凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
そう言うと彼女は艤装を展開してドックのシャッターを上げた。
そこから吹き付ける風はとても寒く、並大抵の人なら凍えてしまうだろう。
だが、彼女は場違いな薄い淡い藍色のドレス姿で凍った海を歩いていく。
???「鉄血の皆様にご満足いただけるよう。この■■■■■■■■■、できる限りの誠意をもって盛大に歓迎させていただきますわ」
そうして彼女は次々と空へ艦載機を飛ばすのだった……。
-ロイヤル北方海域:流氷地帯-
「敵機来襲っ!敵に見つかった!無線解除、レーダーを付けて!」
けたたましいサイレンの音が鳴り響き捜索に出ていた彼女達は戦闘態勢に入る。
「あらあら、いつの間に見つかったのかしら?」
「オイゲン!悠長なこと言ってないでさっさとあんたも落としなさいよっ!放置すれば援軍が来るわよ!」
同じく捜索していたであろう一機の航空機、フェアリーソードフィッシュが急旋回して華麗に弾を回避して離れていく。
「もう最悪っ!ただでさえしぶとい航空機なのにあんな距離当たるわけないじゃない!」
重巡洋艦アドミラル・ヒッパーが海面をぴちゃぴちゃと地団駄踏む。
「それよりもここを離れるか、それとも強行偵察に出るか考えましょう」
鋭い目つきで逃げた航空機を見つめながら重巡洋艦プリンツ・オイゲンが提案した。
「そんなの強行偵察に切り替えて続行よ!空母からか基地からか確認しないと帰らないわ」
「俺様が思うに、ソードフィッシュなら空母で間違いないだろう。この先は氷山地帯、ロイヤル本土基地からの航続距離的にここまでは届かないはずだ」
強行偵察に切り替えるとヒッパーが、駆逐艦Z1(レーベレヒト・マース)は最後に撤退の意思を示す。
「しかし、氷山を滑走路にすれば基地からの攻撃も可能かと思われます。凍結など問題もありますが……」
そう言ったのは軽巡洋艦のケルン、彼女は偵察を続行に手を挙げた。
「お姉さんは一度引き返す事を提案します。見られた以上何らかの攻撃手段をしてくる可能性が高いですからね、今現状の戦力では危険です」
最後に意見を出したのは軽巡洋艦ケーニヒスベルクだった。
意見が分かれて話し合いをしている最中、ケーニヒベルクの電波探知機(レーダー)に反応が出る。
「レーダーに反応!敵機の数は……」
「ケーニヒどうしま……これは……」
最新式の対空レーダーを装備していたケーニヒ、次にケルンが前方の遥か彼方の空を睨む。
「最悪のシナリオね。まさかここまで盛大にロイヤルが攻めてくるなんて予想してなかったわ」
「はぁ?みんな何を言って……噓でしょ……」
彼女達が見ている先、ここからでも轟くエンジン音が聞こえてきそうなほどの大編隊。
「回避に自信があるレーベ様も流石にこれは無理だな」
「お姉さんたちの予想を超えています。今すぐに逃げますよ!」
「大人しく逃がしてくれるとは思えないけどね、まぁ頑張りましょうか!」
彼女達は踵を返して逃げ始めた。それを追いかける轟音はまさしく死神の鎌のように彼女達を追い詰めていく。
「こんなの聞いてないわよっ!なんでこんなに艦爆隊がすぐ近くを飛んでんのよ!」
「口を動かすより足を動かしなさいっ!飲み込まれたらいくら私達、KAN-SENとは言え無事では……いえ、生きて帰れるとは思えないわ!」
「幸い足の遅いソードフィッシュ!この距離と速度なら逃げ切れるはずさっ!」
それでも、じわりじわりと距離を詰められていく。
数百のソードフィッシュの先鋒が彼女達を射程に捉えたその瞬間、航空機は急旋回し戻っていく。
「ハァハァ……に、逃げ切れた……?」
「……いや、逃がしてくれたが正解だな。爆弾抱えたまんま帰っていったから……これ以上入ってくるなら容赦はしないって意味だろうよ」
「ですが、貴重なデータを入手できました。ここには海軍基地があるということを」
引き返していく航空機を見て五人は強行偵察を諦める。
次々と帰っていく数百の航空機を見ながら彼女達は次の作戦を考えるのであった。
だが、彼女達は知らない……この航空機が一隻の空母から発艦した艦載機だと言うことを……。
最初は鉄血艦隊の隠蔽索敵の情報を捉えた???による航空歓迎のシーンから物語を始めさせていただきました。
察しの良い皆様にはもうお気づきかもしれませんがもう少しお付き合いください。