メギド72オリスト「太古の災厄と新生する憤怒」   作:水郷アコホ

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05「再生と爆発」

 クラゲ型の幻獣と戦闘を開始するメギド達。

 戦って暫く経つが、たった数匹相手に一匹も仕留められていない。

 

 

モラクス

「でえりゃあっ!」

 

 

 飛び上がって、宙に浮くヘリアデス(クラゲ幻獣)より更に上空から愛用の斧を叩きつけるモラクス。

 見事命中し、体の大半を占めている傘部分を半分ほど切り離す。

 

 

モラクス

「クソッ、ダメだアニキ! 何度ブッタ切ってもすぐ『元通り』だ!」

 

 

 幻獣の切り離された部位はすぐさま再生を始め、体の半分を失っても数秒でまさしく元通りになる。

 

 

シャックス

「うぅ~、脚っぽいトコ切ってもおんなじみたい~……」

「でも触っても毒とか無いみたいなのは良かった良かった?」

 

ベレト

「元通りとはそういう事か……」

「ええい、この格好では動きづらい! 息が上がって仕方ない!」

 

バルバトス

「みんな闇雲に動くな! 王都と違って環境も過酷だ。体力の減少もいつもより──」

 

ソロモン

「いや──バルバトス、それだけじゃない」

「モラクス、シャックスも。場所が悪い事を抜きにしても、いつもより『動きにくく』ないか?」

 

モラクス

「言われてみると、さっきっからたまに戦い方が……」

「なんつーか、アニキ抜きで戦ってるときとあんま変わんない時があるような?」

 

シャックス

「あたしも思った思った。ビリビリバリバリ出来てないない!」

 

バルバトス

「ソロモン抜きで戦ってる……フォトンか!」

 

ソロモン

「ああ。さっきからフォトンが『薄く』なってる」

「元々のフォトン量が少ないから、いつも通りに使ってたら減りが早いのかと思ってたけど、違った」

「こいつらフォトンを吸い上げてるんだ。空気からも、そこから大地に循環した分も……戦ってるみんなからもだ!」

 

バルバトス

「普通のヴィータが近寄られると目眩や昏倒を起こし、戦えば消耗が激しくフォトンの力を引き出せない──そういう仕掛けだったのか」

「待てよ? さっきから、幻獣の切り離された部位は塵のように消えていく。そして実体なのかも怪しいほど脆く希薄な体……」

「ソロモン、もう一度だ。もう一度ヤツを切って、切り離された方のフォトンを注視してみてくれないか」

 

ソロモン

「わかった。モラクス、行けるか?」

 

モラクス

「まだまだ、何度だってやってやらあ!」

 

 

 助言通り、モラクスに再び幻獣を切らせる。

 薄皮のような傘がちぎれ飛び、空中に舞うと限りなく細切れになって消えていく。

 

 

ソロモン

「傘から……フォトンが流れ出て萎んでいく?」

「っ! 違う、あの幻獣、『殆どフォトンで出来ている』んだ!」

 

バルバトス

「読みが当たったか」

「あの半透明な部分は全部、薄い膜をフォトンで膨らませたハリボテのような物だ」

「取るに足らないほど脆い膜だからこそ少量のフォトンで瞬時に修復できるんだ」

「恐らく、内在するフォトンを全て吸い上げでもしなきゃ何度切り裂いたって無駄だ」

 

モラクス

「そんなんどうすりゃ良いんだよ!?」

 

バルバトス

「体の殆どはフォトンで作った見せかけ……なら、どこかに本体があるはずだ。それを探してくれ」

 

シャックス

「でもでもー、ゲンゲンの体どこから見てもスケスケだよ~」

 

バルバトス

「こんな夜中じゃ見極めるのも一苦労か……とにかく──」

 

ベレト

「とにかく残らず叩き潰してしまえば良いのだろうが!」

 

 

