メギド72オリスト「太古の災厄と新生する憤怒」   作:水郷アコホ

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34「ミカエルの答え」

 大空洞道中。ミカエルが協力を示したが、一行の表情は重い。

 

ソロモン

「何でも聞いてくれって言ってくれるのは助かるけど、もうそろそろ大空洞だしな……」

「何から聞いたら良いだろう? バルバトスに任せた方が良いかな……」

 

ウェパル

「色々問い詰めてやりたい事はあるけど、まず『何で黙ってたか』でしょ」

「バルバトスの考え通りなら、こいつはとっくに一通りの事を知ってた事になるわ」

「さっさと洗いざらい吐いてくれれば、こっちだって死人なんて出さずに済んだかもしれないじゃない」

 

ミカエル

「ノー。確かにマスターの犠牲は想定外。私の落ち度でもある」

「だが今朝までのキミたちに、私の知る全てを話せば、キミたちはより多くの犠牲を生み出しかねなかった」

「例え僅かな可能性でも、私はそれだけは認められない」

 

フォラス

「ポーの中にメギドが居て、俺達がメギドの『恐れ』に影響されてるとわかると、更に死人が出たってか……?」

 

バルバトス

「死にはしなかったかもしれないが、信頼は失われたかもしれない……ポーと、ロンバルド住民同士のね」

 

ソロモン

「そうか。『恐れ』か……」

 

シャックス

「なになに? どゆことどゆことー?」

 

バルバトス

「そのセリフを聞くと、普段の調子が戻ってくる気がするよ」

「良いかい。まずポーの持つ『石』は、ポーと肉体を共有する『メギド』について知るほどに『恐れ』の感情を呼び起こす」

 

シャックス

「ほうほう!」

 

バルバトス

「(そういえば、シャックスだけは『恐れ』にも『怒り』にも余り影響されてないな……)」

「(もしかしたら、『石』から届く感情は、自分の中に受信内容とよく似た『種火』のような感情が無ければ効果が無いとか……?)」

「(まあ、それは今、考えてもしょうがないか)」

「そしてその『恐れ』が及んでいるのは、俺達だけじゃない。このロンバルドに住む、ほぼ全てのヴィータ達も同じだ」

 

モラクス

「そういや、ポーを『断りきれない』ってのも『石』のせいって、さっき話してたっけ」

 

バルバトス

「そうだ。そしてミカエルも例外では無かったんだろう。だからこそ、『恐れ』を自覚したミカエルに、ある懸念が生じた」

「ミカエルが『恐れ』に打ち勝って、俺達に『石』やポーの正体を語ったとする」

「俺達が『知ってしまった』恐怖に耐えられたとしても、一度に押し寄せた『恐れ』は、事件を解決するまで俺達を苛む事になる」

「最悪、今よりも遥かに『メギド討つべし』で意見が統一された可能性もある」

「ましてや、どんな力を持つメギドかもわからないからと、俺達が住民に『メギド』絡みの情報を伝えれば、同じ『恐れ』に駆られた彼らがパニックに陥るかもしれない」

 

ミカエル

「弁解するつもりは無いが、私もキミたちより早く結論を出せたというだけで、スタートの条件はほぼ同じだ」

「ポースレーンのレディがメギドであるか、キミ達が居合わせない時にそれとなく探ってみたが、レディが何か隠している様子は全く伺えなかった」

「私は、己の中で一定の確度を持たない情報の共有を好まない。それは際限のない誤解と疑心暗鬼を生んでしまう」

 

バルバトス

「メギドの人格は、ポー自身にさえ気取られないほどに息を潜めていただろうからね」

「結局、二重人格が一つの例外なのもあって、俺達は『ポー』に疑いを向けてしまったわけだな」

 

ウェパル

「でもそんなの、ポーが何と言おうが『石』を取り上げれば良かったんじゃないの?」

「『石』が『恐れ』を振りまいてるなら、ポーに持たせなければ影響は途絶えるはずよ」

 

