私は護る小人を   作:丸亀導師

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第32話 王の帰還

山のような古龍の亡骸の近くには、小さな村があった。そこには龍たちの矮小な末裔たる、蛇人達が隠れ住み神々の軍にいつ見つかるか、いつ見つかるか、そんな生活を送っていた。

 

そこへ、一人の騎士と数十人の小人?に似たもの達が、現れた。

神の尖兵か?そう思い覚悟を決め、いざ彼等と話をする。

 

騎士の見た目は、遥か昔から伝えられた龍狩りの小人の一人に酷似しており、まさかと思った。そう、小人が其ほど迄に長生きなものだろうか?

もしかすると、あの憎き火の王の内の一人。小人の王なのではないか?

 

「これはこれは、小人の民がこんな辺鄙な場所へどうしたのですか?」

 

そう聞けば、シースから逃げていると言うではないか。

あの裏切り者から、我等の最も蔑むシース。あれが裏切らなければ、我々は深淵の奴隷達に負けることはなかった。

 

「良いでしょう。ただし条件があります。あなた方の扱う、『ソウルの魔術』。それを我々にも教えていただきたい。」

 

それを小人の王は快諾した。余程後ろにいる『小人擬き』が気掛かりのようだな。

それから時が流れ我々は気付いてしまった、王が連れてきた者は、非常に長き時を生きると言うことを。

 

それはまるで我々と同じではないかと。次第に我々と彼等は近付き、文化が芽吹き建物も建築されていった。石や岩が多いこの土地特有の建物が。

そして、我々は神殿を造り『山のような古龍』を崇め奉り、小人達はウェルスと名乗った王を中心に生活を送っり魔術は彼のウーラシールに勝るとも劣らぬ程に発展した。

 

小人達は山に生活するもの達は黒く、森に住み着く者たちは白く互いに特色が出始め、我々蛇人の中にも差異が現れ始めていたころ。

小人の王は、何かを思い出したかのように何処かへと旅立っていった。

 

 

《アルヌス》

 

消息不明となった栗林を探し、数週間の時が流れた。多くの町を訪れ痕跡を探すも見つかることは無し。

このまま、見付からないのではないかと、誰もが思ったとき3人の騎士が現れた。

 

一人はアリスと言う自衛隊と面識がある、とても利発そうな女騎士。そして、いつも彼女が連れている玉ねぎ鎧の巨大な剣を、肩に担いだ騎士。

ただ、一人だけ面識がない者がいた。

 

バケツヘルムに太陽の絵が描かれた鎧を纏った、かなり肉体的に優れた人物、名をアストラのソラールと言う。それらが、協力を買って出た。

 

なんと、あの日見た女性の事をソラールと言う人物は知っていると言う。そして、もしもその存在が行くとすれば、きっと灰の大陸であろうと。

 

その根拠を問いただすと、彼等の故郷だからだそうな。そして、重要な会話をする場合あそこほど安全な場所は無いとも。少ない情報の中でも、行き場所の検討が付くだけ御の字でたろうか?

 

捜索隊はただちに物資の集積を行い、命令を今か今かと待っていると、遂にその時が来た。

と、そこで出されたものは拍子抜け、期待はずれなものであった。

捜索を中止する。本部は乗り気であった筈なのだが、政府が横やりを入れてきた。何事かと問い詰めるであろうが、答えは非常に早く帰って来た。

 

『中国が得たいの知れない物体に侵食されている。』

 

事態は一刻を争う、そう遂に深淵が本格的に世界へと伸び始めていた。特地にいる者たちには、現在地球で何が起こっているのか、把握することは難しい。

 

勿論インターネット回線が繋がっている事から、ある程度の知識は入ってくるだろうが、それでも一般的な事が大半であろう。

 

深淵については、通常一般的には知られていない。最悪の場合、パニックが起こり手がつけられない状況を、国連が恐れたからだ。

 

しかし、それでも対応早く、国連は各国に呼び掛け軍の出動を強制している。そこに白羽の矢が立ったのが、日本国自衛隊だ。

軍ではないと言う建前は最早通じない、そんな相手からの拒否不可能な命令を何とか引き延ばし、今こうして特地から戦力を戻そうとしている。

 

