凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
敵船団の索敵をしていた伊十九が赤城率いる第一航空戦隊の近くで浮上して言った。
伊十九「伊十九も雷撃したいけど、神子(長門)様からダメだって言われているから攻撃できない……うぅ、魚雷を撃ちたいの……」
伊十九がそんなことを言っていると、伊百六十八、伊二十五、伊二十六が浮上してきた。
伊十九「あ、みんな~!お疲れ様なの~!」
伊十九の声に潜水艦隊の伊百六十八、伊二十五、伊二十六が手を振って返事を返す。
伊十九「休憩おしまい!魚雷は撃てないけど、索敵も大事なお仕事だからね、頑張って索敵しちゃうよ~!」
そう言うと再び深い海の底へと潜って消えた。
――ユニオン南方海域:南西群島海域――
「後方から敵機!あれは……基地を攻撃してきた艦載機です!」
「なにっ!?どこから来た!それよりも迎撃開始!的は大きいぞ!」
扶桑と伊勢の対空電探に複数の影が映り、風を切る轟音と共に迫りくる艦載機。
「こんなにたくさんの艦載機、間違いないです! Ruthless hound(ルゥースリィスハウンド)です!」
「航空母艦四隻でも駄目だったか!だが、手負いなら私達で何とかできるはずだ!副砲、高角砲、機銃、標準が合うものから各自掃射初め!」
山城と日向と対空防衛に入る。
「後方の島より機影の上昇を確認!敵は島裏にて発艦を行い攻撃を行っている模様です!」
「くそっ!こっちはGray ghost(グレイゴースト)の鹵獲で動けないってのに好き勝手やってくれるなっおい!」
扶桑が艦載機の上昇位置を視認してユナイテッド・ステーツの位置を割り出したが、今はエンタープライズを鹵獲するために移動も攻撃も出来ないでいた。
「拙者たちの出番でござるな!」
「響を信じて!大型航空母艦だとしても必ず倒して見せるから!」
「雷様に任せて!第六駆逐隊……発進!」
「電も行くよ……。第六駆逐隊……発進します!」
第六駆逐隊の暁、響、雷、電がエンタープライズ包囲網から離れ、島裏へと全速力で航行する。
それを確認した艦載機達は目標を戦艦から迫りくる第六駆逐隊の駆逐艦達へと変える。
「敵さんも焦っているでござるな!全く当たらないでござる!」
「魚雷はバラバラ、爆弾も至近弾にすらならないわ!」
「なるほどね!これが『そうていがい』ってやつね!一気に抜けるわよ!」
「敵さんは逃げ足が速い……?でも、皆のために逃がさない!」
第六駆逐隊が島へと到達した時、島裏から島を隠すかの如く煙幕が発生した。
「なっ!?煙幕!?これじゃ何も見えないじゃない!」
「敵は航空母艦じゃなかったの!?みんな気を付けて!」
「なるほどね!これが『そうていがい』ってやつね!って雷達が受けるとは思ってなかったわ!」
「煙で何も見えない……Ruthless hound(ルゥースリィスハウンド)じゃなくてSmoke screen hound(スモォゥクスクリィハウンド)です……」
島を覆い隠すように張られた煙幕の中を島に座礁しないように島裏へと進む。
「電探で味方の位置を把握して当たらないようにでござるよ!」
「今度は衝突しないよ!?」
「ちょっと電!?いきなり大声出してどうしたの!?」
「あーきっとあの日のことを『ふらっしゅばっく』したのね……」
暁の指示に電が過剰に反応して響が驚く。それを何処か納得したように雷がうんうんとうなずいていた。
「島にぶつからないように……って、おっと!」
「おっとなのです!」
先頭を航行していた暁がユナイとぶつかりそうになる。
「危ないのです!気を付けるのです!」
「ご、ごめんなさい!視界が悪くてぶつかるところでした!」
ぶつかりそうになった事を怒るユナイに暁は素直に謝る。
「まあ、こんな煙幕の中じゃ仕方ないですね。分かったのです、許すのです。次からは気を付けるですよ~」
「はい、そちらこそお気を付けてくださいね」
軽く会話を交わした後、ユナイと暁は別れる。
「……って!ちょっと待った!今の敵大型航空母艦じゃない!全艦隊、砲雷撃戦用意!」
「バレたのです!逃げるのです!」
敵との接触に気が付いた暁が響、雷、電に戦闘準備に入る。
ユナイは全速力で前進して逃げるのであった。
今回は奇襲攻撃を受けた重桜をメインに書かせていただきました。
ユナイの予想は外れて戦艦ではなく駆逐艦がユナイに接近しましたね。
燐灰(りんかい)作戦後編と言うことで今度はユニオンの視線で書かせていただきます。
今後ユナイはどんな風に切り抜けるのか、はたまたエンタープライズ共々捕まってしまうのか……次回を楽しみにしていてください!
Ruthless hound(ルゥースリィスハウンド)、意味「残忍な猟犬」
Smoke screen hound(スモォゥクスクリィハウンド)、意味「煙幕猟犬」