凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
天城は重桜南方基地から来た通信を聞き考える。
ユニオンの基地から届く事の無い航空機は航空母艦の可能性が高く、以前からユニオン内では新型の航空母艦が噂されていたのを思い出した天城は次のよう考えを長門に具申する。
天城「意見を失礼させていただきます、長門様。水雷戦隊と航空母艦の戦闘機と観測機で敵の機動部隊を補足し情報を基地へと報告、のち航空攻撃に注意しながら撤退。本部からは航空母艦数隻を南方基地へと出撃させるのがよろしいと思われます」
長門は天城の案に頷き、南方基地への返信と直ちに第五航空戦隊を出撃するように指示を出した。
――重桜南方海域:南西群島海域――
「どうして逃げたのですか?あの程度の艦隊ぐらいユナイだけでも勝てたです……」
ユナイがエンタープライズに駄々をこねて聞いてくる。
現在、エンタープライズ率いる機動部隊は重桜南方海域の群島地帯から撤退してユニオン南方基地へと帰還しているところだ。
「今回の目的は敵艦隊を引き付けて取り囲んだのち殲滅すること。今回の攻撃で重桜の滑走路、飛行場を奇襲することが出来たが敵は警戒して駆逐艦しか出してこなかった。そして、その駆逐艦もこちらに来ることはなく引き返していった……囮としての作戦は失敗だ」
「ですから、あそこで艦載機を出して駆逐艦だけでも攻撃してしまおうと言ったのです!今からでも遅くないです!攻撃しましょうです!」
ユナイは大声でエンタープライズに意見を述べる。
「駄目だ。第二次攻撃は認められない。これは、旗艦である私の命令だ。従ってもらう」
「むー!ならばせめて納得できる説明が欲しいです!」
ユナイが不貞腐れながら言うのに対して、エンタープライズは手を顔の位置まで上げて指を三本立てる。
「理由は三つ。まず一つ目、敵には空母が存在し健全である。こちらが発艦準備中に攻撃を受けてみろ。甲板上の艦載機が誘爆して被害が大きくなるだろう」
「戦闘機が巡回していて攻撃を受けるとは思えないのです」
「その油断が命取りになるだろう。現にユニオンの航空母艦と空軍の航空機による攻撃で重桜の航空母艦四隻を戦闘不能状態まで追い込んでいる」
エンタープライズは薬指を折り曲げる。
「次に、敵は駆逐艦による高速部隊だという事。群島地帯と言う島が多いこの海域において駆逐艦は戦艦よりも脅威となる。海域の情報、練度が劣る私達では追撃しても撃沈は難しい……下手をすればこちらが危険となる」
「シュミレーションでは対駆逐艦戦は八十パーセントの命中率です!実戦で少しパーセントが落ちると考えても撃沈は可能なはずです!」
「運よく撃沈できたとして何隻だ?逆上した敵は私達の想像をはるかに超えて突っ込んでくる。護衛艦隊でそれ全てが防げるはずがない。そんな中、攻撃してきた敵に対してどう対処するつもりだ?」
中指を折り曲げて、エンタープライズは言う。
「最後に、貴方の練度の問題だ。連携も取れなければ、個人での能力も低い。奇襲に焦った貴方の艦載機が敵の攻撃でどれだけ落とされた?それだけじゃない、攻撃する際に一斉に攻撃を仕掛けたから艦載機同士が空中衝突してバラバラになったのを私はちゃんと確認している」
「あれはちょっとしたミスなのです!次はあのようなミスはしないのです!」
「動かない地上物、さらに目標対象が大きくてあの撃墜率だ。これでは駆逐艦にまともに攻撃を当てれるとは思えないな。私はそう思ったから引き上げただけだ」
そう言うとエンタープライズはユナイの頭をポンポンとなでる。
「貴方はまだ幼い騎士だ。だが、これから誰よりも強くなれる。今は焦らずに着実に任務をこなすことだけを考えて前を向いていればいい。困ったときは私達が助ける。必ずな」
「だから、子ども扱いするなです!」
エンタープライズの手を払いのけて怒るユナイ、手を払われて楽しそうに笑うエンタープライズ。少し離れて笑い出す護衛艦隊の駆逐艦達。
こうして、ユナイの初めての任務は失敗に終わったのだった。
今回は短く前編、後編の二話ずつ計四話の作戦でした。
話半ばですが元々、重桜とユニオンはメインであるロイヤルと鉄血の戦闘に添える形で登場させる予定だったのですが、それでは読者(作者も含む)も飽きてくるかなと思いいっそのことメイン回にしてしまおう!と思って作られた作品ですので書いていて楽しい反面、話をどうつなげようか試行錯誤しております。
これからも面白い作品になるように頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!