凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー 作:ルチルネリネ
無機質な声と共に発せられる火花、四連装砲二基八門の砲弾が的確に敵を追い詰めていく。
コーニュ「戦術的問題、皆無。作戦進行に異常無し」
ガコンッと音と共に飛び出す空薬莢は海に無造作に落ちては消えていった。
コーニュ「チェックメイト」
逃げ道を悉く塞がれ、追い込まれた敵艦隊の戦艦にガスコーニュの砲弾が的中する。
ダメージを受けたことによる艦船(KAN-SEN)の甲高い声と、装甲を貫通する鈍い音が響き渡った。
――ヴィシア聖座:聖堂の島・遠洋――
「リットリオ様!」
ガスコーニュから放たれた砲弾の直撃を受けたリットリオから発せられた苦痛の叫びにハボクックが反応する。
「大丈夫だっ!副砲がやられたが、まだ主砲は健全だ!まだ私は戦える!」
ハボクックの言葉にリットリオは何度も「大丈夫だ」と返す。だが、明らかに危機的状況であった。
「至近弾、誤差を修正……目標、敵戦艦バイタルパート」
そんなリットリオを正確に追い詰めていく敵戦艦ガスコーニュ。彼女の瞳は次で仕留めると静かに語っていた。
「攻撃機、爆撃機発艦!目標、敵戦艦!リットリオを援護します!」
「このジャン・バール相手に余所見とはずいぶん舐めてくれるな。これでも食らいなっ!」
ハボクックの発艦途中にジャン・バールの砲弾が側面に命中する。
ジャン・バールから放たれた砲弾はハボクックにダメージを与えることはなく、氷の特殊装甲に弾かれて砲弾は海に落ちては水柱を作るだけ。
「くっ!?衝撃で艦載機が海へ……!」
しかし、砲弾を受けた衝撃により左右に船体が大きく揺れては甲板上に待機していた艦載機が次々と海に落ちる。
何とか発艦出来た艦載機は最初の数機だけで、その数機もガスコーニュに突入するが高い対空弾幕の前に全てが撃ち落とされる。
「困りましたね……先程から艦載機が発艦できないと言うのは」
「それがオレの目的だからな。ダメージが与えられないのなら攻撃させなきゃ良い。後は時間がオレ達を勝利へと導いてくれる」
焦りを表に見せないハボクックに見透かしたように笑うジャン・バール。
唯一の航空戦力にて戦局を大きく左右する航空母艦と言う艦種でありながら、戦艦の主砲も弾く驚異的な装甲を持つハボクック氷山空母。
最強ともいえるハボクックであるが、攻撃するためには艦載機の発艦が必須でありそれが攻撃手段の全てである。
しかし、その攻撃手段を妨害され十分に能力を発揮できない今の状態は、ただの標的艦でしかなく。距離を取ろうにも三十二ノットと言う高速戦艦であるジャン・バールから逃れることが出来ない。
「いい加減諦めたらどうだ?オレにはお前の装甲は貫けない。だが、戦闘に参加させないことぐらいは出来る。その間に他の連中が倒しきれば海に立つのはお前一人になる。後は取り囲んで集中砲火で海の底へと誘うだけだ」
ジャン・バールは勝ち誇ったように淡々と話す。その間もハボクックが艦載機の発艦準備をしていた。
「まだ、諦めないか……だが、何度やっても同じことだ!」
発艦準備中のハボクックにジャン・バールが発砲!その砲弾が再びハボクックの船体を大きく揺らしては艦載機を海へと墜としていく。
ジャン・バールが次の砲弾を装填中、後方で大きな爆発音が轟く。
「勝負ありだな。これでオレ達の勝利が近づいた。今ならまだ降伏するのも認めよう。オレ達も無駄な戦闘はしたくない」
自信満々に言うジャン・バール。だが、ハボクックは戦闘準備を解かない。
爆発音がなった方向を見て、スーッと息を吐くとハボクックがジャン・バールに微笑む。
「何を笑っている……自暴自棄にでもなったのか?」
「いえ、これで無益な戦闘は終わりを告げるのだと思うと気が楽になりまして。どうやら読み合いは私の勝ちにございますね」
ジャン・バールの言葉にハボクックが優雅に答えた。それはまるで勝利を確信したような振る舞い方だ。
その素振りに「まさかっ!」とジャン・バールが振り返る。
そこにはジャン・バールが予想にもしていなかった光景が映し出されていた。
今回はハボクックとジャン・バールの戦闘に視線を合させて書いてみました!
久しぶりの本格的な戦闘に内心不安になりながらも前半を無事書き終えれたことをホッとしています。
次回はこの戦闘の後編を書いていきたいと思います。
Corallo rossoはイタリア語で、日本語に直すと赤珊瑚です。