 旗竿振り上げたベレトが五方に伸びる穂先に旗部分を絡め、ハエ叩きの要領で幻獣に叩きつけた。

 脆い敵な事も手伝い、メギドの力で幻獣の全身を余す所なく押し潰す。

 幻獣が入り込まぬよう、物陰で老婆を守って待機するフォラスから声が上がる。

 

 

フォラス

「お前らー、新情報だー」

「その幻獣、住民達もたまに倒すことが出来たそうなんだが、その時は──」

 

 

 言い終わる前に、盛大な破裂音が続きを遮った。

 

 

ベレト

「ぬおぉっ!?」

 

ソロモン

「ベレト!?」

 

 

 ベレトが飛び退いた。否、吹き飛ばされた。

 咄嗟に旗の石突を地に突き立ててブレーキをかけるが勢いは止まらず、フォラス達の脇に安置された樽に強く背中をぶつけた。」

 

 

フォラス

「……その時は、今みたいに自爆するんだとよ」

 

ベレト

「ゲホッガホッ、そ、それを早く言わぬか……!」

 

ソロモン

「ベレト、大丈夫か!?」

 

ベレト

「貴様に心配されるほどヤワではない。とっととその目障りな連中を蹴散らしてしまえ!」

 

バルバトス

「あれだけ元気に叫べれば大丈夫そうだ。ソロモン、今はあの幻獣をどうやって倒すかだ」

「ベレトが離れた分、俺も積極的に参加しよう。銃弾の点攻撃なら、本体の特定もしやすいかもしれない」

 

ソロモン

「わかった。ベレトは落ち着いたらすぐに戻ってくれ」

「とりあえず、ベレトの様子なら、爆発に巻き込まれても大したダメージは無さそうだ」

「引き続き全員で戦うとして、とにかく爆発の条件を探ろう。ひとまず攻撃の仕方や狙う箇所を工夫してみてくれ」

「『自爆』って事は、爆発した時点で幻獣の本体も吹き飛んでるはずだ。多少のダメージは後で治療して、まずは撃破を最優先だ」

 

シャックス

「りょうかーい。もうひと頑張りだね!」

 

モラクス

「いいじゃねえか爆発。それくらいやってくれなきゃ、こっちも張り合いが無かった所だぜ!」

 

 

 ソロモン達が戦闘を再開する一方、まだ乾いた咳を漏らすベレト。

 

 

ベレト

「ケフッエフッ……ええい、冷え切った中で叫び散らして喉がカラカラだ……」

 

 

 ふとベレトが、今しがた自分のぶつかった樽を見つめた。

 吹き飛んだ自分を支えた確かな重量に期待を覚え、樽の口を覗く。

 

 

ベレト

「おお、やはり中身は水であったか。表面の氷もまだ薄いしゴミも浮いとらん!」

 

酒場の老婆

「ああ、いけないよ。それを飲んじゃあ……」

 

フォラス

「そうだぞ。外に置いてる水なんて飲水とは限らねえし、そもそも人様の家の物に勝手に手ぇ出すな」

 

酒場の老婆

「いいえ、飲水ではあるのよ。でもそれはまだ──」

 

ベレト

「ええいうるさい、儂に指図するな!」

「せっかく戦ってやっておるのだ。飲めるなら一口くらいよかろう!」

 

 

 言うなり、ガブッと齧りつくように樽に顔を突っ込むベレト。額で氷を叩き割り、口いっぱいに水を含んで飲み下す。

 フォラスが「アチャー」と目を覆った。

 水浸しのご満悦な顔を上げたベレトが最後の一口を飲み込んだ。

 

 

ベレト

「ふむ。やたら水を褒めそやしていただけあって中々のフォト──」

「……ん……?」

「……ッッッ!!??」

 

 

 訝しむような顔をしたと思ったら目を見開き、ガクガクと膝を折り始めるベレト。

 顔は青ざめ、上半身を傾け、腰を突き出し、旗竿を杖にした老人のような有様になった。呼吸が震え、荒くなっていく。

 ついでに喉を引き絞って息を吸いながら発音するような甲高い嗚咽を溢している。

 

