メギド72オリスト「太古の災厄と新生する憤怒」   作:水郷アコホ

43 / 62
42「迷い道」

 大空洞深部。ベレトが道中の斜面を見下ろして『ポー』と叫んだ。

 ベレトの視線の先を確認する一行。

 

 

モラクス

「居た! パエトンだ! ずっと下の方の道を走ってる!」

 

 

 斜面を下りきった先に、ヴィータ2人弱程の道幅が出来ており、パエトンはその道を駆けている。

 進行方向としてはソロモン達の進路とは逆で、どこかで折り返す構造と思われる。

 道幅より奥は断崖絶壁となり、遠く広がる大穴は、水晶の淡い輝き以外に何も見通せない。

 騒ぎを聞いてミカエルとガイードが駆けつける。

 

 

ガイード

「ポーが見つかったんですか!?」

 

フォラス

「ああ。だが、この崖のすぐ下だ。こっからじゃどうしようもねえ……」

 

ベレト

「ポー! 止まれ! 儂の命令が聞けんのか、ポ……!」

「止まれと……言っておろうがぁーーーっ!!!」

 

モラクス

「ちょっ、バカ、よせベレト!!」

 

 

 ベレトが斜面へ、躊躇い無くジャンプした。

 斜面を滑り降りて行くが、未整備の斜面は尖った岩や突き出した水晶で足場が悪い。

 たちまち凸凹に揺さぶられ、コケに中途半端に滑らされてはバランスを崩し、そこかしこを切って擦っては出血し、防寒具が水晶と岩に切り裂かれ、靴底とつま先部分が破けガマ口のように開いた。

 

 

ソロモン

「ベレト! まずい……召喚を!」

 

ウェパル

「無駄じゃない? 呼んだって向こうが応える気、無さそうよ」

 

ソロモン

「だからって……あ、くそっ、ホントに応じない!」

 

バルバトス

「あのままじゃ、あんな狭い道通り越して、崖の底の底まで一直線だ……!」

 

ベレト

「ぬ、ぐ……儂を、ナメるなぁっ!」

 

 

 今にも転がり落ちそうになりながら、旗竿を振り上げるベレト。

 不死者の腕力で石突を斜面に打ち込むと、旗竿が斜面にめり込み、ベレトの落下を引き止めた。

 旗竿を引き抜き、斜面下の道に降り立つベレト。

 

 

ソロモン

「み、見てるこっちが死ぬかと思った……」

 

ベレト

「逃がすかぁ! ポォーーーっ!!」

 

 

 ソロモン達を省みる事もなく、逃げ去ったパエトンを追って死角へ消えるベレト。

 

 

フォラス

「行っちまった……」

 

ウェパル

「あれはもう、ポーじゃなくてパエトンだっていうのに……」

 

バルバトス

「どうする? いくら不死者だからって、単独行動は危険すぎるぞ」

 

ガイード

「深い所はますます寒さが厳しくなるってのに、あんなボロボロの格好なのもまずいですよ……」

 

ソロモン

「わかってるよ! でも、ここからじゃ追いつく事だって……」

 

ミカエル

「ならば私が行こう」

 

 

 ミカエルが崖っぷちに乗り出す。

 

 

ソロモン

「ミカエル!?」

 

ミカエル

「向こう見ずなレディが危険なようなら、連れて引き返そう」

「幻獣がレディを襲うなら私が討つ。パエトンと接触するようなミスはしない。それでいいかい?」

 

ソロモン

「わかった。頼んだ!」

 

ミカエル

「オーケー!」

 

 

 ベレト同様に斜面へ躍り出るミカエル。

 まるで全て見知っているかのように凹凸を巧みに捉えて跳躍に変え、水晶をかわし、トリプルアクセルまで決めて、僅かな道幅に傷一つ無い姿で華麗に着地するミカエル。

 

 

ガイード

「う、美しい……まさに天使のようだ……!」

 

ウェパル

「えぇ……?」

 

バルバトス

「(ウェパルがガイードさんに割と本気でドン引きしている……)」

 

ソロモン

「ベレトはひとまずミカエルに任せて、俺達も早く追いかけよう!」

 

バルバトス

「あ、ああ!」

 

