魔女の都イザリス。神の一柱の名を冠したこの都は、ウェルスがついた頃には、止まることの無い混沌の炎に呑み込まれていた。
きらびやかな神殿も、人々が行き交う町並みも全てを呑み込んだ。
発端はグウィンの火継ぎであった。
イザリスと、グウィン二人は契りを交わした間柄、二人の婚姻を嘗てのウェルスは祝福し、2人の間に出来た子はウェルスが鍛えた。長女はその奇跡を蘇生の力とし、長男は奇跡を戦いの力とした。
しかし、子はグウィン自らが追放し、イザリスはそれに激怒してアノールロンドを去った。
イザリスが去った後、グウィンは孤独の身となり城には陰鬱な空気が立ち込めた。
そこからグウィンは狂ったように性を貪った。それを良しとしないニト等神々は、グウィンを裁判に掛け王のソウルを奪い、グウィンを火にくべた。
噂と真相は遥かに違うものだが、グウィンが火を継いだ事に代わりはない。
イザリスは哀しんだ、嘗て愛した者の変わりように、愛した者を、完全に失い手の届かないところに行ってしまった事に。故に、グウィンの火を取り戻そうと動いた。
しかし、神々はそれを良しとせず力の差は歴然となった。そこでイザリスは、『始まりの火』を作ろうとする。愛ゆえに、傲慢にも自らに造れぬ物はないと盲目になり、大いなる失敗をする。
ウェルスはそれをソウルから読み取り、嘗ての友との日々を懐かしみ、そこに一輪の花を手向けた。
その花は生涯渇れることは無いだろう、イザリスの亡骸に根をはり、大きな木となることだろう。
ウェルスはこのとき気付かなかった、イザリスの都の中に未だ生き残っている魔女の娘達がいたことを。
余りにも濃密なソウルによって阻まれ、見つけ出すことも救い出すことも出来ない。
哀れな娘たちを救うことが出来るのは、果たして誰なのだろうか。
《火山上空》
2機のF4が空中に待機し、攻撃を今か今かと待ち続けていた。しかし、待てども待てども命令は無い。
いったいどうしたというのか、と思考を巡らせていると無線が入った。
内容は端的に言えば『帰投せよ』だ。理由を問いただせば、帰ってくるのは『危険生物の無力化の確認がなされたからだ』と、そう言われる。
正直納得が行かない。あんなに巨大な生物がそんな数分で殺されるだろうか?
なんせ、自分達もアレと空中戦をしたのだ、その機動性から自走砲では追従出来ないし、携帯型の地対空ミサイルでは威力が低すぎる。
下でいったい何が行われているのか、気になって仕方がない。だから決めたのだ、帰投したら質問攻めにしてやると。
《ロドムス渓谷》
そこに有るのは巨大な砲を備えた、鉄の塊。それが天を仰ぎ見て今か今かと待ち続けている。
未だに見える龍達に照準を会わせ続けるが、果たして射撃の中止が出された。
何が有ったか知らぬが、伊丹達から連絡が司令部に入った。曰く、『炎龍の死亡を確認した、敵対勢力と思われる者と接触しその場で対話した結果、相法の誤解を解消することに成功した。また、他の龍とウェルスが主従関係となり、龍の捕縛に成功した。』
そんな内容、司令部は唖然としつつも眉間に皺を寄せ『また面倒な事をしなければ』と、頭を抱えたと言う。
それよりも、何もせずに基地へと帰還しなければならないとは、何かモヤモヤする。そんな特火であった。
ちなみにダークエルフ達からは、何をしに来たんだろうか?という頭に?マークを付けられて見送られた。
ヤオ
何と説明すれば良いのだろうか…。私たちを捕食していた炎龍は、既に死んでいましたと?
そんな事聞いたら喜んで良いのか…。確かに、私たちを害するものはいなくなる、だがこのやり場の無い怒りは誰にぶつければ良いのか。
やはり、我々を害する事を良しとしたハーディか?
