凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー   作:ルチルネリネ

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司令室で一隻の艦船(KAN-SEN)が資料を手に取る。

レキ「あらら~また、輸送船が攻撃されたのね」

レキシントンは送られてきた資料に目を通しながらため息をつく。

レキ「サラトガちゃん、無事に帰ってこれるかしら……」

レキシントンは資料を机において司令室を後にする。

その資料には、輸送船を襲う敵は巡洋艦、駆逐艦、そして戦艦と航空母艦が複数確認されたと記載されていた。


参謀の誤算

――ユニオン南方海域:ユニオン南方基地――

 

 

「それでは、基地へと無事に帰投できたことを祝してカンパーイ!」

 

 サラトガが景気よく乾杯の合図を出す。それに続くようにバラバラと「乾杯」と声が上がる。

 

「なによー!みんな無事帰れたのに元気がないなー!」

 

「いや、確かに鹵獲されそうになっていた私達は奇跡的な生還と言っても過言ではない。だが、これだけの艦隊が動いて戦果が今一つではな。」

 

 サラトガの問いに対してエンタープライズが答える。

 

 その返答に数名の艦船(KAN-SEN)がうんうんと頷いた。

 

「敵戦艦二隻中破、二隻小破、敵駆逐艦三隻中破、一隻小破。対してこちら側の損害は航空母艦二隻中破、駆逐艦一隻中破ですね」

 

「ほとんどユナイが頑張って出した戦果ですね!もっと褒めるです!」

 

 フレッチャーが敵に与えた損害と被害状況を言い、活躍出来たユナイがふふんっと胸を張った。

 

「確かに今回はお手柄だったな。助けられたこともある、礼を言おう。助かった、ありがとうユナイ」

 

 そう言うとエンタープライズはユナイの頭をなでる。ユナイは驚きながらも「えへへ~」と喜んだ。

 

「……だが、上官である私の命令を無視し敵機動部隊と接触、こちら側に誘導したのは感心ならんな。さらに聞けばまた戦果を焦って一斉攻撃出来ていなかったらしいな。艦載機の損耗が激しいと報告を受けているぞ」

 

「そ、それは……痛いです!?痛いです!?頭蓋骨がきしむ音が聞こえるです!」

 

 ユナイの頭をなでていたエンタープライズがそのままアイアンクローを行いユナイがジタバタと暴れる。

 

「あはは……それで、なぜ撤退を指示したのかお話してくれませんか?」

 

 フレッチャーがサラトガになぜ撤退を指示したのか尋ねる。それを待っていたかのようにサラトガは言った。

 

「ユニオンの輸送船が撃沈されたり、拿捕されたりして、この艦隊を動かすだけの燃料と弾薬が底をつきそうだからよ!」

 

「……つまり、今の状態が続けば我々は戦わずして敗北するという事か」

 

 ユナイの頭から手を離したエンタープライズがサラトガに尋ねて、サラトガは「そういう事になるわね~」と返した。

 

「いたたです……。あれ?なら援軍と一緒に輸送船を連れてきたわけではないのです?」

 

 ユナイの鋭い指摘に対してサラトガは答えた。

 

「Jasminum sambac(ジャスミン・サンバク)作戦って覚えているかしら?敵の主力部隊をおびき寄せて叩く作戦ね」

 

「……なるほど、まだ作戦は続いていた。そういう事か」

 

 サラトガの言葉に対してエンタープライズが悟る。

 

「エンタープライズが気が付いた通り。最初の奇襲攻撃後、私達は一度本土へ帰るふりをして実は近くの海域に仮設基地を建設して敵が報復しに来るのを待っていたのよ。そして、敵機動部隊と敵主力部隊が釣れたから奇襲攻撃を行ったのが援軍と見えたって話」

 

「最低でも一週間はかかる航路が一瞬で辿り着いた理由はそもそも戻っていなかったからと言うことだな。しかし、そうなると補給線がバレたのはなぜだ?」

 

 エンタープライズ問いに対してサラトガは首を横に振る。

 

「それがさっぱりなのよね。念のために二線の補給路を確保していたはずなのに、その両方とも攻撃を受けて補給線が遮断されているのよ。だから、敵機動部隊が現れた時に撤退を指示したのは全艦隊で本土へ帰還する分の燃料と弾薬を確保しておきたかったというのが実態ね」

 

「全艦隊で本土への帰還……と言うことはこの基地を放棄するのか?」

 

 サラトガの最後の言葉にエンタープライズが質問する。

 

「本土からの航路が遠くて、補給線が分断されて孤立している状態で残る理由はないわ」

 

「そうか……分かった。皆!聞いての通りだ。速やかに撤収の準備を行うぞ!」

 

「こーら、まずは戻ってこれたことを祝いなさい。これがこの基地最後の宴会になるのだから。それに、燃料や弾薬が少ないといってもまだ三日分の余裕はあるから大丈夫でしょ~」

 

 サラトガの答えに対してエンタープライズが即座に指示を出したが、サラトガがそれを止めた。

 

「そうか……そうだな。まずは無事戻ってこれたことに関して祝おう。それから、この基地最後の宴会を堪能しなければな」

 

「にしし!エンタープライズさんは慌てん坊さんですね!」

 

 ユナイのあおりに対してエンタープライズがアイアンクローをお見舞いした。

 

 それを見た複数の艦船(KAN-SEN)が笑い声を上げる。

 

 こうして、ユニオンのJasminum sambac(ジャスミン・サンバク)作戦は終わりを告げたのだった。




今回は予告通り何故ユニオンが撤退を指示したかサラトガが話すシーンを書きました!
実際問題、二十四隻もの艦船(KAN-SEN)がいるわけですから、その分の燃料とか弾薬の消費は馬鹿になりません。
特にユナイテッド・ステーツの消費はエンタープライズの約二倍の設定になっておりますので、消耗が激しくて愚痴を言いたくなるエンタープライズの気持ちが分かります。
ユナイの色々な詳細は今後明らかになるかも?どうぞお付き合いよろしくお願いします!
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