 

 ミカエルがベレト達の進んだ方へ去っていくのを確認し、道なりにその後を追う一行。

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 何度かの幻獣との戦闘を経て、パエトンを見かけた例の道まで辿り着いた一行。

 狭い道を慎重に通過し、斜面の上からは死角になって見えなかった地点まで差し掛かる。

 

 

フォラス

「よし……道幅は狭いままだが、両側に壁がある。これなら滑落の心配は無いな」

 

バルバトス

「代わりに、こんな所でクラゲに出くわしたら、無視して通り過ぎるわけにもいかなくなるけどね」

 

モラクス

「心配いらねえって。もう自爆も怖くなくなったんだ。俺がまとめて片付けてやるぜ!」

 

シャックス

「そうそう。あたしもビリビリのバリバリの──」

 

ウェパル

「巻き込まれるかもしれないからやめて」

 

シャックス

「そんな~……」

 

ソロモン

「とにかく、出くわすとしても真正面から以外には殆ど起こり得ないはずだ」

「皆、あくまで注意しつつではあるけど、とにかく一気に駆け抜けよう!」

 

 

 頷き合い、勢いよく通路へ駆け込む一行。

 

 

シャックス

「あ、モンモンー、ストップストップー!」

 

ソロモン

「と、わっ、た!? ど、どうしたシャックス?」

 

 

 二、三歩踏み込んだところでシャックスが声をあげた。

 

 

シャックス

「みてみてー、道が分かれてる!」

 

ソロモン

「いや、どうみても一本道……ああ、壁に穴が空いてはいるけど」

 

 

 20~30メートルほど先、向かって左手の壁に、大の大人でも潜り込めそうな穴が空いている。

 

 

ガイード

「ふむ……あっしはこの辺まで潜った事が無いんで断言はできませんが、少し妙な穴ですな」

 

ソロモン

「妙……?」

 

ガイード

「こういう通路では穴自体が珍しいってのもありますが、経験から言って、自然に空いた穴じゃ無さそうです」

「怪物の爆発にしちゃあ、穴の規模の割に通路全体がキレイすぎますし……」

 

バルバトス

「ソロモン。念の為に調べてみるのが良いと思う」

「もしかしたら、パエトンが壁を破って飛び込んだって可能性も……」

 

ソロモン

「なるほど。もしそうだとすると、ベレト達も穴から後を追った事になる」

「気付かずこのまま進んでたら、ベレト達を見失ったかもしれないな……」

「シャックス。教えてくれてありがとう」

 

シャックス

「おお、やったやった! ほめられちった!」

 

ソロモン

「ガイードさん。あの穴、少し調べてもらって良いですか」

 

ガイード

「了解です」

 

ソロモン

「モラクスとフォラス、ガイードさんの護衛を頼む」

「中から幻獣が飛び出したら、モラクスがガイードさんを連れて退避。フォラスは牽制を」

 

バルバトス

「俺の銃だと、跳弾の恐れもあるからね」

 

フォラス

「わかった」

 

モラクス

「おう、任せろ!」

 

 

 ガイードが穴を検分、フォラスとモラクスが近くで待機。

 残りは二手に分かれてガイード達を挟んだ通路の前方と後方を見張っている。

 

 

フォラス

「何かわかりそうかい?」

 

ガイード

「ふむ……やはり自然に出来たものでも、怪物の爆発でも無さそうですが……ちょっと、見てください」

 

フォラス

「おう。ついでにモラクスも見てみろ」

 

モラクス

「わかった」

 

 

 穴を覗き込み、左右を確認するフォラスとモラクス。

 

 

モラクス

「壁の中に……滑り台?」

 

フォラス

「天井は低いが、俺達の来た方から、これから進む方へ坂が続いてる……確かに滑り台だな」

 

ガイード

「坂を少量の水が流れ続けてますから、元は大空洞を循環する水路の一つだったんでしょうね」

 

フォラス

「昔は、ここをもっと大量の水が流れて、壁の中を削ってこれだけのトンネルが出来た感じか」

「けど、年月が立つ内に水の侵食で別の管が出来たりして、今やここを通る水はこれっぽっちってわけだな」

 

