メギド72オリスト「太古の災厄と新生する憤怒」   作:水郷アコホ

52 / 62
51「潰滅」

 一定の高度で空中に留まっていたパエトンがゆっくりと降下を始めた。

 己の力で巻き上げた分厚い粉塵を、己の巨体と、噴射する炎と、炎に混じる紫電の火花で押しのけ、岩肌に着地するパエトン。

 粉塵はソロモン達がここへ来るまでに通った通路へ嵐のように抜け、それでも入り切らない分は行き場を失って壁伝いに、空間の上方へと舞い上がった。

 

 

ミカエル

「……」

「ワッザヘル……マスクとゴーグルが、こんな形で役に立つとはね」

 

ガイード

「……」

 

 

 パエトンの絨毯爆撃から直前で逃れていたミカエル達は通路前に避難し、逃げ去るように吹き抜ける粉塵を浴びながら、降り立ったパエトンを見つめていた。

 ガイードの機転ですかさずゴーグルまで装着した事で、被害は最小限に抑えられている。

 

 

ミカエル

「しかし、彼らは爆心地に立っていた。直撃を免れたとしても、マスクさえ衝撃で失っているかもしれない……」

 

ガイード

「あれが……」

「あれが、パエトン……本物の……」

 

 

 魂の抜けたような声のガイード。

 見上げる先には、炎と雷光が、隆起する氷と水晶で照り返され、取り巻く粉塵と霧とを染め上げ、あたかも後光を纏ったように荘厳ささえ漂わせて佇むパエトンがあった。

 

 

ミカエル

「イグザクトリー」

「あれこそが、君たちの崇めてきたモノの姿」

「決して目を背けてはならない本当の力、ありのままの形、そして──」

「君たちが、恩義に報いて、手を差し伸べる相手だ」

 

ガイード

「……」

 

 

 パエトンを見上げたまま、崩れ落ちるガイード。

 一方、パエトンの足元の視界が徐々に晴れていく。

 

 

ソロモン

「うっ……げほっ……」

「(体は……手足は、ちゃんと残ってるっぽいな……でも、これが片付いたら、アンドラスを呼ぼう……)」

「(暗いな。音の聞こえ方も妙な……何かに頭が覆われてる?)」

 

 

 覚悟していたよりは随分と自由に動く体で軽くもがくと、すぐに頭が何かから抜け出した。

 

 

ソロモン

「ぷはっ……ゲッホッゲホッ!?」

「くっ……まだ酷い煙だな。直に吸っちゃった。耳の奥も、攻撃の音でモワモワして……」

「……って、バルバトス!?」

 

 

 ソロモンを抱くように横たわっていたバルバトスを発見し、抱き起こす。

 遅れて、自分の頭を守っていたのが、バルバトスが身に纏う防寒具だった事を理解した。

 前をはだけてソロモンに被せた防寒の上着は、背中が殆ど焦げたか裂けたかして原型を留めていない。

 髪と言わず顔と言わず、バルバトスの頭全てに灰のように積もった塵を払い落とし、呼びかけるソロモン。

 

 

バルバトス

「ゔっ……げぼっ、ごっ……がほぉっ!!」

 

ソロモン

「バルバトス、気がついたか……!」

 

 

 酷い咳と共に、口中からも塵を吐き出すバルバトス。

 

 

バルバトス

「かふっ……途中で気絶してたか」

「まあ、お陰で商売道具の喉も大した事──」

「けふっ、えふっ、こほっ……げぇっほ、ぅえっほ!」

 

ソロモン

「バルバトス、何でマスク着けて無いんだ……取り敢えず俺のを」

 

バルバトス

「ダメだ……! 君の安全が第一だ」

「マスクなら、近くに三発目あたりが降ってきた所で飛んでいってしまったよ」

「君のマスクが残ったのは幸運だ。絶対に外すな」

 

ソロモン

「でも……」

 

バルバトス

「しっかりしろ! 俺に起きてる事だけが全てじゃないだろう……!」

 

ソロモン

「……わかった……!」

 

 

 パエトンを見上げるソロモンとバルバトス。

 巻き上げられた煙で輪郭は定かでないが、パエトンは着地した姿勢のまま微動だにしない。

 

 

バルバトス

「少なくとも、今すぐに動き出す気配は無さそうだ」

「額の視界に頼っているせいか、それともむき出しのポーに異物を吸気させないためか……」

「理由はともかく……ソロモン、フォトンは?」

 

