私は護る小人を   作:丸亀導師

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第43話 道をたどり、教えを辿る

ウェルスがエルフの残した印を探し、輪の都へとやって来た頃。

何やら大きなソウルの激突があったと言う痕跡を見つけた。

 

辺りには枯れた小人の王達だったもの等が、横たわり今もなお助けを求めている。何と哀れなものだろうか、籠の中に入れられ、自らを研ぎ澄まそうとしないもの達の末路は、自分の子孫達であろうとは思えなかった。

 

それよりも、彼等からはダークソウルが少量しか感じない。何かに取られたか?まあ、どうでも良い事だそれよりもあの子達の痕跡を探さねば、あ?そうだ、こんなところに有るわけがない、あの子達はここに来たことは無かったからな。

 

絵師が顔料を採りに来たか?こんなにも無様な死に様、本当に腑抜けた奴らだ。

ウェルスはその後、輪の都から去り再びファルマートへと赴く。

だが、やはり彼には見付けられない。まるで、何かが彼女等を隠しているかのように。

 

下手に力を使えば世界が滅び、神々と全面戦争となると思っていた。

 

だが、よくよく見れば神々の気配はない、いったい何処へと行ったのか皆目検討も付かず痕跡探しを続けていく。

 

ウェルス、名も無き小さな人。神話から削り取られたそれは、時間の流れによって伝承すら失われ。

彼自身の精神すら磨耗し、今や探すだけの亡者となりしもの。

 

その心には、我が子同然の者たちと、嘗て世界を探して回ったグウィネヴィアの事だけが頭にあった。

もしも、見つけたならば彼はそれに依存するか、嘗ての自分を取り戻すだろうか?

 

 

《帝国・皇帝ピニャ》

 

彼女が出立してからもう2月、時間と言うのは本当に流れるのが早い。

その間、日本からの損害賠償の請求に四苦八苦し、何とか土地の売買で事なきを得た。

 

どうやら父上の処刑が効果があったようで、なんとも言えない顔をしてこちらを哀れんでいた。

そのお陰か、賠償金も半分以下になり向こうの世界の多くの国が納得してくれたようだ。

たぶん我々に構っている時間がないだけかもしれないが、それでもそれでよかった。

 

我が国が他国の食い物とされるのは本当に心が痛むから、どうやっても技術、人口は我々に勝ち目はない。唯一の拠り所の魔術しか我々にアドバンテージは存在しない、それも今や必要かどうかと言うものだ。

 

だが、そこに新たな風が吹いてきた。ソウルの業と言う古い魔法の類いだと言う。

それは、どれ程強固な鎧を纏おうと魂そのものを喰らい尽くそうとし、体内から破壊すると言うものだ。

 

どういう理屈で表れたのか定かではないが、ここ数ヵ月の間に、帝国内で一部であるが広がりを見せつつある。

その中心人物は、あのルルドの民のレレイという少女。

 

彼女がそれを広めているという。最もそれは善意であろうが、少なくともそれが軍事利用することが出来るのは確かだ。

だが、懸念事項として向こう側も同じように研究している可能性がある。

 

そうなったら、人口が多い向こう側の有利が覆ることは無いのだろう。

やはり友好関係を築く事が先決だろうか?だが、それでも一方的に搾取されるだけではダメだ。

一刻も早く対等な立場での条約締結をしなければ。

 

 

《国連》

戦いが終息し、賠償請求等の事を淡々と進めていき。国連内部は久々に緩い空気が流れていた。

それと言うのも今回の戦闘に託つけて、常任理事国を見事に国連の傘下に押さえ込み、アフリカ等の中小国を完全に呑み込んでいた。

 

実質巨大な一つの国家として少しずつ動き始めようともしている。

それもこれもみんな、闇霊のお陰というもの。国連の権威と権力が増大したのは各国の政府があまりにも対応が後手後手に回ったことによる、反感から来るものだった。

 

それに対して国連は現時点で強権的な男がトップとなり、強引に纏め上げた。議会制民主主義に反する行為をしているが、大混乱の中それは逆に良い方向へと移った。

 