 

ベレト

「ひ、おっ……ぎ、にゅ……ぉ・ぉ・ぉぉ……ッ!?」

 

フォラス

「お、おい……ベレト、大丈──?」

 

ベレト

「ま、ままま待てっ! わわ、儂に触れるな!」

「い、いいぃ……ぬぐ……今、触ったら……ど、どうなってもし、知らんぞ・ぉ……っ!」

 

酒場の老婆

「ああ、だから言ったのに……」

「外に晒している水は、まだ毒が抜けきって居ないのよ」

 

フォラス

「そういやあロンバルドの水は毒があるから、外気に晒して毒抜きした物を流通してるんだったな」

 

酒場の老婆

「毒抜きの終わってない水を飲むと、熱が出たり、胸が苦しくなったり、お腹を壊したり……」

 

フォラス

「あー……つまり……」

 

ベレト

「のの、呑気に喋ってないで、ど、どこか、入れる家を探せ! すぐにだ!」

「も、もう鍵でも扉でも破ってしまえ! 早……あぐぐぎぎぃ……!!」

 

 

 ベレトの体内で、左下腹部あたりから甲高い音が反響している。そこだけ熱した鋼線で引き絞られているかのように痛い。否、熱い。

 熱さが胃の方までのし上がってくる吐き気のような感覚に頭がグラグラする。

 

 

酒場の老婆

「とりあえず、私の家に連れて行きましょう。そこを曲がってすぐだから」

 

フォラス

「自業自得だなぁ……ま、言ってる場合じゃねえか」

「ソロモン! 済まんがベレトに緊急事態だ!」

「おカミさんの家がすぐ近くらしいからそこまで2人を送ったらすぐ戻る。それまでに片付けちまってくれよ!」

 

ソロモン

「な、何だって、一体何が……!?」

「と、とにかく解った。こっちも、幻獣を逃さない程度には立ち回れそうだ。気を付けて頼む」

 

フォラス

「了解。ほら、おぶってやるから、俺のためにももう少し堪えてくれよ」

 

ベレト

「ゆ、ゆ、ゆっくり……ゆっくりだぞ……」

 

 

 フォラスがベレトを背負って退場するのを見届けるソロモン。

 また破裂音が響いた。振り向くとまた幻獣が自爆したようだ。

 討ち取ったのは、隣で銃を構えているバルバトスらしい。

 

 

ソロモン

「やったか! ……ん?」

「(今……なんだろう。さっきの自爆の時もそうだけど、妙なフォトンの動きが見えた気が……)」

「(そういえば、周囲のフォトンも……まさか?)」

 

バルバトス

「しまった。モラクス、シャックス。怪我はないか!?」

 

モラクス

「俺は大丈夫だけど、シャックスがど真ん中で巻き込まれちまった!」

 

シャックス

「ハラホロヒレハレ……」

 

バルバトス

「外傷は無さそうだが、衝撃に煽られて脳震盪を起こしたか……」

「モラクス、シャックスを前線から引き離してくれ。敵の弱点が見えたかもしれない」

 

モラクス

「マジか。わかった!」

 

 

 シャックスを抱えてソロモン達の元へ運ぶモラクス。

 

 

ソロモン

「バルバトス、もう本体が解ったのか!?」

 

バルバトス

「偶然だけどね。月明かりの中で、ごく僅かに一箇所だけ光を通さない部分があった。狙ってみたらご覧の通りさ」

「まずは答え合わせだ。もう一体狙ってみる。ソロモン、フォトンを頼む」

 

ソロモン

「わかった。頼んだぞ!」

 

 

 受け取ったフォトンを乗せて、バルバトスが新たに狙いを定めた。

 

 

バルバトス

「お誂え向きに、月の真下を通っているヤツがいる。あれを狙おう」

「よおく見てくれ。傘に隠れた脚の付け根──本物のクラゲなら口のある辺りだ」

「見えるかい? ほんの僅かに黒い影が浮いてる。恐らく実寸でも指先一摘み程度だろうけどね」

「あれを……!」

 

