凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
ハボクックの下した決断にサン・ルイは歓喜した。
彼女は「自由アイリス教国の作戦に参加する」と答えたからだ。
サン「これでアイリスは神の元、一つとなれる……」
――自由アイリス教国:南方海域――
「ここの海は予想よりも暖かいですね……氷が解けてしまわないか心配です」
ハボクックは潮風に髪をなびかせながら艦載機を飛ばして索敵をしている。
「ハボクック様、何か確認できましたか?」
「今のところは何も確認できませんわ。えっと、この声は……確かリヨンさんでしたよね?」
ハボクックの背後からリヨンがひょっこりと出てきて問いかけた。
索敵に忙しいハボクックは目をつぶったまま声からリヨンと判断して答える。
「はい!リヨン級戦艦一番艦のリヨンです!覚えてもらっていたとはすごく感激です!それに、真剣に索敵なされているハボクック様の横顔がかっこいいです!感動とドキドキで私……!」
ハボクックを前にしてリヨンは「むっはー!」と一人、悦に入りる。
だが、興奮しすぎたのか鼻から一筋の赤い雫がたれていることに気が付くとサッとハンカチでふき取り何事もなかったかのように笑顔に戻った。
「体調が優れなかったら言ってくださいね?すぐにサン・ルイさんを呼びますから」
「いえ!大丈夫です!ハボクック様のような方と合同で作戦を行えること自体、奇跡のようなものですからね!ここでじっくり……じゃなかった。しっかりと護衛させていただきます!」
ハボクックの言葉に対してリヨンは何事もなかったように答える。
それを聞いたハボクックは「無理はなさらないでくださいね?」と言い索敵に集中を戻した。
「何度見ても慣れることはないわね……これからの敵より今いる味方の方が危険な感じがするわ」
「それでもお相手が出来ているハボクック様は流石と言うべきか、それとも鈍いと申すべきなのか……」
少し離れて眺めていたウォースパイトはリヨンの反応に困惑し、フォーミダブルは心配そうに見ていた。
「私達の戦友がご迷惑をかけて申し訳ありません。リヨンはああ見えて護衛の腕は確かなのです。確かなのですが……」
サン・ルイがウォースパイトとフォーミダブルに謝る。
「確かに護衛の腕は間違いではなさそうね。四連装四基、計十六門。それに副砲と対空砲の役割を持つ両用砲を多数積んでいて……正しく要塞ね」
「お褒めの言葉ありがとうございます。ですが、本人の前では絶対に口に出さぬようお願いします……今、貧血により運ばれては今後の作戦に支障が出ますので」
ウォースパイトが素直にリヨンを褒めると、サン・ルイは嬉しそうにお礼を言う。
しかし、サン・ルイの最後の言葉を聞いてウォースパイトは「前例がありそうね……」と苦笑いした。
「西より航行中の敵輸送船艦隊を発見しました!これより、航空攻撃を開始します!」
ハボクックが無線で艦隊全員に聞こえるように言う。
「ついに来ましたわね。フォーミダブル!貴方もハボクックの援護してください!」
「了解しました!敵に情けをかけないのが、ロイヤルレディの作法ですわ!一方的に片づけてあげる!」
ウォースパイトの指示を受けてフォーミダブルが発艦の準備を整え、発艦させる。
ハボクック、フォーミダブル二隻から出た艦載機は空を黒く染めていく。その数百三十機。
「凄い……これがハボクック様の力!」
サン・ルイが上空を見上げて驚きの声を上げた。
「さあ、第一次航空攻撃準備完了……行きなさい!私の艦載機達!」
「ハボクック様に続いて!攻撃開始よ!」
ハボクックが敵艦艇へと攻撃を開始する。それに遅れないようにフォーミダブルの艦載機達も続いて行った。
こうして新たな海戦の幕が今、始まったのであった。
今回は敵を索敵して発見し、航空攻撃で先制する前までのシーンを書きました!
敵輸送船は一体どこの勢力なのか、鉄血?サディア?それともヴィシアか……。
まだ、こちら側の戦力も語っておりませんし、北方連合の方がどうなったのか色々と書くことが沢山で楽しいです。
話は変わりますが、遂に出てきてしまいました……女の子好きの艦船(KAN-SEN)が!
一度書いてみたかったんですよね!これからバンバン登場させて活躍させるつもりなので、リヨンをよろしくお願いします!