私は護る小人を   作:丸亀導師

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第26話 討伐

三人と一匹の影を、複数人が追いかけている。

逃げているものの一人と同じような、藍色がかった服を纏い陶器の面で顔を覆うそれらは、執拗に追いかけていく。

 

しかし、逃走は長くは続かない。何時しか追い付かれ、周囲を囲まれる。

逃走者の一人、偉丈夫の男が大剣を片手で保持し一人に叩き込む。反応が遅れたのかそれは諸に食らい、真っ二つに、切断された。

 

片や藍色の服の逃走者は、攻撃を見事に反らしつつ一瞬の隙をついて、心臓を抉る。

その動きはまるで踊りのごとく、流れるようなその動きは追跡者を翻弄する。

 

人の形をしていないものは、その獣の姿から出される俊敏性、意表を突く動き。剣の腕は一人前ではないが、それでも一人一人を相手するには申し分ない。その剣技はアルトリウスのものに酷似し、自らのオリジナルとして改良を加えられた動きだ。

 

そして、黒い鎧の男は。何処から取り出したのか、鎌のような長大な武器を使い、刺客の足を文字通り刈り取り、もがき苦しませ放置していく。

残酷な方法をとるが、しかし敵から逃げるに殺す必要はなく。傷を負ったものを放置するほど、刺客に感情が無いわけがない。

 

一人また一人と倒れ伏し、数名が残り、諦めたのか襲ってくる事は無くなった。

 

何故彼等は狙われるのだろうか。それは、ウーラシールの折り、最初の火の炉を見たものがいる、それは始まりの火が弱っている事を知ってしまった。

ウーラシールの地下で、アルトリウスは、グウィンにとって都合の悪いものを見た。それは、小人の最初の王、それに対する裏切り行為だった。小人の反乱を恐れた。

 

そして、あわよくばその従者であった、それを知る最後の証人をも葬ろうとした。

 

火の弱まりは彼等を殺しても、止まることはない。それの予兆は現れ始めていた。世界に不死者が現れ始め、『小人』が復活するのではと、神々の中の恐怖は膨れ上がっていった。

 

ウェルスはそんな場所から二人と一匹を逃す、火の力の及ばぬ場所。ファルマート、理を灰の時代としウェルスが力を教えた神々の大陸へ。そして、神々へのウェルスの願いは果たされる『私が逃がす者たちを受け入れよ』、それが契約に書かれた。恩とはこういう為に売っておくものだろう。

 

ファルマートの神々は、それを受け入れた。

ウェルスは、ただ一人火の大陸に残り、追われ続けるものとなった。

 

 

 

《火口・炎龍の巣》伊丹

 

俺達は危機に瀕していた。なんとも俺の考えが、浅はかだったのかもしれない。炎龍の性質を、他のワイバーンとかそういうものと同じと仮定してしまったのが、間違いだった。

 

今、俺達の目の前にいるのは間違いなく炎龍だ。

炎龍なのだが、様子がおかしい。酷く落ち着いている、すぐさまブレスを吐いて来そうなものだが、ものすごい違和感だ。

 

傷ははっきりとあって、俺達が跳ばした腕がちゃんと…有る?

まさか、この龍は別のやつか!

 

「ヤオ!本当にここで良いんだよな!!」

 

「間違いない、我等が間違う事はない。絶対にここだ。」

 

「じゃあ何で、こいつはここにいるんだ!間違ったんじゃ無いのか?」

 

よくよく見れば、ダークエルフの連中も動揺を隠せていない。だとすれば、こいつは何処から来たんだ?顔も姿も同じ筈なのに、ここまで気性が穏やかに育って人間に慣れてる。

まるで、飼われていたように。

 

そこで、ふと巣の下を見る。そこには俺達が倒そうとしていた炎龍が既に事切れていた。

全ては無駄だったのか、と問われればそうではない。なんせ目の前には、もう一匹の龍がいるからだ。

 

対峙しても一向に動きが無い。

少し冷静になるにつれ、ある疑問が浮上した。

そう言えば、ロウリィからの連絡が先程から途絶えているんだが、何かあった可能性がある。

 

その時だ、洞窟の外側から金属が弾き会う音が聞こえてきた。ロウリィが何者かと戦闘を行っている。

それも、複数か?亜神とまともに戦える時点で、もはや身体能力は人間のそれを超えているはず。

 

ちくしょう!ウェルス、あいつはなにやってんだよ。龍以上にヤバイ相手と戦わなくちゃならないなんてな。

本当につくづくついてないな。

 

 

《火山・表層》

 

黒い服の少女ロウリィが、相対するは黒色の鎧に灰色の破れたフードローブを身に纏い、若干金の刺繍が見てとれる。そんな、騎士だった。

 

違うのはその気配、まるでウェルスをもっと汚したような、何か泥のような、そんな気色の悪いもの。

にしては、戦闘開始時の襲撃にしては、余りにも礼儀正しくお辞儀をしてから始めるなど、もしかすると紳士?なのかもしれない。

 

ロウリィはそんな相手に焦っていた。この騎士、筋力がそれほど有るという訳でもない、にも関わらずロウリィの一撃を回避し、見切りを始め先程ハルバードが弾かれたのだ。

 

