凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
メルクーリヤからの報告にガングートはベットから飛び起きた。
ガングート「こうしちゃおれん!他の同志達にも伝えなければ!」
そう言って今にも走り出しそうになるところで、メルクーリヤが「あんたが最後よ」と言ってガングートを止める。
ガングート「私が最後だと……なぜ真っ先に言ってくれんのだ!」
メルクーリヤの肩を掴んでブンブンと振る。
メルクーリヤは「こうなるのが分かっていたからよ~!」とガングートの興奮が収まるまで振り回されるのであった。
――自由アイリス教国:本土基地――
「……いったいどういう意味かしら?」
訝しげにクイーン・エリザベスが問い返す。
「思わせぶりな態度があったんなら謝ろう。だが、非難するつもりは全くない。態度の変化が気になるなら今から説明する。なぜ、北方連合はロイヤルと距離を置いていたのか、今になってなぜ歓迎しているのか……それは軍縮条約の一件があったからだ」
勘違いと指摘したガングートが話を続ける。
「先の大戦での軍縮条約にはロイヤル、ユニオン、重桜、アイリス、サディアが主体となっており北方連合は入っていなかった。だが、その中には北方連合が見逃せない項目があったのだ。そう、航空母艦の規定についてだ。正確にはそこにいるハボクック氷山空母の処遇についてだな」
ガングートの言葉にハボクックがピクッ!と反応する。
「先の大戦でセイレーンに対してまだ実戦投入不可能とまで言われた航空機を使用し、試験的な運用をしたにも関わらず大戦果を挙げた。……だが、鉄血のあの事件後。ロイヤル以外の上層部はその軍事的戦力を自国に向けられることを恐れ、ロイヤル上層部を非難して軍縮と称してハボクック氷山空母を■■■■することが決定した」
そう言うとガングートはウオッカの瓶を強く握って怒りの表情をあらわにする。
「私は強く反対した!同志、ハボクック氷山空母を救うために著名活動もした!同盟国でもない、明日は敵国になるかもしれない私達にも救いの手を差し伸べた英雄に対して、戦場では何度も助けられた戦友として、恩を仇で返せるわけがない!」
ガングートの持っていたウオッカの瓶が鋭い音を立てながら砕け、破片と液体が散らばった。
「ガングート熱くなりすぎ~。酒が回り過ぎてんじゃないの?まあ、私も同じ感想だけどね」
ガングートを茶化すようにメルクーリヤが言う。ガングートは「……そうだな」と言うと大人しくなった。
「私達、北方連合の艦船(KAN-SEN)は皆がハボクック氷山空母の処遇について猛反発していました。ですが、結果は変わらず……それで私達は無能なロイヤルの上層部と何もできなかったロイヤルの艦船(KAN-SEN)との距離を置こうと考えたのです」
アヴローラがガングートの代わりに話を閉める。
「そうですね~自由アイリス教国も同じような感じですね~。北方連合と少し違う点を上げるとすれば……ロイヤルとの交流を盛んに行い海域の情報を入手して、処遇決行日に横からさらってしまおうと動いていたことぐらいかしら~」
エミールが大胆な発言をして会場が騒然となる。
「あんなに頻繁にパーティーを行ったり、贈り物とかで輸送経路を細かく聞いたりとかしていたのって全部そのためだったのね……横からかっさらうと言っても、すぐに足が付くから自由アイリス教国の立場が崩れるわよ」
クイーン・エリザベスがエミールの言葉に反論して言う。
「あら、何もしないよりは素敵だわ。ただ、その情報を知らない一部の艦船(KAN-SEN)は上層部とロイヤルに反発してヴィシアと名乗って分裂。ひと悶着あったわね。話を戻すけど、決行日当日にハボクックさんに会ってちゃんと話したりもしているわ」
エミールの言葉を聞いてクイーン・エリザベスが「それは初耳よ!?」と驚く。
「結果はご存知の通り振られちゃった。その時の『私は争うために生きるのではないわ、未来を託すために幕から降りるのよ』って言葉は今でも覚えているわ」
エミールの言葉にハボクックは頬を染めて恥ずかしそうにしていた。
「皆、話長すぎ~。要はハボちゃんの事で皆ギスギスしていたけど、ハボちゃんが無事なら、まあいっか~ってことで水に流して非難はしなくてもいっかと思っただけ。ちなみに亡命計画は北方連合にもあったんだけど、結果はご存知の通り決行日より三日前に誘ってみたけど駄目だった」
メルクーリヤが簡潔にまとめて、ついでにエミールに反発するように暴露する。それに対してもクイーン・エリザベスが「それも初耳よ!?」と驚く。
「とにかくだ。これで私達が今まで消極的だった理由が分かっただろう?なら、なぜ今になって融和的になったのか?それはだな……この場を用いてハボクック氷山空母を正式にスカウトしに来たってわけだ!不遇な扱いはさせんぞ?同志よ、北方連合に来てくれるよな?」
「ハボクックさんを向かい入れるのは自由アイリス教国に決まっていますわ!ハボクックさん、お願いです。アイリスに来てください!そして、ヴィシアの子達を鉄血から救ってください!私達だけでは無理なのです!」
ガングートがハボクックの肩に腕を回して、引き寄せて強引にスカウトをする。
対して、エミールは跪いてハボクックの左手を取り上目遣いでハボクックにお願いをした。
「何勝手にスカウトを始めているのよ!ダメに決まっているでしょ!ウォースパイト、早くあいつらをやっちゃってよ!」
「陛下、私の活躍に期待して頂戴。さっさと離れなさい!」
クイーン・エリザベスの指示を受けてウォースパイトがハボクックに絡むガングートとエミールを引き離した。
「おっとっと、相変わらずオールド・レディ(ウォースパイト)は力も強いな。この私が簡単に引きはがされるとは……」
「あ~ん、オールド・レディ(ウォースパイト)様は強引ですわね。半分冗談ですのに……」
引きはがされたガングートとエミールはウォースパイトを煽るように離れていった。
煽られたウォースパイトは口元をひくひくとさせながらも必死に耐える。
「エミール様。そろそろ本題に移行してください。晩餐会の終了時刻が半分を過ぎています」
司会を務めていたサン・ルイがいつの間にか近づいており、エミールに指示を出した。
その言葉を聞いてクイーン・エリザベスが「今までのが茶番だったの……」とげんなりとする。
「そうね~と言っても、もう既に言っているようなものだけど……改めてお願いするわ。自由アイリス教国を代表して、ロイヤルの方々にある作戦の航空支援を要請しますわ」
「同じく、北方連合代表してロイヤルに航空支援を要請します」
自由アイリス教国代表のエミールと、北方連合代表のアヴローラ。
二つ勢力が同時にお願いをする異例の状態にクイーン・エリザベスは深く考えるのであった。
今回はガングートとエミールの視線でどうしてロイヤルを非難しないのか?についての説明をするシーンを書いた……つもりです!
ちょっと無理やり詰め込んだ感じで読みにくい場合はごめんなさい!二話分を一話に納めて書こうとした結果です。
メルクーリヤが簡単に説明していますが、要はハボクックの処遇について不満だったアイリスと北方連合の艦船(KAN-SEN)は、ハボクックが存命していても非難することはなくむしろ歓迎していると言うことが書きたかったのです……技術不足ですみません。