バルバトス

「昨夜、ポーが気絶した後は、『石』の影響は無かったはずだろう?」

 

ウェパル

「あ……」

 

バルバトス

「随分荒れたよな。ついさっき蒸し返したら、ベレトの『怒り』も相まって一触即発だった」

「フォラスもあの時、後から説明した時には思わず怒鳴りかけていたくらいだ」

 

フォラス

「まさか、『石』が無くても俺達は……?」

 

バルバトス

「『石』から一度でも『恐れ』を共有すれば……そして『恐れ』に選択を支配されるほど、俺達の心に『恐れ』は残滓となって刻み込まれる」

「知らず『恐れ』に基づいて選んだ行動の一つ一つが、前例としてその後の選択肢をも縛っていくんだ」

「ミカエルが気付いた時には、全員手遅れだったんだよ。俺達は無意識に、外から与えられた『恐れ』を自らの一部にしていた」

「そしてトラウマのように想起される『恐れ』に『敵対』する事で平静を保った。これは動物的な本能と言っていい。完全に抗う事は、恐らく不可能だ」

 

ソロモン

「それに、『感情』だからな……」

「どこまでが冷静な判断で、どこからが自分の感情に流されているかなんて普通はわかるわけない」

「『自分は冷静だ』なんて自信を持ってたって、却って落とし穴を増やすだけって事もある」

 

モラクス

「えーっと……つまり俺達がポーはメギドだって知ってたら、どうなってたって事なんだ?」

 

バルバトス

「断定はできないけど、最悪の場合──」

「俺達は事情を知らない『ポー』を追求して心に深い傷を負わせ、正体がバレた『メギド』は今みたいな逃走を図り、ロンバルドの住民は『恐れ』に負け、魔女狩りの様相を呈す事も……」

 

モラクス

「うへぇ……」

 

フォラス

「ガイードさんだけを連れて出たのもその『恐れ』の残滓で何が起きるかわからないからって事か」

「ポーと親しくて、俺達の事情もある程度わかってる分、何か知っても比較的には穏便に受け入れてくれるかも知れないが……」

「こりゃあ、どこまで説明したものか、難しいな……」

 

ソロモン

「これからメギドとしてのポーの正体を確かめる必要もあるしな……」

「ここまでの事情を知ってたら、俺もポーとメギドの事情を、住民の人たちに極力知られないように動いたと思う」

「俺が召喚して普通に生活させるとしても、ロンバルドの人には、なるべく慎重に説明した方が良いだろうし」

 

フォラス

「とりあえず、ミカエルがロンバルドの今後を優先して様子見してたってのはわかった」

「今になってそれを打ち明けるってのは……俺達がさっきの今で『恐れ』を完全に克服したから、なんてのは楽観がすぎるな」

「今はもう悠長な事を言ってられないから、最低限の覚悟ができた所で見切り発車させたってところか」

 

ミカエル

「イエス。事は一刻を争う」

「そして機を逃せば、ロンバルドの幻獣による被害は、永久に続く事となるだろう」

 

ソロモン

「幻獣とポーが、繋がるのか!?」

 

ウェパル

「さっきまでクラゲの侵略とポーは直接関係ないみたいな雰囲気だったのに、混ぜっ返す気?」

 

ベレト

「ポーは関係ない! そもそもの理屈に合わん!」

「ポーがメギドで、幻獣を操っていたというなら、この体たらくは何だ!」

「ヴィータとして隠れ住んでおった自分の生活を自ら脅かし、挙げ句召喚者まで押し寄せて、『恐れ』ておった炙り出しに晒されているではないか!」

「ここまでの話が全て真実なら、ポーにとってもメギドにとっても、幻獣の存在は不利益にしかなっておらん!」

 

バルバトス

「逆なら、あり得る」

 

ベレト

「逆……?」

 

