森の水辺の直ぐ近くで、鎧を纏う集団がテントの設営を
開始していた。
日も暮れ初め、太陽が地平へと沈むなか、各々ソウルから取り出したものを置いていく。
彼らに補給隊は必要ない、食べ物や武器等をソウル化することにより持ち運んでいるからだ。
巨人達はそんなテントは持っておらず、何かしら羽織るものを着て眠りにつこうとしている。
そんな中、小柄な人物が標準的なサイズの青い騎士と肩を並べて見回りをしている。
「アルトリウス、今日の行軍はここまでで明日には龍達の住み家に到着する予定だ。騎士達には充分な休息を取らせるように、との命令だ。」
「もう皆、見ての通り野営に入ってる。」
二人は恋人とまでは行かないまでも、それでもどこか和やかな雰囲気を出している。
二人は隊から少し離れた巨木の下で話を始めた。
「アルトリウス、お前は怖いか?」
「古龍がか?勿論怖いさ、私達の曾じい様達はその昔戦ったそうだ、だが私達は初陣だ。四騎士と言われても、龍狩りだけは初めてさ。」
「私もだ。ゴーとオーンスタインは龍狩りを良く知ってるそうだがな、他の連中は皆私達と対して変わらないが…、話の途中で誰か来たようだ。」
二人は各々の武器をとり、気配が来る方向を見た。
「う~ん、こちらの方向で良い筈なんだが…?何かすごいものに当たってしまったか?」
黒い鎧を纏った、小人の騎士がそこに現れた。
《旅館》ウェルス 前話から数時間後
来たか。
遠くの方で我々が寝静まるのを、じっと堪えていた連中が動き始めた。
だが、ロウリィと伊丹は未だ起きていて、なにやら行おうとしているが、構うものか。すぐさま殺し合いをはじめてしまおうか?
貴様等には見えずとも私には、貴様等のソウルが蠢いているのをしかと、捉えているのだ。
うん?こいつら同士討ち?いや、元々敵対しているのか?互いに潰し合い始めたな。
これでは戦いに参加せずとも良いか。
さて、では我々の中で非戦闘員の梨紗殿と、テュカ殿、レレイ殿を守りつつ生き残った連中が来たら、反撃でもするか。
もし、テュカ殿に傷を付けたらどうしてくれようか。
彼の目の前では、隠密行動をしていた筈の米、露、中の工作員達が激戦を繰り広げている。
そんな音が響き渡るのだ、寝ていたもの達も起き出して直ぐ様戦闘体勢へと移行する。
そして、そんな中、流れ弾が跳んでくるわけだが、ウェルスは見事にそれを手で掴み三人だけを守る。
正直、古龍の口からレーザーのようなブレスだとか、鉄が容易く融解する炎を受けて、ダメージを負う程度で済む、そんな世代であるだけに銃弾など屁でもない。
それどころか掴んだ銃弾を親指の力だけで弾き出し、撃ってきた方向へと牽制を入れる。
それと同じ頃、ロウリィがめちゃくちゃに暴れまわり、周囲から断末魔が聞こえてくる。
そんな阿鼻叫喚の中、レレイの手元にまた魔術書が現れるが、彼女がそれに気付く事無くそのまま放置される事となる。そして、それは第三者の旅行客に拾われる。
そんな事も露知らずに、戦闘を沈静化させ捕虜は特戦群に任せて、さっさと銀座に戻る。
忘れ物を忘れて、ウェルスにはどうでも良いこの世界の事など、眼中にない。あるのはテュカを筆頭にしたエルフたち、小人の末裔たちのことだけだった。
暗い暗い闇の中、彼だけがこの世界の実状を把握していた。文明として、始まりの火を使用することはない。
しかし、かつて化け物を、世界の覇者を殺す事に火を使い、元の場所に戻したのだろうと。
《ピド村》ソラール 同日昼間
今日も朝から元気に太陽礼拝!<太陽万歳!
をした後に、今お世話になっているピド村の方々のお仕事をお手伝い!
この陽気な空を眺めつつ、俺は魚を干物にしている。
そんな事をしていると、村人の一人がやって来て言った。
「ソラールさん、貴方は戦えますか?」
「俺は太陽の騎士ソラール、いつでも戦う準備は出来ている。それで、誰と戦おうと言うのか。」
突然の戦えるかという質問に、困惑する。
「ここ数日盗賊が近隣の村を襲っているそうで、皆で力を合わせて戦おうと考えまして。」
なるほどなるほど、義勇軍というものだな。
「わかった。このソラール、貴公等に力の限り力を貸そう。俺の命の恩人だからな。ワッハッハ」
さあ、何処からでもかかってくるが良い、この太陽の騎士ソラールが相手となろう。
なに、亡者達のように筋力の箍が外れている訳ではあるまい、多勢でも相手をしてやろう。
ああ、上級騎士の鎧を纏った彼がいたならば、どれ程心強かっただろうか。可笑しくなった(最初から何かずれてる)俺に止めを刺してくれた。そして、この太陽をくれた彼ならば、きっと同じようにいただろう。
ならば、せめて俺はこの村の太陽となり、貴公が残したこの世界を最後の時が来るまで見届けよう。
それが『灰』としての俺の役目であろう。
《西方砂漠ロード》アッシュ ソラールと同時刻
ヘックション!なんだ?不死人となってこのかた、くしゃみ等出たことは無かったのに、なんだ誰かが俺の事を噂しているのか?
「大丈夫ですか?灰の方。やはり、まだ起きるのが早かったのではないですか?力の蓄えが多くはない筈です。」
「大丈夫だよ。単なるくしゃみさ、そう言えば君はくしゃみも知らないんだよな。」
そう言うと火守女が申し訳なさそうに、こちらを見る。
「いやいや、怒ってるわけじゃないよ。ただ、世界があんなにならなければ、君はもっといろんな事を知っていたんじゃないかと、そう思っただけだ。」
「でも、灰の方。あんなことがあったから、私は貴方に出会えたのです。」
二人で旅をする。昔から一人旅ばかりしていた俺にとって、彼女と話をしながらの旅は非常に新鮮なものだった。
《日本国領海→中国領海》ウェルス達の戦闘から6時間後
船上に人影がある。小さな漁船だが、だからこそ人目を盗んでこれほどまでの場所にこれるというものだ。
送り込まれた観光客は手に、本を持っている。
文字は読めないものだろうが、解読は可能だ。
「
「
小舟に大型の船が近付き、乗組員は全員乗り込み日本の領海から去っていく。
彼らは知ることはない、本来は知るべきもの。
それは開けてはならぬ禁断のパンドラの箱、しかし、中に入っているのは、矮小な希望と絶対的な絶望だけ。
彼等が本国に持ち帰った後、悲劇が起こる。
世界がそれに、気付いた時、それは手遅れとなっていた。
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