それに、栗林の捜索が天秤に掛けられたのだ。

一人より多くの命を取るは、国家の務め。それ以上に答えは無かった。そこへ、二人の奇妙な騎士が乱入してきた。

 

周囲はそれを咎めることもせず、彼等が入るのを見ていた。

「失礼するが、貴公等の国が大事に見回れているの事実であろうが、些か性急過ぎると俺は思う。

本来我々俺たち身内が片付けなければならない問題だが、貴公等の仲間を連れ去っていったのは紛れもない事実。

どうか、このソラールに免じて捜索を続行してもらえないだろうか、これは俺たちの罪滅ぼしでもある。

それに、俺はアイツ。上級騎士の男に聞かなければならない事があるのだ。どうか、どうか…。」

 

彼の言葉で、捜索の続行は決められたが、それでも自衛隊の撤退迄の間の話し、時間は余りにも少ない筈だった。

 

 

~数日後~

 

アルヌスに激戦が走った。レーダーが巨大な機影を探知、急ぎ迎撃体勢に入った。

F4をスクランブルさせ、周囲の住民には念のための避難を呼び掛けた。

 

暫くするとF4から通信が入る。どうやら、ウェルスが龍に跨がっているのが見えたと言う。

先に、栗林を連れ去った人物であるから、警戒はそのままに誘導するよう命令した。

 

するとどうだろうか、それに答えて着いてくるではないか。

そして、有視界距離まで近づいて見えたのは、炎龍よりも2回り程大きい龍である。

 

陣地からは少し離れた所へ、着陸し龍から降りてくる奴に全員一斉に銃を構え万が一が起きた場合は、射殺するよう出ていた。

 

そこへ伊丹が足を運ぶ、結局のところ捜索など出来ずに延々として終わらない会議でお茶を濁されていた。

 

「おい、栗林をどこへやった!!」

 

「彼女は今、灰の大陸にいる。彼女のためだ、あのままでは肉体の方がソウルに耐えられずに、何れは死んでしまう。ならいっそのこと、分離させるのが一番だ。」

 

「お前なぁ、一言ぐらい言えよ。だいたいいつも何か足りないんだよ。それで?あんたは何でここに帰ってきたんだ。」

 

「約束をいや、古い誓約を破棄しに君たちの世界へ行くために来た。君たちの世界を救うために、私の時代に終止符を打つために。」

 

その瞳には、珍しくも闘志が宿り何より覚悟の顔をしていた。

だが、その前にちゃんと入国手続きをすると言うことと、栗林の居場所を懇切丁寧に説明していた。

 

ウェルスには監視が付くが、彼に付いてこれるものは果たしていないだろう。

 

「古龍の末裔よ、暫くこのゲートの側を見ていてくれ、もしもがあった場合ゲートを壊すのだ。そうすれば、この世界に再び奴が現れるまで、しばし時間を稼ぐことが出きる。良いな?」

 

彼が日本に渡る時、龍に何かを語り掛けていたのをレレイだけが知ることが出来た。

そして、彼女は龍と対話をするために『奇跡』を覚えようと覚悟に決めた。

 

 

 

《中国》

 

現在深淵は広がり続け、南は雲南省北部・東は湖北省・北は甘粛省・西は西海省西部まで侵食が進んでいる。

斜面が多いチベット方面へは、今のところ進んでおらず海等の低地へ向けて進行中である。

進行がかなりの速度で進んでいるため、現在国連軍が終結中であるため、チマチマと遅滞戦闘を行いつつ解放軍が後退している。

 

最終防衛線は、雲南省南部から北京にかけ弓なりに、冷戦時の遺産、『ブルーピーコック』を現代の技術で正常に作動するようにしたものを、埋設する。

いわゆる核地雷戦術と言えるものだ。

 

なりふり構っていられない、焦りが世界中に蔓延しつつある。もしも、ここで止められなければ世界にこの事が伝わりパニックになるに違いない。

そうなる前に、どうにかしようという努力の賜物だ。

もし、地雷が作動しても後々何とでも言えるのがこの世界だ。

だが、それは戦線を支える者たちの話。

 

