私は護る小人を   作:丸亀導師

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第31話 太陽と陰

龍の書庫は非常に大きく複雑な構造をしていた。

だが、こんな場所にいるシース幽閉されているのと同じ事を、されているのに気が付いているのだろうか。

 

そこへウェルスとハベルノは降り立った。

不思議な事に兵士が出てくることもなく、まるで誘い込まれるように奥へ奥へと入っていく。

 

そして、途中二人は別れる事になる。

道が別れているのだ、一つは牢獄へと続いていた道。

もう一つはシースへと続く道。

少しづつであるが、外が騒がしくなってきていた。時間は無くなってきている。ウェルスは王との誓いにより死ぬことはしない。

逆にハベルは、シースを殺せるのならばこの身の犠牲も厭わないだろう。

そして、ウェルスは牢獄へと、ハベルはシースへと向かう。ここに、岩のようなハベルは死に、ハベルという亡者が幽閉されるだろう事が決定付けられる。たとえ神の種族であろうとも、王のソウルを持たない彼にシースを滅ぼすことは出来ない。

 

ウェルスは、嘗ての戦友の無事を祈りつつ更に奥へと進んでいく。牢獄、そこにはスキュラとなったもの達が収容され、それらは見れば明らかであるが手遅れとなっていた。

 

しかし、そんな中に小人と同じ姿をしたもの達がいた。

何と言うことだろうか、輪の都以外にダークソウルを身に纏うもの達がここにいるではないか。彼女等はウェルスに怯えた、今度こそスキュラにされるのではと。

 

ウェルスは言った。怖がらなくて良い、助けに来たと。

彼女等20数人、手に渡すものは嘗て儀式に使いし螺旋剣の破片。試作段階だったものを多くウェルスは、所持していた。龍狩りの名残を、そして彼女等とウェルスはとんだ。

長子と共に闘った最後の地、“山のような古龍”の地へ。

 

 

《アルヌス》

 

伊丹は目の前の光景に唖然とした。

先程まで、医務室があったであろう場所は綺麗に丸く縁取られ無くなっている。

 

確かあそこには今、黒川と栗林がいたはずだとそれを思い出し走り始める。

そこへ、何処から侵入したのか中世の鎧を纏った男と、目をティアラで覆った女性が現れた。

 

まるで、さも当然と言わんばかりに歩むその姿は何処かウェルスに似たものを感じる。

伊丹が彼を見ていたのを感じたのか、歩みを止めて言った。

 

「ちょっと話を付けてくるから、待っててねぇ!」

 

妙にハイテンションな存在、それが世界を救うとはこのときだれもが思わなかった。それどころか、どうしてか誰も奴の事を気にするものはいなかった。

それが通りすぎた後、伊丹の横にレレイが現れた。

 

「伊丹、絶対にあの人に着いてっちゃだめ。」

 

「あの人って今のか?」

 

静かに頷く。

 

「あれは、何者でも無い。余りにも色んなものが混ざりあって、最早あれ単体では収まりきらない。」

 

「どうして解るんだ。」

 

「ソウルが、見える。とてもとても、明るく、熱く、そして血のように紅い太陽のような。」

 

その後、伊丹等はアッシュとウェルスが何やら話をしているのをみていた、すると突如として彼等の姿が書き消え、建物も何もかもが無かったかのように、綺麗さっぱり元通りとなった。

いなくなった栗林以外を除いて…。

 

その後、栗林捜索のため小隊が結成される。そこにはバケツ頭と、玉ねぎ、そして一人の女騎士が嫌そうな顔をして並ぶ姿があった。

 

 

《帝都》

 

元老院大法廷にあつめられし元老達は、皇帝が我々に何を話すのかと今か今かと、待ち構えていた。

そこへ皇帝モルトと、ピニャ第三皇女が後を追って現れる。

 

本来であるならば、共にいるのはゾルザルでないとおかしいことだ。継承権の最も高い位置に存在していたのは、ゾルザル。つまり、後継者として皇帝と共にいなければならない存在が、すげ変わっているのだ。

 

では、ゾルザルがどうなっているかと言えば、非常におぞましいことに、血液が結晶化して人体を貫き死んでいたのだ。非公式にとどめられたが、まるで何かから逃げようとしたのだろうか。手を扉に掛ける寸前で息絶えていた。

皆口々に言った、『エルフの呪い』だと。(エルフの精霊魔術はソウルの使用を前提としているため、相手の体内のソウルを凝固、結晶化させることによりこのような事が可能。【結晶ソウルの活性】)

 

 

 

そんな事が起こり、ディアボは命欲しさにたまらず辞退。白羽の矢がたったのが、騎士団を率いていたピニャであった。

おしとやかな姫とは違い、自ら進んで事に当たる姿勢から民衆からの支持も厚く、なにより政務に関すればゾルザルよりも遥かに優れた才を持っていた。

 

皇帝が席に着き、声を発した。

 

「これより、私の後を継ぐこととなる時期皇帝、

ピニャ=コ・ラーダへの簡略的継承を行う。

突然となったが、現在我々は建国以来の強大な敵と戦いを行っており、私はその判断に失敗した。

私がこの戦争を始めた。

 

しかし、現在我々は無惨にも敗退し、今や敵がいつ本気を出すかによって国の命運が左右されている。

そこに当たって、敵国日本と友好的な関係を築いているピニャを皇帝に据え、私が一戦から身を引くことによりこの戦争に終止符を打とうと考えた。

 

