凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
本部母港に帰投したサラトガは考えていた。
前回の戦闘でユニオンは大敗を許してしまったが、奇跡的にも一隻も失わずに本部へと帰還できた。
だが、その奇跡的はあまりにも不自然でどう考えても狙ってやったとしか考えられない。
サラ「逆に考えて、どうして沈めることをしなかったのか……」
難しい顔をしながら考えるが、一向に答えは出ないのであった……。
――重桜本部:本殿――
「天城艦隊二十九名、ただいま無事に帰投しました。詳細のご報告のため、入室許可をいただきたく存じます」
「その声は天城か。良い、入って参れ」
重桜の中でも最も神聖とされている本殿、限られた者しか入れない神域に天城が「失礼します」と言って入室する。
入室してきた天城に「ご苦労であった、そこに座ると良い」と長門が指示を出す。
「お言葉に甘えさせていただきます。まずは、此度の戦の勝敗についてですが、大勝にございます。これも神子(長門)様の威光があってこそ、皆奮闘し勝利をつかむことが出来ました」
「……天城よ。余が言うのも可笑しな話であるが、その口調を何とか出来んか?聞いていてむず痒いぞ」
天城の口調に長門が指摘する。その指摘を受けて天城はフフフフと笑うと「分かりました」と答えた。
「口調を崩させていただき、報告を続けます。まずは味方の被害を……南方基地からご説明させていただきます。南方基地は大空襲を受けて事実上消滅。基地としての再稼働は絶望的ですね。基地防衛に従事していた四航戦、五航戦、第二戦隊、第六駆逐隊、第十七駆逐隊は損害軽微、現在は整備も終えていつでも出撃可能です」
「ふむ、南方基地が消滅したのは痛いが艦船(KAN-SEN)は無事なのじゃな。今回は前代未聞の大空襲と聞く。防衛出来なかったとは言え、生き残った者に責任を押し付けるのは間違いであろう。むしろ余の考えが甘かった落ち度でもある。基地の復旧に全力を注ぐ故、その防衛を引き続き任せるとする。江風、其方に復旧作業の全てを任せる。良いな?」
天城が語る重桜南方基地の惨状を聞いて長門は暗い顔になる。だが、すぐにキリッとした顔に戻ると江風に下知を下した。
「続きまして私達、天城艦隊の被害報告です。一番被害が大きい土佐が中破で現在は整備中。特注品ですので一週間かかりますがそれ以外は問題ありません。続いて私が小破。こちらも特注品の部分を交換する必要があるので一週間かかります。護衛していた駆逐艦及び軽巡洋艦には小破以上の者はいなかったようです。現在は整備中で三日あれば問題なく動けるかと」
「もう少し被害が多くなると覚悟しておったが、ここまで抑えることに成功するとは……見事じゃ。何より撃沈が無いのが素晴らしい。流石は天城と言ったところか、後で別に報奨を用意しよう……さて、残るは敵に与えた損害じゃが。報告を頼む」
天城は自身の艤装を展開して故障個所を見せつつ説明した。
その説明と報告を受けて長門は笑顔になり、最後の言葉で真顔に戻る。
「最後にこちら側が相手に与えた損害ですが、航空母艦大破三隻、中破二隻、小破一隻。戦艦四隻大破。重巡洋艦大破一隻、中破一隻。軽巡洋艦大破二隻、中破一隻、小破一隻。駆逐艦大破三隻、中破二隻、小破二隻、無傷一隻……敵機動部隊及び前衛艦隊の合計二十四隻中、大破十三隻、中破六隻、小破四隻、無傷一隻、撃沈は無しです」
天城の報告に長門、陸奥、江風が驚く。一つ目は相手に与えた損害の大きさに、もう一つは一隻として沈めていないことに。
「……天城よ。これは意図してやったことなのか?」
「はい、もちろんでございます。撃沈しないようにするには大変苦労しました」
長門の言葉に対して天城はそう答えた。
「どうして敵を撃沈しなかったのか、理由を話してもらおうか。天城」
「分かりました、お話しましょう。ですが、その前に一つお願いがございます。この場に今作戦に深くかかわった赤城、加賀、土佐をお呼びください。彼女達も知る必要がありますので……」
天城の言葉に長門は悩むそぶりを見せて頷く。そして、陸奥と江風に赤城、加賀、土佐を呼ぶように指示を出した。
指示を受けた陸奥と江風が退室する。
陸奥と江風を待っている間。長門と天城はあることについて話していたが、この会話についてはどの記録にも残ってはいない。
今回は天城が長門に戦闘後の報告を言いに来たシーンを書いてみました。
このシーンを書くと長かった海戦もようやく終わったな……としんみりしてしまいます。
些細な疑問なのですが、長門の住居である場所。あれはお城なのでしょうか?それとも神社みたいな感じでしょうか?
アニメで見た際は、全体図の見た目はお城なんですが、本丸?が神社の構造をしているんですよね……建築に詳しい人、教えてください。
次回はどうして撃沈しなかったのか天城が語ってくれる予定です。
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