「そこの者、止まれ!」
銀騎士たちが、再集結しているところに一人の男が現れた。見知った者がいれば、輪の都の鎧に似ていると言うだろう。そこに、リングを型どったものは無いが、小人であると言うのは良くわかった。
銀騎士達はその、男の前に立ち塞がると名を名乗るようにと言いつつも、腰の剣に手を掛け臨戦態勢へと移行している。
やっと龍狩りを終えたばかりだというのに、なぜこのような男の相手をしなければならないのかと。
「案ずるな、その男を相手にしてはならない」
グウィンが騎士達を制し、その男の前に出る。
「久しぶりだな、深淵の騎士ウェルスよ。元気であったかな?いつ以来か、そんな事はどうでも良いかの。そう言えば、貴公。輪の都はどうした?なぜ帰っていないのか。」
「ふん、あんな都、疾うの昔に捨てた。貴様、良くもまあ俺を騙してくれたな。貴様を殺すつもりは無いが、怒りで貴様を殺しそうだ。」
二人の間に立つものはなく、睨み合いが続く。寒気のする空気が流れていたが、それを打ち破ったのはグウィンの方からだった。
「詫びも兼ねてどうかね?我が城へ案内しよう。旧友が来たのだ、それに今日は龍狩りも成功した。祝杯へご招待しよう。どうかな?」
「どうかな?だと?ほう、余裕だな。俺一人では貴様を殺せないからな。良いだろうそれに乗ってやる、周囲に潜ませている伏兵を退かせろ。目障りだ。」
周囲に藍色の装束を纏った者たちが現れる。王の刃、キアランが頭領として纏めあげる、アノール・ロンドの暗部組織。それらが、ウェルスの周囲を囲っていたのだ。
「では、招待しよう我が城へ。」
グウィンの合図の元に、出立の準備が整えられる。
《西方砂漠、交易路》アッシュ
荷馬車が砂漠を突き進む。枯れた大地を、隊列組んでゆったりと進んでいく。
途中で寄ったオアシスで、この商人たちとであった。なんとも良い事に、目的地は帝国?という国にあるアルヌスだという。
話しに聞くところによると、最近では非常に発展していて、周囲に比べて品を扱うのが多くなったのだとか。
それに、商機を見いだして大移動を行っている。と言うのが、この商隊の隊長の言い分だ。
私たちは同じ方向へ行くと言うので、今は共に行動している。正直、火守女の体力の心配もあったのだから調度良いだろう。
「それでだな?最近エルベ藩首王国近郊にドラゴンが出ているんだそうだ。私らもそんなものと出会わないで、この旅を終えたいものだ。聞いているかい?」
「ええ、聞いています。私は一応腕には自信があります。もしもの時は、時間はしっかりと稼いであげますよ。」
こうして護衛を請け負っている。それにしても、ドラゴンか。良い思いではこれっぽっちも無いな。
丸焼きにされたり、潰されたり、吹き飛ばされたりetc…。
今思い出すだけでも寒気がする。
「灰の方、少しよろしいでしょうか?皆さんが、冒険譚を聞きたがっておりまして、私では詳しくお話し出来ないのです。」
「わかった今行くよ。」
「旦那も、良い奥さんですなぁ。全く、あんな美人がこの世にはいるのだなぁ。」
「まったくです。私には過ぎたものですよ。」
本当に、彼女があんなにも楽しそうにしている。あの時代、笑いというものがどれ程貴重で、どれ程尊かったか。今にして思えば、あまりにも残酷すぎる。
なんにせよ、今はよかった。
こんなにも真実の太陽が光輝き、地を照らし民は笑顔を出来る。それだけでも、火を消したのは間違いでなかったと、気付く要因になるな。
《アルヌス》ヤオ
どうしてこうなった。
私はただ、正義の名のもとに暴漢を追い払い、詐欺師を撃退しただけだというのに、なぜこんなところで取り調べを受けているのか!
私は一刻も早く、帰らなければ助けを連れて戻らなくてはならないと言うのに!
こうしている間にも多くの命が散っているかもしれない。
そこで、私の翻訳を行ってくれる娘、レレイが現れ私の事情を説明した。
司令官たちにも事情を説明し、いよいよ私たちを助けてくれるのか、と期待をしていたが、それを裏切られる事態になる。
国軍として、戦争状態に無い国への一方的な派兵を否定されたのだ。我々の避難先が不味かった。そこはエルベ藩首王国、帝国とは違う場所、大々的に戦力を展開する事など出来ないと。
失意の念にかられる中を、ある男が扉を開いた。そこには私が否定した男、ウェルスが立っていた。
司令官達の話を途中から聞いていたのだという、この男
司令官達はこいつに一目置いているようだ、何をそこまで警戒しているのだろうか?
そして、このウェルスという男は司令官達と交渉し、なんと私の龍退治を手伝うという事を、言ってきた。
果たして、こいつは本当に言っているのだろうか?
ウェルス
ヤオ、彼女が言っていた事が事実なら彼女の部族は滅びに瀕している。
私がこのまま放置するという選択肢は無い。彼女達もまた、継ぐ者、我々はそれを護らねばならない。
既に話は着けた、後は彼等は自衛隊が誰かをこちらに回してくれれば良い
「君だけでも龍は撃てるそうだが、なぜ我々の戦力を削がねばならない?」
「私の場合、単純に威力が高すぎるのが理由だ。山一つ消し飛ばすだけで、済めば良い方だ。その点君らの戦力はそこまで過大な、ものではない。」
不確定要素である、私の邪魔をするものは必ず現れる。ならば、彼等を出来るだけ巻き込むのが最善だ。
「では、ヤオよろしく頼む。」
「ああ、こちらこそ。」
これで晴れて、龍を狩ることができる。
《アルヌス、湖》レレイ
師匠と共にここにやって来たのは、私の技術を試すという。私の卒業も兼ねて行うものだった。
そして、別の意味もある。私が無くしてしまった、師匠の本、その知識を少しでも師匠が知りたがった。というのもある。
私は師匠との約束通り、自衛隊から学んだ事を師匠に見せた。
この世界にはない、斬新な発想。それによって体系付けられた技術、その心理。それは、私たち魔法使いの使う技の何歩も先を言っていた。そして、気づいてしまった。いつか、私たちは文明の利器によって追い抜かされる運命だということを。
そして、私たちが生き残る可能性があの本に書いてあった。それは、深淵ではない。もっと私たちの力の本質、それは全ての生物が持つ力、そう。
あの男がいつも口にしている。【ソウル】その理。
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