バルバトス

「結果として、ポーの行動が幻獣の活動を左右する事になるなら、それは他者から見て『操っている』とか『呼び寄せた』と見えるだろう」

「よくある話さ。本当は『狙われ』ていたんだ。ポーとメギドが、幻獣に」

「さっきも言った通り、ポーは『巻き込まれた』って事さ」

 

フォラス

「そう考える根拠は、例のポーが危ないって話か?」

 

バルバトス

「ああ。だがこの『危機』、さっきも言った通り『確信』を持ってはいるが、客観的な『証拠』が足りない」

「だが、ミカエルにはその『証拠』がある。そうだな?」

 

 

ミカエル

「イグザクトリー」

「昨日、私は一日掛けて住民から情報を集め、ある事の裏付けを取っていた」

 

ソロモン

「ある事……?」

 

ミカエル

「まず、幻獣が発生した時期」

「地底湖への通路に、新たな開拓路が作られていたのをキミ達も見ただろう?」

 

シャックス

「……?」

 

モラクス

「いや忘れてんなよ! シャックスが勝手に入ろうとしてポーに注意されただろ!」

「それに帰りにも、あの穴から幻獣が出てきて……って、もしかして?」

 

フォラス

「実質、結論出てたよな。『幻獣の巣は地底湖より奥地にある』」

「つー事は、その時期ってのは……」

 

ミカエル

「そう。最初の目撃証言と、通路開通の時期は完全に一致した」

「更に地底湖の奥にも、壁に隔てられた空間があると分かり、新たな通路を開通させていたらしい」

「そして第二の通路を開通させた時期から、地底湖での目撃の頻度が大きく上がった」

 

ウェパル

「横穴が原因説、これで確定ね……」

「でも、それがポーとどう繋がるの」

 

ミカエル

「本題はここからだよ」

「幻獣が出るたびに、ポースレーンのレディの様子が不自然になると、そこの怒れるレディが指摘していたね」

 

ベレト

「う、うむ」

 

ミカエル

「私は同じ考えを、キミたちと最初に出会った、あの朝食の場の後で抱いた」

 

ソロモン

「そんな早くに!? あの時、そんな疑い持つ事なんて起きてたか……?」

 

バルバトス

「まさか、ポーが椅子に躓いて俺が支えた時の?」

 

ミカエル

「ザッツライト! まさにその時さ。私はここに着く以前から可能性として、メギドの関与を前もって想定していた」

「不躾ながら、数奇な運命にあるレディをつぶさに観察していた。そしてあの時──」

「ポースレーンのレディは何もない所で、足をもつれさせるでもなく、静かに倒れ込んでいた」

 

フォラス

「あの時からもう不調は出てたって事か」

 

モラクス

「でも、あの時は集落に幻獣が出てきたりしてなかったし──」

「じゃねえな……そういや、大空洞に行く支度済んだ頃から出てきてた」

 

ミカエル

「それだけではない。不調自体は更に以前からあった」

「酒場のレディの様子がおかしいと感じた事は無いかと、同時に私は住民に尋ねてみた」

「最も古いものでは、大空洞の通路が開通する数ヶ月前から、レディが呼びかけに応じない事があったそうだ」

 

ソロモン

「ロンバルドの人たち、ポーの様子にとっくに気付いてたのか!?」

 

バルバトス

「不調がメギドの人格に由来するものだとすれば、『恐れ』で深く詮索する気になれなかったのかもしれないな」

 

フォラス

「どこまでが『普通の』心配で済むのか、わからなくなってきちまったんだろうな。ヤブさんも、多分ガイードさんも……」

 

ミカエル

「更に、ここ一ヶ月の間でレディの『不調』に気付いた住民の割合は、集落の大半に及んだ」

「幻獣の集落に現れてから立ち去るまでの経路について調べても、多くは酒場近辺に集中し、それ以外でも決して無視できない割合で、その日のレディーの外出先と不自然に被っていた」

