私は護る小人を   作:丸亀導師

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誤字の訂正ありがとうございます。


第7話 姫様の受難

あれからどれ程の年月が過ぎたのだろうか、次第に火の封の影響が小人たちに広がっていくのが、めに見えて来ていた。

ひ孫の代で影響が見え始めていた。あまりにも早い成長速度、あまりにも早い老い、そして我々が最も身近でなかったなかった、死。それが、広がっていた。

 

それだけじゃない、個体としての筋力、病的な肉体。

矮小なソウル。

ああ、王よ私は見るに耐えない。こんな存在を同族と見ろと言うのか。護れとおっしゃるのか。

 

唯一の救いは、たまに現れる火の封が弱い者達。

彼らは、我々に想像出来なかったものを使用して、己の弱さを克服しようとした。『イザリスの魔女達』の力を模倣し、触媒を糧に精神を消費して行う術。

我等、不死の小人はそれらに名を付け世界に広めようとした。その名は『魔術』、後の世に出てくる『呪術』に先んじてその力は世界に広がった。

 

 

 

《イタリカ》とある女騎士

 

やあやあ、私女騎士。殿下と一緒にイタリカに調査に来たんだけどね、見てよ私の目の前。

死体だらけだよ。

 

イタリカが襲われてるなんて聞いて駆けつけてみると、なんと日本に負けた諸王国連合軍の敗残兵たちが、イタリカを襲ってたわけ、

なんで日本に負けたのかを知ってるかだって?

 

だって私、転生者だもん。最初は死んじゃった事に戸惑ってたけど、次第に今の生活にもなれちゃって、平民だったけど、お母さんはなんと殿下の側遣いだったの。

だから私は昔から殿下の遊び係だったんだ。

 

それで騎士団に招待されて、今はこうして騎士団にいるわけだけど、薄々感じてた、ゲートの世界じゃないかって。でも、おかしな騎士が出てからと言うもの、この世界に疑問が出てきた。

 

だって、あんな鎧前世じゃ見たことなかったもん。どう考えても動けないくらい重い筈なのに、平然と私達よりも軽々と動いているんだからおかしい。

 

そんな事もあって、もしかしたらゲートと違うかも。なんて思ってたら、イタリカだよ。しかも+1で私も一緒に連れてかれて、今自衛隊が来たところ。

 

ただし、あの騎士も一緒に来たみたい。

しかも登場の仕方がおかしいよ。30m以上の高さから5点着地とかしないで、そのまま足で着地して無傷とか、人間辞めてるんじゃない?

 

ああ、私達は今からあんなのと交渉をしなきゃなんないの?

いや、まてまて、まだあれが交渉の場所に出てくるって決まった訳じゃない。第一自衛隊と一緒にいるんだからきっとまともな人だよ。

 

だから、姫様どうかあの人達の逆鱗に触れる事だけは起こさないでください。こっちが死んでしまいます。

ハミルトンさん、期待してますよ!

 

ってあれ?なんであの騎士が此処にいるんでしょうか、嘘マジ!ちょっ近付いて来ないで!お願い!

 

《イタリカ》ピニャ

 

まったくなんて事だ。私が味方だと判断したものは、帝国の敵であったとは。なんたる不覚!!

だが、アリスが警戒もなくハミルトンと会話をしていた所を見ると、どうやら危険な相手では無さそうだ。

 

あいつはいつも勘が働いて、私を助けてくれるからな。今回もあいつの勘に頼るしかないようだ。

それに、相手にはあの騎士殿がいる。

あの騎士殿が、あの弱気を守る騎士殿が残虐な行為をする連中と手を組む訳がない。

 

そう思わなければやっていけないな。

まったく、どうしてこうなってしまったのか、全ては帝国の外征政策の弊害か?力が強いものたちへ、牙を向けた報いか?

 

民衆はきっと私達から離れ、彼らを頼るだろう。そうした方がとても安全だろうからな。

民衆とは勝手なものなのかもしれやい。

『殿下、顔をあげてください。』

この声は、アリス?

