お、おまえ、が……」

「……ぬぅ~~……!」

 

 

 頭を掻いて床を踏み鳴らし始めるベレト。

 ミカエルがベレトの肩に手を置いて制する。

 

ベレト

「冷たっ!?」

「き、貴様、ハルマ如きが気安く儂に触れるな!」

 

ミカエル

「オー、ソーリー。ずっと君達の帰りを待っていたものでね」

 

ポー

「はっ、そうだ、お客さんもそんな格好で……!」

 

ミカエル

「ストップ、忙しないレディ」

「その気持ちは嬉しいが、君は私達について知らない事がまだ多くある」

「私達にとっての君がそうであるようにね……」

「だからこそ、まずはこのもどかしいレディの言葉を聞き届けてあげて欲しいのだよ」

 

ポー

「は、はぁ……えっと……?」

「お姐さんのお話を聞いてから、『ドテラ』を着せれば良いって事ですね?」

 

ベレト

「だから着る必要など無いと言っとろうが!」

「おいハルマ、貴様も何のつもりで──」

 

ミカエル

「今、君が伝えたいのは、本当にそんな言葉かい?」

 

ベレト

「な……何を……」

 

 

 一瞬、真剣な表情をしたミカエルだが、すぐに笑顔でベレトにウィンクしてみせた。

 全くわけがわからないと心底気持ち悪そうな顔をしかけたベレトだが、すぐに何かを察した。

 

 

ベレト

「む……フンッ」

「ハルマからの借りなど、踏み倒してやるからな」

 

ミカエル

「ノープロブレム。私は在るべき場所に、在るべき者を導きたいだけさ」

 

ソロモン

「な、なあ。さっきから何の話をしてるんだ……?」

 

 

 バツが悪そうにポーに向き直るベレト。

 一歩下がったミカエルがソロモンに小声で説明する。

 

 

ミカエル

「(今朝早く、2人の間で何かあったみたいでね。ずっと気になっていたのだよ)」

 

ソロモン

「(何かって……何が?)」

「(それに何でミカエルがそんな事を知って──)」

 

ミカエル

「(内容まではレディ達のトップシークレットさ。だが早朝、私に続いて2人も浴場に来ていたようでね)」

「(もちろん会話までは聞こえなかったが、お仲間のレディの凄まじい怒声が男湯まで届いてきたのさ)」

 

ソロモン

「(ベレトが……それは、確かにただ事じゃないかも)」

「(怒りっぽいとは言っても、最近はだいぶ丸くなった方だし……)」

 

ミカエル

「(今朝からレディの様子を見ていたが、どこかぎこちない様子に思えた)」

「(だから、少しだけ背中を押してみたのさ)」

 

 

 何度か咳払いで間を稼いでから語り始めるベレト。

 

 

ベレト

「……おい、ポー。まずはお前が着込め。でなければ儂もそんなものは受け取らん」

 

ポー

「はぇ? いえ、私よりまず外から帰ってきたお姐さん達を──」

 

ベレト

「そのダサいのでもあの肩掛けでも、貴様が己を暖めた後なら、お前の献上を受けてやらん事もない」

「だが今のままなら断固認めん。お前が今日、暇を出された理由を忘れたとは言わさんぞ」

 

ポー

「そ、それは……」

 

シャックス

「なんだっけ?」

 

バルバトス

「水を差すんじゃない。何だかまじめそうな雰囲気なのに……」

「今朝の戦闘の後、ポーの体調が優れなかったからじゃないか」

 

フォラス

「って事は……ああ、なーるほど」

 

ベレト

「ポー、今のお前の言葉をそっくりそのまま返してやる」

「『人に心配される前に自分を労れ』」

「要らぬ気遣いだと言ってやりたいなら、まずお前自身が満たされている事を示してみせろ」

 

ポー

「……!」

 

バルバトス

「(ポーの言いたかったニュアンスとは少し違う気がするけど……指摘するのは野暮だな)」

 

ベレト

「フラつくお前に構われたのでは、儂がまるで搾取しか能の無い暗君のようではないか」

「人の世話がしたければ、まずはお前自身の世話を万全にしろ。そのダサいのを最初に着るのはお前からだ。良いな!」

 

モラクス

「ベレトが……なんかマトモっぽい事言ってる……!?」

 

ソロモン

「でも、さり気なく『ドテラ』をポーに押し付けてないか?」

 

ポー

「わ……わかりました!」

「じゃあ、『ドテラ』をもう一着、ご近所からお借りしてきます!」

 

ベレト

「だから要らんと言うに! どうあっても儂に着せる気か!?」

「第一、牛馬の如く駆け回っとらんでお前も休めと、この儂がわざわざ言ってやっとるのだぞ」

「お前は幻獣が出るたび、その前か後に様子がおかしくなってばかりなのだからな!」

 

ヤブ&ガイード

「……!」

 

 

 ベレトとポーの騒ぎに集中している一行の視界の外で、ヤブとガイードの肩がピクリと動いた。

 

 

シャックス

「あれ? そうだったの? 大発見!?」

 

ポー

「ぐ、偶然ですって! 私、いつだって元気いっぱいなのが取り柄なんですから」

 

バルバトス

「確かに言われてみればベレトの言い分も一理あるけど、微妙じゃないかなあ……」

「急な異常気象で体調崩す人はロンバルドにも他に居るし、ウェパルだってそうだったし」

 

ウェパル

「でも、私だって毎回じゃないわよ」

「それに、大空洞でも幻獣が出てきた後、ポーが気を失ってベレトごと落ちそうになったじゃない」

 

フォラス

「だが、あれは直前にベレトが庇ったとは言え、幻獣の爆風を受けたからじゃなかったか?」

「ベレトが言いたいのは『幻獣が出現するたび、そのせいで必ずポーが体調を崩して見える』って意味だろうし……」

 

ミカエル

「……」

 

ソロモン

「思い返せば心当たりはあるけれど、全部を直接幻獣と結びつけるのは、ちょっと短絡的なような……」

「それに初日に幻獣が出た時も、帰ってきた時にポーに変わった様子も無かったし」

 

ヤブ&ガイード

「……」

 

ウェパル

「あの時だって、ポー達から防寒具受け取って、倒して、帰ってくるまで結構かかってたじゃない」

 

モラクス

「いやいや、その時はウェパルが倒れてずっと酒場に居たじゃねえか。見てなかったのかよ?」

 

ウェパル

「生憎、頭痛くてそれどころじゃなかったわ」

「ポーに着込まされたのも、寒気が引いた後からだったし」

 

ヤブ

「あー、皆さん」

「お取り込み中の所すいませんが、そろそろ残りの料理もお出ししちゃって構いませんかね?」

 

ソロモン

「あ、そ、そうだった。すいません、お願いします!」

 

ウェパル

「いつものノリも、たまには考えものね……」

 

 

 ワタワタと食卓に着く一行とポー。

 すぐに食事に夢中になり、『ドテラ』は近くの席に預けられ有耶無耶になった。

 

 

<GO TO NEXT>

 

 




※ここからあとがき

 ミカエルの「レディ」呼びは、文脈に応じて変わったりしても面白いかなと思い変えてみました。
 あんまり堂々と「みすぼらしいレディ」ばかり呼ばせるのもどうかと思ったので。
 今後とも「レディ」呼びの機会があれば、その都度対応させてみようかと思います。
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