「レディは幻獣に狙われ、そして何らかの影響によって、その魂は日に日に弱っていった。私はそう判断している」

 

ウェパル

「どうしてそうなるのよ」

「あのクラゲが集落に出る前からポーは弱ってたって事なら、むしろ幻獣は関係なくなるじゃない」

「私達がここに来てから、クラゲをポーに近づけたのなんてほんの2、3回程度。昨夜の爆発騒ぎ以外、何かされた様子も無かったわ」

 

バルバトス

「……仮説はある。だが……」

「ミカエル。君には、『大空洞との関連』について、何か根拠はあるかい?」

 

ミカエル

「オフコース。だが、私もその確証を得るのはこれからになる」

「故に、これは私から共有すべき事ではない」

「似たような『意見』に、個人的な解釈を挟む事はあるだろうけれどね」

 

ソロモン

「どういうことだ……?」

 

バルバトス

「少し飛躍した話になるが、ここはミカエルを信じて話そう」

「俺の考えでは、ポーの中のメギドの魂は、大空洞の環境と『同期』している」

 

ウェパル

「……はぁ?」

 

フォラス

「大空洞が、メギドの魂にとって体の一部みたいなものって事か……?」

 

ベレト

「流石についていけんぞ……」

 

モラクス

「何て言ってるかはわかったけど、何言ってるか全然わかんねえ……」

 

シャックス

「バルバル……頭ダイジョブダイジョブ?」

 

バルバトス

「気持ちはわかるけどさ……!」

「とにかく、俺達が知る情報をまとめると、俺にはそれしか考えられないんだよ」

 

ソロモン

「正直、俺も要領を得ないけど、とにかく続けてくれ。バルバトス」

 

バルバトス

「ああ。わかってもらえなくとも言うだけ言うつもりだったさ」

「まず、例のクラゲは『目標物』に向かって移動しているって話を前にしただろう」

 

フォラス

「ああ。ミカエルの調査やここまでの話からすると、『目標物』がポーだって結論も出せる」

 

モラクス

「昨日もバルバトスのアニキ、取り逃した幻獣が酒場に行ったかもって言ったらその通りになったしな」

 

バルバトス

「恐らく、『目標物』は正確には『メギドの魂』だ」

「魂も一種のフォトン。メギドラルの技術なら、特定のフォトンに集まる『習性』を仕込む事は難しくないだろう」

 

ソロモン

「そうなると、追放メギドの魂にも反応する事はあり得るな」

「俺達がロンバルドに来てから幻獣の侵入ルートが変わったり、大空洞のクラゲが普段よりも『寄り付いて』来たのも理屈が通る」

 

バルバトス

「次に、ポーが今みたいな体になった経緯だ」

「大空洞を滑落したポーは一年後、何一つ変わらない姿で発見され、救助された翌日に目を覚ました」

 

ベレト

「その時には、ポーはメギドに何かされていたと?」

 

ソロモン

「確かシャミハザの時は、瀕死のジルベールに偶然に憑依したって聞いた事がある」

「元々、メギドの魂が大空洞を彷徨ってて、たまたまポーに憑依した……?」

 

バルバトス

「俺も今の時点で考えられる中では、その線が妥当だと思う」

「そしてもしかしたら、メギドの魂はかなりの間、大空洞を彷徨っていたか、あるいはポーに憑依する以前にも『依代』のような物があったんじゃないかと思う」

 

ソロモン

「依代?」

 

バルバトス

「ティアマトを封印していた鉄人形とか、何でも良い。とにかくメギドの魂が長い間、大空洞に定着していた理由になれば」

 

フォラス

「経緯はさておき、たまたま大空洞の中で魂丸出しで生き続けてたって可能性があるんだな」

「その通りだとして、するとメギドと大空洞がどうなるってんだ」

 

バルバトス

「大空洞のどこかの環境にメギドの魂の残渣が残り、本体に影響を与えている可能性がある」

 

