ウェルスが気付いた時には既に始まっていた、【遠話】の奇跡を介して、神々の国に知らせが入った。
嘗て小ロンドにおいて、国を呑み込んだ厄災、深淵が再び発生した。
それを聞いたグウィンは、頭を抱えどう対処するか考えに耽っていた。
数百年前にアルトリウスを派遣し、食い止めた深淵がこの世に現れた。
今度の深淵は、小ロンドのものとは遥かに毛色の違うもの、グウィンが最初に思い出したのは、たった一人の小人。名を忘れられた『深淵の王』たるそのものを思いだし、対応を決意する。
そして、アルトリウス率いる深淵の監視隊がウーラシールに派遣された。
その監視隊に悲劇が訪れる。
派遣から数日後、監視隊からの連絡が途絶える。神々に激震が走った。グウィンは神の刃を方々に散らせ、ウェルスの捜索を命令した。
その時、ウェルスは極北の地『最初の火の炉』にいた。火の陰りが始まっているか、確信を持ちたかったが故に嘗て道を閉ざした場所を通り、禁じられた地に足を踏み入れた。
彼がそこで目にしたのは、辺り一面に広がる灰と、未だ堅牢に立つ、火の搭。
だが、そこにあったはずの暖かな光は、初めてその地を訪れた時よりも明らかに弱くなっていた。
それを気付くものは、ウェルス以外では誰一人いなかった。
禁じられた地故に、王の刃がここに侵入することはなく、ウェルスがいなかったが故にアルトリウスは、危機に陥いっていた。
キアランは焦っていた、このままではアルトリウスが危ないと、警笛がなっている。二人は数ヶ月前に契りを交わしたばかりであり、直の事それに拍車がかかる。
アルトリウスの相棒、シフが単身ウーラシールへ向かってしまったのも気がかりだった。
彼女は唯一探索されていない地、最初の火の炉へと足を踏み入れた。彼女も初めて足を踏み入れる地、まるで燃え尽きたかのような世界に、戸惑いながらも進む。
彼女の勘は当たり、そこにはウェルスが火を眺めるように佇む。
声を掛け事情を説明すると、ウェルスは直ちに動き出した。
そんな時に、時空がねじ曲がった。何者かが、時間を遡りウーラシールに侵入する、その物は人間性を帯びており、何度も死にながらウーラシールを徒覇する。
その者が何者であったのか、存在自体を隠蔽されるそれは正しく英雄の様であった。
アルトリウスは瀕死であった、そこに現れたるは最愛の妻キアラン、そして師であるウェルス。鉢合わせになった不死人。
不死人等眼中に無いのか、キアランはアルトリウスに駆け寄る。
対称的にウェルスは警戒を強める。
得たいの知れない存在を前にしているにも関わらず、不死人は、興味も無さそうに横を通り抜け、下層へと降りていった。
瀕死のアルトリウスを癒すために、ウェルスが側に立ち深淵を操り自らの身体で肩代わりする。
三人は数時間そこにとどまると、戦闘音が響き渡りやがてシフが下層から戻ってきた。
後にウェルスはアルトリウスから、深淵の主マヌスの名を聞く。ウェルスは信じられない、という顔をしたのだった…。
《山道》伊丹
ヤオと、その他のダークエルフ達に道案内を頼み、山の中を炎龍へ向けひたすら行軍する。
初めこれを嫌がったテュカを、説得するのに時間がかかるかと思ったんだが、レレイが催眠魔法を使い、テュカを眠らせてくれたお陰で、すんなりと事が進んでいた。
そんな時、最後尾を進んでいたウェルスの足が急に止まった。周囲を見渡しているが、何かを察知でもしたのだろうか?ロウリィは、気にもしていないがどうしたんだ?
「おい、どうしたんだ?何か、見つけたのか?それとも、まさか炎龍が巣に戻っていったとかじゃないだろうな。」
「いや、こちらに視線を感じた。ねっとりとした嫌な視線だな。伊丹、お前立ちは先に行け。どうやら招待状は私にだけ来ているようだからな。」
要するに妨害を一人で引き受ける、と言ったところか?
「炎龍退治は俺達に任せて、どうぞ行ってきてくれ。こっちに気が向かれたら、目的を達成できなくなっちまうからな。」
「ああ、直ぐに追い付く。それまで一人として死ぬなよ?」
ウェルスにしちゃ、やけに心配するじゃないか。そりゃあんな化け物相手に、普通の人間がどうかしよって言うんだ。心配くらいしてくれるか。
《山道・脇道》ウェルス
伊丹達と離れて、気配があった方へと進んでいく。あの気配は懐かしいものたち、だ。
未だに存在していたとは、最早国という体を成さないそんな連中だったのだがな。
「おい!そろそろ出てきたらどうだ?ロンドールの者達よ。」
木々の影から人影が一人また一人と現れ、私の周囲を取り囲む。
数での戦闘か?たとえ大人数相手だとしても、力量の差が有りすぎると思うが?
