凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
エンタープライズは静かにユナイに問いかける。
ユナイ「敵が対空防御をする前に奇襲したくて……です」
エンタープライズの言葉にビクビクしながらユナイが答えた。
エンター「旗艦は私だ。以後、勝手な行動は慎め。これは命令だ」
ユナイ「サー・イエス・サーです!」
エンター「……馬鹿にしているのか?」
ユナイ「至極真面目に反応したのに勘違いされたです!?もう嫌なのですこの部隊!」
ユナイの悲痛の叫びが群島に反射してこだまになるのであった。
――重桜南方海域:南西群島海域――
「今何か聞こえたでござるか?」
「響には何も聞こえなかったぞ?気のせいではないか?」
暁の問いかけに響が答える。
狭い群島地帯を高速で航行しながら敵の航空機が消えてった方角へと進んでいく。
上空には航空母艦の龍驤と祥鳳からの九六式艦戦闘機九機、零式艦上戦闘機四機の計十三機、九〇式二号艦偵三型六機、艦載機合計十九機が警戒と索敵を行っている。
「これだけの数の艦載機を出して大丈夫だったのかしら……?」
「確かに今基地を攻撃されたら危ないかも……?」
雷、電が基地への第二次攻撃を心配している。
「それに付いては問題ないわ。重桜基地本部から空母の援軍が来るって報告も来ていたから。……間に合えばの話だけどね。そうならないように先に私達が見つけないとならないわ」
「磯風、頑張って活躍するよー!」
「活躍しなくてもいいわ。敵を先に発見して、それを南方基地の皆に報告して、出来るなら見つからないように撤退するだけ」
「今日は風が強いですね……皆さん曲がる時は注意しなくちゃいけないですよ」
浦風が雷と電の心配を解消させる。磯風は今度は役に立ちたいと興奮していた。
浜風はその磯風をなだめて作戦の内容を簡潔に語り、谷風は撤退時の注意を言う。
第六駆逐隊と第十七駆逐隊が警戒しながら進んでいくと、観測機の一機が上空から暁の近くに降りてきてぐるぐると周りを回ってまた上空へと戻る。
「どうやら観測機が敵と思わしき艦艇を見つけたでござるな。艦隊警戒態勢を維持しながら見つからない程度に接近!上空への警戒を怠るではないでござるよ!ここからは艦載機の援護もないでござるからな!」
暁の号令に他の艦船(KAN-SEN)達はそれぞれ返事をして速力を落としながら島伝いに航行する。
「見つけたでござる……!敵は駆逐艦と航空母艦の機動部隊!艦載機は……飛んでござらんな」
「あの艦船(KAN-SEN)はエンタープライズ!その隣にいるのは……見たことない艦船(KAN-SEN)だわ。大きな盾?を持っていて何やらもめている……?」
暁と浦風が敵の索敵に成功する。
敵はエンタープライズ率いる機動部隊、護衛は駆逐艦の高速部隊だ。
「エンタープライズから二百機も艦載機が出せるなんて聞いたことないですね……」
「ここは重桜海域で基地を作るにはバレるし、そもそも基地を作れるような大きさの土地がない……」
「さらに言うならユニオンの南部基地からは航続距離も足りない……。ならここにいる敵部隊から発艦したと考えるのが妥当ね」
「つまりはあの艦船(KAN-SEN)は航空母艦で、めちゃくちゃ艦載機を飛ばせるってこと?」
「ユニオンは有り得ない数の艦載機を発艦できる航空母艦を作ってしまったと言うことです?」
雷、電、浜風、磯風、谷風と自分の意見を言っていく。
「あの一隻だけでそこまで多くの艦載機が発艦するとは思いたくはござらんが……他に方法がないところを見るにそれが正解じゃろう……」
「敵部隊に動きあり!回頭して撤退していくわね……第二攻撃隊は発艦してなさそうだわ。こちらに気づいたのかしら?」
エンタープライズ率いる敵機動部隊は大きく回頭しながら重桜海域を離脱しようとしていた。
「これからどうするの?数は勝っていても正直戦って勝てる戦力ではないわ。だけど、護衛が少なくてこれ以上ない絶好のチャンスでもあるけど……」
「……この情報を持って帰ることが先決でござる。総員、撤退でござる!上空に警戒しつつも急いでこの海域から離れるでござるよ!」
暁の号令に他の皆うなずき、急ぎつつも警戒しながら敵と離れていく。
後に、暁がもたらした情報は今後の作戦に大きく影響するとはこの時、誰も予測できなかったのだった……。
今回は重桜がユナイテッド・ステーツと初遭遇を果たした回で終了しています。
暁の判断は本部からの報告に従ったのですが、実際かなりの護衛の薄さだったので突っ込んでも戦果出せると動いた場合はレキシントン率いる後続艦隊に攻撃されて危なかったので、今回は奇跡的に敵の作戦から回避できたと言っても過言ではありません。
なぜ、エンタープライズとユナイがもめていたかは次回分かります。