凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー   作:ルチルネリネ

58 / 76
エミール「ハボクックさんが生きている……これは天命なのかもしれませんね」

エミールはロイヤルと情報を提供してもらった北方連合に招待状を出す。

エミール「この晩餐会でアイリスの命運を賭けますわ」

自由アイリス教国が置かれている状態……今も刻一刻と厳しいものになっているのであった。


二勢力の思惑

――自由アイリス教国:本土基地――

 

 

「アイリスと北方連合……同時の申請と言うことは共同作戦とみて相違ないかしら?」

 

 クイーン・エリザベスがエミールとアヴローラに問いかける。

 

「話の理解が早くて助かりますわ~。本日より一週間後。鉄血では大量の物資が本土に集められるとの情報を入手しまして、なんでも~ハボクック氷山空母に対抗する航空母艦の建設を開始するとのことですわ~」

 

「その運送ルートは二つ。一つ目が自由アイリス教国とレットアクシズ陣営のサディアが争っている海域。もう一つは北方連合と鉄血が争っている海域ですわ。私達の妨害を予想して一回で全て運ぶ為に大規模艦隊を用いての輸送作戦だそうです」

 

 エミールが日にちを告げ、アヴローラが大まかな場所と敵の勢力を伝える。

 

「……一つ伺ってもいいかしら?どうして女王陛下がこの作戦に参加なされるとお考えで?」

 

 ここでウォースパイトがエミールとアヴローラに問いかけた。

 

 確かに鉄血の航空母艦は脅威である。しかしながら、直接関わりが無いと言えばそれまでで、ロイヤルが必ずしも作戦に参加をしなければならない訳ではない。

 

「ウォースパイト。口を慎みなさい……良いわよロイヤルも作戦に参加するわ」

 

 クイーン・エリザベスの言葉にウォースパイトは「女王陛下!?」と驚く。

 

「あら、理由は聞かなくて良いんですか?」

 

「さっきの会話から断れないことを分かって言っているわね……良いわ、確認の意味も込めてこの私が説明してあげる」

 

 アヴローラの質問に対してクイーン・エリザベスが語り始める。

 

「まず、自由アイリス教国に支援を出す理由と出さなかった場合の結末。自由アイリス教国はアズールレーン派のアイリスとレットアクシズ派のヴィシアの今二つの勢力に分かれていて、現在アイリスはヴィシアとサディアの軍勢に押され気味。その状態で放置すればアイリスはいずれ滅ぶでしょうね。そうなるとロイヤルは鉄血、ヴィシア、サディアの三勢力と戦わなければならなくなるわ」

 

 クイーン・エリザベスの「滅ぶ」の言葉を聞いて自由アイリス教国の艦船(KAN-SEN)は暗い表情となり、非常に切迫した状態であることが伝わってくる。

 

「ロイヤルとしては鉄血と一対一で戦うためにもアイリスの消滅は回避したいところ……理想としてはアイリスとヴィシアが再び一つとなってサディアに対して戦線を維持してもらうのが一番ね」

 

「ロイヤルのやり方には従わない子も多いですが、ハボクックさんのお声ならばあるいは……と私達は思っておりますの~。なので、是非とも作戦にはハボクックさんにはアイリスと共に行動して欲しいのです」

 

 クイーン・エリザベスの言葉に対してエミールがハボクックを一緒に作戦に参加してもらうようにおねだりする。

 

「コホン!話を戻すわよ。次に北方連合に支援を出す理由。切羽詰まっているアイリスとは違い北方連合は支援どころか作戦自体必要ないわ。もし、ロイヤルが支援しないと言うなら作戦自体もなかったことになるわね」

 

「では、なぜロイヤルに支援を……?」

 

 クイーン・エリザベスが話した言葉にウォースパイトが質問をする。

 

「北方連合にとってこの作戦はとっても美味しい話で、上手い事行けば輸送物資、凍らない港とその近海を手に入れることが出来るわ、それが北方連合のメリット。そして、ロイヤル北方海域と北方連合近海で挟み撃ちにして鉄血を本土に抑え込むことが出来る、それがロイヤルのメリット。ただし問題なのは、近海に存在する鉄血の航空母艦グラーフ・ツェッペリンの存在ね」

 

 ウォースパイトの質問に対してクイーン・エリザベスが答えて話を続ける。

 

「北方連合には航空母艦が居ないのよ。理由はいくつかあるけど今は関係ないわ。関係があるのは航空母艦が無い事による索敵、制空権争い、敵航空機に対する対空防衛が全く出来ない事。一方的にやられる可能性があり、無理やり突入すれば被害は免れない……故に護衛の航空母艦が欲しいってところかしら」

 

「流石は女王陛下!見事に正解だわ~。鉄血の目をかいくぐって近海に艦船(KAN-SEN)を運ぶのは少数なのが好ましいから~、一隻で二~三隻分の活躍が出来て、混戦にも強いハボちゃんをご所望って所かな」

 

 クイーン・エリザベスの解説にメルクーリヤはパチパチと手を叩きながら答えた。

 

「そういうわけで、北方連合に行こ?大丈夫。同志なら必ず勝てるって信じているから」

 

「いいえ、ハボクックさんはアイリスに来てもらいます!他の方では務まらないのです!」

 

 メルクーリヤがハボクックの右手を掴んで北方連合側に引き込もうとする。それをエミールが左手を取ってアイリス側に引っ張った。

 

「離してよエミール。ハボちゃんは北方連合の作戦に参加してもらうんだから」

 

「離しません、そちらこそ離してください。メルクーリヤさん」

 

 メルクーリヤとエミールが笑顔で言う。ただし、目は笑っていない。

 

「はぁ……ハボクック。今回の作戦、どちらに参加するかの選択は貴方に任せるわ」

 

「ここはビシッと決めて欲しかったです、女王陛下……」

 

 二人の取り合いを見てクイーン・エリザベスがため息をつきながらハボクックに言い、ハボクックは苦笑いをする。

 

 ハボクックは「少し考えますね」と言ってメルクーリヤとエミールに手を放してもらい、目を閉じて考える。それを、他の艦船(KAN-SEN)が息をのんでハボクックの言葉を待った。

 

「……決めました。今作戦、参加するのは――」

 

 数分悩んだ後にハボクックは決断し参加する勢力を言った。

 

 その声は静かになった会場に響き渡り、歓喜の声と共に晩餐会は終わりを告げるのであった。




今回はどうしてロイヤルがアイリスと北方連合の作戦に参加することになったのかを説明するシーンを書いてみました!
今回のシーンでは二つの海域が出てきますが、世界地図で言うと一つの海です。
分かりにくいので地球の地図に当てはめて説明しますが、鉄血の輸送船が太平洋から地中海行くのを阻止するルートがアイリスルート。紅海から地中海に行くのを黒海から出撃するルートが北方連合ルートとなります。
ハボクックはアイリスと北方連合どちらの作戦に向かうのか……次回明らかになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。