しかし、臭いな亡者のダークソウルの腐った臭いがする。
リーダー格であろう貴婦人のようなものが、前に出てきた。
「お久しぶりですね、深淵のウェルス。いや、今は輪の都の騎士と、そう名乗っているそうですね?自分が嘗て捨てた都の名を騙るなんて、滑稽に見えますよ?」
「良く言う。姿を偽ってまで、生者に見せかけたいお前たちに、言われたくは無いな。なあ、亡者ども。」
殺気が濃くなる、いつでも戦闘に移行出来るように身体中にダークソウルを巡らせる。
何かしらの罠がある可能性も否定出来ない、先制は向こうに譲る形となってしまうな。
「お辞めなさい!私たちは、彼と話をするためにここまで来たのです。それをこんなところで不意にしたくはありません。今は矛を納めなさい。」
まるで生者のように、理性的に行動する亡者を見てやはり侮れない存在だと、ウェルスは思った。
長話をしている暇など無いのだから、さっさと話を初めて欲しいとも…。
「それで?何の話をしに、ここへ来たのかな?亡者が今の時代になってなお、自分達だけの国を得ようと考えているのかな?」
「はい、ただ私たちは貴方へお別れをしに来たのです。」
「お別れ?」
「私たちは、これからゲートをくぐり向こうの世界に向かいます。そこで、新たなロンドールを建国するのです!」
それほど向こうの火は弱っているのか。あまりにも急すぎるな、元々弱っていたにしては、徴候が見られなかったが、どう言うことだ?
世界が違うというから、火のシステムも違ってきているのか?
「フフ。何かお困りのご様子で、でも私たちを止めることは出来ない。火の陰りは、世界の崩壊につながる。そして、それは意図的に起こすことも可能なの。それが、ロンドールの研究によって出た答え。
燃えてる物を消すのは簡単ですもの。」
「それで、その火を手に入れてなんとする。この世界への復讐か?」
不適な笑みを浮かべて張り付いたような顔を、こちらに向けながら近づいてくる。
「いいえ、私たちは貴方へ個人的な怨みがあるから、貴方だけはそのときは、殺してあげる。それではごきげんよう。」
「させるとでも?」
直剣に風を纏わせ一挙に奮うが、殺した瞬間手応えがなかった。闇霊状態となってウェルスと話をする。
当たり前の事だ、力を持ってる相手に対して正々堂々と正面切って戦うほど、バカではない。
「逃げたか、果たしてどうするかな…。だが、まずは目の前の事を片付けなければな。」
《帝都》アリス
オッス、私アリス。最近、ジークバルドさんと一緒にいる時間が凄く長くなった。
来る日も来る日も訓練、ジークバルドさんは、私が思った以上に強い人だった。
特にあのツヴァイヘンダーとか言う巨大な剣。普通あんな巨大なもの、常人が振るえる物じゃない、にも関わらず難なくそれを扱ってるんだから驚き。
そうそう、そう言えばね最近私と彼の噂が騎士団の中で、出回り始めてる。
それはもう尾ひればかりじゃなく、背鰭も胸鰭もついてそりゃもう事実と掛け離れたそんなのが、こっちとしては迷惑なんだけど。
彼の力になれるなら、正直それでも良いと思ってるけど。
でもねぇ、歳が離れすぎてるし何より彼、人じゃ無いみたいだから。
前に聞いた話だと、彼は元々人だったけど火の無い灰として、この世界に甦ったなんて言うの。
まあ、神様がいる時点で正直不死身の存在がいてもおかしくないけどなんだろう。こう、哀愁漂うって言うのかな?そんなオーラを出す時がある。
友人と早く合流したいともいってたけど、彼がいてくれれば百人力だって。凄く大きい人みたい。
彼が向こうの世界に向かうには、まだまだ準備が足りない。何より常識かもしれない。
だったらこの薔薇騎士団のアリス、全力を持ってサポートしてくぞー!
ちなみに最近良く、バケツ頭の人の情報が耳にはいる。なんか、すごい人みたい。
《地球・灰の世界》
そこにいるのは、人か亡者か…。
エジプトの古い町並みの中に、似合わない。そんな服を着た亡者がさ迷っている。
あぁ、結局のところ彼らもまた呑み込まれたのだろうか?いや、多くの犠牲を払いつつ前に進む一人だけそんなヤツがいた。
彼の頭にあるのはただ一つ、この世界から出たいと言う逃避のみ。しかし、それは自らの心の支えとなり亡者のようになってもそれだけは見失わず、戦い続けていた。
もう、自分がなんだったのか。そんな事などとうの昔に忘れてしまった。時を刻む道具は、その性質を歪められ彼等がこの世界に入ってからいったいどれ程同じ時間を過ごしていたことだろうか。それでもなお、動き、もがき、足掻いて、遂にはこの地を納める『神?』と合間見える。
闇を象った蛇の神。それは既に事切れ、あるのは玉座と周囲を囲う蟲たち。一つの意思を持ったかのように動くそれは、闇を孕み蛇の神の内を食い破りながら、彼を襲う濁流となる。
其を、紙一重で回避するも2撃目に飲み込まれ身体を、バラバラに分解される。そして、篝火に戻るもまたそこに向かう。その姿は、地球のどの神話とも似つかない余りにも弱い英雄が産まれようとしていた。
それを影より見るは、向こうの世界から現れた異様な集団。扉が開くのをただ見つめ、彼を監視する。全てはロンドールの為に、彼を利用するだろう。
どうしても、シフを殺したくない。ならば、平行世界にしてしまえば良い。
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