私は護る小人を   作:丸亀導師

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第41話 熱を失う者たちよ

不死の灰と、亡者の殺し会は苛烈を極めた。

何処までも永遠に続くかと思われた戦いは、不意に終わりを迎える。

亡者達が動きを止めたのだ。

 

前兆はあった、亡者は死にすぎれば最後は自分が生きているかすら忘れ、座り込んだりする。そしてそのまま固まり、何をするでもなく生命活動を終えないまでも、石のようになっていく。

 

殺し会の最中そういう亡者が増えていった。では、不死の灰はどうであったかと言うと、変わりなかった。強制的に使命を付け加えられ、それを終わらせられなければ死ぬことすら出来ず、亡者になることすら出来ない。

ウェルスは彼等に生き地獄を見せても、生者何より小人を生きながらせようとした。

亡者共が海を越えないようにと、そして亡者たちは敗れ去った。

 

長い戦いは数千年続き、不死の灰たちは疲弊した。

ウェルスはそれを見て彼等に褒美として、叶えられる範囲の願いを叶えた。あるものは自分の死を、あるものは探求を、あるものは友の復活を、そしてあるものは太陽が輝き続ける時代を。

 

各々の願いを叶えていくと、最後に一人の女性が現れた、彼女はティアラで目を覆い黒いドレスを纏っていた。そして、言った。灰の方、あの方を甦らせて欲しいと、何故と問えば、あの方の使命はまだ終わっていないのだと言う。

 

彼女の願いを叶えると、灰達は各々の場所へと旅立って行く、時を越え、自らの想いを胸に秘めて。

それを見終わると、ウェルスも歩み始めた、あの大陸へと行かなくてはと、有りもしない使命にかられ。

 

時が螺曲がりし場所から、船で行くのには何万と言う時が流れた。到着する頃には嘗ての面影すらなくなった大陸と、自分が届けた者たちはとは全く違う知的生命体が闊歩する大陸となっていた。

 

そして旅を始めた、ある時は商人の護衛として、ある時は盗賊として。それでも彼女達に会うことは叶わない、まるで何かがそれを拒んでいるように。

 

ある時、空から化け物が表れた。それが暴れれば、タイリクはぐちゃぐちゃになるだろう。それを放置すれば目的は果たせない、であるから化け物を葬り去った。

その地は、丘となりそこは不安定な空間となった。そのためそこから度々、異世界のものが流入していくこととなる。

 

 

《炎の牢獄》

 

ガァァァァァァ!!

巨大な何かは咆哮する、それに対するは一人の人間。周囲は業火に包まれ正しく地獄のようだ。

 

不定形の怪物は人を呑み込もうと、猛然と突進を、開始する。周囲に何か盾になるようなものは無い、だが避ける素振りも見せない。

接触する瞬間、左手に雷を構え地面へと叩きつける、その余波を受けてか地面が隆起し、突進を始めた怪物は掬い上げられ空中を舞う。

追撃を見舞おうと、剣に青き魔力が宿るがそれを察知したのか、強力な障壁を展開し今度は空中から圧し潰そうと降り注ぐ。

 

それと剣が激突する、月光が周囲の色を炎の紅い色から青き色へと染め上げる。

互いの力を殺し合い、弾け飛ぶ。

互いに、勢いを殺して着地するも、深淵はその質量からズゥゥゥンと、大きな地響きを立てる。

 

指輪の力は一人の身には重いのだろうか、彼の体からは灰のようなものが時折立ち登り、それが次第に彼の熱を奪っていく。

だが、それを気にもせず眼前の敵にのみ意識を集中している、もしくはこれこそが彼の体の限界を暗示しているのか。

 

不定形のものは深淵は戸惑っている、自らの力が弱っていることに、彼の頭のなかには戦いなどすぐに終わるものと考えていた。だが、蓋を開けてみれば最初の火が灯った時と同じように、自分の力は制限され思うように動けない。

 

ウェルスはこれを狙っていた、ウェルス自身の力も制限されている、だが彼の場合は目立った動揺もなくむしろ、憑き物が落ちたかのように真っ直ぐとした目だ、恐らくは計画の内であろう。

 

互いに睨み合い、どちらかが先に動くのかジリジリと時が流れていく。深淵は早い内にウェルスを叩かなくては何か秘策があると感じとり、動こうとするも動いた時点で彼の月光を纏った剣により、体の一部を削られる。

そう判断してか、中々動くことが出来ない。

 

ウェルスにとっても同じ事、この空間ではダークソウルが、力を発揮する事はない即ち一度きりの命、無闇に動けばその時点で死ぬこともある。

元からの不死であるが、ソウルを喰われればその時点で消滅する。ダークソウルが有るからこそ、今まで消滅しなかった。

動いたのはウェルスだった、一瞬の内に剣を持つ腕を曲げ刺突を繰り出す。刺突と言うよりかは、嘗ての奴隷騎士の獣のような戦い方、それに技を加え一撃をより致命に至らしめる深々としたもの。