フォラス

「あり得るのか、そんな事……?」

 

ソロモン

「魂とその残渣が起こした事件ってだけなら、今まで、無い事も無かったよ」

「追放されたメギドのメギド体を、メギドラルが保管して兵器にしてた事があった」

「あの時は、メギド体の中に残った魂の残渣が、ヴァイガルドに転生した本体を追いかけて来てた」

「でも、バルバトスの考えがあり得ないとは言い切れないけど、あの時はメギド体と戦っても、本体に何かあったって話は特に……」

 

バルバトス

「俺もそこがまだ繋がらない。メギドと大空洞を紐付けする要素がまだハッキリしないんだ……」

「だけど、くどいようだけど、何度考えてもそれ以外にポーが衰弱している理由が考えつかないんだ」

「あのクラゲがポーを狙っている。そしてあのクラゲが具体的に何かを変えた物があるとすれば、大空洞の環境だけなんだよ」

「奴らが大空洞で繁殖して、幅を利かせている。それが、何かの影響でポーに及んでいるとしか……」

 

ベレト

「説明されてもまだ雲を掴むような話だが……仮に貴様の言う通りだとして、ハルマの言う、放っておくと幻獣がのさばると言う話はどこから出てきた?」

 

ミカエル

「戦っているからさ。メギド体の片割れは、今も大空洞の異物を排除せんとしているのだよ」

 

バルバトス

「かつての魂の残渣のような物が残っているなら、自分を狙う幻獣に当然、対抗しようとするだろう」

「何らかの形で幻獣と戦い、それでも現状、クラゲが溢れ出ているのだとしてだ。本体の魂が事切れれば、残渣による大空洞の防衛も止まる」

「そうなれば、今以上にクラゲが溢れかえり、いよいよ根絶は困難になるって寸法さ」

 

ウェパル

「ミカエルも当たり前のようにバルバトスの仮説に乗っかって来てるし……諦めて、ある程度真に受けるしかなさそうね」

「でも、ここまで説明してもらって今更言いづらいけど、単にポーの不調の原因が『病気』だからって事は考えられない?」

「たまたま時期が一致しただけで、ポーの体に異常があって、私の頭痛みたいにちょっとした変化で意識が遠のいてるとか」

 

バルバトス

「考えたけど、今朝になってその線は薄くなった」

「ポーの不調の原因が病なら、メギドの魂も気付いてたはずだ。その結果が大空洞への逃亡なら、それこそ理屈に合わない」

「見た目がどうあれヴィータの体であるなら、メギドが選ぶのは正体を明かしてでも医者を頼るか、静かに病を受け入れるかのはずだろう」

「それに、意識を失う以外の症状に乏しい病気であるなら、原因は恐らく脳にあるはず。それなら、昨夜のような事は起きない」

 

ウェパル

「爆発騒ぎの事?」

 

バルバトス

「ああ。一応の結論は出たろう。『ポーが壁ごと幻獣を吹き飛ばした』」

「魂は肉体に引っ張られる。脳の異常で意識が停止しているならその間、ポーの人格もメギドの人格も出てこれない」

「だがあの時、ほぼ間違いなくメギドの力が使われた。どうやってフォトンを確保したかはさておき、メギドの人格は健在だったはずだ」

 

モラクス

「それはわかるけど、昨夜は意識を無くしてなかったから出てこれたって事じゃねえの?」

 

バルバトス

「だったらそもそも、幻獣一匹仕留めるのにわざわざ出てこない。今まで怯えながら隠れて生きてきたなら尚更だ」

「意識が健在なら、ポーの判断で助けを呼びに部屋を飛び出したはずさ」

「あの一件は多分、衰弱がいよいよピークになり、ポーの人格が先に昏倒したんだ」

「それで、押し出される形でメギドの人格が現れ、こちらも朦朧と彷徨う内に、窓越しに幻獣を見つけた」

「メギド自身、自分が幻獣に狙われているとわかっていたなら、その後の行動も納得が行く」

「臆病風に吹かれるまま、過剰な力で幻獣を消し去り、その反動でメギドの人格も気絶したんだろう」

 

