凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
ハボクックはかつて自分がセイレーンから奪還し守った島の一つを思い浮かべていた。
クック「あの美しい境内と天にそびえる美しき聖堂……そこで出会った幼き少女。今はリーダーをされているんでしたよね。長生きをすると面白い事があるものです」
そう言いつつ先行しているジャン・バールを見つめる。
クック「ええ、本当に……長生きは素晴らしい出会いをくれますね」
過去の思い出に浸りながら、ハボクックは聖堂を目指した。
――ヴィシア聖座:聖堂の島・近海――
「これは一体何が起きたのですか……?」
目的地へと航行していたハボクックが驚愕して徐々に減速して停止する。
現ヴィシアの拠点であり、かつてアイリスの象徴であった聖堂。
天へと続く巨大な白い建物はそこにはなく、今は瓦礫の山となっていた。
「これはロイヤルとヴィシアの傷の一つだ。だが、勘違いしないでくれ。これに関しては感謝しているところもある」
「感謝……ですか?」
ジャン・バールの言っている意味が分からないハボクックは聞き返した。
「数か月前の話だ。オレの仲間のアルジェリーが鉄血に誑かされてな。その時に使われた黒いメンタルキューブによってアルジェリーは洗脳され暴走していた。それを食い止めるためにアイリス、ロイヤル、そしてヴィシアの他の艦船も参加してアルジェリーの正気を戻してくれたんだ」
「黒いメンタルキューブ……」
ジャン・バールの説明の一部の言葉に反応したハボクックが呟く。
ジャン・バールが「どうした」と聞くと「何でもありません、続きを」とハボクックが返す。
「その黒いメンタルキューブは聖堂の秘蹟の具現化装置で神穹の壁を作り出し、次にアルジェリーを暴走させた。その暴走を止めるために秘蹟の元である聖堂を破壊することになり、なんとかアルジェリーの暴走が収まった……今更ではあるがアルジェリーを止めてくれてありがとう」
「そんなことがあったんですね……こちらこそお話しいただいてありがとうございます」
素直に言えない立場であるジャン・バールが頭を下げてお礼を言った。
それに対してなんとなく理解できたハボクックが深々とお礼をする。
「……ところで、なぜお前はこの聖堂を知っている?ここはアイリス、ヴィシアでは重要拠点ではあるが、それ故に関係者以外は入れないように対応してきたはずだ」
頭を上げたジャン・バールがハボクックに問いかける。
「この聖堂の島をの御存じなのは過去の大戦の時、私はここをセイレーンから奪還したメンバーの一人だったからです」
ハボクックの言葉にジャン・バールは「ほぉ……」と言葉を漏らした。
「だから一言目が驚きだったと言うわけか。なるほどな」
「はい、私はリシュリュー様と共にこの海を奪還して、防衛を数週間行っていました。その後は色々な戦場に飛び回っては戦ったり、守ったり……」
ジャンバールが納得し、ハボクックが思い出したように話を続ける。
「あの頃のリシュリュー様は幼くて震えていましたね。ですが、決して戦場からは逃げずに大きな主砲の発射に転びそうになりながらも敵を倒していました。どうして戦うか聞いたことがありますが、どうやら生まれたばかりの妹のために頑張っていたらしいです」
ハボクックの言葉にジャン・バールは「そうか」と言いつつプイッとそっぽを向く。
その様子を見たハボクックは、美しき姉妹愛に聖母のような笑みで微笑むのであった。
皆様、イベントは進んでおりますでしょうか?私はようやくストーリーが全開放しました!
今回はアイリスとハボクックの過去を少し書かせていただきました。
この小説の時間軸としては現在行われているイベント「神穹を衝く聖歌」の数か月後。ジャン・バールが回復して戻ってきている状態です。
「聖堂がアイリスの陣地でない理由」は次回書こうと思います。
ちょっと更新遅れましたが、今回もここまで読んでいただきありがとうございました。