深淵が世界に拡がりを見せていたとき、ウェルス率いる
ここ山のような古龍の国に残り、運命を共にするか。
ウェルスの考え通り、別の大陸へと移住するか。
多くの者は現実を受け入れ、深淵から逃げるように他の大陸へと移住を覚悟していたが、少数の者たちはここに残ろうとした。蛇人達も例外ではなく、対立は正しく国を二分するものだった。
だが、ウェルスと言う絶対的な力により表立ってよ争いが起こることは無く、表面上の平和が続いた。
そう、
それは突然だった、ある日暴風が吹き荒れた。そこに現れたるは、一頭の古龍とそれにまたがる神だったもの。
その力は衰え、最盛期の一割にも満たないがそれでも驚異的な力である。
蛇人達はそれを見た瞬間に敵と判断した、そして無名の王と蛇人達の殺し合いが始まる。
決着は余りにも早く着く、当然ただの蛇が神や龍に勝てるはずもなく呆気なく国は滅んだ。
このとき、ウェルスはファルマートへ調整をしており留守にしていた。
運命とは残酷なものだ、ウェルスは帰還して早々目を丸くした。何と言うことだろうか、国が滅び人々も5割は死滅してしまった。
それだけではない、死んだ筈の蛇人は無名の傀儡となり、ウェルスへと攻撃を仕掛けてきた。
それを難なく切り伏せ、旧き友と対峙する。
結果はウェルスの圧勝だ、力衰えたものに負ける筈もない。しかし、かつての友を殺すのは心が痛んだゆえに彼は鐘に彼を封印した。
いつか誰かが鐘を鳴らすまで、決して解けることの無い封印を。
その間、傀儡は動き続けここに来るものへの試練となるだろう。
そして、残った者たちはウェルスの案内のもとファルマートへと旅立った。もう二度とここに来ないと誰もが信じた。
しかし、幾人かは行かない決断をし、いつか来るときまで深淵を狩り続けることを決意する。
その者たちは異国ファランにて狼血の儀式を造り、後のファランの不死隊の前進組織を作り上げる。
それは偽りの誓約、其を信じ込ませるのは至難の技であったであろう。彼等は嘘を知りつつも、現状を維持しようとした。故郷の事が好きだったから。
《暗い穴》
身長も体格もてんでバラバラな四人組に着いていくこと一時間程だろうか、何やら建物のようなものが見えてきた。恐らくは彼等の拠点があそこなのだろう。
伊丹はその事を気にする前に、あることを気にしていた
名を名乗った四人は、半年程前にウェルスから聞いたことがある、古い神話の登場人物だと言うことだ。
偽りだとかなら話は別だが、あの四人は異常に強い。
正直、同じような生命体では無いのでは?と考えてしまうほどに。
それでも見知らぬ者たちを自分達の城へ案内すると言うのだから驚きだろう。
警戒心が無いのか、はたまた眼中に無いのかどちらかだろう。
「到着したぞ!此処が我等の都、ボーレタリア遺跡だ。」
そこはうっすら霧がかかり、全容を捉えるに時間をかけなければならない程巨大な城壁を構えし場所。
だが、あちらこちらが苔むしており、遺跡と呼ぶものに見えなくもない。
そこの城門を抜けると様々な種族が行き交い、何とも融和の取れた国なのだろう。
今にも目的を忘れてしまいそうな、そんな空気がある。
魔術が行き届いているのか、周囲には炎の光が灯りいつも明るい。
「グウィン、君たちは先に戻っていてくれ。彼等を宿場まで案内したい。」
ウェルス(若)がそう言うと、彼等は城の中心へと歩んでいった。どうも馬車とかそう言うものとは無縁のようだ。何せ身体能力が桁違いだから。
伊丹達の歩調に会わせて近場にある場所を選び部屋を取ってもらった。
「ここで休んでいくと良い、たぶんだが君たちは何か目的があるのだろう?きっとここに長居はしないだろうからね。詮索はしない。ただ、君たちはどうしてそれほど弱いのか気になるところだが…。」
そこへテュカが彼の思考を遮った。
「今私達が何をしようとしてるかは、言えないけど貴方が関係する事は確かなの。それだけは知って欲しい。」
ウェルス(若)は其を聞いて何を思ったのか徐に、掌へ指輪を出現させた。
「私に関係あるのなら、この指輪を持っていきなさい。これがあれば道に迷うことはないし、不吉なものを追い払ってくれるだろう。」
そう言うと白い宝石をあしらった指輪を渡す。そして、彼は部屋から出ていこうとする。
「では道中気を付けろ、皆に大地の恵みあれ。」
そう言って伊丹等を置いて去っていった。それを見届けた後、伊丹はソラールとバルドに対して質問した。
ボーレタリアなる国を知っているのか?と。
帰って来たのは否定の言葉、ならばここはどれ程古い時代なのだろうか。
その日彼等は宿に泊まり、そして次の日には城を出た。目的を果たすために。
《中国》
横一直線に並んでいる塹壕から、多くの銃口が並び一発一発それぞれ良く狙いを着けて射撃が行われている。
