私は護る小人を   作:丸亀導師

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第11話 始まりの火

 

更に数百年の年月が流れた。あの龍狩りから既に、6千年の年月が、過ぎていた。

 

ある時、雨の降りしきる中、一団が巨大な宮殿から歩み出していた。

太陽の王グウィンが、数百年ぶりに自ら龍狩りに赴くと噂になっている。

グウィンの近くにはそれを守護する四騎士、オーンスタイン、アルトリウス、キアラン、ゴーの四名の姿も確認されたと言う。他、銀騎士が数千名、巨人の弓兵数百名、グウィンの配下となった飛竜数百を従い龍狩りへと赴いた。

 

これ程の戦力を見せると言うことは、ある種の恫喝とも取れる。

しかし、本来の戦力の100分の1すらない戦力ですら、力のない小人達にとっては非常に大きなものだった。

 

そんな話は町から遠くを移動中だったウェルスの耳には入らず、謀らずも同じ目的地へ向けて歩みを進めていた。

 

 

《特地・イタリカ》アリス

ああ、殿下が自衛隊に付いていってからかれこれ一週間、大丈夫かなぁ。主に私達。

イタリカのメイドさん達は、私達にあんまり良い印象を持って無いから正直居ずらいんだよねぇ。

って思いながら、事務仕事を片付ける。

 

本当、みんな事務仕事苦手なんだから、私の身にもなってみろって。な感じでヤケクソになっていたので、ちょっと街の外でも行ってみた訳なんだけど、あそこに座ってるのって、まさかミュイ様!?えっ?何で?

 

何でこんなところにいるの!!メイド達の監督不行き届きだろ!まずい、このままだと、とてつもなくまずい。私が彼女を連れ出したと思われちゃう。

 

「ミュイ様?どうしてこんなところにいるのですか?みんな心配しますよ?」

 

そんな感じで聞いたら

 

「いえ、少し人々の暮らしを見たかったので、ごめんなさい。」

 

おおぅ。ま、まあ私優しいから、なんとも思ってないけどね!ってあら?門の横に、あんな篝火あったかしら、いやいや絶対ない。

誰があんなの作ったの?

 

早く消さなきゃ、やっと治った門なのに今度は炎上しちゃったら元も子もない。

 

彼女が、火を消火しようと井戸から水を組み上げそれをかける。しかし、篝火はまるで水など掛かっていないかのようにそこにあった。

そこで彼女は思うのだ。

 

え?これって火じゃないの?

 

恐る恐る、火に近づき手を火に近付ける。暑くない、それどころか火傷をすることもない。しかし、暖かくまるで、母の腕の中のようだ。

 

なんなんだろうこれ、訳わかんない。でも、これは報告しなければ、まずいなぁ。

 

 

《西方砂漠・最西端都トゥンバレン》 質屋

 

ここは何処にでもある質屋、そんなところにある二人組が現れた。

 

「店主少し良いだろうか?路銀が尽きてしまって、困っているんだ。換金しても良いかな?」

 

一人は非常に上質な鎧を纏った騎士風の男。

 

「ああ、ここは質屋だからな。金のためには何かと交換せにゃならんが、見たところ良いものを持っているようだが?何にするんだ?」

 

もう一人は、眼をティアラで覆い隠した貴賓溢れる女性

 

「ありがたい、してこの金貨なんだが、ある大陸を旅していたとき、偶然発見したものなのだがどうかな。」

 

二人はあの大陸から来たと言う。だとするならば、今彼らに必要な分だけで充分だろうが、足元を見すぎるとこういうあいては見境ないからな。

 

「では、これでどうだろうか。妥当な値だと思うのだが。」

 

「ありがとう。これで旅が続けられる。」

 

「ところであんたさん、名前は」

 

「俺の名前か?俺の名はアッシュ、でこっちが妻のイザベラ。」

 

 

 

〈上級騎士・アッシュ〉

 