ソロモン

「攻撃が凄すぎて、操るどころじゃなかったよ……」

 

バルバトス

「好都合だ。あの状態でフォトンを供給したら、刺激になって動き出すとも限らない。今のうちに……」

 

ソロモン

「わかってる。皆、動ける者だけで良い……答えてくれ!」

 

 

 空間内の仲間たちに、指輪から召喚を呼びかけるソロモン。

 指輪が輝き、散り散りになっていた仲間がソロモンの元へ転移した。

 

 

ソロモン

「モラクスに、ウェパルか……」

「フォラスとシャックスは反応が無い。気を失ってるだけなら良いけど……とにかく、無事で良かった」

 

ウェパル

「まあ……生きてさえいれば、素直に無事って思える状況ではあるわね」

 

 

 ウェパルはまだ余裕がありそうだが、顔を含めて全身に無数の青あざができている。

 モラクスは転移してすぐさま地べたに座り込み、項垂れて荒い呼吸を続けている。

 ウェパルの防寒具は裂けてマスクも無い。

 モラクスは防寒具もマスクも身に付け原型も留めているが、その所々が焦げている。髪や指先からも煙が細く昇っている。

 

 

ウェパル

「一気に老けたわね、バルバトス」

 

バルバトス

「ははっ、惚れ直してくれてもいいよ」

「2人の方は、まだ動けるかい」

 

ウェパル

「ちょっとばかり、すぐ隣で例の弾が爆発して、転がされて壁に叩きつけられただけよ。骨は……動くなら問題ないでしょ」

 

モラクス

「俺も、大丈夫、だけど……呼ばれるまでずっと……電気の上で寝っ転がって……まだちょっと、力入らねえ……」

 

バルバトス

「やる気まで削がれて無ければ十分だ。すぐに治療する」

「それとソロモン、ベレトの反応も……途絶えてるのかい?」

 

ソロモン

「いや、ベレトだけはさっきの攻撃が来る前から呼びかけてて、反応もあるんだけど、ずっと無視されて──」

 

 

 石を擦り合わせるような甲高い音が響いた。

 

 

ソロモン

「何だ……!?」

 

バルバトス

「パエトンだ。ぶら下げてた右腕を持ち上げて……攻撃って感じではなさそうだけど」

 

ウェパル

「何で急にあんな音……」

 

バルバトス

「体表の質感が石や金属に近いからね。多分、攻撃から着地までの間に粉塵が関節に挟まって、擦れあってるんだろう」

「ベレトが無事なら、まだパエトンの体のどこかに張り付いてるはず。そっちを狙ってるのか……?」」

 

ウェパル

「……居たわ。背中から這い上がってる」

 

 

 ウェパルが指差した方向、パエトンの肩口から、ベレトの手と旗竿と顔が覗いているのが辛うじて見えた。

 

 

ソロモン

「あれ? 武器を持ってる……確か、ずっと素手で戦ってたはずなのに」

 

バルバトス

「パエトンのあの大きさだからね。地面に刺してあった武器も変身に巻き込まれて、変身体のどこかに引っかかってたんだろう」

 

 

 登る最中にもベレトは、パエトンの頭部分──ポーのヴィータ体へ何事か叫んでいるが、技の余波と異常気象にかき消されてソロモン達には全く聞こえていない。

 

 

ソロモン

「攻撃の直前まで正面側に居たのに……あの高さでも、下からの爆風に振り回されたのか」

「しかも、それでもまだ呼びかけてる……」

 

バルバトス

「マスクを失った今、あれだけ大声を出し続けるのがどれほど苦しいか、よく分かる……物凄い執念だ」

 

モラクス

「いや、感心してる場合じゃねぇって! パエトンの腕が、ベレトに……!」

 

 

 パエトンの肩を踏みしめ、ポーだけを視界に捉えてにじり寄っていたベレトも気付いた。

 しかし、ベレトが振り向いた時には些か遅すぎた。

 

 

ベレト

「うっ、なっ、しまっ──!」

 

 

 パエトンの水晶質の手が、ベレトの全身を捕まえた。

 

 

ソロモン

「ま、まずい! 止めないと!」

 

バルバトス

「そうしたいのは山々だけど……手一杯だ!」

 

モラクス

「アニキ、すまねぇ……」

 

