凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー   作:ルチルネリネ

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ユナイ「にしし!敵基地を発見なのです!」

ユナイは事前にエンタープライズに言われていた同時攻撃の指示を思い出す。

ユナイ「敵に発見されちゃった事にして先に攻撃しちゃおう……!」

エンタープライズに聞こえないようにこっそりと呟き艦載機を操作する。

ユナイ「やっちまったです!爆撃機が敵に発見されちゃったなのです!対空防衛される前に攻撃です!」

ユナイはわざとらしく大声でエンタープライズに報告し、エンタープライズの指示を聞かずに攻撃を開始した。


秋の麒麟草作戦 前編

 

――重桜南方海域:重桜南方基地――

 

 

「我らが基地に敵機接近です!祥鳳さん戦闘機の発艦を急いでください!」

 

「任しておき!敵機は一機残らず墜としたるわ!」

 

 龍驤の対空電探が敵機の来襲を補足し、祥鳳に追撃機を上げるように指示をする。

 

 その指示を受けた祥鳳は慣れた手つきで戦闘機を発艦する。

 

 指示を出した龍驤も急いで発艦を行い次々と戦闘機を飛ばしていった。

 

「なんだ?空襲か?あたし達も対空防衛に参加するぞ日向!」

 

「私達の対空が役に立つかは分からないけど……しないよりはマシか、出撃する!」

 

「神さま、私達を守り給え……!扶桑型一番艦扶桑、出撃します!」

 

「姉さま!私達も行きましょう!扶桑型二番艦山城、出撃しま~す!」

 

 伊勢と日向、扶桑と山城が続いて出撃する。

 

「谷風は警報を鳴らす!磯風は非番の第六駆逐隊に緊急招集をかけてきなさい!浜風は私と一緒に対空防衛の援護を!浦風、出撃するわ!」

 

「了解です!ついでに通信室に行って攻撃を受けたことを本部に伝えてきますね!」

 

「分かりました浦風さま!磯風伝えてくるね~!」

 

「この風……戦にちょうどいいわ!浜風、出撃する!」

 

 浦風、谷風、磯風、浜風とそれぞれ別々へと行動する。

 

 基地上空では爆撃機が基地航空滑走路に爆撃を行っていた。

 

「駄目です!敵機の数が多すぎて撃ち落としきれません!」

 

「こんな数は反則やろ!?落としても落としてもきりがあらへん!」

 

 龍驤と祥鳳の戦闘機が懸命に敵機を撃ち落としているが、それ以上に敵が多すぎて侵入を許してしまう。

 

「はっはっはっ!撃て撃て!適当に撃っても当たるぞ!」

 

「こんな時にお酒入っているのか姉さん!?くそっ!敵機が多すぎる!」

 

 伊勢と日向が南西から来る敵機を撃ち落としていく。

 

「祓い給い、清め給え!そなたたちの魂に故郷の安らぎがあらんことを……!」

 

「みんな行けぇ~!はわわ、うっかり主砲を撃っちゃった!」

 

 扶桑と山城が南東から来る敵機を撃ち落としていく。

 

「くっ!次から次へと……!弾薬の装填を急いで!」

 

「全然撃ち落とせてないけど、やるしかないわね!」

 

 浦風と浜風が航空母艦の戦闘機が取り逃した手負いの爆撃機を攻撃している。

 

 だが、敵航空機は次々と基地の地上構造物へと爆撃を行っていく。

 

「基地滑走路が集中的に攻撃されていますね……我々には攻撃してこないのはなぜでしょうか?」

 

「そんなの分からへん!艦船(KAN-SEN)は回復が早いからかもしれへんな!」

 

 龍驤の問いに対して祥鳳は戦闘機を操りながら答える。

 

 一時間にもわたる爆撃は航空機の二割を戦闘機が落とし、残り二割を艦隊の対空砲が撃ち落とした。

 

 しかし、基地航空滑走路と基地航空隊倉庫は再起不能状態となり司令部付近にも数発爆弾が落ちている。

 

 不幸中の幸いか、艦船(KAN-SEN)への攻撃はなく水上で燃える基地滑走路をただ眺めるしかなかった。

 

「追撃しましょう……今ならまだ間に合うはずです!」

 

「あたしも賛成だね。ここまでされて黙ってみているわけにはいかない!」

 

「私も扶桑と姉さんの意見に賛成だ。第二攻撃隊も来る可能性がある」

 

 扶桑と伊勢、日向が追撃の意見を出した。

 

「私は反対です!航空機の数的に第二次攻撃は今の半分ぐらいしか出せませんし、時間がかかります。それを分かっていて攻撃したならもうすでに敵は撤退済みのはずです!」

 

「うちも反対やな。こっちの戦闘機も敵戦闘機に撃ち落とされて正直対空援護の自身があらへん。本部からの援軍が来るまで耐えるしかないわ」

 

「えっと、山城も反対です!なんかこう……山城の勘が行っちゃいけないって言っている気がします!」

 

 龍驤、祥鳳、山城が反対の意見を出す。

 

 意見が対立したが、追撃するにも航空援護が必須なため追撃はせず、本部からの援軍に頼るほかなかった。

 

「本部から電信です!戦艦及び航空母艦は基地の防御、駆逐艦による水雷戦隊と戦闘機、観測機による敵の索敵、発見した後に撤退せよ!」

 

 本部からの電信を谷風が報告する。

 

 こうして、駆逐艦八隻による水雷戦隊が海戦することになったのだった。




重桜南方基地防衛部隊メンバー

第四航空戦隊(龍驤、祥鳳)、第二戦隊(伊勢、日向、扶桑、山城)、第六駆逐隊(暁、響、雷、電)、第十七駆逐隊(浦風、磯風、谷風、浜風)

千九百四十二年四月十日時の艦隊編成で四部隊、計十四隻で防衛しています。
次回は駆逐艦による追撃作戦です。第六駆逐隊が好きな方は心よりお待ちください!

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