凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー   作:ルチルネリネ

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土佐と天城は敵航空母艦二隻からの空襲を回避しきり、大破と中破まで追い込んで退かせた。

土佐「残るは大型航空母艦と歴戦の航空母艦だけですね!一気に片づけてしまいましょう!」

興奮が収まらない土佐は命じられればすぐにでも追いかける気満々だ。

だが、天城は大型航空母艦を追っていった観測機からの連絡を受けると、にっこりと微笑みながら「撤退しましょうか」と言った。

土佐「な、なんでですか!ここまで追い込んだのに撤退なんですか!?」

驚きを隠さず不満を言う土佐。しかし、天城が撤退し始めると慌てて後を追いかけるのであった。


参謀の涙

――ユニオン南方海域:南東西海域――

 

 

「流石にしつこいわね!いつまで私達を追いかけてくるつもり!」

 

「逃がさないだろうな。私が敵だったらそうする」

 

 サラトガが敵戦艦から飛ばされた観測機を見て文句を言う。

 

 その文句を聞いてエンタープライズは忌々しそうに艦載機を見て答えた。

 

「ユナイちゃんはもう戦闘機が無いのです……撃墜できないのです」

 

「対空兵装の射程を完全に理解していますね。ギリギリ届かない距離から観測を続けています」

 

 艦載機が出せないユナイはしょんぼりして、レンジャーは対空兵装の射程に入らないか確認しながら航行している。

 

「修理したとはいえサラトガちゃんはまだ走行甲板が凸凹。エンタープライズはエレベーターが完全に壊れて動かない。ユナイちゃんは艦載機が無くて、レンジャーは走行甲板を修理中……それに加えて波が高いから発艦自体も難しいと来たわ」

 

 サラトガが現在の状況を簡潔に話すと他の三隻は黙り込む。

 

「唯一の救いは前衛艦隊のクリーブランド艦隊とポートランド艦隊が一隻も沈まず海域からの離脱に成功したって報告が来ていて、ネバダ達も私達と別方向に離脱したから浸水が酷くなければ沈んでいないこと……まだ報告はないけど」

 

 最後の言葉でサラトガ達はさらに暗い空気が覆う。

 

「サラトガ、先程はすまなかった。ああでもしなければ貴方は彼女達と共にいただろうから。本土に戻ったらどんな罰でも受け入れる」

 

「私もごめんなさい。嫌がる貴方を抱きかかえて無理やり連れて行ってしまって。でも、今あなたまで失うことは出来ないから……」

 

 エンタープライズは帽子を取って、レンジャーは震える声で謝罪した。

 

「……今回一番悪いのは私よ。むしろ二人は最善の方法を取ってくれたわ。引っ張ってくれてありがとう。そして、取り乱してごめんなさい。お姉ちゃんへは私から報告するわ。これはけじめだから」

 

 サラトガはそう言って前を向きなおす。右手に持っている軍旗は強く握られプルプルと震えていた。

 

「前方、レーダーに艦影です!対空レーダーにも複数の反応ありです!」

 

「先回りされたか!……いや前方ってことは本土海域、味方の艦載機だ!」

 

 ユナイのレーダーに艦影と複数の機影が映し出される。

 

 だが、この先はユニオン本土に近い近海でエンタープライズが言った通り、味方の艦載機が後を付けてきた敵戦艦の観測機を撃つ墜した。

 

「あらあら、手ひどくやられちゃったみたいね……怪我とかは大丈夫?」

 

 複数の艦載機を引き連れながらレキシントンがサラトガに尋ねた。

 

「お、お姉ちゃん……ごめんなさい。大切な艦隊をここまで消耗させてしまいました。いかなる罰も受けます!だけど、一つだけお願いがあります!私達の艦隊を……みんなを助けてください!」

 

 途中から嗚咽が混じりながらサラトガはレキシントンに懇願する。

 

 そんなサラトガに近づいてレキシントンはサラトガを抱きしめた。

 

「謝るのは私の方だわ。ごめんなさいね、辛い思いをさせて……大丈夫。お姉ちゃんが全員連れて帰って見せるわ」

 

 そう言いながらレキシントンはサラトガの頭をなでた。サラトガは抱えてきた感情が溢れ出して大声で泣き始める。

 

「みんなも良く戻ってきたわ。後はお姉ちゃんに任せて母港でしっかりと傷を癒してね」

 

 レキシントンの言葉にエンタープライズは顔を隠し、ユナイはすすり泣きはじめ、レンジャーは脱力してその場に座り込んだ。

 

 その後、レキシントン率いる機動部隊は重桜艦隊の接触を警戒しつつ散り散りになった仲間を探して見事、全員を救出することに成功する。

 

 特に中破状態で漂っていたラングレー、ボーグの救出は奇跡的であり、サラトガは二人と抱き合って泣いて喜んだ。

 

 レキシントンとラングレーが接触した際。レキシントンにある物が渡されたが極秘情報としてユニオン、重桜の公式の記録には残っていない。




今回はなんとか逃げ切れたサラトガ艦隊に視線を当てて書かせていただきました!
手ひどくやられながら帰還し、責任の重さと色々な葛藤で最後まで我慢していたがレキシントンを目の前にしたら思いが溢れて泣き出してしまったサラトガちゃん、それを叱るのではなく優しく包み込むレキシントンとの姉妹のシーンを頑張って表現したつもりです。
これで、約三か月にわたって書いてきたユニオンと重桜の戦闘が終了しました。
次回は戦後報告と言うことで、両陣営の状況を書かせてもらい今作戦を締めさせていただこうと思っております。
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