メギド72オリスト「太古の災厄と新生する憤怒」   作:水郷アコホ

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08「作戦会議」

 翌朝。寝室にノックの音。

 

 

ウェパル

「どうぞ」

 

 

 ドアが開いて、ポーが入ってくる。

 ウェパルは寝室の鏡台で髪を梳かしている。

 

 

ポー

「おはようございます。ご注文通り、モーニングコールに来ました」

 

ウェパル

「ご苦労さま。じゃあ、ついでに残りの二人も起こしてもらえる?」

 

ポー

「はい。任せて下さい」

「お客さーん、起きてくださーい! 朝ですよー!」

 

 

 ベッドの上で盛り上がる毛布が二組。その片方を揺り起こすポー。

 

 

ベレト

「ぬ、ぬぅ……? ……まだ眠い。寒い……」

 

ポー

「そんな格好で寝てたら当然です。だからお客さんには『カイマキ』が良いって言ったじゃないですか」

「ほら、『ドテラ』も持ってきましたから」

 

ベレト

「儂だけあんな服だか布団だかわからぬものなど……」

「って、な、何っ!? ぐっ……そ、それだけは、い、要らん……! もうたくさんだ……!」

 

 

 揺り起こされたベレトがベッドから這い出す。

 まだ目が冷めきっておらず、まさに這い出している。

 

 

ウェパル

「それにしても、酒場の二階がそのまま宿屋になってるとか、都合が良すぎるくらい助かったわね」

 

ポー

「観光に来るお客さんが増えて、急ぎで作ったものでして」

「この辺りは家一件作るのも大変なので、今ある建物でなるべく何とかしてるんです。同じ様な宿が他にも幾つかあるんですよ」

「後はこちらのお客さんですね。ほーら、朝ですよー」

 

シャックス

「あわわわ、待って待ってー! あたしには今、お布団から出たら死んじゃう呪いが~!」

 

 

 完全に毛布に包まっていた残り一山から、慣れた手付きで毛布をスルリと引き剥がすポー。

 

 

シャックス

「うひ~! し、しばれる~……人でなし~!」

 

ポー

「今日は暖かい方ですよ。お仲間さんもお先に起きてこの通り──」

「ハッ! そうだ、そちらの青っぽいお客さんは、お体大丈夫ですか!?」

「他のお連れさんから、『元々寒さに弱いのかも知れない』と聞いていたのですが──」

 

ウェパル

「このくらいなら心配要らないわ」

「それにもう諦めも付けたから。寒かろうがなんだろうが、やる事をとっとと済ますだけよ」

 

ポー

「ホッ……お元気なら何よりです」

「あっ、でも暖かい飲み物やブランケットも持って来てますので、ご入用でしたら是非どうぞ」

 

シャックス

「ムホッ! もしかして、昨日パルパルが飲んでたアレ!?」

 

ポー

「はい。茶葉とスパイスをミルクで煮込んだヤツです。実はまだ名前がありません」

 

シャックス

「やっほーい、起きる起きる! アッツアツのを一杯ドカーンとお願いね!」

 

ウェパル

「そういえば、男部屋の方はもう起こしに行ったの?」

 

ポー

「あ、はい。橙色のお客さん以外は先に起きてらしてて、今は皆さん準備を済ませて、先に下で待ってるそうです」

 

ウェパル

「(橙……モラクスね)」

「了解。準備が出来たら行くって伝えといて」

 

ポー

「わかりました。じゃあ、飲み物とかはここに置いときますので」

 

 

 ポーが出ていく。

 その後、ウェパルが準備を済ませ、ミルクを飲みながら再び船を漕ぎ始めたシャックスとベレトを叩き起こすまで少しかかった。

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 仲間二人を引きずりながら階下に降りたウェパル。

 酒場の一角に陣取った男性組と合流する。

 

 

フォラス

「ふぁ~あ……お、来たようだぜ」

 

ソロモン

「おはよう、ウェパル。シャックスにベレトも。皆、よく眠れたか」

 

ベレト

「む~……まだ眠い……」

 

シャックス

「くか~……」

 

バルバトス

「手を引かれて歩きながら寝るとか、本当にやってる人間を見たのは初めてだ……」

 

