凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー   作:ルチルネリネ

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リヨン「思ったより敵さん攻めてきませんね……」

敵巡洋艦一隻を中破に追い込んだ後、明らかに鉄血艦隊はじりじりと後退し始めていた。

リヨン「これはリットリオさんの援護に行けそうですね……サン・ルイさん後は頼みます!」

サン・ルイの言葉を待たずにリヨンは航行する。ガスコーニュにバレないように背後に付くことを成功させるとリヨンは主砲の弾を榴弾から徹甲弾に変更する。

リヨン「上手くバイタルパートに入りますように……!」

弾の変更を完了させたリヨンは何も言わずに発砲し、不意を突かれたガスコーニュは防御できずに第二砲塔に直撃して大爆発を起こした。


Corallo rosso(コラッロロッソ)作戦 後編

 

――ヴィシア聖座:聖堂の島・遠洋――

 

 

「いったい何が起きているんだ……!」

 

 ジャン・バールは炎上するガスコーニュを見て呟く。

 

「イレギュラー発生。直撃弾五発、主要区画(バイタルパート)に損害あり。主機損傷航行不能、副砲一基破損、第二主砲塔大破、第二主砲塔より火災発生……戦闘の続行が困難」

 

 よろめきながらガスコーニュは自身のダメージを確認する。損害内容は戦闘復帰が絶望的であり次の砲撃に耐えられないことを意味していた。

 

「悪い子はめっ!です!そこで大人しくしていなさい!……お人形みたいで可愛いですので、後で抱きしめていいですか?」

 

 砲身から硝煙が立ち上がる中、普段とは対照的に真顔になったリヨンが発言したが最後のセリフで台無しになっていた。

 

「何故リヨン級がガスコーニュに砲撃開始している……鉄血艦隊はどうした!」

 

 ジャン・バールが驚愕しながらあたりを見渡す、するとル・テメレールとサン・ルイに追われながら後退している鉄血艦隊が見えた。

 

「巡洋艦と駆逐艦が一隻ずつ中破しているが……他は無傷に近いじゃないかっ!何故撤退している!?逃げずに最後まで戦え!」

 

 撤退している鉄血艦隊にジャン・バールは怒りをあらわにした。

 

 ここが突破されれば裏切ったサディアの海域、鉄血艦隊との決戦を前に海上補給を許してしまうだろう。そうなれば、結果的に苦しむのは鉄血艦隊だ。

 

 だからこそ、この海域で食い止める必要があるはずだ。ジャン・バールはそう思いながら戦っていた。

 

「ジャン・バール様は勘違いをなされていますね。彼女達はただ輸送物資の確認をするだけの艦隊ですよ」

 

 ハボクックの言葉にジャン・バールは「何だと……?」と聞き返す。

 

「この作戦は二方向からの同時輸送作戦。輸送ルートはこちら側のルートのほかにもう一つあるわけです。こちら側のルートの輸送物資が届かないと分かった以上、彼女達がここに残る理由は無くなりました」

 

 ハボクックは「ですが」と言って話を続ける。

 

「敵艦と接触した以上は戦わなければなりません。アドミラル・ヒッパー様の最初の発言はどちら側に付くのか確認するための発言で、数によっては戦闘も考える感じでした」

 

「……しかし、サディアの艦隊の裏切りによって予想していた戦力より少なくなり、またサディア方面より増援が来れば挟み撃ちとなる状況に気が付いて残る理由はなくなったということか」

 

 ハボクックが話を続けようとしたところをジャン・バールが話をぶった切って語る。

 

「ご名答です。流石はヴィシアの旗本と言ったところでしょうか。ですが、この状況で戦局はもう覆らないでしょう。ちょうどあちら側も戦闘も終わったみたいです」

 

 そう言ってハボクックは指を指す。指した方向にはかなりのダメージを負って炎上するヴィシアの艦隊の姿があった。

 

「勝負はつきましたね。これ以上攻撃すれば撃沈するでしょう。ですが、私達の目的は鉄血の航空母艦建造の阻止です。これ以上、攻撃はしたくありません。お願いします、降伏して欲しいとは言いません。ここを通過させてください。」

 

 ハボクックが深々と頭を下げてお願いした。ジャン・バールはしばらく黙っていたが、髪の毛をわしゃわしゃとしたあと「また負けたか」と言って空を見上げる。

 

「……全艦隊帰投!さっさと修理してロイアルの艦船(KAN-SEN)がヴィシアの海に来ないか警戒する」

 

 そう言ってジャン・バールはハボクックに背を向けて帰投し始める。通信を受けたヴィシアの艦隊はよろよろになりながらも撤退していく。

 

 ハボクックは後姿を見届けて、艦隊の編成をし直し航行を開始する。

 

 目指すはサディア海域の近海。その奥の鉄血海域の遠洋。




今回はCorallo rosso(コラッロロッソ)作戦の後編と言うことで、どうしてジャン・バールが驚いたのか、何故ハボクックが勝ちを確信したのかと言うことを書いていきました。
……ある程度予想出来ていましたよね。新キャラなのに出番なしなんてありえませんから。
次回の話をする前にちょっとお話があります。
リアルで現在進行形で大事なことが控えています。そのためにも時間が必要です。
自分は不器用な人間ですので、並列して物事を行う能力はありません。
ただでさえ遅い更新ペースがさらに不安定になりますが、出来るだけ一週間以内に一話は書いていきたいなと思い努力していくつもりです。
話は戻りまして、次回予告です。
次回はサディアでの補給について書いて行こうと思っております。
ここまで読んでいただきありがとうございました!誤字脱字、感想お待ちしております!
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