ウェルスが山のような古龍の街へと帰ってから幾年の年月が流れた。
その間にますます始まりの火は陰り、小人達の国には不死が蔓延し、いよいよ世界が終わるのでは?と囁かれ出していた。
そんな中、突如として世界に再び火が灯る。
小人達の国は今頃歓喜に満ちていることだろう、これで世界は救われたと何もしていない神々に感謝を捧げるのだろう。なんとも虚しいものではないか?だって火を継いだのは、薪となったのは自分達と同じ小人なのだと、それに気が付くこともなく神の手柄となる。
ウェルスは感じていた、あぁきっとアイツが火を継いだに違いないと。アイツ以外はあり得ないと思うほどに、あの不死人は使命に生きていた。それと同時にこれは延命にすぎないと、考えていた。
例えどんなに強いソウルを持ったものが薪となろうとも、結局消えようとする火を止めることは出来ない。無限に湧き出す燃料などこの世には存在しない。
例えソウルで有ったとしても、星の力が世界が終わればそれも無に帰す。
それを何処で知ったか、ウェルスは胸に刻んでいたどこか遠い場所で学んだ、そんな気がするものが。
それでも、彼は助けたもの達を立派な者へと育て上げるため、日々この街を発展させることだろう。
年月が立てば人工も増え、文化が形成される。この街は街と呼ぶには余りにも大きく、最早国と呼べる代物であろう。そして、いつしかこの国は古龍信仰の元その中心的な国家として、名を刻まれ始めた。
多くの国が勃興するなか、この国だけは長らく繁栄し神々ですら手出しが出来ぬものとなった。
いや、神々の力が衰え始めていたと行った方が良いのかもしれない。
そんな時、2人の青年がこの土地を訪れた。2人の名をディールと言う。
彼等は何かを求めにこの地にやって来た、そしてその二人はウェルスと話をすることを望んでいた。
運命だったのだろうか、街を忍で散策していたウェルスと二人が出会うという、摩訶不思議な現象が起こったのだ。そして、ウェルスは探求者の二人に何を感じたのだろうか?
《ロードラン》
パッチ、この胡散臭いという言葉が余りにも似合う、禿げ頭をした人物が今目の前にいる。
伊丹やロウリィ等の新しい者たちには余りにも馴染みが無いが、ソラールとバルドには嫌というほどそれはあった。
手始めにソラールは、パッチに直剣を向け質問した。
「貴公まさか、未だに生きているとは思わなんだ。にしても貴公はどれ程の間、この大陸にいたのだ?」
「へへ、そんなことはどうでも良いだろぅ?それよりも、出口に案内してやるってんだ、着いてこないのか?」
そう切り返すが、どうも怪しげな匂いがプンプンとする。ソラールとバルドが、真剣にこいつに警戒しているのはきっと何か有ったのだと、周囲は思考する。
「おいおい、今回は特別に罠何か無いぜ?唯一行ける方法を俺だけが知ってるんだ、教えてやらねぇぞ?」
「ウ~ム、わかった貴公を信じることとしよう。何、かつての事は水には流せぬが、こういう時は助け合うことこそ重要であるからな。」
そうと決まると行動は早かった、パッチの先導のもと螺旋階段が有ったであろう場所までたどり着く。
そこには一見すると何もないが、まあ本当に何もないのだがパッチは言った。
「ここから飛び降りろ、何死にはしないさ。下に衝撃吸収の魔術が描かれているからな。じゃあ案内はこれにて終了、そう言うことだ。じゃあな!」
「おい、待てよ。」
パッチは声に振り向いた。
「なんです?何か御用でも?」
「色んな人から話を聞いたんだが、あんた結構人を罠に嵌めたりするそうだな。今回もそうかもしれない、だから俺たちと一緒に来てもらう。」
「それは無理な相談ですね!」
パッチは懐から骨片を取り出すと、それを握りつぶし煙に消えた。
残された者たちはどうするか考えようとするが、ソラールが口を挟んだ。
「俺が先に行こう。何、不死は死んでも篝火で復活できる偵察にはうってつけだもし、降りられることを確認できたなら、雷の槍を打ち上げる。心配せんでも良い。では、バルド殿先に行くぞ!」
勢い良く彼は灰の積もった下層へと飛び降りる、時間にして数分経った頃だろう、雷が下から打ち上げられてきた。ただ、その本数は1本だけではない。角度もまちまちだ、何かと戦っているのかもしれない。
危険だと判断し下に降りるのを断念しようとした時、来た道から多くの鎧が軋む音が聞こえる、後戻りは出来ない、前に進む以外に方法はない。
そして、彼等は飛び降りるいったいその下には、何が待ち構えているのだろうか?
