凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
エンター「今日もまたスクランブルか、重桜は一体何を考えているんだ……?」
エンタープライズは携帯食料のレーションを片手に走る。目指すは南西の群島地帯。
エンター「今日こそ敵艦を見つける!」
護衛の駆逐艦達が後から走ってきているが間に合っていない。
エンタープライズは敵艦隊を見つける事しか考えていなかった。
――ユニオン南方海域:南東群島海域――
「また空振りです……敵さんの姿は見えないのです」
晴天の空の下、ユナイは索敵機を出して敵艦隊を探している。
だが、今回も敵の姿などはなく見えているのは見慣れた西の群島地帯、東に広がる海だけだった。
「これで本日二回目なのです……帰ったらご飯をゆっくり食べたいのです」
日も高く登り切った正午、ユナイは敵航空機をレーダーが捉えたことによりお昼ご飯を抜いて出撃している。
だが、その表情には接敵に対する興奮などはなく、また来たのかと言う飽きれが現れていた。
それもそのはずである。何せここ一週間ほぼ毎日レーダーに入っては緊急出撃し、敵が撤退しているのを確認しては基地に戻る行動を繰り返していたからだ。
さらに、その場所、時間帯、敵の種類もバラバラで現在、エンタープライズ率いる部隊はレーダーが南西に捉えた敵艦隊を探しに出撃し、ユナイは敵航空機が現れた南東に出撃している。
「――そっちの状態はどうだ?何か発見できたか?――」
無線でエンタープライズから通信が入る。
「全くダメなのです。敵の姿はないのです」
「――そっちも空振りか。私の方も何も見えない――」
どうやら、エンタープライズも空振りで終わったようだ。
「毎日毎日出撃疲れたのです!甘いものが食べたいのです!ゆっくりと寝たいのです!早く戦闘がしたいのです!」
「――防衛も立派な仕事だ。気を抜けば痛い目を見るだろう――」
「分かっているのです!でも、これが叫ばずにいられるかなのです!」
エンタープライズの言葉にユナイが苛立ちをあらわにして叫ぶ。
そんな中、一通の電文がユナイに届いた。
「またレーダーによる敵の発見情報なのです。何々……所属不明艦影が複数接近、場所はユナイの近くなのですね」
「――元々、ユナイはそのまま基地に戻る予定だったのだろう?護衛艦隊も無しに行動するのは危ない。少し遠いが私が行こう――」
「どうせ、敵艦影は撤退するのです。ここまで来たらついでに見に行くのですよ。エンタープライズさんは基地に戻れば良いなのです」
「――こら、勝手な行動は慎め。私が行く。良いか、ユナイはそのまま基地に……私にも電文だ。所属不明艦影が複数接近。こちらは私が近そうだな――」
「決まりなのですね!エンタープライズさんはそっちを任せるのです!ユナイはこっちをちょちょいっと片付けてさっさと基地に戻って甘いものを食べるのです!」
エンタープライズが何か言おうとしたのを無視してユナイは無線を切る。
連日の出撃で疲れていたユナイはさっさとこの任務を終わらせて基地に戻り、食事をすることだけが頭を支配していた。
だが、その願いは叶うことはない。何故なら、その艦影こそ、重桜南方基地から出撃した航空母艦を含む機動部隊だったからだ。
今回は重桜が相手を精神的に追い込んでいるシーンを書きました。
何回も警戒させておくと相手は疲労からか慢心からか油断が生まれますからっというのを書いてみたつもりでしたが、皆様には伝わったでしょうか?
これは現代を生きる私達にも言えますね、常に仕事詰めの毎日では疲れてミスが多くなります。
こまめに息抜きして、しっかりと体を休めて頑張っていきましょう!