ウェパル

「私ならどうにか割り込めそうだけど、回復無しでそんな事したって、ベレトの身代わりになるだけよ」

「それでもやれって言うならやってみても良いわよ。このままでも十分、嫌な予感しかしないし」

 

ソロモン

「くっ……!」

 

 

 パエトンは、幼い子供がカマキリかトカゲでも捕まえたように、握った手を少し前方に突き出した。

 ポーの額の眼がギョロギョロと動き、ベレトに固定される。

 

 

ベレト

「ぐ、ぬっ……動、けん……!」

 

 

 ベレトの体は首から上と、旗竿を持つ方の肘から先と、片方の足首を残して、それら以外は硬く角張ったパエトンの手の中にある。

 

 

バルバトス

「……よし、治療が済んだ! ソロモン、フォトンだ!」

「仲間だけでも、さっきまでみたいにパエトンごとでも何でも良い、早く!」

 

ソロモン

「ああ! 二人とも、頼む……!」」

 

モラクス

「まだ痺れてて器用な『技』は使えそうにねえけど、ぶっ叩くくらいならできらあ!」

 

 

 パエトンの手の中で身じろぎ一つできないベレトも、ウェパルのそれと同じ「嫌な予感」をひしひしと感じていたが、それでも頑固に自分のやり方を押し通していた。

 

 

ベレト

「ぐくっ……!」

「ポー! もう一度出てこい! 命令だぞ!」

「『なる』だの『ならぬ』だの下らん理屈など知るか! つべこべ抜かすな、生きて足掻──」

 

 

 ベレトを握る手が、キュッと引き締められた。

 メギドにとっては些細な力だが、相手の体はヴィータである。人が蝶を鷲掴みにするのと大差ない。

 体のあちこちから外れるような感触が脳へ走り、締め上げられているはずの腹から逆に膨れ上がるような、内臓が腹を押しのけているような錯覚が生じる。

 

 

ベレト

「ぇげぶっ……!?」

 

 

 条件反射で体を丸めるように硬直させ……ようとしたが、収縮できる部位がどれほど残っているものか。

 意思と関係なく全身に力を込めているつもりのベレトは、しかしダラリと項垂れて、脳に押し寄せる電気信号の波に飲まれ白目をむいていた。

 連動する骨と筋肉の支持を失い、旗竿が手から抜け落ち、岩肌を走るヒビに真っ直ぐに突き立った。

 

 

ベレト

「……ォ……」

 

 

 パエトンの腕がゆっくりと引き寄せられた。

 ベレトは握りしめられたまま、再びポーの眼前まで近づいた。

 前髪の隙間から上目遣いに覗いたポーの顔には、1つ目と開かれた大顎しか見え無かった。

 

 

ベレト

「……ゎ……、し、は……」

 

 

 ベレトの視界を、大顎の向こうの暗闇だけが覆い尽くしていく。

 

 

ベレト

「ポ、ォ……や……め゛……く……」

 

 

 大顎が噛み合わされる直前、ポーの首が大きく横に傾いた。

 

 

ウェパル

「やあぁっ!!」

 

 

 水流に乗り、弧を描いて飛んだウェパルがポーの横面を突いて捕食を妨げた。

 

 

モラクス

「ベレトを……放しやがれぇ!」

 

 

 大質量の衝突音と共に、パエトンの全身がよろめいた。

 モラクスがパエトンの足元に斧を打ち込んだ。

 パエトンの足先は卵の殻のように砕け、大きくバランスを崩した。

 

 

バルバトス

「しめた! 変身が不完全なせいか、変身体の強度は低い。一発のダメージは決して少なくないぞ」

 

ソロモン

「でも、ベレトが間に合わなかった……」

 

バルバトス

「今は……ベレトの生命力を信じるしか無い。一刻もベレトを手放させて、後は俺が──」

 

ウェパル

「がはっ!?」

 

 

 10m上空の、パエトンの頭部まで飛んでいったはずのウェパルが、悲鳴でもってソロモンとバルバトスのすぐ隣から会話を遮った。

 ウェパルが岩肌をワンバウンドし、更に跳ねて転げて遠ざかって行く。

 ウェパルが「降ってきた」地点に新たなヒビと窪みが形成され、その衝撃を物語っている。

 

 

ソロモン

「ウェパル!?」

 

バルバトス

「迎撃されたか……! すぐにまた治療を──」

 

