火の神フラン、共に戦ったことも。聞いたことも無かった神の名。グウィネヴィアは、そこに嫁いだと言う話を聞いたウェルスは、火の神フランがいると言われる土地に赴いた。
そう、赴いた筈だった。そこは、何もないまるで廃墟のような都市が広がるばかりか。まるで、灰の時代に戻ったかのようなそんな、寂れた風景が続いている。
海を渡らねば来ることも出来ないこの土地は、火の恩恵を受けることもなく。何もかもが、灰の時代に近い。
生物達は弱く、龍に怯える日々を送ったあのときと同じように、草木に隠れ、今は飛竜たちに怯えているのか。
嘗ての遠征で古龍達は狩尽くされたが、この安定した姿こそが、世界の有り様だったのかも知れない。
ウェルスは別に後悔をするような、そんな存在ではない。ただただ、嘗てのあの日を思いだし、今でも戻りたいとそう思っていた。
そんな廃墟に、小さな小さなソウルが見えた。それ等は弱っている。非常に衰弱しているようだ。
そして、それらを見るになんて事はない。
「ただの消え行く神の末裔か。」
そんな言葉を聞いたのか、その存在はウェルスに近付いてくる。ウェルスはそんな眼中にない存在が、近付いてくるのを気にすることもなく。目の前にそれが現れた。衰弱し今にも死にそうな、そんな姿をしている。
少女の姿をしたその小さな神は、墓王ニトと同じものを司る。ニトがその力を持っているために、少女は非常に弱く力を手にすることは不可能であろう。
その少女は名を『ハーディ』と言い、仲間を救ってほしいとウェルスに頼み込んだ。
《アルヌス》伊丹
伊丹は決断が出来ないでいた。テュカに真実を伝えれば、テュカが壊れてしまうかもしれない。だが、逆にこのまま仮初めの生活の中にいたとしても、何れは記憶に綻びが生じて精神異常を起こすかもしれない。
進むも地獄退くも地獄な、こんな状態を伊丹は非常に悩んだ。だが、ウェルス彼にテュカを任せた場合きっと完全に壊されたあと、自分の知らない何かに作り替えられるという事になりかねない。
伊丹の分析によると、ウェルスと言う存在は、『古い』。それはもう古い存在だ、まるで人間を昆虫や他の動植物と同じくらいにしか見ていない。分別は有るがその分別は、時によっては余りにもねじ曲がったものとなり、加減の無いものとなる。
何より、テュカをテュカとして見ているのではなく、『エルフ』という種族単位の存在でしかないと、そう捕らえていてそれ以外は、どうでも良いと言った。そんな存在だ。おそらくは、ダークエルフのヤオはウェルスに見初められ、ダークエルフというものを救うために行動を開始したのだろう。
契約に対しては従順に守る事から、そこら辺は常識的なのだが、逆に言えば契約さえなければ、何かしらやりかねない。もし、皇宮で自衛隊との契約が無かったら、どうなっていたのだろうか?それを想像するだけで背筋が凍る。
そんな危険人物に、テュカを一人で預ける方がおかしいのだ。それでも、期限は刻一刻と過ぎていく。伊丹が皇都に再び派遣されるのは、後3日と無い。その短時間で、結論を出さなければと躍起になっていた。
しかして、結論は出ず最終日テュカを、出発時見たのと同時にウェルスに言われた言葉から、伊丹は炎龍討伐に赴いた。
《アルヌス》ウェルス
やって来たか。もう少し時間がかかると思ってたが、存外心変わりとは早いものだな。これも愛?いや、優しいからこそ自らのトラウマを抱えているからこそ、こんな結果になったのだろうな。
「来ると思っていたよ。」
そう聞くと彼は苦虫を噛み潰したような、そんな顔をしてこちらを睨み付けてくる。
「そりゃどうも。」
ふん、これはまた嫌われたものだな。仕方ないことだ、こうでもしないと邪魔物が来たとき、炎龍退治が出来ないからな。俺は手を出さない、自力でやらせる。
「準備はとっくに出来ている。後必要なものは時間だ。その点、君の車が有るようだから気にする所でもないか?」
私に対して憎悪が渦巻いているが、きちんと押さえ込んでいる。流石は、歴戦の男であるな。
彼の視線は私の後ろに立つレレイに向けられているが、彼女は少し変わった。より実戦向けの戦闘技術をこの短期間で教えたが、海綿のようにみるみると吸収していく。
一流の魔法戦士とは、いかないがそれでも二流以上だろう。姑息な戦い方をすれば飛竜ですら、倒すことは可能だろう。ただ、実戦不足感は否めない。
彼女の精神はソウルの使用により、少し磨耗をし始めている。廃人にはならないが、それでも人格が少し荒っぽいものとなるだろう。
その証拠に、服装も緑と白を基調としたものから、藍色を基調としたものに変化している。
性格の変化に伴い、趣味も変化している。マヌスの研究通りだな。これまで色々な数を見たが、皆これに当てはまる。
伊丹はそれに気が付いたのか、ますますこちらを見る目が厳しいものとなっているな。
そんな空気の中、ロウリィは伊丹に近づき、キスをする。まさに神へと至る豪胆さは有るとすれば言えよう、だが強制的に誓約をするとは…。
まぁ良いだろう。彼が死ににくくなるのだから。
「では、準備が整ったのなら行くとしようか?龍狩りへ。」
少しでも誤解を解かなくてはな。エルフは、小人は全ての鍵だ。あの悲劇を繰り返さない為にも…。
《グラス半島・ピド村》ソラール
この土地の管理者達は何をやっているのか、実に実に不愉快だ。何故、盗賊たちを野放しにするのか、理解に苦しむ。この帝国という国も、国土を広くするあまり内政を疎かにしているのではないか?
アストラはとても平和であった。確かに戦争や動乱は歴史上有ろうとも、盗賊や野盗の類いは希であり、その殆どは国家の後ろ楯による、情報戦の類いだった。
我らがロードランを巡礼していた時、外の世界では盗賊など皆無だった。不死人が蔓延しても、政治は機能し街道は整備されていた。流石に俺が再び目覚めた頃、灰の時代には国も何もかもが崩れていたが。
それでもこれ程の頻度ではなかった。
「お~いソラール、そっちは片付いたか?」
地面の死体に突き刺した剣を引き抜くと、ズブリと引き抜けた。
やはり、生者の相手を殺すのは心に響くものがある。このものたちも、失政を行う貴族の被害者であるのだ。丁重に葬りたいものだ。
世話になった村の人々の為にも、俺がいなくなるわけにも行かないが、そろそろ言い出した方が良いのだろうか?
その日の夜村に戻った俺は、村の皆を集めてもらいこの村を出ていく旨を伝えた。
皆俺の事を止めてくれたが、それでも俺の決心は太陽のように燃え上がっている。
剣での戦いかたや、格上との戦いと戦術を彼等には伝えてある。もし、盗賊にあっても彼等は並の腕では無いから、乗り越えられる。
俺は行かねばならない。アルヌスにゲートが開いたと、それが帝国が不安定になっている要因であろう。それを取り除くために、いざ参らん。
村の民よ貴公等に太陽の導きあれ!
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