凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
敵艦載機の猛攻をもろともせずユナイは全速力で西へ航行している。
多くの群島が点在する西側はユナイの航行を邪魔をするかのように立ちふさがっているが、島を避ける行動は敵艦載機の狙いを定めにくくさせる効果を発揮した。
ユナイ「ええい!島が多くてまっすぐ進めないのです!ただでさえ船速も回頭も遅いのにこんなに狭い隙間を通らされるなんて……今のは座礁ギリギリなのです!」
文句を言いながらユナイは出せる最大の速度を緩めないでエンタープライズの元へと向かったのであった。
――ユニオン南方海域:南西群島海域――
「敵、煙幕内に隠れたまま出てきておりません!」
「あのグレイゴーストの事だ。お得意の応急修理でもしているんじゃねえか?」
扶桑の報告に伊勢が皮肉を言う。
だが、扶桑も伊勢も顔つきは真剣で主砲は煙幕中央を狙っており、いつでも撃てる体制を保ったままだ。
「作戦通り追い込めましたけど……敵さん、降伏してくれるでしょうか?」
「私は降伏するとは思えないけどね……もし、降伏しないのなら私がこの手で沈める」
山城が不安を口に漏らすが、日向は降伏しないと思っているようだ。
「降伏してくれれば無駄な争いは避けられるのですが……神様、どうか私達の思いを届け給え……!」
「祈ってどうなるわけねえだろ……お、水雷戦隊が煙幕を囲んだな」
伊勢が扶桑に突っ込みをいれて、水雷戦隊は敵を囲むように陣取る。
「――敵航空母艦及び水雷戦隊に告げるでござる!現在、其方達は隠れているつもりでござろうが私達は其方達を電探で補足しているでござる――」
「暁さん達の降伏勧告が始まりましたね」
暁がエンタープライズの艦隊に降伏勧告を呼び掛けているのを扶桑たちは見守る。
「――煙幕内にとどまっても無駄よ!私達、水雷戦隊八隻の主砲と魚雷、後方には戦艦の主砲が貴方達を狙っているわよ!――」
「――ひきこもるのは良く無い事。素直に降伏して欲しい――」
「武装を解除し、投降してくれれば後は私達が先導して基地まで連れて行ってあげるわ!もちろん重桜の基地本部にね、そこで修理してあげる!」
雷、電、響と言葉を拡声器で流していく。
「――私達は貴方達が抵抗しない限り戦うつもりはないわ。抵抗したら悪いけど沈んでもらう――」
「――磯風も戦いたくはないのー!――」
「――見たところオイル漏れしているからそこまで長くはもたない、そうでしょう?決断を迫るようで悪いけど、基地までの誘導も考えて十分しか待ってあげれない――」
「――十分以内に煙幕から出てくれば降伏を認めるわ。もし、十分を超えれば……煙幕内に魚雷を流させてもらうわ――」
浦風が戦う意思が無い事を伝え、磯風もそれに便乗する。
浜風はその鋭い観察力でオイル漏れを発見し、そのことを取り上げて時間を定める。
そして、谷風が最終通告をした。
「念のため砲撃体制は保ってください。降伏すると見せかけて抵抗する恐れもありますから」
「その時はこの四一式四五口径連装砲六基が敵を射抜くだけだ」
扶桑の言葉に日向が即座に反応する。
「あわわ!日向さんそんなに殺気立てないでください~!こ、怖いですよ……」
「そうだぜ、日向。敵はまだ何もしていないんだからな。そう焦るなって」
山城が日向に怯える。それをからかうように伊勢が煽っていく。
「伊勢?あまり妹をいじめないでもらえますか?それと今は作戦中です。有事に備えてください」
「はいはい、分かりました分かりましたっと」
扶桑が伊勢を睨むが伊勢は反省はしていない。
扶桑が「はあ……」とため息をついた時、煙幕から一隻の艦船(KAN-SEN)が出てきて扶桑達は主砲を合わせる。
「あれは……グレイゴースト!」
「本丸自らお出ましとは驚いたね……日向、狙いを外すんじゃないよ」
「姉さんこそ酒に酔って手元狂わないでくださいよ」
「あれ?でも、護衛の駆逐艦が見えませんね……」
エンタープライズの登場に扶桑が驚く。
伊勢、日向が主砲の標準を合わせている中、山城は駆逐艦がいないことに疑問を口に出した。
「――CVー六、エンタープライズ。降伏勧告を受け投降する。だが、現在オイル漏れと舵が破損して修理しないと航行できない。その時間、待って欲しい」
エンタープライズの言葉に護衛の駆逐艦が続々と煙幕の中から出てきて抗議しだす。
だが、エンタープライズが諭すように何か話すと駆逐艦は悔しそうにしながらも大人しくなる。
「ふぅ……一時はどうなるかと思ったが何とかなりそうだな」
「姉さん!まだ、敵を完全に信用しちゃいけない!こら、お酒を飲むな!あーもうっ!」
ひと段落が付いたと伊勢がお酒を飲み始め、日向がそれを怒る。
「願いが神様へと届いたのですね!今晩のお供えは豪華にしましょう!」
「山城も今日は一生懸命に祈るよ~!」
扶桑と山城は抱き合って作戦の成功を喜んだ。
だが、この四隻の戦艦達の主砲は誰一人としてエンタープライズから離れてはいなかった。
今回はエンタープライズがまさかの降伏するシーンを書いてみました!
史実では何度もやられては応急修理で立ち直り攻撃を仕掛けてくる、恐ろしいまでの戦闘狂ですがアズールレーンのエンタープライズは強さの中に優しさがあり、駆逐艦を連れて玉砕するようなキャラではないなって事で今回の形に落ち着きました。
重桜に降伏したエンタープライズとフレッチャー、フート、スペンス、チャールズ・オースバーンはどうなってしまうのか……今後をご期待ください!