 

 今度は遠くで、隕石が落ちたような音がした。

 ウェパルを介抱せねばと狼狽しつつも、音の方角を見るソロモン達。

 

 

ソロモン

「今度は何だ!?」

 

バルバトス

「……多分、パエトンを挟んで俺達から対角線上の壁だ」

「元から空いていた幾つかの穴の一つが、変に崩れている。そして──」

「パエトンの右手に、ベレトがいない……」

 

ソロモン

「ベレトが、放り投げられて……壁の穴って事は、その奥まで……!?」

 

バルバトス

「穴の縁が崩れてるって事は、それほどの勢いで、ベレトは体の何処かを打ち付けたって事だ……」

「……どうする、ソロモン……」

「これは流石に……俺だけじゃ『手』が足りない……!」

 

 

 パエトンは、左手でウェパルをはたき落とし、右手でベレトを投げ飛ばし、腕を交差させた姿勢で静止している。

 

 

モラクス

「アニキーっ! バルバトスーっ! 

「どうすんだこれ!? このままとにかく攻撃しときゃ良いのかー!?」

「……クッソ、異常気象のせいで、ぜってー聞こえてねえ……」

 

 

 パエトンの瞳が、足元でどこか他所へ向かって叫ぶモラクスを捉えて、更にモラクスと同じ方向へ視線を移した。

 パエトンは静止した状態のまま不意に、溜めるような予備動作も無く、左手から光弾を高速で射出した。

 ソロモン達からは、パエトンは遠間と異常気象で幾分か霞んで見える。その瞳が自分たちを捉えている事に気付けなかった。

 

 

ソロモン

「しまっ──!」

 

バルバトス

「間に合わない──!」

 

 

 光弾の発射音で事態を察した時には遅かった。本能的に目を瞑った瞬間、2人の体が大きく揺れ動き、宙を浮く感覚を覚えた。

 気付いた時には、遠くで着弾の音が聞こえていた。

 

 

ソロモン

「(吹っ飛ばされて……)」

「(……るんじゃない!? 俺達の体が飛んだのは、弾が当たるより前だった……!)」

 

 

 すぐさま、決断的に目を開くソロモン。

 ソロモンは自分とバルバトス、そしてウェパルが、ミカエルに抱えられて移動している状況にあると把握した。

 ミカエルに舞うように運ばれて、ガイードの待つ通路前に到着するソロモン達。

 ガイードは岩肌に膝を突き、いまだ呆然とパエトンを眺めている。

 降ろされた一行は、まずバルバトスがウェパルに駆け寄り、治療を始めた。

 

 

バルバトス

「……よし。まだ息がある」

 

ミカエル

「まさしく、間一髪と言う所だったね」

 

ソロモン

「助かったよ、ミカエル……」

 

 

 礼もそこそこに、意識を集中させるソロモン

 

 

ソロモン

「もう一度、他の皆の状況を確かめないと……」

「ベレトは……やっぱり、反応が無い。フォラスもシャックスも相変わらずか」

「モラクスは、パエトンがまた止まってるから、まだ無事だろうけど……」

「これ以上の戦闘は、流石に限界か。やっぱり、こんな場所ではあるけど、他の仲間を呼ぶしか……」

 

バルバトス

「それも、パエトンがここまでの破壊力を持つと解った以上は微妙な手だけどね」

 

ソロモン

「うん……この寒さをどうにかできる仲間を呼ばなくちゃならないけど、そうなるとその人数分、戦闘以外で指輪の支援を割かなくちゃならない」

「どこかに居るシャックス達も探さなくちゃならないし……それでパエトンの変身も止めるとなると、幾ら何でも手が足りない」

「……新しく召喚するかは、一旦置いておこう。バルバトス。ウェパルの具合は?」

 

バルバトス

「まだ何とも。治療の経過からして見た目の傷を塞ぐくらいはできそうだけど……」

「どうしても新たに仲間を呼ぶなら、まずはフェニックスだね。このままだと、回復するだけじゃ限界がある」

 

ソロモン

「そうか……」

 

バルバトス

「ところで……ミカエル。君は、ガイードさんを連れて逃げても良いんじゃないか?」

 

ミカエル

「ふむ……」

 

ソロモン

「に、逃げる……?」

 

 

 ソロモンとバルバトスが話している間、パエトンを注視していたミカエルだったが、呼ばれるとすんなりと振り返った。こういう話になると解っていたかのように。

 