 

 銃弾が見事に影を撃ち抜いた。幻獣の動きは非常に緩慢で、止まっている的も同然だった。

 読み通り、幻獣が発破した。今度は爆心地から距離もあり、寒風に晒されるだけで済んだ

 

 

バルバトス

「ま、こんなものさ。自分の慧眼が恐ろしくなるね」

「ん──どうしたソロモン。驚いてる顔だが、俺への感激って感じじゃ無さそうだね」

「もしかして、何か気付いたのかい?」

 

ソロモン

「あ、ああ……気のせいかと思ってたけど、間違いない」

「最初に幻獣が爆発した後、周囲のフォトンが一気に減ったように見えたんだ」

「生き残りが取り込んだのかと思ってたけど、違う……」

「あいつら、爆発するたびに『フォトンを吹き飛ばしてる』」

 

バルバトス

「吹き飛ばす──フォトン破壊の要領って事かい?」

 

ソロモン

「いや、結果としては似たような事になるけど、少し違う。言葉通りの意味だ」

「確かに多少のフォトンを破壊するだけの威力もあるけど、大半は形を保ったままその場から引き剥がされて散らされてる」

 

バルバトス

「なるほど。シャックスの失神の一因がそれか。衝撃波と同時に、体内のフォトンが一瞬、急激に失われたんだな」

 

ソロモン

「ああ。しかも取り込む時と同じだ。自分達の抱えてたフォトンまで手当り次第に」

「効果も見た目の爆風よりずっと広い。大地から取り出しかけたフォトンが地中深くに押し返されてるくらいだ」

「何だかまるで、フォトンを遠くに追いやろうとしてるみたいな──」

 

バルバトス

「興味深い見解だけど、考えるのは後にした方が良さそうだ。まだそんな爆弾が幾つも残ってる」

 

ソロモン

「そうだな。ただ、ひとまずは奥義での攻撃は避けようと思う」

「人の住んでる場所で派手な真似は控えたいのもあるけど、フォトンで構成したメギド体も多分、自爆と同時に吹き飛ばされて崩壊する」

「メギド体での防御に余り期待できない分、却って効率が悪くなるかもしれない」

 

バルバトス

「同感だ。モラクス、やり方は大体解ったな。分厚い斧ならヤマ勘でも狙えば充分命中するはずだ。残りを掃討するぞ」

 

モラクス

「オッシャ、任せろ!」

 

 

 突破口が見つかり、残る幻獣を片付けていく一行。

 目に付く幻獣を一通り爆破させる事に成功した。

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

モラクス

「ふぃー……アニキを疑ってたワケじゃねえけど、自爆した時にフォトンを吹っ飛ばすってマジみてーだな」

「吹っ飛ばされたダメージより、とにかく体がダルくってしょうがねえ……」

 

ソロモン

「二人とも、よく頑張ってくれた」

「でも知らなかったとは言え、今回の人選は裏目に出てしまったかもしれないな」

「射程のバランスは取れてるように見えても、半分以上が前衛だし、後衛はどちらも攻撃が専門じゃない」

 

バルバトス

「嘆いてみても始まらないさ。まだやりようは充分あるはずだ」

「さて、これで全部──おや?」

「モラクス。敵の弱点が解ってから、君は幻獣を何体倒した?」

 

モラクス

「数? んーっと……三匹のはずだぜ?」

 

バルバトス

「となると……」

「やっぱりだ。俺かモラクスの計算違いで無い限り、幻獣はもう一体居たはずだ!」

 

ソロモン

「でも、もう辺りには……まさか、取り逃がした!?」

 

バルバトス

「充分あり得る。立て続けの爆風に備えている間に俺たちの集中が逸れて、その間に一体くらい、爆風に乗って飛び去ってしまっても」

「それに寒波も収まってない。幻獣が全滅すれば収まるという保障は無いが、少なくとも奴らが健在の間は異常気象が続くはずだ」

 