モラクス

「おおー、さすがフォラスのオッサン」

 

フォラス

「地面の歴史は専門外だがな。まあ、大外れとまではいかないと思うぜ」

 

ガイード

「ふむ。根気よく集めるなら、比較的安全な水場になりそうですが……それはさておき」

「お二人の手元に、岩の欠片が落ちてるでしょう。まだ水の侵食もしてない真新しいのが」

 

フォラス

「お、ホントだ。って事は……つい最近、通路の側から穴が空いたって事になるよな?」

 

モラクス

「それ俺にもわかる! 窓ガラスの時みてえに、破片が穴の内側にあるからだろ?」

 

フォラス

「正解。また一つ賢くなったなあモラクス」

 

モラクス

「へへーん!」

 

ガイード

「ですが、その破片の量が少なすぎるんです。これだけの穴なら、もっと大量に散らばるはずですから」

「それこそ、こんなチョロチョロした水流くらい堰き止められるくらいには」

 

フォラス

「確かに。最近、調査隊が破って空けたってんならガイードさんが知らないはずねえだろうし……」

 

モラクス

「なあなあ、俺、思いついた!」

 

フォラス

「良いぜ。言ってみな、天才モラクス」

 

モラクス

「パエトンがさあ、ここ滑って降りてったんだよ」

 

フォラス

「ははは、なるほど。パエトンがまさに滑り台みたいに……」

「……いや、有り得るかもな……」

 

モラクス

「マジ!? 当たり!?」

 

フォラス

「当たりかどうかは、状況証拠しか無いから何とも言えねえが──」

「この穴から誰かが入り込んで、下へ滑って行ったなら、破片も一緒に滑り落ちてくって事だよな?」

 

モラクス

「そうそう、それそれ!」

 

ガイード

「なるほど。ポー……パエトン一人ではわかりませんが、後からお客さん2人もここを滑ったとすると──」

「特に、最後に追っていった方は上背がある分、場所も取ったはずですから、大体の破片も一緒に……」

 

フォラス

「こりゃあ……ソロモンとバルバトスも呼んだ方が良さそうだな」

 

モラクス

「よっしゃあ! じゃあ早速アニキを──」

「あ…………」

 

フォラス

「ん? どうしたモラ──」

「あ…………」

 

 

 ソロモンを呼ぼうと振り返ったモラクスが、気の抜けた声を出して固まった。

 気付いたフォラスがモラクスを見ると、自分たちの真後ろの壁を指差している。

 

 

ガイード

「どうしたんです、お二人と──」

「あ…………」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 大空洞深部。道幅の狭い通路を進む一行。

 

 

 

モラクス

「くっそ~……俺も頭良い組に入れると思ったのによお……」

 

フォラス

「クヨクヨすんな。良い線は言ってたんだ」

「それくらい紛らわしい穴だったから、ミカエルも『目印』用意してくれたんだろうしよ」

 

ウェパル

「壁にあんなデカデカと矢印刻まれてるの見落とした時点で、ドジっ子組には入れるんじゃない?」

 

モラクス

「入れたって何もうれしくねえ!」

「結局またシャックスの不幸に振り回されただけじゃねえか……」

 

シャックス

「だいじょうぶだいじょうぶ! 誰も怪我してないからむしろラッキーだよ!」

 

バルバトス

「後ろ向きすぎる前向きな見解だ……」

 

ガイード

「しかし、だとするとあの穴は一体、何だったのか……」

 

ソロモン

「とにかく、分かれ道を間違えないで済んだなら、それで充分って事にしよう」

「でも……確かに、あんな目印付けるとしたら、ミカエルくらいしか居ないけど……」

 

バルバトス

「まだ何か疑問が?」

 

ソロモン

「こっちの道を選んでからも、何度かクラゲと出くわしてるだろ?」

「ベレトかパエトンかミカエルが倒してるはずなら、こんな狭い道にクラゲがこんなに残るかな?」

 

バルバトス

「確かにそれは俺も気になるが、俺としては『だからこそ』こっちの道が正解だと思うよ」

 

ソロモン

「『だからこそ』……クラゲが倒されてもすぐにやってくる……?」

「そうか、クラゲはメギドの魂に寄ってくるんだった」

 