路銀が底を付いたので、正直いらないものになっていた錆び付いた金貨を質屋に渡した。

正直腐るほどあるから50枚程渡したら、ラバを買うことができた。

 

それと火守女の服、正直目立つ筈だ。

なら少しでも俗世のものを着られるように、俺が見繕ってあげなければ。

もはや火守女の使命は無いに等しいのだから。

 

「灰の方、この生き物の上に私などが載っても良いのでしょうか?」

 

「その生き物は、荷物や人を運ぶのが仕事なのだ。だから君が載っても大丈夫だよ。

それに、私も同じようなものに載っているからね。」

 

二人してラバに乗り、この砂漠地帯を抜けるべく商人達の護衛を、しつつゲートがあると言われているアルヌスの丘へと進んでいく。

 

商人達の話を聞くに、現在アルヌスの丘はゲートの向こう側の勢力との戦闘に敗北した結果、向こう側の手に落ちたと言う。

なるほど、まあ当然の事だろう。

 

彼等の世界にはまだ、『始まりの火』がある。その力を使えばこの時代の文明など、片手間で滅ぼすことができよう。

 

「まだ、瞳は違和感があるかな?」

 

「いえ、ですが長い間眠っていた性でしょうか。まだ少し見え辛いです。」

 

「では、ゆっくりいくとしよう。何、時間はかなりあるからな。」

 

 

 

《旅館》ウェルス

 

うーん、これが温泉か。暖かい水がこうも適温で流れてくるとは、実に気持ちが良い。

ちと、古傷に染みるがこれもまた癒えるのだろうか。

 

「おう、どうよ温泉は気持ち良いだろう?」

 

彼に伊丹が話しかける、普段二人は良い印象を持ち会っていないが、双方他人を思っての事だと納得している。

 

「ああ、気持ちが良いものだな。古傷が癒えるようだ。長年生きてきたが、こういう文化は始めてだな。」

 

「あんた、いつも思うんだが言動が爺臭いぞ?本当にそんな歳なのか?」

 

どうやら彼は私の年齢を信じていないようだ。それもまた当然だろう。

 

「自分でも最初の頃からの数えていたわけではないが、かぞえはじめてからがあの年齢だ。今でも懐かしい古龍大戦の日々、今でも当時に戻りたいよ。」

 

「その話、詳しく聞かせてくれよ。」

 

「フッ、では聞くが良い。少年達が心踊らせた神々と私の古の物語を。」

 

話は、始まりの火の誕生前~大戦中まで話をした、本当はもっと長く話すつもりであったが、女集がこちらへ話を掛けてきたことから中断せざる追えなくなった。

 

そして、酒盛りである。

楽しい、あの時を思い出し変わってしまった友を思う。

 

ああグウィン、なぜ貴公は変わってしまったのか。あの戦いの最中、心折れる寸前までいった、イザリスを励ましたのは貴公であろうに。

 

ニトよ、始まりの骸であった貴公はそうまでして眠りにつきたかったのか?小人が其ほどまでに、貴公の安眠を邪魔したか。

 

イザリスよ、王のソウルを分かち合おうと言った貴公の言葉に皆驚いた。だが、分けたときを思いだし、自ら造り出そうとした時、己の矮小さを忘れてしまったか?

 

名も無き闇の王よ、貴方は我が王であった。だが、なぜ私に護れと言った、小人の都を呑み込み、あまつさえ我友を奪ったのか。

 

友たちよ、私はあなた方にまた会いたい。

そして、始まりの火よお前はまだ燃えているのか?

この世界でも、存在しているのか?

私にはわかるぞ、貴様が見せている偽りの光を外にある太陽の光と錯覚している人々を。

 




オリジナル都市
トゥンバレン、一回のみの登場。ファルマート大陸の西端に位置する砂漠都市。
その立地の影響で、唯一、帝国が手を出せなかった国。

特産品の宝石特に石英の生産が最も多い。

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