モラクス

「マジかよ。じゃあ早く探さないと──!」

 

フォラス

「ソロモーン! 聞こえるかー! こっちだー!」

 

 

 道を曲がった先からフォラスの声。

 駆けつけると、逃した最後の一体とフォラスが戦闘中だった。

 短剣から放つ魔法弾で応戦している。脆いクラゲにはそれでも有効だが、やはり立ち所に再生していく。

 

 

バルバトス

「存外に近くだったな。不幸中の幸いか」

 

ソロモン

「フォラス、ごめん! こっちで足止めしとくって言ったのに……」

 

フォラス

「んなこた後だ! こいつはどうやって倒せばいい!?」

 

モラクス

「足の付根だってバルバトスが言ってた! そこにチッコイ影があって──」

 

フォラス

「冗談きついぜ、眼鏡持ちナメんな!」

 

バルバトス

「確かに、こっちの道は俺達が戦った通りよりも明かりが届かない。視力に関係なく、半透明な幻獣の姿を捉えるのでやっとだ」

「流石にここでは俺も命中させられる保障が無いし、下手すれば射線上のフォラスに当たりかねない……」

 

モラクス

「じゃあ俺が行く! もう一匹くらいどうってこと──」

 

ソロモン

「……」

「いや、ちょっと待ってくれモラクス。シャックスを起こせるか?」

 

バルバトス

「シャックスを……なるほど、それなら『どっち』でも任せられそうだ」

 

モラクス

「お、アニキ何か思いついたのか?」

「よし、ちょっと待っててくれよ。ほら、シャックス、アニキが呼んでんぞ!」

 

 

 容赦なくシャックスに往復ビンタをかますモラクス。

 

 

バルバトス

「こらこら、やりすぎだ。シャックスでも一応女の子なんだぞ」

 

ソロモン

「それ、何気に酷い事言ってないか……」

 

シャックス

「んぇ……何だまだ夜かぁ。二度寝二度寝……」

 

バルバトス

「こら寝るな! 戦闘中に気絶してただけだ。というかこんな所でこれ以上寝てたら死ぬぞ!」

 

 

 シャックスを夢から引き戻し、手早く状況を説明する。

 

 

ソロモン

「──と言うわけで、シャックス。寝起きに悪いが、電撃を一発頼む」

 

シャックス

「オッケー。早速ゲンゲンをビリビリの──」

 

ソロモン

「いや、まずは『安全策』を取りたい」

「フォトンを回すから、電撃をできるだけ長い間、この辺りの適当な地面に向けて放ってくれ」

 

シャックス

「地面に? 何で?」

 

バルバトス

「後で説明するから、今は急いでくれ。フォラスとご婦人、あとベレトの安全がかかってるんだ」

 

シャックス

「なんかよくわかんないけど了解! 任せて任せて!」

 

 

 腰に提げた剣鉈を抜き、フォトンを通して電流を纏わせるシャックス。

 そのまま手近な地面に剣鉈を突き立てる。

 

 

シャックス

「バチバチの、ビカビカの、ズッドーン!」

 

フォラス

「作戦は決まったかー? そろそろ……うおっ!?」

 

 

 地面から稲妻が迸り周囲を照らす。

 充分な光源に幻獣が透かされ、フォラスの目にも幻獣の細部まで鮮やかに見て取れた。

 

 

バルバトス

「シャックスがそのまま襲いかかったのだと、また自爆の直撃を受けてしまう──」

「だからシャックスの電撃を支援に回し、トドメは間接攻撃の出来るフォラスに任せる。これなら被害も最小限だ」

「もし不測の事態でフォラスが仕損じたら、その時に消耗の少ないシャックスが飛び込む──」

「……って、こんなにバチバチ言ってたら聞こえないか。後で説明し直してあげよう。本人が忘れて無ければね」

 

フォラス

「こりゃあ助かるな。こんだけコントラスト強けりゃ俺にも丸見えだぜ」

「つっても、あれが影……か? 流石に小さすぎだろ……このへんで──どうだっ!」

 