バルバトス

「ああ。パエトンとベレトが通り過ぎた後に、反応を追ってクラゲたちが集まったとも考えられる」

「それと、もう1つの解釈もある。元凶が近いからだ」

 

ソロモン

「元凶?」

 

バルバトス

「意識がパエトンに移行してからもコケや岩を齧った跡が無いのは、ポーの知性を手に入れたからだ」

「なまじ『食べて良いものと悪いもの』の知恵を付けてしまった分、無意識に『選別』してしまっているのさ」

「パエトンを見つける前に話した通り、パエトンにとっても今、大空洞は『景色』でしかない」

「逆に言えば、まだ完全に見境をなくすほど理性を失ってはいないって事だけど、結局は裏目だ」

「クラゲは論外、地底湖の水では最早不足、水晶もダメ。なら後、フォトンを期待できそうな存在は……」

 

ソロモン

「そうか! もう一種の幻獣!」

「クラゲが対パエトンに特化するように意思を統率してる幻獣が、まだこの奥に隠れてる!」

「向こうが俺達の気配に気付いていれば、防衛のためにクラゲを呼び寄せるかもしれない」

 

バルバトス

「パエトンは大空洞を取り込み、クラゲによるフォトンの流失や連中の所在を水晶を通して感知していた」

「なら、そのクラゲとは異なる元凶の存在もパエトンは気付いていたはずさ」

「つまり今、パエトンが去っていった先には最後の食料、司令塔となる幻獣が居──!?」

 

 

 足を止める一行。遠くから奇妙な音が聞こえる。

 金属製の巨大なカニが三倍速で歩行しているような、忙しなく騒々しい音。

 狭い通路は既に突き当り、ソロモンたちの眼前には馬車が2台横並びで悠々通過できそうな巨大な通路が横切り、丁字路となっている。

 高さもあり、大型の幻獣が徘徊するには充分な空間だった。

 

 

ソロモン

「この音……『足音』だな」

 

モラクス

「ジワジワ近づいてるぜ、アニキ……!」

 

バルバトス

「聞いた事のある気がする音だな……」

 

ソロモン

「ここで浮足立つような理由はない。飛び込むぞ!」

 

バルバトス

「ガイードさんは待機だ。俺達が安全を確認してからついてきてくれ」

 

ガイード

「は、はい」

 

 

 大通路に躍り込み、左右に広がる空洞の先を警戒する一行。

 

 

モラクス

「足音が反響して、これじゃどっちから出てくるかわからねえ……!」

 

バルバトス

「それに、妙だな。足音が一体分しか聞こえない」

 

ソロモン

「妙かな? 大型の幻獣なら大抵は単独で行動してる印象だけど」

 

バルバトス

「相手は1000年前に送られてきた幻獣だぞ? 現代まで世代交代してきてるはずだ」

 

ウェパル

「『つがい』が居ないって事ね」

「個体数を保つなら、相当な数が居なくちゃならないはずだもの」

 

フォラス

「群れない生き物ってのは、その代わりに半端なく広い縄張りを旅したりするって言うが──」

「こんな入り組んだ大空洞でそれは逆効果だ。群れる習性の幻獣でないとやっていくのは難しいはずだ」

 

ソロモン

「なるほど。群れる習性があるなら、単独で動き回ってるのも、おかしくなる……」

 

バルバトス

「気をつけろ。この音にもまだ仕掛けがあるって可能性も──」

 

モラクス

「い、居たっ!」

「アニキ、こっちだ! ずっと先を横切ってった!」

 

 

 モラクスが叫び、通路の先を指差す。

 よく見ると、所々で通路が枝分かれしている。

 

 

ソロモン

「でかしたモラクス。追うぞ!」

 

バルバトス

「シャックス、反対側からは何も来てないな?」

 

シャックス

「うん。だいじょぶだいじょぶ!」

 

バルバトス

「よし。ガイードさん、ついてきてくれ!」

 

ガイード

「了解です!」

 

フォラス

「この調子だと、この先もだいぶ入り組んでそうだな」

「帰りに迷わないよう、道標でも残しとくか」

 

 