 

「何のようだアリス。貴公にはミュイ嬢を守ると言う任務を与えていたはずだが…。」

 

どうしてそんな怪訝そうな顔をして。まさか…。

 

「それが、追い出されまして、どうやら立場が逆転しそうです。どう考えても、彼等に媚を売るつもりですよ?主にミュイ様の為に、この館の者は私達を踏み台にしてでも守ろうとするでしょう。」

 

そうか、それが答か、ああここはきっと彼等の要害として再建築され、軍が駐留するのだろうな。

そのまま、帝国に進行する足掛かりか。

 

「最後まで、話を聞いてください。あの騎士が殿下とお話がしたいと言って来まして、今扉の向こう側にいます。」

 

まさか、私の場所を嗅ぎ付けて連れていこうと言うのか!いやいや、まてまてこんなに早いわけないだろピニャよ!落ち着け。

 

「入って良い。通してやれ。」

 

「失礼する。」

 

入ってきたのは壮年の男。髭を囃し少々疲れたような表情をしている。だが、鎧はもちろんあの騎士のものだ。

 

「何ようでここまで来たのか。」

 

「彼らの代弁者として貴公に通達がある。彼等は貴公等を害するような事は一切行わない。例え敵対関係であろうとも、あちら側は穏便に済ませたいということだ。

なに、良かったではないか滅ぼされないだけましであろう?」

 

「それはどういうことだ。貴方の言うことには意味の分からないことがあるが?

帝国を滅ぼすことが出来るとでも?」

 

「彼等にはその力がある。貴公もあれらを見れば直ぐにわかるだろう。近い内にきっと接触があるだろう。その時を心して待っていることだ。それでは失礼する。」

 

「まて、話はまだ。」

 

止めようとしても、騎士の歩みは止まらなかった。まるで自分は関係ないとでも言うようなそんな歩み。

ああ、胃が痛くなってきた。

 

「殿下、きっと良いことありますよ。ねっ?」

 

「ありがとうアリス」

 

ああ、アリスお前だけが心の支えだよ。

 

 

 

《イタリカ》レレイ

 

伊丹達と一緒に休息をしながら師匠の本の解読に没頭していると、あの騎士が現れた。

そして、眠っているテュカの方を見た後に私の方へと来た。

 

「君が持っている本は、マヌスの本か?」

 

「?著者はウーラシールのマヌスで、あってる筈。それが何を意味しているの?」

 

「悪いことは言わん。直ぐにそれを焼き捨てなさい。」

 

「これは師匠から私へと譲渡されたもの。このような貴重品をみすみす焼き捨てる訳には行かない。」

 

目の前の騎士は共に翻訳を行っていた時の温厚さは無い。殺気立っていて、最悪の場合私を殺してまで奪うのではないか、と思うほどのものだ。

 

「おい、なにやってんだ。」

 

伊丹が気付いたみたいだ。

 

「なに、彼女から危険物を取り上げようとしただけだ。」

 

「なんで、この本がそんな恐ろしいもの、見たいにいってるんだ?」

 

「それを悪用されれば、この地が恐ろしいことになる。詳しくは言えない、言ってはいけない。」

 

「なら無理だな。それに、日本じゃそれを恐喝っていうんだ。あんたも国会に招致されてんだ、変な事をするなよ。」

 

騎士がため息をついて、これにはお手上げのようだ。

騎士は乗り物に乗って先に、アルヌスの方へと帰還するようだった。

 

「ありがとう伊丹。」

 

「なんのなんの、良いって事だよ。皆あの騎士には、警戒してるんだ、なんか得たいの知れない存在って感じだからな。特にロウリィなんて、物凄く警戒してるんだ。」

 

だけど、これで私はますますこの本の事が、この著者の事が気になった。私の知らない魔法とも違う、魔術という代物。これは、伊丹達の世界と同じくらい気になる。

 

テュカが言ってた『ソウル』の伝説ももっと詳しくテュカから聞き出さないければ、このままではあまりにも本の解読に時間を要してしまう。

 

 

 

《????》????

 

灰にまみれた大地の中を、ただひとり歩むものがある。

焼け爛れた鎧を惑い、腰には螺旋を型どった剣を刺し灰の中を、海に向かって歩いている。

 

そこに、暗闇が現れる。その暗闇をその鎧は、一瞥すると共に、剣を抜き放ち上段に構えいつでも攻撃出来るようにと、待ち構える。

そこに、暗闇と鎧とが激突し、大きな地鳴りが灰色の大地に鳴り響いた。

 

 




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