凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー   作:ルチルネリネ

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レキ「敵も中々やってくれたわね~」

レキシントンは今回の戦闘の報告書を見てため息をついた。

最初こそ沈没した艦船(KAN-SEN)が居ないことに喜んでいたが、後々になってどうして沈めなかったのか理由が分かったからだ。

レキ「加えて、どうしようもないのも問題よね~」

そして、現在進行形で敵の思惑通りに動いており、それを修正することが出来ない事にも分かってしまった。

司令室で一人、レキシントンは本日何回目になるか分からない大きなため息をつくのであった。


巡る知謀

 

――重桜本部:本殿――

 

 

「航空戦艦土佐!召集の御命令により馳せ参じました!入室の許可を求めます!」

 

「一航戦、航空母艦赤城。ただいま参りましたわ~」

 

「同じく一航戦、航空母艦加賀。推参した」

 

 土佐、赤城、加賀が長門の命令によって召集されて本殿前に集まる。

 

「よく来た、赤城、加賀、そして土佐よ。襖をあけて入って参れ」

 

 長門がそう言うと土佐が襖を静かにサーッと開け、赤城、加賀、召集しに退室していた陸奥、江風、最後に襖を開けた土佐が中に入る。

 

 最後から二番目に入った江風が襖近くで座り、土佐が入った後に音を立てずに襖を閉めた。

 

「皆の者。忙しい中、良く集まってくれた。そのようなところで立っとらんで、そこに座わって楽にして良い」

 

 長門がそう言うと赤城、加賀は天城の後ろに、土佐はその後ろに続いて座った。

 

「さて、皆を呼んだのは他でもない。天城から今作戦の報告と不可解な指示についての話がある。天城よ、すまぬがもう一度戦績の詳細を語ってくれぬか?」

 

「かしこまりました。それでは報告を始めます」

 

 天城は先程入室した赤城、加賀、土佐のためにもう一度戦績の詳細を語る。

 

「――以上が今作戦における受けた被害と与えた損害のご報告になります」

 

「うむ、報告感謝する……赤城、加賀、土佐。この報告に疑問を感じてはおらぬか?」

 

 長門の言葉に赤城達はピクリと反応した。

 

「そう、今作戦で天城より言われていた『敵を撃沈してはならない』と言う命令じゃ。今からそのことについて天城に語ってもらう。天城よ、理由を説明しておくれ」

 

 長門から頼まれて天城は「かしこまりました」と言い語り始める。

 

「それでは語らせていただきます。今作戦において敵艦を沈めてはならないと言った理由は三つございます。一つ目は重桜の力の誇示。二つ目は停戦の材料。三つ目はユニオン戦力の固定。この三つの事から敵艦を沈めてはならないと指示しました」

 

 天城は右手を上げて人差し指を立てる。

 

「一つ目の重桜の力の誇示はそのままの意味ですが、艦種的に劣勢であっても覆す戦術があり、敵を見逃す余裕があると他の勢力にも示すことが出来ました。この事により自軍勢力の士気は上がり、敵軍勢力の士気は下がります」

 

 続けて天城は中指を立てて二つ目の説明をする。

 

「二つ目の理由は停戦の材料として使う。この勢力争いが長引けば資源の乏しい重桜は苦境に立たされてしまいますからね。それに加えて未だに活動を続けているセイレーンに対する余力も必要です」

 

「……それはこのまま戦い続ければ重桜が負けると言っているのか?そこのところをお聞きしたい天城さん」

 

 天城の言葉に対して加賀が後ろから天城を睨みつけるように問いかけた。

 

 それに対して天城は「フフフフ……」と不敵に笑って答える。

 

「そうですね。いくら戦術的に優れていようとも数で抑えられ、何度も試行錯誤されれば瓦解してしまいます。ユニオンは重桜とは違い、工業力も軍事力もそれを維持する力も備わっております。長期戦に持っていかれれば資源が乏しい重桜は……これ以上は言う必要はありませんね」

 

 天城の言葉に加賀は言い返せずギリッと拳を強く握る。

 

 途中で会話が途切れたのを戻すように天城が薬指を立てて最後の説明に入った。

 

「三つ目の理由はユニオン戦力の固定……これはそのままの意味ですが、二つの意味があります。一つは現在の戦力の固定、二つはこれからの戦力の固定です」

 

 そう言うと左手を上げて人差し指を立てる。

 

「私達艦船(KAN-SEN)は普通の軍艦より早く再出撃可能でありますが、それでも数日から数週間はかかります。その間は他の方が防衛に回らなければなりません。完全に復帰するまでは人員が固定されます」

 

 天城は「続けまして」と言葉を繋ぎ。

 

「重桜より圧倒的に優れているユニオンではありますが、それでも限界があります。今回の戦闘で戦力の強化を図りたいユニオンは建造に手を伸ばすと思いますが、一隻も沈まなかったことが新しい艦船(KAN-SEN)を建造する時に間接的に抑制することとなります」

 

「質問失礼します。どうして建造の抑制に繋がるのか、私にも分かるほど細かくお教えください」

 

 天城の言葉を聞いていた土佐が天城に質問する。

 

「普通の軍艦ならば古くなった物から廃棄も可能でしょうが私達艦船(KAN-SEN)はそうもいきません。資源豊富なユニオンと言えど沢山の艦船(KAN-SEN)を作れば維持には膨大な燃料や資金が必要になります。加えて大破した艦船(KAN-SEN)の新しい艤装のためにも資材を回さなければならないので、その分だけの建造も抑制できると言うことです」

 

 天城の説明を受けて土佐が「そこまで考えていたんですね!土佐は感銘を受けました」と興奮しながら答えた。

 

「以上の三つの理由から敵艦を沈めないようにと指示を出しましたが、いかがだったでしょうか?長門様」

 

「うむ。余の予想を超える知略であった。流石は天城じゃな。追加で報酬を出そうと思っておったが釣り合う報酬が用意できそうにないのが困りどころじゃが」

 

 天城の言葉に対して長門は嬉しそうに答えた。

 

 その言葉を待っていたと天城が言葉を発する。

 

「長門様。今回の功績の褒賞として、私からお願いがあります」

 

 天城の言葉に長門は「出来る範囲の事を許そう」と言った。

 

「では、今回の褒賞は停戦の使者として私、天城と土佐を選択していただきたいのです」

 

 その言葉によって、土佐の驚く声が本殿に響き渡ったのであった。




今回はなぜ敵艦を沈めなかったのかの天城が説明をするシーンを書いてみました!
これほどの理由があって敵の艦船(KAN-SEN)を沈めなかったんですね。先を見越しすぎてて怖いレベルです。
最後にとんでもないお願いを天城がしましたが、長門はこのお願いを許してくれるのか……それはまだ先の話ですので明かせません。
今回も読んでいただきありがとうございました!一日更新が遅れてしまいましたが、読んでいただき感謝です!
次回はユニオンの戦闘後の報告を書こうと思っておりますので、お楽しみにしていてください!
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