 

ソロモン

「確かにメギド相手だし、一般人のガイードさんの安全を確保するためにも、ミカエルがこの場を離れるのはアリかもしれないけど……」

「逃げるなんて言い方無いんじゃないか? こうして俺達を助けてくれたのに……」

 

バルバトス

「何も悪口で言ってるわけじゃないさ」

「けど、ミカエルの立場としては今、何よりそうすべきのはずだ。これがガブリエルだったらとっくにそうしてる」

「ヴィータの安全を確保し、あわよくばソロモンも無力化して連れ出し、パエトンの脅威を王都に伝え、戻ってくる……エンカウンターを持ってね」

 

ソロモン

「エンカウンター……そうか。こんな状況なら、俺達の手に負えない相手って判断するには十分すぎるか」

「戻ってくるまでに護界憲章にパエトンが消されていれば良し、消されていなければハルマの力で……トドメを刺すために」

 

バルバトス

「だがそれは、今の俺達にとってもミカエルにとっても『逃げ』だ。ポーを助けようとしながら、パエトンの力に怖気づいた事になる」

「それがどんなに適切な判断だったとしても……そうだろう?」

 

ミカエル

「……」

 

 

 考え込むように顔を逸らし、目を伏せる。

 

 

ソロモン

「答えないって事は……ミカエル、やっぱり……」

 

ミカエル

「……ふっ」

「ノン・ノン・ノー」

 

 

 顔を上げ、微笑んで指を顔の前で立て振ってみせるミカエル。

 

 

ミカエル

「言ったはずだ。私は、不確かな情報を共有する事は望まないと」

「確かに、ハルマとして今、何をなすべきか。私にも理解できている。だが──」

「答えはイエスであり、ノーだ。私自身にも、己の答えが『わからない』。ならば、君たちに不誠実な言葉を告げる事は決してしない」

 

ソロモン

「自分でも、自分がどうしたいのかわからないって言いたいのか……?」

 

バルバトス

「俺が見る限り、ミカエル。君は本質的にはガブリエルに近い性格だ」

「愛とか情けとか言うものを大切にはするが、それはあくまで確固たる地盤を築いてから……そんなタイプだと思ってる」

 

ミカエル

「ンー、ノーコメント」

 

バルバトス

「なら、そうであるという仮定の上で、聞きたい事がある」

「ポーやパエトンの生い立ちに同情するとか、そんな理由で君は判断を迷ったりなんかしない」

「何か、『ある』んだろう? ……いや、『ある』と言ってくれ」

「押しても引いても彼女は死ぬ、どんなに呼びかけても声は届かない、力の差は見ての通りだ、それでも……」

「君がまだ俺達に……こんなザマの俺達に、託してみるだけの何か……『鍵』が!」

「頼む! 夢物語でも思いつきでも、その『不確か』を教えてくれ!」

 

ソロモン

「『鍵』……!?」

「まさかミカエル、こんな状況でまだ、俺達に話してない事があるのか!?」

「ミカエル! もしそうなら、俺からも頼む!」

 

ミカエル

「……」

「先に言っておこう。私が把握する限り、『これ』は知っていたからといって、戦況に関わる事は決して無い」

 

ソロモン

「構わない! 活かせなくたって、例え結末が変わらなくたって……俺達は、やれる限りの事をやらなくちゃダメなんだ!」

 

ミカエル

「……オーケー」

「2つ、だ。そしてそれらは、『答え』でも、『情報』ですらもない」

「恐らくは君達にもまだ結論を出せていないだろう、そんな些細な『疑問』だ」

 

 

<GO TO NEXT>

 

 




※ここからあとがき

ポーを追って洞窟に突入させた当初、イメージを面倒にしないように必要な時以外はマスク始め防寒具の描写は控えるように決めていました。

途中からそんな自分ルールなんて関係なしに、筆者自身がすっかり「終始防寒具を装備している」という状況なのを忘れていました。

唐突にマスクとゴーグルにフォーカスあてて少し当惑されたかも知れませんが、筆者の技術不足ということでお詫びすると共に、何卒よろしくお願い致します。


9月12日追記
更に、ベレトが直前まで素手でパエトンと殴り合っていた事を筆者がど忘れしたため、一部矛盾した表現となっていたので、急遽フォローの文章を差し込みました……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。