 懐から瓶を取り出し、蓋を開けるフォラス。

 中に半分ほど溜まったコケを一つまみ、道の隅に捨てる。

 

 

フォラス

「自爆が弱まったお陰で、幻獣の核もかなり残りやすくなって助かった」

「シャックスのために採取しといてやったが、まあ緊急時だしな」

「ミカエルみたいに、矢印刻んで自然の遺産を傷つけるわけにもいかねえし……」

「……待てよ?」

「(何でミカエルのやつ、さっきの穴の時には矢印付けて、ここには何も残してねえんだ?)」

「(そもそもモラクスが見つけた影がパエトンの『お目当て』なら、もう合流しててもおかしくねえ)」

「(パエトンも幻獣を襲ってる間は足を止めるはずだから、ベレトとミカエルもその場にいる──)」

「(なら、どっかその辺で戦闘の騒ぎとかベレトの声でも聞こえて来そうなもんだが……)」

 

ソロモン

「フォラス! どうした!?」

 

フォラス

「あ、いや、何でもねえ。すぐ行く!」

「(見つからねえ以上は考えてもしょうがねえ。とにかく幻獣を倒してからだな)」

 

 

 瓶をしまいなおし、一行の後に続くフォラス。

 モラクスの案内で通路を曲がるが、その先に幻獣らしき姿は無い。

 

 

モラクス

「やべえ、見失ったか!?」

 

バルバトス

「いや、見える限りに分かれ道は無い。緩いカーブと勾配のせいで死角に入られただけだ」

 

ウェパル

「どっちにしても距離は開けられてるじゃない。話すのは走りながらにして!」

 

 

 そこかしこに相変わらずコケが茂る中、足元に最大限注意しつつも全力で追う一行。

 

 

ソロモン

「そういえばモラクス、敵はどんなやつだった?」

 

モラクス

「それがよ……エリダヌスだった」

 

ソロモン

「エリダヌス!?」

 

シャックス

「もしかしてもしかして、パエパエがお腹空きすぎてメギド体に……!?」

 

バルバトス

「落ち着け、それは無い。向こうは何の改造もしてない純正メギドだぞ」

「メギド体になったらすぐさま護界憲章の対象だ。歩き回っていられるはずがない」

 

ウェパル

「そもそも、そのメギド体になれなかったから、千年も燻ってたんでしょ」

「メギド未満の力しか残ってない今、メギド体になれるアテが無いわ」

 

モラクス

「でも、見間違いなんかじゃねえって! あれは絶対にエリダヌスだった!」

 

ソロモン

「疑ってなんかいないよ、モラクス。落ち着いてくれ」

「アバドンみたいな古代兵器が放置されても未だに動き出すんだ。ありえなくはない」

 

フォラス

「だが、兵器は幻獣じゃねえ。そうなると、クラゲの統率説が潰れちまうぞ?」

 

ソロモン

「そうだけど……後の事は実際に見て確かめるしかない!」

 

 

 走り続けていると、存外すぐに、通路を遮る巨大な影と邂逅した。

 通路の半ばを進み続けるソレと、モラクスの証言とを比較する一行。

 

 

ソロモン

「これは……」

 

ウェパル

「確かに、エリダヌスね……見るからに古臭くなってるけど」

 

バルバトス

「しかも、明らかに出力が落ちているな」

「不安定な足場とはいえ、ちょっとした坂を登るだけでスピードがガタ落ちしてる」

「俺達の足で追いつけたのもこれが原因か」

 

モラクス

「ほら、言ったとおりだろ!」

「でも……やっぱ、何か変だな。これ、本当に兵器か?」

 

フォラス

「確かに、見た目は記憶にある『トレミー』と殆ど変わらねえが……」

「こっちをガン見してやがる割に、坂を登って距離を取ろうとしてる。兵器が後ずさりか?」

 

モラクス

「なんつーか、逃げ腰って感じなんだよな。喧嘩の気配があんまりしねえ」

 

ウェパル

「何かの罠だったりして」

 

ソロモン

「例え罠でも、進路を塞がれて黙って見てるわけにもいかない」

「皆、戦闘準備だ!」

 

 

<GO TO NEXT>

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。