アノールロンドの広い訓練所で1人の人影が佇んでいる。それは、旅立った者を待つかのように1人そこにいる。その願いは果たして叶った。
任務を終えた二人を、見つけ安堵をすると、城の中へと歩み始めた。
二人は目に見えた外傷もなく、アノールロンドへと帰還した。しかし、アルトリウスの消耗は激しいものとなっていた。神々にとって、深淵は毒でしかない。
例え契約により、深淵に対してある程度の耐性をつけたと言えどその肉体は神である。
残念なことに、ウェルスにアルトリウスを癒す力は無い、有るとすれば、今ウーラシールが開発しているエスト瓶と言うものがそれらを補えるだろうか?
だが、それは今ここにはない。
ウェルスは思った。もし、ここにグウィネヴィアがいたのなら彼を癒すことなど、雑作もなくやってしまうのだろうな。と。
アノールロンドで、彼等を待ち受けていたのは、誰もいない玉座の間であった。いや、キアラン、グウィン、オーンスタインだけはいたが、それ以外は席を外されたようだ。
「アルトリウスよ、よく戻ってきた。お主の働きにより、深淵は回避された。」
「いいえ、私は何も出来なかった。人々を救うことも、深淵の主を見つけ出すことも。」
深く、深く、自らの事を恥じているアルトリウスを見ながら、グウィンはウェルスの方を向く。
「ウェルスよ、あれは彼が造り出したものであったか?」
「いいや、グウィン。あれは、我が王が造り出したものではない。もしも、あれが我が王が造り出したものであったのならば、今頃私はここにはいない。」
ウェルスは深淵を良く知っていた。それこそ、自らが扱うものと同じ属性を持ったもの。正しく自分自身の力の、別の可能性であったから。
その後、アルトリウスは自らの屋敷に戻りキアランは、彼の看病をしに行く事となる。
そして、ウェルスは再び旅立つだろう。グウィネヴィアを訪ねて、新たな小人たちを求めて。
《アルヌス》伊丹
あの後、伊丹は酒場を歩き、テュカの場所に到着したのは、夜更けとなっていた。そして、そこで目にしたのは壊れかけたテュカの姿だった。
自分への余りにも重い依存、現実逃避の限りを尽くしたその姿は伊丹のトラウマを甦らせるには十分だった。
その日彼は、レレイに眠らされた。
翌日、眼を覚ました彼は誰が彼女をこうしたのかをテュカの口から聞いたそして、その人物が目の前に現れる。ダークエルフのヤオ、彼女は自らの行いを正しく正当化するかのように言った。今自分達の置かれた状況を打破する唯一の方法として、彼女を利用したとそしてウェルスとの関係を。
伊丹は激怒した、かの男ウェルスがヤオにあのような事を言わなければ、今のテュカの姿は無いものであったのでは、とそう思った。
そんな話の中、戸が開く音が聞こえる。
件の男、ウェルスが部屋に入ってきた。感情の無いような、そんな瞳をして伊丹を見下ろしている。
そんな彼に、伊丹は喰って掛かった。
胸ぐらを掴み問いただした、何故ヤオに遣らせたのかとテュカを傷つけるのかと。以外な返答が帰って来た。
「何故彼女に遣らせたかと言われれば、忙しかったからだ。二つ目は、壊れかけたものよりも一度壊してしまった方が、新しく作りやすい。それにだ、エルフはそう簡単に、死んだりしない。」
こいつは、人の心が無いのか?心が痛まないのか?
こんなにも、苦しそうにしている少女を見てそんな余りにも強烈すぎる方法をとるのか?
やはり、こいつは普通じゃないんじゃないか?