幸い、隙が出来た訳ではなかったがそれでも亜神となってから、随分と感じなかった、戦闘での危機を感じ、

普段からはあり得ないほど一撃に対して警戒をする。

 

敵の手にしている武器は、直剣なにか少し加護のようなものを受けている、魔法剣の類い。

それだけが、危機を煽っている訳ではない。

 

なんと、亜神ジゼルが彼の後ろに控えていて更に新生龍が2体もいる。

 

「お姉さま、潔く降伏してください。この戦力差でお姉さまが、勝てるなんておもってないでしょ?だからさっさと、諦めてくれよ。」

 

「あんな女の嫁にぃ、誰がなるもんですか!!」

 

強がっては見たものの、戦力は圧倒的不利どうしたものかと思案していると、敵対している騎士が言葉を発した。

 

「貴公、それほど自らの意思を尊重したいというのか?私も、正直気が引ける。そこでどうだろうか、私を彼女よりも高額で雇うと言うのはっ」

 

なんと、奴は商売をし始めた。よりにもよって今である。

 

「ナニを言っているんだ。お前には炎龍の分もしっかり働いてもらうぞ。お前のせいで、こっちはかなり迷惑を受けたんだ。」

 

実のところジゼルも、この男を手放せない。炎龍を殺したのは何を隠そうこいつだ。何度倒れても、殺しに来る正しくゾンビアタックで、炎龍を殺し尽くした。

ジゼルとしては、小飼のものの代わりを勤める存在、そう易々と引き下がれない。

 

そこに伊丹達が来たのだ、なんとも言えない空気が流れている。正直戦闘する空気ではない。

 

「ほう、貴公等何やら楽しそうにしているではないか。」

 

更にウェルスまで来た。

龍達は怯えていた、ヤバイ奴がいると本能で理解した。絶対に抗えない、そんな相手を目の前にして自ら屈服を選んだ。頭を垂れ地にひれ伏す。

 

「ウワァー要注意人物まで来ちまったか。主上さんから聞いた話だと、めちゃくちゃヤバイやつじゃんか。」

 

「龍と人の混血?のような種族だな。その主上とやら、私の事を知っているようだが、何者だ?」

 

「ジゼルのぉ、主上はハーディ。生け簀か無い、女が大好きな女神よぉ。」

 

ウェルスの眉間に皺がよる。

 

「あの小娘か。そんな趣味を持っていたとはな。にしても、伊丹よ。その様子だと炎龍は死んでいたか。そうか。では、テュカのトラウマの元を断ち切る、別の方法でも考えてみるか。例えば、そこの逃亡騎士を殺すとかな。」

 

出て来て直ぐに物騒な事を言い放つ、少々イラついている様子のウェルス。

そんな彼を見ていた逃亡騎士は、逃げの一手に出ようとする。

 

「これはこれは、ウェルス殿ではありませんか。どうか、見逃して欲しいのです。えーとですね、別の龍ならまだ火山の中に居ますので、そちらを討伐願いたいです。」

 

そう言い残し、何かを砕くと忽然と姿を消した。

周囲は呆気にとられ、ジゼルは顔面蒼白となっていた。

 

「さて、貴様に似合うのは吸精か?それとも挽き肉か、選ばせてやろう。死んでいった、エルフ達の報いを受けよ。」

 

流石にまずい、そう思っていても龍達は屈服しているし、逃げ場など当の昔に無くなっている。万事休すと思われた。

 

「えっ?主上さん、が直接お話になるんですか?わかりました。主上さんがウェルス貴方とお話が有るということデス。」

 

なんとも良いところでハーディが、彼女を助けた。そして、ウェルスの真実を伊丹達は知ることとなる。

そして、時計の針が動き出す。

 

 

《中国》

 

砂漠に並べられるは、新・旧戦車が隊列を組み、今か今かと待っている。

それだけではない、歩兵や自走砲など火力を集中して投入しているようだ。

砂漠には塹壕が構築されており、さながら世界大戦のような戦いか。

 

遠くで黒い何かが蠢いている。

それは、地を埋め尽くすほどに動き、前へ前へと進みつつある。大きさは小さいものはモルモット程度、大きいものになると象並だ。

 

それがうっそりと進んでくる。動きは遅いがその数と、泥のような姿は非常に不気味だ。

いったいどれ程これらと戦闘を行っているのだろうか?

 

体が脆いために、倒すのは容易であるが倒れても倒れても、次から次へと沸きだしてくるそれに兵士の士気は落ちている。

 

じわりじわりと、泥は範囲をひろげている。

いずれは防衛戦と接触することになるだろう、そうなった場合ゆっくりと後退し、最終的には核の使用も辞さない。

 

核が効くかは未知数だ。通常兵器は効果の無いものとなる。だが、この泥は何故か避けて通る場所がある、そこはまるで結界のように円形にすっぽりと抜けている。

 

共産党は気が付かない、嘗て自分達が潰した古い文化宗教の中に、この泥を止める手だてが存在したことに。

 

 

現在泥の直径は100キロ、いずれは国をも呑み込むかもしれない。そんな恐怖が人知れず蔓延していた。

 




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