命中した弾丸は、ドロドロで出来た泥人形や異形達に命中すると、それに風穴を開け穴から黒々とした、血のようなものが流れ落ちる。
今、国連軍はじわりじわりと前に進んでいた。
装備はボルトアクションで、非常に旧式と言わざる追えないが、それでもそれが効果があると言うのなら使わざる追えない。
更に国連軍の中では有るものが登場し始めた。武器の強化だ、それは武器そのものが淡く光輝いているかのように写る。
それを最初に行った者曰く、『魂を込められたものが効果的なら、銃にもそれが適応されるのでは?』との判断によるものだった。
それが、今では普通になりつつある、誰かが言った『地球なのにファンタジーの世界だ。』と。
彼等は内に秘める力を使って戦いをする、戦いは折り返し地点に来た。
時折、強烈な光がドロドロの発生源から飛びだし、辺りを照らす。夜は昼のように明るく照らされる。
そして、数分後とてつもない地響きと共に地面が揺れる。ウェルス、彼が中心部に向かってから既に一月の時間が流れていた。
《中心部》
地面にドロドロは無く、あちらこちらにクレーターが形成され、砂はガラスになっている。
今も尚、暗い閃光が辺りを照らし新たなクレーターを形成する。
時に稲光が辺りを覆い、それをドロドロが書き消すがごとく呑み込もうとする。
一体どれ程の間それを続けているのだろうか。
そして、大地に時折人影が現れる。
一人は黒い騎士、もう一人はローブを纏った老人にも少年にも見える存在。
「ウェルスだいぶ消耗しているようだが、大丈夫かな?昔の君なら…おっと昔の記憶は無いんだったか?私を一度封印したときの君達なら、今頃私は姿を消していただろうなぁ。」
「貴様の方こそ、弱っているようじゃないか。どうした?余りにも長い間封じ込められていたから、呆けでも始まったか?それに、お前の事は充分覚えてるよ。思い出したからな、お前と交わした契約。それに対する対価を。」
睨み合う二人、ウェルスの装備はボロボロだ。何かによる腐食が始まっている。まるで、ウェルスの力が無くなって行っているように。
それでも、その眼光は鋭く戦意を失うどころか更に強く持っている。
それでも力の差は歴善だろう、何せ
彼等は
《灰の世界》
「ほう、それでここに来たと言うのか。火継ぎな、古くからある言い伝えにも聞いたことがあるが、まさかここがその世界だとはな。てっきりここはあの天竺から来た如何わしい僧の言う、輪廻の世界の一つだと思ったが、そうではないのだな。
道理で、人が影も形もないわけだ。」
始皇帝的に言えば最近来たばかりで、状況も理解できないが、街が可笑しいのは見ればわかったのだろう。
しかし、始皇帝本人は修羅場を潜り抜けてきた猛者だ、この程度では狼狽えない。
そして、スコーラー達に着いていくことを決意する。正直自分の国に帰りたいのが一番の理由だが、こんな薄気味の悪い世界にいすぎたくはないとも思っていただろう。
「それで、何処へ向かっているのかな?まさか、海をわたった場所じゃ有るまいな。」
「いや、某の故郷である日の本は海を越えた先にある、着いてくるのであれば相応の覚悟を決めて海を渡らねば、何せここにいる者たち全員船の動かしかたを知らんのでな!」
状況は絶望的である、日本海は大荒れの季節船で行くのは自殺行為、死にすぎれば亡者。行かなくても、何れはゴーレム達にぶちのめされ亡者。
ならばと、先に進むほうを選択する、前に船員を探すが先決である。偶然にも船乗りの亡者がいたのだ、だからそいつを殺しソウルを奪い経験を皆で分け合う。
だが、肝心要の船がない有っても漁船程度、咸陽は大陸の内部。つまり内陸から海へ黄河を下って数日はかかる場所だ。
漁船で下ると、景色は変わり秦の時代から明の時代まで下ってくる。すると、それなりの大型船へと乗り換え、また亡者の経験を取り出し船で沖に出る。
これによって日本への道が切り開かれる。だが、その道は非常に険しく難関なものであろう。冬の日本海は非常に危険だ、海は荒れ波高く何より寒い。
始皇帝は、寒さに強いがスコーラーはそうも行かない。彼のは比較的暖かい場所に生まれ育ち、冬がない場所だ。いくら不死人となっても、寒さには勝てなかった。
そのため航海での数日で実に三回凍え死に、航海がトラウマになってしまった。
そして、到着したのは長崎出島時代は江戸中期頃か?文明も色濃く、皆一様に興味津々の様子だ。さて、この場所での一番の問題が浮上した。
何とこの場所の住人は、亡者になっていない。それどころか、国そのものの機能は停止すらしていなかった。
そして、出島から出ようとしたとき彼等は捕まる。そうここは江戸中期、限定的鎖国をしていた時代。
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