大企業の重鎮達は我先に国連へと助けを請い、今までにないくらい国連は潤っている。

もう、何処の国の顔を見なくても良い、立派な国際組織となった。

 

それに対して、日本は意外とその傘下へは収まっていなかった。

ゲートの件もさることながら、何と闇霊の出現率がそれほど高くなかったのだ。

 

これは単に日本に殺人を根差した犯罪組織が少ないことが上がっている。(闇霊はソウルを多く持ってるやつの場所に現れる。)

そういうところは良いことだった。

 

国連とすれば、何とか傘下に組み込みたい。そしてゲートの向こうを覗きたい、強引にやれば離反が発生するかもしれない。

故に強引には行かない、だからある方法を使った。

 

それは国連憲章の見直しと、国連の解体と再編成だった。この組織は国連の権力を更に強化したもの、その名も地球連邦。

安直な名だが、覚えやすい。何より、世界を一つにという上っ面のスローガンも強固に出来る。

 

これに賛同しない国は、世界からどう思われるだろうか。少なくとも友好にはなれない。

だから日本は条件付きでの加入となる、ここに地球連邦極東管区、日本行政区が誕生する。

 

日本のつけた条件は3つ、天皇の地位、独自の三権分立の保証、ゲート内部の向こう99年間の委任統治だった。

国連は即座に受け入れた。99年など幾らでも誤魔化しがきく、地球連邦となった後じっくりと年数を減らせば良いと。

 

 

《手記》

 

地球側がそうなっていると露知らずに、自衛隊は今日も訓練に明け暮れている。

だが、その日は少し違った。

 

老衰したウェルスが覚醒した、起きた瞬間に若返りベッドから起き上がり質問を投げ掛けた。

 

あれから何日たったのかと、それと同時に自らの手を刃物で切りつけた。手からは血が流れ出でている。

だが、その色は黒ではない、普通の人間と同じ赤い色。傷は直ぐ様治癒の魔術で修復したが、失っていた痛みが残った。

 

彼にダークソウルは、無くなっていた。種火は消え継ぎ火だけが残った世界。

ウェルスは、古い力を取り戻した。

そして、最初に行ったことは。自衛隊、いやアルヌスに住む人々へ、ソウルの業を教授することだった。

 

いったい何が彼にそうさせたのか、今では誰にも解らない。だが、一つだけ解ることは、彼が何かしらの考えの元動いていたことだろうか。

 

元々、彼自身王という存在であったがゆえに、もしかすると自分の嘗ての国民達を想起させた可能性はある。

彼の記録の中には、四人は導くものというものがあった。

 

彼等が世界に現れたとき、既にボーレタリアは存在した。だが、それは遺跡と言う形でだ。最初の四匹は、ソウルの業を見出だし後から来たもの達へと、教えを説いた。それを思い出したのかもしれない。

 

そして、彼がソウルの業を教え初めてから自衛隊の戦力は大きくなった。

偶然かどうかは解らないが、不死人達が使用する奇跡と言うものに近い魔術を地球側から来た人々は良く使え。

 

特地、つまりこの世界の住人は魔術を覚えやすい傾向にあった。それは勿論私も含めてだ。

 

バルドやソラール、そして上級騎士共に旅をする私は彼等からは多くの事を学び命の尊さと、不死の残酷さを知った。世界がどうなるのか、私には解らない。だけど、きっと争いは無くならないし、多くの命は消えていく。それでも星は巡り、時は刻まれる。

 

灰だらけの大地にも花が咲き始めているのだから。

 

 

《数年後・灰の大陸新街・ヤーナム》

 

そこにいる人々は有るものを見付けた。それはそれは美しく光る大きな力を宿す、暗い何かの魂のようなものだった。

偶然にもそれを聞いた魔導師が研究を行い、それが何かと突き止めようとした。

 

それを調べあげると、アルヌスを中心に広がり始めた者と良くにていることに気がつく。

魔導師はそれを自らの功績として、都の人々はその力を受け入れる。

世界にソウルの業が広まり始めていたが、それはとても異常なものだった。

 

 




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