ウェパル

「私はお陰様で、一応は快適な朝だったわ。にしても──」

「昨夜は確か、今後の方針決めを今日に延期するって判断だったのよね?」

「長旅に面倒な戦闘とで消耗してるのはわかるけど、顔でも洗い直して来た方が良いんじゃない? 特にフォラス」

 

モラクス

「そうなんだよなー。起きたら皆元気無さそうな感じでよ」

「昨日の幻獣、倒すだけですげー疲れたから、まだ回復しきってねーのかも」

 

フォラス

「ハハ。俺は気になる事があってつい、な」

「でもやっぱり、この歳で夜ふかしはちょっとキツかったか」

「(まあ、それ以上に──)」

 

ソロモン

「お、俺もほら、遠巻きとは言え少しは爆風を浴びたから、気付かない内に消耗したのかも」

「(モラクスの『いびき』が……)」

 

バルバトス

「ベレトとシャックスも、まだ半分寝てるみたいだね」

「長丁場になる事を見越して、生活サイクルや休憩の有無も考えないとかな」

「多少暖かい方が眠りの質が上がると聞いた事あるけど、まさか夜通し暖房を頼る訳にもいかないしね」

「(普段は静かに眠ってるのに……気温や湿度が低いと『いびき』の原因になるって聞くから、それだろうな)」

「(本人にどうにも出来ない事を責めても苦しませるだけだし──地味にもどかしい問題が生まれてしまった)」

 

ウェパル

「体力バカのモラクスはともかく、私だけ元気なトコからして、幻獣の影響も無いとは言い切れなさそうね」

「まあもしかしたら、あの暑苦しい手当も少しは効果あったのかも知れないけど……」

「でも、そんな真面目に考えるくらいなら、一旦寝直したら?」

「どうせ予定も作戦もこれから考える所なんだし」

 

ソロモン

「いや。今後もこんな調子だったら流石に考えるけど、多少の寝不足くらいで足を止めてはいられないよ」

「まずは大まかな方針を決めて、可能なら大空洞の調査も併せてやっておこうと思う」

 

モラクス

「それは良いけどさー、アニキ。朝メシまだ来ねえかなー」

 

フォラス

「店の旦那さん、何だか朝からバタバタしてたからな。そっちが片付くまではお預けかな」

 

モラクス

「ちぇー。食うモン食わねえと頭も回らねえっての。なあ?」

 

ウェパル

「回ったって使わないじゃない?」

 

モラクス

「んな事ねーって!」

 

バルバトス

「でも、それにしてはやっぱり少し遅いな」

「お客は俺達だけのはずなのに、ポーの姿も見えない……いや、別件で対応に追われているって事か?」

 

ソロモン

「あ、ちょうどヤブさんが来たみたいだ。すみませーん!」

 

 

 呼び寄せてヤブから事情を聞く。

 

 

ヤブ

「いや、すみません。やっと一段落付いた所で、今からすぐ作りますので」

「何分、急なお客が入ったもので、さっきまで準備やら何やら手間取ってた所なんです」

 

ソロモン

「いいえ。そういう事なら仕方ないですよ」

 

バルバトス

「そう言えば、昨夜も『事件以降、観光客が来るようになった』と話していたね」

「やっぱり、その客は怪物騒ぎを知らずに来たクチかい?」

 

ヤブ

「そうなのか、そうでも無いのか……いまいちわからないんですよねえ」

「例の怪物が出てから、王都の方で観光客の往来をある程度止めてもらっているんですが──」

「そのお客さん、『それを承知の上で来た』って言うんですよ。しかも今朝早く、ウチが宿として店開く直前に」

「物腰は柔らかいんですが、どうにも話が噛み合わなくて──結局、押し切られて部屋も用意したんですが、何しに来たのかは解らずじまいです」

 

モラクス

「何だよその客、人の迷惑考えろってんだ!」

 

バルバトス

「観光地として成り立っていると、たまにある事さ。言ってても仕方ない」

 

ソロモン

「俺達もまだ話をまとめてる最中なんで、そっちもゆっくりで大丈夫です。ありがとうございます」

 

ヤブ

「そう言ってもらえると助かります。では、早速──」

 

 

 台所に戻っていくヤブ。

 

 

