凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
敵の反撃を予測していたユニオンは発着艦の練習も兼ねて最新鋭であるユナイに上空警戒をさせていた。
しかし、予測していた攻撃は一切なく、一か月が経とうとしている。
ユナイ「暇なのです、面倒なのです、早く戦いたいのです!敵さん何をしているのですか!」
ユナイは駄々をこねて叫ぶ。
それをエンタープライズに注意され、しばらく黙るのは本日二回目であった。
――重桜本部:本殿横会議室――
「それでは、今作戦における被害状況をご報告しますね。まず被害は南方基地司令部に数発の爆弾、これは修復可能です。次に基地航空滑走路及び基地航空隊倉庫は攻撃が集中していたこともあり修復不可能でしょう。燃料倉庫、弾薬庫、兵糧倉庫、艦船(KAN-SEN)には被害はありません。基地航空隊による援護は不可能ですが、出撃は可能でしょう……というのが私どもの見解です」
被害にあった南方基地の詳細を天城が話していく。
それを会議室に集まっている他の艦船(KAN-SEN)は黙って聞いていた。
「次に、水雷戦隊が発見した敵機動部隊についてですが、艦船(KAN-SEN)の証言と司令室に合った記録を照らし合わせての予想になります。情報を鵜呑みはせずに聞いてください。敵機動部隊は航空母艦二隻、随伴艦に駆逐艦四隻、潜水艦は発見できませんでしたが、手薄な点を見るに一~二隻ほど海域を警戒していたと判断できるでしょう」
ここで三笠が手を挙げて質問する。
「話の腰を折ってすまないが、潜水艦の数が少し少なすぎのような気がしてな。何故その数を出したのか理由を説明してもらおう」
三笠の問いに対して天城は答える。
「あくまで予想ですが、敵機動部隊の周辺は群島地帯であり海底が浅いところが多く存在します。場所によっては潜水できず、座礁したり、上空から攻撃を受ければたちまち撃沈してしまいます。機動部隊を護衛しつつ十分に潜水出来る深さのある海底は二か所しかありません。そこに一隻、もしくは両方に配置するとなると最高でも二隻の潜水艦が潜んでいると考えたのが私の予想です」
三笠は「なるほど……」と言うと手を下ろした。
「話を続けます。敵機動部隊は一隻は最新鋭の大型航空母艦、もう一隻はエンタープライズであることが分かりました」
「エンタープライズ……グレイゴーストめ、まだ私達の邪魔をするか!」
天城がエンタープライズの名前を出した瞬間、赤城の顔は険しくなり加賀は怒りをあらわにする。
「赤城?加賀?落ち着きなさい。まだ報告の最中ですよ」
「ごめんなさい、天城姉様」
「……すみません、天城さん」
天城の一言によって赤城と加賀が深く深呼吸して気持ちを入れ替える。
「確かにエンタープライズは強敵です。しかし、それ以上に厄介な存在が出てきました。それが最新鋭の大型航空母艦です。南方基地の司令部の記録によると敵機は二百機以上。エンタープライズは五十機を操作可能なのは確認されていますが、他の百五十機はどこから発艦されたと思われますか?」
「まさか……なるほど、それが最新鋭の大型航空母艦の恐ろしさと言うことか」
いち早く気が付いた三笠が驚きの声を出す。
「その通りでございます三笠様。この一隻の航空母艦から百五十機も艦載機が発艦し、基地を攻撃したと言うことになります」
「にわかに信じがたいが……だが、結果が出ている以上、天城の答えは正しかろうな」
今まで沈黙していた長門が口を開く、それほど敵は強大であると言うことが分かる。
「ですが、弱点も存在します。まず、発着艦の時間の長さ。百五十機もの艦載機を出し入れするには、それだけ無防備な時間が増えることを指します。次に舵の悪さ。これほど大きな船です、回頭するには大きく旋回する必要があるでしょう。最後にその大きさです。これほど巨大な船は水上艦にも航空機にも良い的になるでしょう」
「流石は天城さんです!少ない情報から弱点まで予想できちゃうなんて土佐、感服いたしました!」
天城の言葉に土佐が反応して褒めたたえた。気を逃した赤城、加賀は土佐を恨めしそうに見る。
「では、これからどうするか……天城、もう案はあるのだろう?」
「はい。それでは、これからは今作戦について語らせていただきます。今作戦名は七変化作戦……その内容は二方面同時攻撃作戦です」
天城の出した七変化作戦……この作戦は後々まで語られる大規模作戦になると、この時会議室に居た者は誰も思いもしなかったのであった。
次から本格的にユニオンと重桜の戦闘が始まる予定です。
ユナイの秘められた能力と、天城の作戦……これからの物語も楽しみにしていてください!