これは、一種の賭けだ。敵が納得してくれなければ、何れはこの国は滅ぶだろう。だが、良いことに敵は非常に良心的だ、そこに付け入る隙は必ず存在する。

故に諸君等はピニャの、手となり脚となってほしい。

以上だ。ここからは、次期皇帝からの話となる。」

 

ピニャが前に出る。緊張した顔の反面、その足取りは確りとしたものであり彼女の覚悟がはかり知れた。

そして、彼女は言うであろう、帝国の今後を左右するものを。

 

モルトはそれを影でみながら、ほくそ笑んでいた。これで、自分がゾルザルのような死にかたをしなくても良くなったと。

それが誤りと解るのはいつになるだろうか。影はいつも、見ている。

 

《灰の大陸》~最初の火の炉~

 

そこに立つのはウェルス、アッシュ、火守女、グウィネヴィア(栗林)

四人は篝火を中心に座り、話を始めた。

向こうの世界の状況、闇霊、深淵の事を。

 

ウェルスは、ロンドールの死に残りが向こうに有る火を収奪することを考えていることを、アッシュへと通達し、アッシュはウェルスへ『向こうの火』と『こちらの火』の違いを伝えた。

 

そして、それぞれに補足をいれたのが、グウィネヴィアであり、火守女であった。

 

向こうの火継ぎは、初めグウィネヴィアが始めた。彼女は、強大な神話の生物に怯えるもの達が対抗できるようにと、深淵のシステムに独自の改良を加えそれを差し出した。

 

俗に言うプロメテウスの火、家具土の神等神話に登場する最初の火の原型であろう。

彼女は、深淵の記録の書き換えから、逃れる為にあの世界へと渡った事を話した。

 

ウェルスはとても信じられなかった。だが、愛するものが言うのならば真実なのかもしれない。

全ての元凶は自分自身だったのだと、だが彼女はそんな彼の心を見ているかのように、言った。

 

「あなたがあの怪物と契約しなければ、この世界は今でも古龍たちの世界のままだった」

 

ウェルスはそれを聞き、安心をしているがあの怪物の封印を解いたのは紛れもない自分自身であることに代わりはない。

幸いな事は、あの当時怪物自信もまた自分を失い、記憶に引っ張られていたことだろうか。

 

これによってウェルスのやるべき事は決まった。

彼は篝火から立ち上がり、徐に篝火に手を翳す。

 

「待ってください、闇の方。貴方に渡したいものがあります。」

 

「なんだ、火守女よ。」

 

「ルドレス様が古き時代に貴方に渡してほしいと、おっしゃっていた指輪です。きっとそれは、貴方の助けになるはず。」

 

「あやつめ、死してなお探求をやめていなかったか。

礼を言う。では、グウィネヴィア、そして火継ぎの王よ、行ってくる終わりを始めるために。」

 

そして、音もなく彼の姿は書き消えた。

 

「良かったのかな?彼に何も伝えなくて。」

 

「ええ、。あの方は、ウェルスは決して負けません。私が彼に言えることなど、最早何も無いのですから。

 

それよりも、この体を返さなくてはなりません。手伝って頂けますか?」

 

「ああ、勿論。その暁には、グウィネヴィアよ貴女のソウルが欲しいですな。」

 

「残念ですが、私のソウルは最早消えるのみ、武器等は到底造れませんよ。」

 

そして、彼女のソウルは燃え尽き、篝火の横で死んだように眠る栗林が存在していた。

 

「まったく、これだから古い時代の者たちは…。後始末大変だぞ。まあ、向こうの世界で火継ぎが始まっているのなら、行く意味はないか。」

 

アッシュは栗林を抱き上げ、歩き出す。祭事場へと。

 

 

 

《中国》

 

人が呑み込まれていく。酷くドロドロとしたものに呑み込まれ、跡形もなく消えていく。

ドロドロの中には無機物な巨人が立ち、降り注ぐ砲弾をもろともせずに前へ進んでいく。

 

ここ数日の間に戦況は一変した。澱みの中から這い出てきた巨大な石像達は、ありとあらゆる攻撃を退け防衛線へと進んでいった。

その防御力はいったい何処から来るのだろうか?

 

体は岩のようで、顔は無くそれはまるで物語に出てきそうな『ゴーレム』と言うのだろうか?

それによって一つ目の防衛線は破壊され、遂に澱みが漏れだした。

 

ゆっくりと確実に侵食していく、そして澱みの中から更に人に似た三メートル程のガリガリに痩せた、人々が歩き出す。

 

服はまるで古代ローマのようなそんな服を纏った、巨大なゾンビたち。

そして、それらとまったく違う人間サイズの頭が肥大化した、何か。それが群れのように外に出てくる。

 

ゾンビ達が何かを口ずさむと、青白い球体が放たれ、それが戦車を透過して内部の人間へ直接攻撃される。

硬い装甲も、強力な火器も最早意味をなさない。

 

一国のみでは防ぐことも出来ない。

彼の国は、決断した。世界に救援を求めて、全て嘘を交えて危機的状況と国連軍の派遣を要請するのだった。

 

国連は即決するだろう、彼の国の指導体勢を見直す見返りに軍の派遣を検討するだろう。

 

だが、それでもやつらの行軍は止まらないだろう。その術を知るものは、この世界では一握りの者しか知らないのだから。

 




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