 

 独り言ちている間にソロモンからフォトンが回ってきた。

 狙いを定めて魔法弾を放つフォラス。

 しかし幻獣の弱点らしき部位から僅かに外れ、魔法弾の外縁が触れた程度。

 

 

フォラス

「あっ、掠った。いけるか……?」

「(ん? 弱点の影の残りが、こぼれて地面に……)」

 

 

 バァンと、最後の一体が自爆した。

 

 

モラクス

「ヨッシャア、これで残らず撃破だ!」

 

フォラス

「フゥ……杞憂で済んだか。しかし痛快なやられ方してくれるな」

 

バルバトス

「やれやれ。これの駆除が仕事と思うと気が重いが、とにかく対処法が──」

「……あれ、もしかして……?」

 

 

 徐に脱ぎだすバルバトス

 

 

ソロモン

「ちょ、バルバトス! 幾ら幻獣を倒せたからって気が早──あれ?」

 

モラクス

「何か楽になってきたつーか……動き回った分、暑くね?」

 

 

 上着を取り払う一行。体感温度だけでなく、粘膜にも先程までの凍てつく異常を感じない。

 

 

バルバトス

「こんな夜中に、一瞬で寒波が消え失せた……どうやら、本当に幻獣と関連があるみたいだな」

 

ソロモン

「これなら、ウェパルも少しは楽になってるはずだ。戻って様子を確かめよう」

 

バルバトス

「それももちろんだが、今はベレトの方も心配だ」

「フォラス、ベレトの容態はどうだ? ベレトに何があった?」

 

フォラス

「あーっと……まあ多分、心配いらねえよ」

「毒抜き前の水を飲んじまったみたいなんだが、まあすぐに元気になるだろ」

 

ソロモン

「ど、毒!? 本当に大丈夫なのか?」

 

フォラス

「手伝ってくれたおカミさんもそんなに慌てたりしてなかったし、言う程大した事じゃないって事だろうさ」

「ただ、まだ出てこないとなると……もう少しかかるんじゃねえかな。こっちは俺が付いてる。お前さん達は先に酒場に戻ってやりな」

 

ソロモン

「わ、わかった。じゃあ、ベレトの事は頼むよ」

 

 

 急ぎ足で酒場への道を引き返すソロモン達。

 その姿を見送った後、フォラスが先程まで幻獣の居た辺りの地面を覗き込む。

 

 

フォラス

「さて──かなりの爆発だったしなあ。やっぱり跡形もなく……」

「おっ、有った。なるほど、真上から爆風に晒されて地面にめり込んじまった訳か」

 

 

 何か拾い上げるフォラス。

 

 

フォラス

「他に周りに似たような物も落ちてねえし、影絵で見た質感からしても間違いないだろうが……」

「これが、幻獣の弱点か……? 粘膜みてえな感触もねえし、土塊みたいに崩れちまうし……」

「ま、とりあえず取っとくか」

 

 

 




※ここからあとがき

 ベレトの武器は旗と呼ぶべきか槍と呼ぶべきか。ひとまず本作では旗で通します。
 旗を掲げる前提の槍もありますが、ベレトの持っている武器は槍の穂先が付いているとは言え、実物の槍と比べてどうにも実戦向きの形には思えません。あくまで素人の見立てですが。
 なので、かつて旗槍だった物が時代が下るにつれ武器としての用途が形骸化し、槍っぽい装飾を残した旗になった物では無いかと考えます。
 かつての古代大戦やエルプシャフト統一以前なら、ヴィータも家紋付きの槍くらい持ったでしょうし。
 どこかの家が没落して家財が売り払われ、それが未踏地に流れ着いたか、奴隷商人が気まぐれで買い取ったものかなと考えています。旗部分が綺麗に残っているので、ちゃんと保管され続けていた物でしょうし。
 (キャラストでは覚醒後に幻獣を撃破しているので、商人脱走時点で所持していたと考えれば後者が妥当でしょうか)
 
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