ソロモン

「それじゃあ朝食が出来るまで、改めて作戦会議だ」

「モラクスも、悪いけど辛抱して付き合ってくれ」

 

モラクス

「俺は別にそこまで気にしてねえから良いけど──」

「俺よりダメそうなのが……」

 

シャックス

「すぴ~……おお~……キノコティー……」

 

ベレト

「だまれぇ……儂は、寝てなど……むにゃむにゃ」

 

 

 ベレトは首を横倒しにして半目で白目を剥いている。

 シャックスは幸せそうにテーブルに突っ伏している。

 

 

ウェパル

「叩き起こす?」

 

ソロモン

「う~ん……いや、このままにしとこう」

「まだどうするかをこれから考える段階だ。共有するだけなら、後からまとまった内容を伝えれば充分だし」

「それに、もしかしたら本当にかなり辛い状態って事もありえる。抗えないほど眠いなら、今は休ませておこう」

 

バルバトス

「前線で戦った上に不調を来して、回復早々にポーとフォラスを追い回したベレトは無理もないとして──」

「シャックスは……まあ言っちゃなんだが、これから長い話をしても覚えてられるかは怪しいしね」

 

 

 ベレトを起こさないよう、頭をそっとテーブルに預けさせてから会議スタート。

 

 

ソロモン

「まずは、大まかにこの後の行動について決めよう」

「俺は早速、皆で大空洞の調査に赴こうと考えてる」

「集落の人の話でも、幻獣は大空洞から現れてる。まずは現場の環境を最低限把握しておかないと話にならない」

 

バルバトス

「その点は同感だな。調査には案内役を用立ててくれると聞いているし、前準備としては申し分ない」

 

フォラス

「そういや俺も昨夜、大空洞から地底湖までの道は今は観光地の一部になってるって聞いたな」

「その辺までをひとまずの目標にして出入りすれば、万一の事態もそう起きる事は無いだろう」

 

モラクス

「でもよ、要は幻獣を倒せば良いってんなら、そこまで面倒な事しなくてもよくね?」

「いつもみたいに突っ込んで片っ端から倒して巣を潰しちまえば良いだけじゃねーか」

 

ウェパル

「あんた死にたいの?」

 

モラクス

「んな訳ねーだろ。寒いのも洞窟なのも今まで無かった訳じゃないんだし──」

 

バルバトス

「モラクス。昨日の寒波、着の身着のまま飛び出した時の事、覚えてるだろう?」

 

モラクス

「え? ああ、そりゃあもう。俺もあんだけ冷てえのは初めてでちょっと驚いたけど」

 

バルバトス

「あの時ポー達から手渡されたのが『大空洞調査用の防寒具』だ」

「それを俺達は、『とりあえず着れるモノだけ着た』」

「着方が一目で解らないモノは着けず、しかしそれだけで寒さを凌げた。どういう事か解るかい?」

 

モラクス

「……? だから、それだけ暖けえモン着てれば寒くなくって当たり前……」

「あれ? 大空洞で着るモン着てたから寒くなかったって事は……?」

 

フォラス

「そう。大空洞はもっと寒いって事だ」

「大空洞では、あの時手渡されたものをもっと沢山、しっかり着込む必要があるはずだ」

「まずは俺達の『常識』ってモンを大空洞に合わせていかないと、余所から来た幻獣達と仲良くカチンコチンって訳さ」

 

モラクス

「マジかよ……」

 

バルバトス

「更に言えば、幻獣の中には凍死の他に転落死もある」

「そして『奇跡の御子』でポーは滑落している。十中八九、空洞内はよく滑る」

「地下水や雨水が染み出してそこら中濡れているなんて洞窟は珍しくない。この気温なら岩場の上に氷が張ってるかもしれない」

「歩き方ひとつ取っても慎重にかからないと、幻獣と戦うどころじゃないかもしれないな」

 

モラクス

「わ、わかった……俺もアニキに賛成……」

 

ウェパル

「実際に幻獣と戦ってすらない私からは特に言える事は無いわね。その辺は任せたから」

 

ソロモン

「じゃあ、シャックスとベレトからは後で意見を聞くとしてここまではひとまず決まりとしよう」

「次に、幻獣との戦いについて、皆の考えを聞いておきたい」

 

