凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
長門の問いに対して天城は頷く。
長門「お主の事じゃから何か策でもあるんじゃろうが……余も乗りかかった船じゃその采配しかと見よう」
長門の言葉を聞いて天城はにっこりと微笑むのであった。
――重桜南方海域:重桜南方基地――
「ひどい有様ね……司令室に数発の爆弾が落とされているわ」
「陸上滑走路は穴だらけ、倉庫は跡形もなく吹く飛ばされている……敵も本気と言うことね」
被害状況を確認するために外を歩いていた二隻の姉妹艦、翔鶴と瑞鶴の五航戦は最も被害が大きかった基地航空滑走路と瓦礫の山と化している基地航空隊倉庫を確認して言う。
「瑞鶴、ユニオンはまだ本気ではないわ。艦船(KAN-SEN)を攻撃せずに地上目標だけ攻撃し、第二次攻撃をせずに撤退した……これはこちら側の艦船(KAN-SEN)を誘い出すための罠だったのよ」
「第二次攻撃が来ていた場合、索敵に向かった駆逐艦の水雷戦隊が航空母艦を攻撃できたという意見もあるけど……」
瑞鶴の意見に対して翔鶴は首を横に振って答える。
「無理でしょうね。水雷戦隊が奇襲をかけても敵航空母艦からの攻撃が待っているわ。仮に敵航空母艦が基地へ攻撃をしていた場合も護衛艦隊に阻まれて逃げられてしまうわね」
「初めから無理な戦いだったというわけね……天城さんはどうして航空母艦や戦艦を基地に待機させたのかな?」
「それに関しては簡単よ。天城さんは敵の攻撃が動ける艦船(KAN-SEN)を攻撃してなかった……陽動だと最初から気が付いていたから主力艦は基地で待機させていた。水雷戦隊を出撃させたのは索敵もあるでしょうけど、被害を最小限に抑えるための陽動と味方航空母艦の先制攻撃用意も兼ねていた」
いまいち話を理解できない瑞鶴は首をかしげる。
「簡単に言えば第二次攻撃の被害を最小限に抑える戦法を執ったのよ。基地に攻撃すれば基地に待機中の戦艦、航空母艦、援軍の私達で対処して、水雷戦隊に攻撃すれば基地から攻撃機を発艦させて奇襲をかけれる。その間、水雷戦隊は回避行動に専念すれば艦載機の回収で逃げ遅れた航空母艦を攻撃できるって寸法よ」
「なるほど!流石、翔鶴姉!」
「……私は援軍行進中にそのことが分かったわ。それを報告を受けたその瞬間、ここまで考え抜いた天城さんは間違いなく天才よ。赤城先輩が尊敬するのも納得がいくわ」
「天城さん凄すぎます……でも、翔鶴姉もすごいよ!私なんて今聞かされて分かったもの」
自虐的になった翔鶴を宥めようとフォローする瑞鶴。
「ありがとう瑞鶴、お姉ちゃんも負けていられないわね!これから滑走路の修理とか頑張らなくちゃ!」
「そうだよ翔鶴姉!私も頑張るぞー!おー!」
翔鶴が持ち直すと瑞鶴は持ち上げる。この姉妹艦は二隻で一つだ。
「姉妹……か。私達もあのようになれたらよかったのにな」
姉妹の仲睦まじい姿を遠目で眺めているものがいた。
それは鉄血より来た孤独の女王、ティルピッツだ。
彼女は鉄血の航空母艦不足分を重桜に求めた対価として重桜に一時的に加入している。
その条件を提案したのは他でもないティルピッツの姉妹艦であり、姉であるビスマルクだった。
「指導者として忙しい姉とは違い、私は姉の命令で色々な戦場を駆け巡っていた。だから、異動が決まった時に会えたのが最近の姉との交流となるわけだが……再び会えなくなることを通告されたのは皮肉だな」
翔鶴、瑞鶴の五航戦が二隻で一つならば、ビスマルク、ティルピッツは表裏であった。
だが、表のビスマルクは国のために裏のティルピッツを異国に出さなければならない。
「いつかは私もあの姉妹のように仲良く……は無理でも話し合えるようになれるかしら」
ティルピッツは姉の苦労を知っている。だからこそ、力になりたくて今回の異動の件も嫌がることはなく受け入れた。
「これは、私への試練。色々な体験をして姉を裏から支えれるように勉強しないといけないわね」
国難を救うために異動になったティルピッツだが、そこには異動に関しての悲しみなどはなく、今はどうしたら姉のビスマルクと仲良くなれるか翔鶴、瑞鶴の姉妹を見て勉強するのであった。
重桜南方基地に派遣された援軍は五航戦である翔鶴、瑞鶴、加えて鉄血より交換で来たティルピッツです。
これで、南方基地に集結している戦力は。
航空母艦、龍驤、祥鳳、翔鶴、瑞鶴。戦艦、伊勢、日向、扶桑、山城、ティルピッツ。駆逐艦、暁、響、雷、電、浦風、磯風、谷風、浜風。
合計で十七隻となりました。
巡洋艦(軽巡洋艦、重巡洋艦)がいませんが、戦艦と空母を主軸とした大艦隊です。
今後どんな活躍を見せてくれるのか、期待してください!