凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー   作:ルチルネリネ

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シュヴェーリンは歓喜していた。自分の存在意義を示せることに。

リン「私は戦艦。私は闘いこそが本望」

シュヴェーリンは渇望していた。先の大戦の英雄との死闘を。

リン「私は軍艦。私は国の穀潰しじゃない」

シュヴェーリンは震えていた。幾度となく夢見たこの光景に。

リン「私はシュヴェーリン!ハボクック氷山空母を葬る者だ!」


Little girls(小さな女の子達)撤退戦

――ロイヤル北方海域:氷山地帯――

 

 

 陽動作戦、開幕空襲防衛、次弾砲撃はこれ以上ないくらいに成功した。

 

 今すぐに喜びを表したいぐらいに興奮していたが、相手はまだ沈んではいない。

 

 厚い氷を砕きながらシュヴェーリンは航行する。

 

「やはりウルツブルグのレーダーは素晴らしい。射撃管制装置としても活躍できるが、対空射撃計算にもこのレーダーは必要不可欠だ。それに加えて副砲を全て撤去し対空兵装を積んだ事も間違いでは無かった」

 

 十六基もある百五mmSKC連装高角砲の無事だった一つをなでる。

 

 開幕空襲防衛で対空兵装の三分の一を大破、故障に追い込まれたが、主砲は爆弾を弾いてほぼ無傷。艦橋に二発、煙突付近に一発ダメージを受けたが爆弾が小さく軽かったこともあり重要区画までは到達しなかった。

 

「二十機でここまで正確にダメージを与えたのは称賛するよ。流石、先の大戦の英雄と言ったところか……だが、その伝説も今日ここまでだ!」

 

 シュヴェーリンは拡声器を口に近づけて声を出す。

 

「Der Eisberg des Teufels(悪魔の氷山)よ、お前には二つの選択肢がある。一つは私達に拿捕され生き残る事、もう一つはここで私に沈められる事。航行を止めて錨を下ろしたら捕虜として歓迎しよう。だが、航行を止めない場合は私の主砲が貴様を討つ」

 

 シュヴェーリンはビスマルクに言われていた降伏勧告を発した。

 

 だが、彼女は降伏することを望まない。何故ならハボクック氷山空母を倒したかったからだ。

 

 祖国、鉄血での彼女の扱いはひどいものだった。

 

 ハボクック氷山空母の情報は鉄血内部でも最高機密情報であった、故にシュヴェーリンの建造理由もまた秘匿であり、表上では「曲射砲の運用と特殊弾の口径に合う主砲のための戦艦」と言うことになっていた。

 

 重巡洋艦はおろか軽巡洋艦にも劣る主砲射程、副砲がなく高速で動けるような戦艦でもない、機動力がある駆逐艦や潜水艦、魚雷艇には為す術がない、耐えることは出来ても反撃することが出来ない船。それが鉄血での評価だった。

 

 ここでハボクック氷山空母を葬れれば鉄血内で大々的に発表され常識が変わるはずだ。それが降伏してほしくない理由だ。

 

「ハボクック氷山空母……は止まらずに航行中、さらに艦載機の準備もしている!これは明確な敵対意思だ!」

 

 拡声器を口から離して、前部主砲を斉射!砲弾は空中で炸裂して細かな粒子がハボクックに降り注ぐ!

 

 発艦途中だった艦載機とハボクックにダメージを与え、彼女の動きが鈍る。

 

「これで止めだ……悪いが私のために倒されてくれ!」

 

 シュヴェーリンはゆっくりと回頭して後部主砲をハボクックに向ける。後部主砲に装填されているのは空中で炸裂しないべトン弾だ。

 

 後部主砲がハボクックを捉える。距離六千mここからなら外しはしない。

 

「さらばだ、ハボクック氷山空母!」

 

 シュヴェーリンが主砲を発射しようとしたその時、それは起きた。

 

「全門せい――くっ!?」

 

 ハボクック氷山空母を狙っていたシュヴェーリンに氷山をまたいで砲弾の雨が降り注ぐ!

 

 砲弾一発一発は威力こそないが途切れることがなく、正確に降り注ぎ主砲の標準を鈍らせた。

 

「ええい、邪魔をするな!」

 

 シュヴェーリンはハボクック氷山空母に対して発砲!しかし、標準がずれていたこともあり直撃ならず!

 

「神聖な勝負に泥を塗った奴は誰だ!?出てこい!」

 

 拡声器を口に当てて怒鳴る。

 

 出てきたのは完全武装したメイド姿。間違いなくベルファストだった。

 

「あれは……ベルファストか!くっ!やはり護衛がいたか!」

 

 ベルファストはハボクックが作った氷の無い海を渡って接近してきたのだ。

 

「だが見えるのは軽巡一隻!この距離なら主砲の範囲内!後部主砲が装填中だから特殊弾しかないが……軽巡相手ならやれる!前部主砲斉射!」

 

 緩い弾道を描きながらベルファスト上空で特殊弾が炸裂!鋭い粒子がベルファストに降り注ぎダメージを負わせた!

 

 しかし、流石は歴戦のメイドと言うべきか降り注いだ粒子の水柱をもろともせずハボクックに接近し、煙幕を使った。

 

「煙幕なんぞこちらのウルツブルグのレーダーには通用しないぞ?次の一撃で二人とも海の底だ!」

 

 装填を急いでしている間に煙幕内で主砲の発砲音!煙幕からシュヴェーリンに向けて撃ってきた。

 

「忌々しい……だが装填が終われば、ここがお前たちの墓場だ!」

 

 煙幕が徐々に晴れてくる……二人の姿を確認したとき、シュヴェーリンは驚愕した。

 

「これはどういうことだ?何故ハボクックの氷が無くなって……しまった!後部主砲斉射!」

 

 シュヴェーリンは慌てて主砲を放つ。

 

 だが、氷の無くなったハボクックは速力が倍近く上がっており、着弾まで遅いシュヴェーリンの砲弾は綺麗に避けられてしまった。

 

「逃げるなハボクック!待て!私と勝負しろ!ハボクックッ!」

 

 拡声器で怒鳴りつけるが速力に差があるこちら側は追いつかず、結果ハボクックを逃してしまう結果となった。

 

「くっ!ビスマルク様に貰ったチャンスを逃してしまった!この報告をどうすれば……ん?電信……ビスマルク様から?」

 

 追いつけないことが分かって立ち尽くすシュヴェーリンに一通の電信が届く。

 

「陽動艦隊、空母を含む機動艦隊と会敵。空襲により作戦の維持が困難と判断する、直ちに撤退せよ!?」

 

 それは、陽動に動いていたビスマルクを含む大艦隊が敗北したことを意味していた。




今回は鉄血陣営のシュヴェーリンに視点を当てて書きました。

シュヴェーリンのスペックを表示しますと
排水量七万トン、全長二百四十m、水線長二百三十m、幅三十五m、吃水十m
主砲十一,五口径五十四cm三連装砲三基、百五mmSKC連装高角砲二十基、三十七mmSKC連装高角砲十基、二十mm四連装機関砲八基、二十mm連装機関砲十六基、カタパルト二基、クレーン二基、搭載機数八機。
大和型に匹敵する船の大きさと、主砲はカール自走臼砲がモチーフで、最大射程は一万mです。
副砲を全て下ろしたということもありまして、百五mmSKC連装高角砲がビスマルクの二倍以上とカタパルトによる戦闘機が二機同時発艦できる言う対空の鬼性能になっております。
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