ウェパル

「話くらいは聞いたけど、一番の問題は『自爆すること』って事で間違いない?」

 

バルバトス

「ああ。ソロモンが見た所、周囲や俺達、そして幻獣自身のフォトンまで『吹き飛ばしている』と」

「寝不足を加味しても、メギドの力と場数がある俺達がたった数匹にここまで消耗させられた原因も恐らくそれだ」

 

ウェパル

「確かに。フォラスが一晩で5歳くらい老けてみえるし」

 

フォラス

「うへぇ、マジか。こんな所、家族には見せられねえな……」

 

ソロモン

「戦闘中でも、体内のフォトンの需給が安定すればある程度立て直せるとは思う」

「大空洞が幻獣の住処なら、嫌でも遭遇する可能性が高い。だからまずは自爆のダメージを最小限にする戦い方を模索しよう」

「自爆の仕組みを突き止めて完封するのが理想だけど、まずは倒さない事には始まらないし」

 

モラクス

「でも、本当に出くわすかな?」

 

フォラス

「どういう事だ? 最初に現れてかなり経ってるし、今頃は大空洞中にウヨウヨ居てもおかしくないんじゃねえか?」

 

バルバトス

「いや、待てよ充分ありうる。戦うとなったら、こちらから探す事になる場合も考えた方が良いかも知れない」

「ロンバルドの生活用水は大空洞の水だけが頼りなんだ。それに昨夜、ベレトは毒抜き前の水に当たった」

「つまり住民はつい最近も大空洞から水を採って来てる。幻獣を警戒しているにも関わらずだ」

「恐らく、少なくとも彼らが水を採取するルート上で、幻獣は『出ない時は全く出ない』んだ」

 

モラクス

「俺はバルバトスのアニキみたいにそこまでは気付かなかったけど、アイツら全然張り合いが無いからさ──」

「いつもの幻獣退治なら向こうも倒しに来たり逃げたりするけど、アイツら縄張りに入っても全く気にしないんじゃないかなって」

 

フォラス

「なるほど。ここの連中が今日まで生活できたのも、向こうさんにヤる気が無いから、出くわした時に大人しく逃げれば良かったからか」

「そして、もし俺達が大空洞に立ち入った時が『出ない時』だった場合、住民が普段通い慣れない場所まで念入りに探し出さなきゃならない。こりゃ難儀しそうだ」

 

バルバトス

「そうだ。そう言えばやつらは『厄介』なんだった」

「昨日、ソロモンと一緒にヤブさんに話を聞いた時も『何がしたいのか全く解らない』と聞いていた」

「つまり、目的が見えないんだ。奴らが何のために行動しているのか読み取れないと、その先を読むのも難しい」

 

ウェパル

「面倒なのには変わりないけど、目的なら確実なのが1つあるじゃない」

「相手は幻獣で、大空洞はフォトンスポットなんでしょ?」

 

ソロモン

「そうか。元々幻獣は、フォトンを回収してメギドラルに届けるために送り出されてる」

「だとすれば、効率的にフォトンを回収できる場所を探れば──」

 

バルバトス

「いや、正直どうだろう」

「同じ事は俺も考えた。でもそれが目的なら、最もフォトンを大量かつ容易に回収できる場所は『幾らでもある』」

 

ソロモン

「あっ──水か!」

 

バルバトス

「そうだ。特にポーが落ちた例の地底湖。あそこなら凍結する事もなく年中取り放題だ」

「しかしそうはなってないらしい。地底湖の水の流通が止まったのは、住民たちが『安全を優先した』から。『そこに幻獣が屯してる』なんて答えは1つも無かったよ」

「仮に大空洞の奥ほど幻獣が増えるとしても、地底湖だけに集中するわけでは無いって事だ」

 

モラクス

「フォトンが目当てじゃねえ幻獣って事か? でも、そんなの普通あり得るか?」

 

バルバトス

「まず無いだろうね。ヴァイガルドに順応して本来の目的を忘れたなら可能性もあるが、幻獣が確認されたのはたった数ヶ月前だ」

「仮にそれまで潜伏していたとしても、その理由も不可解だ。あの風任せに漂ってるだけのような幻獣なら尚更ね」

 

ウェパル

「『目的がない』か──そう考えてみると、おかしな所だらけよね。矛盾というか、ミステイクというか」

 