そう思ってしまうのも仕方の無いこと、ウェルスは余りにも長い年月を生きすぎているため、こう言うことに対して、正直どうでも良いと思っている。
直し方も荒っぽい、何より自分の出来ないことを把握しているために、直のこと達が悪い。
そして、そんな事があった後に伊丹はテュカを、痛みに晒さない為に、少しでも心に安らぎをと街へと繰り出していった。
《アルヌス・湖》レレイ
彼女は、師匠であるカトーとの接触を最低限に抑えて、ウェルスに付いてきている。
誰もいない湖で、今日もウェルスの師事の元、訓練に明け暮れる。
そんな事もあってか、テュカによる彼女の好感度は、お世辞にも高いとは言い難い。
だが、それでも力になりたいという彼女の姿勢は、驚くほどに真っ直ぐで、基本中の基本である物質のソウル化を半日もせずに覚え、更にはソウルを攻撃の手段として扱う、攻撃術を習得し始めた。
その習得の早さはマヌスに勝るとも劣らない、火の時代に産まれていたのなら、偉大な魔術師となっていたに違いない。ウェルスは彼女に感心すると共に、何か質問は無いかと、レレイに問いただした。
「一つだけ疑問がある、貴方が使う闇の魔術は何故私には使用できないのか?」
そう、レレイは人間である。従って小人が持つダークソウルを持っていない。そのために、闇の魔術を使うことは愚か、それに触れてはならない。触れたら最後、その力に飲み込まれてしまう。
「それは、君に素質が無いわけではない、君があるものを持っていない。いや、君達か。君だけじゃない、エルフ以外の種族はそれを持っていないのだ。だから、教えることも出来ないし、教えたところで破滅をもたらすだけだ。」
そんな言葉をレレイは聞き、残念な雰囲気を出しているが、納得していた。あの本の一件以来、彼女はウェルスの言葉をある程度信じるようになった。そして、ウェルスは、そんな彼女に嘗ての弟子である、名もない不死を思い出していた。今日も二人の修行は続く、それは友の為に、自らの欲を押し止めたその志を胸に…。
《アルヌス・駐屯地内》紀子
私が、救出されてから数日がたった。
あの時、私と一緒に救出されたエルフのサリーナさんは、私とは別の部屋で回復を待ってるみたい。
あの人は、この世界に連れてこられた私にとって支えとなってくれた人。奴隷としてのあの過酷な日々、それをあの人は私の心が壊れてしまわぬように、親身にしてくれた。彼女は、知識階級の奴隷だったみたいで私とは扱いは違ったけど。
今日、私はあの人の病室に行く。今までのお礼と、これからの事を話さなきゃ、これからは私がサリーナさんを守っていかなきゃならない。日本の作法とか、そう言うのを教えてなんて事を。
そして、病室に着くとサリーナさんが私を出迎えてくれた。腱の切れている足をを、ベットに隠しながら、見えない目をこちらに向けて振り向いた。
「四日ぶりね、紀子。何回も何回も同じ質問ばかりで、飽きていた所なの、貴女が来てくれて本当に嬉しいわ。」
彼女は、とても美しい。エルフっていうファンタジーとかに出てくる、そんな神秘的な種族なんだけど、それでも私達に存在しない、そんな貴賓が伝わってくる。
「今日は、何か御用があって来たの?」
「いいえ、暇潰し。解放されてから、基地の中にずっといるから、この前してた話の続きを聞きたくて。」
「私たちの王様の話?良いわ。
王様は考えていたの、私たちを救ったは良いけど住む場所が無いってことに。そこで、誰も近づかない古の龍達の住む土地、そこには文明と呼ぶには余りにも粗末な建物と、蛇頭の人々がいたの。
王様はこの人達と話し合いをして、私たちはソウルの文明を彼等に与える見返りに、そこに住むことが出来るようになった。
その土地の森には私たちが、一部の人達は交流を深めていつしか肌が黒くなっていった。
王様は長い長い間、私たちを指導して私たちは国を作っていった。後に王様の親友の竜に股がった人が出てくるわ。
これが、王様の建国神話。私も一万年位生きてるけど、教わった岳だから詳しくはわからないわ。それでも、私たちエルフの王様は今でも、その人だけ。」
昔話を嫌な顔すらしない彼女は、むしろ生き生きしてる。もしかしたら、この話を誰かに伝えたかったのかもしれない。
「ねえ、今度は紀子。貴女達の事を教えて下さる?ここの人達は、帝国の人々のソウルとは、違うソウルを持っているからちょっと聞きたいわ。」
「ええ、良いですよ?」
ああ、早く日本に帰れないかな。きっとこの人も喜ぶと思うのに。
《西方砂漠・東部地方》アッシュ
砂漠の旅も後半に差し掛かって、徐々にではあるが緑も増えてきた。道すがら、珍しい草木を火守女に質問されて回答する、商人達は彼女の事を信頼し良好な関係を築く事ができてる。
俺はどうかって?昔から話す人話す人、不死人ばかりだったし、どちらかと言えば社交的ではないからな。
あんまり良い顔はされてない。
そう、巨大なサンドワームが隊を襲った後は、特に『こいつ人間じゃない』なんて思った顔をされてた。
あんな小さいワーム、カーサスのワームに比べればマシだよ。
そんな、旅もそろそろ終わりだと言う頃、火守女がなんか、一人で微笑ましそうにニコニコしていた。
「どうしたんだ?そんなに笑って。」
「灰の方、それが私と同じようなソウルを持った人が楽しそうに、ご友人と話をしているのを見ると、とても安らいで、自然と笑みが溢れてくるんです。」
「ほぉ、と言うことはその女性が今代の火守女かい?」
「いえ、どちらかと言えば、寄り代となるはずだった方です。ですが、私が今もここにこうしていますので、彼女は自分の人生を歩めています。」
「そうか。」
何はともあれ、火守女が嬉しそうでよかった。
これから俺たちは、この地に逃げ延びてきた神の生き残りの住む地、ベルナーゴを通りアルヌスゲートを目指す。
ああ、『ハーディ』殺したらどんな色のソウルが手に入るだろうか?どんな武器になるだろうか。まあ、敵対は程ほどにしておかねばな。火守女からはくれぐれも、ソウルを集めない様に、と言われてるからな。でも、ちょっとだけなら…良いかなぁ?ああ、早く合ってみたい。
アルヌスには、あの嘗ての師の男がいるはずだ。何とかして、協力を得られるようにしなければな。向こうの世界にはあの男の知り合いが、侵入してしまったはずだ。
尻拭いは、小人がやるべきだ、
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