あの神の事を怨み続ければ良いのか?だが、それだけでは復讐も出来ない、ならどうすれば…。
「ヤオ、大婆様がお前を呼んでいる。」
いったい何だろうか?そう思い、大婆様から話を聞いた。我々エルフの成り立ち、神々との関係、過去の過ちそしてウェルスの事を。
子供の頃のお伽噺が今と、繋がる。それが私の今後を決めた。
~数日後~
《アルヌス》
会議室、そこに外交官や幹部が集まり、一人の男ウェルスと相対していた。
空気はお世辞にも良いとは言い難い、空気を悪くしているのは、ウェルスだろう。
そんな中、話を始めた。
「貴公等の世界、そちらにあるものが現れていないか?」
『あるもの』そういわれても皆一様に顔をしかめるばかり、そりゃ余りにも抽象的過ぎるが、一人だけそれを思いだし訪ねてみる。
「あるもの?とは赤黒い人影の事ですか?それとも、遺跡に突如として現れた燃え続ける剣等の事ですか?」
それを聞いたウェルスは、眼を見開き矢継ぎ早に言った。
「それは、螺旋状の剣か?そして、下に有るのは骸、それが燃え続けている。違うか?」
「いえ、形は色々有るそうですが、下の部分はかねがねその通りだそうです。」
「そうか…。だが、何にせよ役割は同じだろうがな。」
怪しげな雰囲気が、彼を纏っている。どうしてウェルスがこちらの事情を予想出来たのか、それが全員の気がかりだ。
「役割とはなんですか?だいたい何故貴方が、国連の機密事項を知っているんですか?ここは、地球では無いので言いますが、貴方がもしあれを知っているのなら、教えて頂きたい。」
ウェルスは、周囲を見渡して言い始めた。
「初め、君たち世界は、神が存在しない世界だと思った。何故、神話が有り、神という概念が有るにも関わらず存在しないのか、めずらしいものを見たと思っていた。
だが、今わかった。君たちの世界にも、神が存在していたと言うことを。
そして、私が感じた火の力は偽りではなかった。」
そして、彼は話し始める。断片づつ話していた、自分の世界の話を。物語のようにまるでさも、見てきたかのように。
そして、篝火の意味を…。
《地球・灰色の世界》
一人の学者だった者が、エジプトを越えヨーロッパへとたどり着いた。
道の無い道を通ったにも関わらず、余りにもすんなりと到達するところを見るに、やはり何かの思惑が有るのだろう。
生者のいないこの灰色がかった世界を、ただひたすらに走り続ける彼に嘗て考古学を学んでいた記憶など無い。
有るのは、この世界の事をいかに早く外部に知らせるか、ただその一つのみで彼は付き動かされている。
「待たれよ。旅の者よ。」
そのときだ、不思議な男が現れた。
目の前に現れたのは、紋付き袴にちょんまげ姿をした江戸時代の武士のような男。勿論考古学を学んでた人物、本来なら『サムライがいる』なんて思うだろうが、今彼にその記憶はない。
「某、前水戸藩主光圀が家臣、鷹取 宇右衛門助 孝康と申す。名は何と言う。」
「……。名は忘れた。邪魔をするなら押しとおる。」
「まあまてその方、火継ぎの儀式に選ばれたのか?実はな某も選ばれたのだ、非常に名誉な事だ。どうだ?自分の事を思い出せたのでは無いか?…。
むぅ、その方だいぶ死んだのだな。
生け贄として、贈られてきた類いか。」
哀れみの眼と言うのだろう。学者にとってはどうでも良いと言った感じだが、何か身の内に残っている部分に引っ掛かるものがあった。
「私は生け贄等ではない!ただ、自分の意思で来た筈だ…。」
「ふふっ、ハッハッハッハ!
お主、まだまだ人間味が有るではないか!名が無いのなら某が付けよう!」
それを聞いて、渋い顔をする。
「良い、俺の格好は学者の物だった…筈だ。なら答えは出ている。スコーラーだ。以後よろしく頼む。」
一人ぼっちの旅に仲間が出きる。それは、吉兆か不吉の前触れが、ともかく彼の拠り所が出来た。
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