そこには村があった。

見捨てられた村はただ呑み込まれるのを待つばかりか、化け物が侵入し、村人を捕食していくかと思えば連れ去るものもいる。

 

そして、それは子供に手を掛けようとしたが…、それは躊躇し片腕に担いだ大剣を地面に突き刺し、村を襲っていた他の化け物に襲いかかる。

 

その動きは他の化け物のそれとは余りにも違い、理性を伴った怪物に対する剣劇をもってして村を救った。

それは三角の頭をし、右手に大剣を左手に短刀を携え外装に身を包み、自分達が来た方向へと向かって走り始める。

 

一人、また一人と人数が増えその数は百を越える。一様に同じ服装をしているが、若干の差異があり杖を持つものや、『火』を手に宿すものもいる。

 

彼等が目指す先には、彼等を再び産み出した深淵がいる。彼等が何を成そうとしているかは、彼等にしかわからないか?あるいはウェルスにはわかるだろう。

 

 

《灰色の世界・欧州》

 

宇右衛門とスコーラーは慣れない欧州の地で、迷っていた。余りにも似たような景色が続き、もうどちらから来たのか忘れてしまうほどに。

そんな中でも宇右衛門はとても呑気で、スコーラーが心折れそうになったとき、必ず支えてくれる善き相棒とでも言えるものだった。

 

「ウムウムウムウム」

 

「何がウムウムだ、どうせ文字が読めないのだろう?地図位は読めるようになろう。俺がお前に教えてやるが?ちなみにだが、ここは北ヨーロッパ平地のど真ん中、国に例えればドイツ西北と言ったところか?」

 

「いや~忝ない、某このような事には疎くてなぁ。戦いの事には自信があるのだが、お主がいなかったらまた何百年と、放浪せねばならなかった。」

 

欧州の土地柄故に、地平線を歩き何もない土地をただただ二人は歩く。この地には亡者がいない。鳥も虫も本当に何もいないのだ。

漂白されたシャツの如く、生き物が根こそぎ消されたようだ。

 

そんな土地にいきなり建物が現れた。

城というには余りにも平坦すぎる、どちらかと言えば宮殿と行った方が良い建物だ。(まるでベルサイユ宮殿)

 

二人はその中へと入り、内部を探索する。

最奥部には椅子があり、そこにはミイラが座っていた。区もなくそのミイラから、ソウルを回収する。

 

「なあ、宇右衛門。本当に火継ぎの試練なんだよな。これじゃあ試練の意味なんて何も無いんじゃないか?」

 

「某も、そう思っているのだが何せ神々の考えていた事だからな。分からぬ、それよりも先程から我等を見ているものよ、そろそろ出てきてはどうか?」

 

柱を見ているとビックハットを被った老女が現れた。

その足取りは年齢を感じるものでなく、若々しい足取りに疑問を感じるものだ。

 

「そう刺々しい目で見でない。どうせ私と同じ火継ぎの贄であろう?」

 

「いいや、我等は自らの意思でここにいる。某、宇右衛門申す武士をやっている。こちっはスコーラー、学者だ。」

 

「ふん、私はエルヴィラ。スペインで魔女と言われた女だよ。まったくあんな方法で殺られるとはね。」

 

3人は意外と直ぐに打ち解けた、というのもこの世界には意識が有るものはほとんどいないのだから、正気を保つのはこの方法が一番だからだ。

 

3人は宮殿を出で、一路インダスの方へ向け歩き始めた。因に宇右衛門は、ロシア方面を通って来たそうだ。南の方は密林が多過ぎて、進めなかったと言う。

 

一人では無理でも、3人なら行けるのだろうか?

 

「ところで、エルヴィラ。君はなぜ魔女と呼ばれたんだい?」

 

「私はハンニバルを信仰していたら、バール信仰として連行されたのさ、まったく馬鹿な連中だったよ、文字にしか書かれていない神なんか信じるから。」

 

その言葉に対して宇右衛門は、苦笑いしつつ歩いていく。火継ぎは、果たして何なのだろうか?

 




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