フォラス

「そういやあ、洞窟の中で自爆なんてしたら最悪、落盤起こしてお仲間共々生き埋めだよな」

 

バルバトス

「本当にクラゲか何かのように一片の知性も感じられないのもおかしい」

「自爆と別にフォトンを手当たり次第吸収しているのも、恐らくそういう生態だからやっているだけだ」

「とすると、あの幻獣だけではメギドラルにフォトンを持ち帰れるかも怪しい」

 

モラクス

「あ、それ俺も変だって思った所あるぜ!」

「アニキ達が『幻獣の体は殆どフォトンで出来てる』って言ってたじゃん?」

「アイツらも自分達が動き回るのにフォトン必要ならよ、自爆してフォトン遠ざけちまったら自分達だって不便じゃん」

 

バルバトス

「なるほど。中々鋭い所を突いてるかもしれないぞ」

 

モラクス

「お、マジか! へへっ、やったぜ!」

 

バルバトス

「フォラスが言った住処の問題もそうだが、自爆という特性が環境にも幻獣自身の生存にも適していないんだ」

「問題は2つある。何故大空洞に陣取ったか。そして、何故未だに繁殖を続けられているのか」

「この2点の答えを突き止められないと今回の幻獣騒ぎ、根本的な解決は難しいかもしれないな……」

 

ソロモン

「そうなると幻獣退治以上に、大空洞の調査にまずは専念するべきか……」

 

フォラス

「あ、そうだ。幻獣と言えば、スケジュールについて俺から1ついいか」

「できれば今日からでも、調査が終わってからもう一仕事できるくらいには時間と余力を空けといてくれないか」

 

ソロモン

「というと、何かやりたい事があるのか?」

 

フォラス

「ああ。ちょっと、こいつを見てくれ」

 

 

 懐から小瓶を取り出すフォラス。中には黄緑色のような茶色のような、乾いた微小な物体が入っている。

 

 

ソロモン

「これは……?」

 

フォラス

「昨夜、たまたま回収できた幻獣の『弱点』の部分だ。恐らく本体ってやつだろうな」

「寝る前に見た時はもっと濃い色をしてたはずなんだが、すっかり干からびちまってるみたいだ」

 

モラクス

「でも、こんなちょびっとだけだし、俺にはただの土とか葉っぱか何かくらいにしか見えねえぜ?」

「疑うわけじゃねえけど、見間違いなんじゃねえか?」

 

フォラス

「俺もそこが気になって遅くまでにらめっこしてたんだがな──」

「周辺の土なんかも一緒に採取して見たんだが、明らかに色も質感も違うんだ。少なくとも、ロンバルドの土地に元々あったものじゃない」

「こいつが本当に幻獣の核か、それともただの勘違いか。もう少し調べる時間が欲しいんだ。もしかしたら何かの足しになるかもしれない」

 

ソロモン

「構わないよ。今回の幻獣は、対策が見つかるまで余裕を持っておくに越した事はないだろうし」

 

フォラス

「すまねえな。何か解ったらすぐに知らせる」

 

ポー

「すいませーん、おまたせしましたー」

 

 

 ポーがパタパタと料理を届けに来た。

 

 

モラクス

「うっひょー、待ってました!」

 

バルバトス

「良い頃合いじゃないかな。話も一通り煮詰まった所だし」

 

シャックス

「ハッ! いい匂い……ご飯!?」

 

 

 飛び起きるシャックス。

 

 

ウェパル

「殆ど動物ね……」

「ほら、ベレトも起きなさい」

 

 

 ベレトの後頭部にチョップを振り下ろすウェパル。

 

 

ベレト

「ふがっ!? だから儂は眠ってなどおらんと……」

「む、何だここは。儂はさっきまで二階の部屋で──?」

 

ソロモン

「本当に疲れてるみたいだな……」

「今日は休んでおくか、ベレト?」

 

ベレト

「何だ、いつの間にこんな──はっ」

「い、いや、余計な気遣いはいらん! どうせ幻獣退治なのだろう。貴様は黙って儂を連れて行けば良いのだ!」

 

モラクス

「何にしてもメシ食ってからにしようぜ。この重ね肉焼いたのとか超ウメーし!」

 

 

 


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