ミカエル

「私も同感だ。何しろ、その場を見ていたからね」

 

ウェパル

「道理で姿が見えなかったと思ったら……」

「もしかして、二匹程度の幻獣押し付けて、玄関先でずっと待ってたのも?」

 

ミカエル

「ポースレーンのレディの不調の程度から、『限界』は近いと考えていた」

「異常があれば物音ですぐにわかる。それよりも、メギドが目覚めた瞬間、もし私がハルマと知っていれば、対峙したショックでどんな行動に走るか予測がつかない」

「だからあの夜も、私はレディの部屋の前を漂う幻獣を見上げていたよ」

 

ウェパル

「(うっかりポーがミカエルを見つけてたら、それはそれでぶっ倒れそうね)」

 

ミカエル

「撃退するべきか……逡巡している間に全ては終わっていたよ」

「幻獣は閃光に消え、開けた部屋の中にレディは立っていた」

「ヴィータとメギドの中間のような姿でね……」

 

一同

「……!?」

 

バルバトス

「地底湖から帰ってきたポーの変化が、メギドの魂の影響だとすれば、それがメギド側の本来の姿という事か」

 

フォラス

「ポーとメギドの関係は、これでもうほぼ確定だな……」

 

ベレト

「……」

「(あいつは……)」

 

シャックス

「みんなみんなー、大発見大発見!」

 

ソロモン

「な、何だシャックス。何か見つけたのか?」

 

シャックス

「違う違う。馬車が全然揺れてないよ」

 

ソロモン

「揺れてない……止まってる?」

「あっ……!」

 

ミカエル

「ウープス。私としたことが、つい話し込んでしまった」

 

 

 慌てて幌の外を伺う一行。

 既に馬車は大空洞の前で停車し、ガイードが呑気に空を仰いでいた。

 

 

ガイード

「ああ、皆さん。もう、お話はお済みで?」

 

モラクス

「もう着いてたなら言ってくれよ!」

 

ガイード

「いえ、何か大事な話でしょうから、不用意に聞いちゃってもマズいかなー、と」

 

ウェパル

「注文するの忘れてたから、歯がゆいけどこっちのミスね……」

 

ソロモン

「と、とにかく皆、急いで大空洞に入る準備だ!」

 

ガイード

「じゃあ、テント張りますんで、前回と同じように──」

「ああ、今、ポー居ないから女性の方はどうしましょう?」

 

ウェパル

「私が着せる。大体は見て覚えてるから」

「着せたら見せるから、不足があったら教えて」

 

ガイード

「わかりました。じゃあ、お手数掛けますが、それで頼みます」

 

 

 防寒具の準備など、馬車内が騒がしくなる中、ベレトはジッと俯いている。

 気付いたフォラスがベレトを急かす。

 

 

フォラス

「どうした、ベレト。どっか、調子悪いのか?」

 

ベレト

「あいつは……」

 

フォラス

「ん?」

 

ベレト

「まだ、心のどこかで期待していた」

「本当は、メギドなどでは無いと……」

 

フォラス

「……ポーの事か」

「良いじゃねえか、あの子が何者でも。むしろ、俺らの仲間になれるかも知れないぜ?」

 

ベレト

「違う……!」

「あいつは……ポーは儂の、この『ベレトの』臣下なのだぞ……!」

 

フォラス

「そういや昨日もそんな事言ってたな……」

「別に、ヴィータだろうとメギドだろうと、変わりゃしないんじゃないか?」

 

ベレト

「……フンッ!!」

 

 

 極めて不服そうに立ち上がり、馬車に積まれた防寒具を八つ当たり半分に掴み出すベレト。

 

 

フォラス

「あ、おい……」

「やれやれ……一体、何が気に入らねえんだ?」

 

 

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