凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
砲弾の雨の中、シュヴェーリンは迫りくる巡洋艦に空襲に使う特殊弾を浴びせていた。
ハボクック氷山空母を葬るための徹甲弾の方が威力は高いが、たびたび来る空襲に備えなければいけないため弾の切り替えが出来ないのだ。
だが、特殊弾は特殊弾で拡散する粒子が回避しにくく確実にダメージを与えるため全く使えないというわけでないのが唯一の救いだった。
リン「私は守りきってみせる!鉄血の未来のためにも!」
迫りくる危機にシュヴェーリンは吠えて、自信を奮い立たせた。
――ロイヤル北方海域:流氷地帯――
「危ないところをお助けいただき、ありがとうございます陛下」
「礼には及ばないわ、それよりも途中で現れたあの敵……あいつがハボクック氷山空母を倒す切り札ってやつね」
クイーン・エリザベスに深々と礼をするフッドを制してクイーン・エリザベスは途中参戦してきたシュヴェーリンを見る。
「シェフィールドとエディンバラの情報は正しかったようね、大型の戦艦が二隻動いている……片方はビスマルク、もう片方は最新兵器。しかも、流石戦艦と言うべきか対空に関しては我々の予想を超えています」
「ちょっと、解析なんてしていない!ウォースパイト、早くあいつらをやっちゃってよ!」
「お言葉ですが陛下、敵は鉄血の戦艦……おそらくタートルバック装甲を採用していると考えますと、近距離である今の状態ではダメージは低いでしょう。その分、巡洋艦の焼夷弾と空母の艦爆、艦攻が効きますので弱らせたところに最後の一撃を放ちましょう」
クイーン・エリザベスの言葉に対してウォースパイトが冷静に切り返して答える。
しかし、そんなウォースパイトの考えにも間違いがあった。
「集いし星が一つになる時、私たちの絆は新たな未来を照らし出す!行け!艦載機達!」
「我が勝利は栄光とともに!……た、多分……艦載機の皆さんお願いします!」
「さて、ご退場願おうか!ソードフィッシュ中隊!出撃の準備を!」
「護衛空母だけど、実力は正規空母レベルと比べても遜色ないわよ!八一六中隊、出撃よ!」
ハーミーズ、グロリアス、アーク・ロイヤル、チェイサーの四隻の空母から艦載機が次々と発艦する。
だが、艦載機はまずシュヴェーリンの特殊弾でチリジリになり、そこをシュヴェーリンの戦闘機に止められ、最後まで残った艦載機をあざ笑うかのように対空兵装が弾幕を張って次々と落とされていった。
「ある程度の対空防御は予想していたが、まさかここまで強いとはな……私達では突破は出来ないようです陛下」
アーク・ロイヤルがクイーン・エリザベスに近寄って報告する。
「ちょっとウォースパイト!艦載機が全然効かないじゃない!本当に大丈夫なの!」
「……対空に関しては予想をはるかに超えていると修正しますが、安心してください陛下。私達には優秀な駆逐艦と巡洋艦がいます。彼女達に任せれば問題はございません」
六隻の巡洋艦と六隻の駆逐艦、計十二隻が取り囲むように砲弾の雨を降らせる。
対するシュヴェーリンは的が大きい巡洋艦一隻ずつ狙いを定めて主砲を放つが、機動力が高い巡洋艦に致命傷を負わせることが出来ない。
着実にダメージを与えていたロイヤル艦隊。しかし、ボーナスタイムともいえる時間は終わりを告げる。
「前方に魚雷多数!潜水艦です!」
「あれはメッサーシュミット!?シュトゥーカ、スツーカもいる!」
目と鼻の先にいた前衛艦隊に数本の魚雷が被雷!シュヴェーリンの後方には基地から飛んできたと思われる爆撃隊がこちら側に向かって来ていた。
「陛下、残念ですがここまでのようです。鉄血領海に差し掛かり敵潜水艦、敵航空機がこちら側に向かってきています」
「これ以上の深追いは損害の方が大きくなる……仕方ないわ、引き上げるわよ!」
クイーン・エリザベスがウォースパイトに撤退指示を出した
「はっ!王家の戦士達よ全軍撤退!空襲と潜水艦の魚雷に気を付けながら引き上げなさい!」
ウォースパイトの指示でロイヤル艦隊がロイヤル領へと戻っていく。
シュヴェーリンは最後まで殿を務めて撤退する鉄血艦隊を守り抜いたのだった。
ロイヤル艦隊
前衛艦隊一、旗艦ヨーク、ロンドン、ケント、クレセント、コメット、シグニット。
前衛艦隊二、旗艦エクセター、サーフォーク、ノーフォーク、ハーディ、ハンター、アマゾン。
指揮本隊、旗艦クイーン・エリザベス、ウォースパイト、ハーミーズ、グロリアス、アーク・ロイヤル、チェイサー。
予備艦隊、旗艦フッド、ジャベリン、ジュノー、ジャージー、ジュピター。
この数をシュヴェーリン一隻だけで耐え抜くなんて戦艦とはいえ中々な防御力ですね……。
次は戦闘後のお話を少し書いていこうと思います。
長い闘いを読んでいただきありがとうございました!