《中国》
今もなお火線が飛び交い、必死にドロドロが進むのを食い止めようと抵抗している。
国連軍は総力を結集しているが、如何せん銃弾の効き辛い相手であるため止めるのは容易ではない。
防衛戦はかつての欧州の塹壕線の様に、ずらっと並び更にそれらを強固なコンクリートで固められた
所謂『要塞』と呼べるものとなった。
原始的な敵に対する回答はミサイルよりも、砲弾の方が有効である。
平射用の速射砲が据え付けられ、ミサイルは撤去された。
周囲は殺気立ち、野戦病院には肉体が崩壊し、異形となった遺体が並ぶ。
時折精神が壊れたものが騒ぎをお越し、それを銃殺するものもいる。
そんな所に自衛隊は派遣された。そして、それにはウェルスが着いてきていた。
ウェルスは野戦病院内の異形と化した者たちを見るや、一目散に最前線へと赴こうとした。それを自衛官たちが制止する、『何処へ行くのか。死にに行くばかりだぞ』と。
だが、ウェルスには確信があったこの異形の現象は予想通り深淵によるものであると、であるならば対処は自ずとわかるもの。
深淵の弱点であったもの、『最初の火』その力の一端。
大多数を相手にするならば、彼女の力を使うのが最も早い。
そう考えていた彼は、自衛官を振りほどきいや引きずりながら前線へと、到着する。
すると、塹壕から出て銃撃の中深淵に向かって歩き出す。
周囲から見れば余りにも浮いた存在だろう、何せ時代錯誤も甚だしい全身鎧を纏った騎士風の男が、あろうことか塹壕を飛び出し歩いているんだ。
兵からは余りにの事に、目をしかめたりするものもいる。
そんな事は構わず、彼は左手に鞘に納めた直剣を携えそれを天高く掲げると人面に突き刺した。
端から見れば何をやってるのか意味がわからないだろうが、彼がやろうとしたことは直ぐに結果として現れた。
深淵に多い尽くされた地面から、突如として火柱が上がった。一ヶ所だけではない、あちらこちらで火柱が上がりそれはいつしか巨大な一本の柱となり深淵を光で照らし、焼き尽くす。
だが、その火に熱はなくどちらかといえば、その火という概念で燃やしているようだ。
【イザリスの
兵は驚く、今まで自分達が戦いそれでも、傷を、負わせられなかった敵をこうも簡単に捻ることが出来る。
多くのものは見た事を受け入れられないだろうが、信じるものには彼が英雄に見えたであろう。
そして、火柱は割れ中心に続く道が出来るそして、彼はその中心に向かうだろう。火の道を歩き始めていた。
《灰の世界》
3人は迷っていた、自分達が使命だと信じていた『火継ぎ』を否定され、では何のために自分達がここにいるのか解らなくなった。
だが、三人の内の一人魔女エルヴィラは驚くことに火継ぎを行う事を最初から諦めていた様に、余り落胆の色はなかった。
しかし、彼等は迷う何を目的とすれば良いのか、こういう時のスコーラーの決断は早かった。
元々彼はこの世界の事を、そとへと知らせるために生きていた。
ならば、この世界がどういう意味で存在しているかを知らせるべきだと二人に説いた。
納得はするものの、二人とも出口を知る筈もない。であるならば、シッダルタに再び聞こうと道を戻るが、景色は一変していた。
生い茂っていた草木は渇れ、辺りに落ち葉が舞い動物達の声も聞こえず、亡者達が辺りを徘徊する。
3人はこの異変に対処した。
道は解っている、ならばと向かってくるものを切り伏せねじ伏せた。時折、力の強いものや、恐らくは魔術のようなもので攻撃してくるものがあるが、各々の特性を生かして前に進んでいく。
遂にたどり着いたとき目の前に有ったのは、干からびた修行僧とそれに絡み付く大樹。
大樹に近付いたとき突如として、大樹が動き出す。
名を付けるとすれば『
巨大ゆえに揺ったりとだが重い一撃が、三人を襲う。
まるで、こちらがする動きが解っているかのように蔓を伸ばして足をとろうとしてくる。それどころか、周囲の木を使い囲い込もうとするのだ。
そんな中でも、彼等は立ち向かう。己の道を見つけたものが、覚醒し全てを諦めた者に立ち向かう。
スコーラーは幾度も死んだ、だが折れることはない彼が死ぬお陰で宇右衛門等は生き残ることが出来る。
そして、記憶をたどり攻略していく。
弱点が火であると解るのは、そう難しいものではなかった。そして、最後は余りにもあっけない。
森に火を放った。
それから数日後、辺りは焼けたが配下の木だけが死に絶え、他の木に損傷はない。まるで、その他の木を守るために自己犠牲となったかのように。
中心にはシッダルタのソウルが落ちていた。彼の記憶をたどり、何が起きたか覚った。自分達以外にも何者かがいる。それが、彼を変えたのだと。
スコーラー達はまた進み出す。世界の真実をつたえるために。
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イザリスの火海
覚者の慣れ果て
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