 

元はと言えば、剣の技術の始まりは彼だったのだから、正しくオリジナル。

だが、それも奴を致命にすることは無い、不定形であるが故に剣技は通じない。

 

だからこその月光であり、雷であり、炎であった。だが、魔法は遅い故に筋力でそれを補った。

彼には巨人のような強い力もない、イザリスやグウィンのように、強大な魔力(ソウル)からの魔法もない。

だからこそ全てに手を出した、それが彼の唯一の強み。

 

時間の経過と共に周囲の炎は蒼くなる、それはまるで青空のように、別の(灰色の)世界へと来たかのようだ。ウェルスの剣は深淵に些細なダメージを負わせていく、次第に体がバラバラになっていくことに深淵は恐怖した。

 

あまりにも執念深い攻撃に、巨体はなす統べなく切り刻まれる。だからだろう、ウェルスの隙を突くべく攻撃に合わせて槍を放った。

 

遂に深淵の槍がウェルスを貫く、ニタリとウェルスが笑った。それを待っていたのだろう、剣に光が宿りそれを深淵へと深々と差し込み内部から大爆発が起こる。

と、同時に炎の檻は開き。灰色の空と大地が姿を表す。

 

うぞうぞと、深淵が再び一つとなり周囲を見渡す、精気の無い世界が広がる、だが次第に空が近付いてきている。それどころか、大地が消えていく。

深淵は逃げ惑う、何とかして生きようと、古の獣が一人が生に執着したその末路は、完全なる消滅。

 

それを、致命傷を受けたウェルスは見つつ始まりの螺旋剣を取り出し、世界を渡った。

残されたのは深淵のみ、終わり行く世界をただ呆然と眺める他無い。

 

《中心部》

 

『火ヲカエセ!!』

 

3mは有るかと思われる巨体が跳躍し、剣を振り下ろす。

上級騎士はそれを回避し、ソラールは出来た隙を突き横合いから剣を振るう。

が、それをものともせずに剣を振るう。

 

叩きつけられたそれは、地響きを上げ地面が抉れる。

その破片が伊丹等生者を襲うが、それをバルドがピアスシールドで庇う。

 

戦いに触発されたのかロウリィが参戦し、ハルバードを叩きつけるもよろける素振りも見せず、怒りに任せた一撃を食らうも、流石は亜神であろうか、致命傷も直ぐに回復し不死人達と非常に良く連携している。

 

そんな事が起こっているが、周囲にドロドロは無くなっており、深淵の放つ猛毒もそこにはない。

当たりは日の光が降り注ぎ始め、呑み込まれた筈の残骸もチラホラ見え隠れしている。

 

だが、呑み込まれたもの以外に出て来てものがあった。火の時代、彼の深淵に心を喰われし王。火の力に魅了されてしまった哀れな神、それらが表れ、ソウルを奪おうと攻撃してくる。

 

その力は凄まじいものだが、決して死なないわけではない。元は神なのだから、殺せないものではない。

現在多くの地域で化け物の変わりとしてこういうもの達が表れ始めた。

戦いは第2ステージに入ったが、この時点で神が人類に勝てる確率は0に近い。

 

理性の残ったもの達が大半であること、自分達の夢であった世界を手に入れた子供達が敵であること。

彼等はなす統べなく殺されるだろう。

 

だが、それとは違いグウィンは未だに火に捕らわれ、こうして火継ぎの一人であるものへ、ダークソウルを持ったものへと斬りかかっている。

自らに、もはや火の力はないと言うのに。

 

 

《???》

 

何処とも知れない場所で、女神とスコーラー達は大局将棋延々と指し続けている、始めてから丸2日休息が必要の無い者たちは、いつ終わるとも知れないものを続けている。

 

そこへ土足で踏み言った者たちがいた。

白い影が侵入したのだ、だが彼等はここにある筈の火が存在しないことにすぐさま気が付いた。

 

何故なら、元から消えるのを良しとされていた火であるから、始まりの火とは性質が違う。

それに誘われた蛾は、それに近付きすぎた。亡者であるその身は、土のようにボロボロと崩れ始める。

そして、そこに残ったのは土の山だけだった。

 

それを知らずに、大局将棋を続けていると女神はふと顔を上げた。

何事かと尋ねれば、何かが流れ込んできたと言う。

それを聞き、それを殺すのが我等が役目だと言うと、手に火を灯しそれに息を吹き掛ける。

 

するとどうだろうか、空が近付いてくる。

共に行こうと言うが『私は良いから行きなさい』と言われる、理由は問わない。だが、人の善意を無視するものではない。四人は彼女に目を背け、手渡された螺旋剣の破片を握りつぶした。




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