凍える航海の悪魔 -彼女はただこの海を守りたかったー   作:ルチルネリネ

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カブール「総旗艦殿!」

気が付けば小生は叫んでいたが、この状況であれば無理もない。

今作戦ではハボクック氷山空母を仕留める作戦であったのだが、危機的状況にあるのは我らが総旗艦ヴィットリオ・ヴェネト殿。

更に同盟を組んでいたはずの鉄血の指導者ビスマルクと戦闘をし、次の一撃でどうなるかは目に見えている。

急いで総旗艦殿を助けんと全速力で航行しようとするも、小生は動いていない事に気が付く。

まるで亡霊の手が小生の足首を掴んだような冷たい感覚に足元を見るとそこには……。


凍り付く世界

 

――鉄血本土近海:鉄血海軍港――

 

 

 また何も守れないの?

 

 砲弾と魚雷を氷壁で防ぐ事しか出来ない私は自身に問いかけていました。

 

 今回の作戦は未来に恐怖となりうる鉄血の航空母艦建造計画を阻止する作戦。

 

 新たな火種となる鉄血の航空母艦建造は何が何でも阻止せねばならない。女王陛下が直々に私へ下した使命。

 

 もし建造されてしまえばその艦船(KAN-SEN)といずれ争わないといけないのは間違いないでしょう。

 

 ですが、私はその艦船(KAN-SEN)に対してもきっと手加減をしてしまいます。

 

 私は誰も沈めたくありません。他の誰かに沈めさせる選択を与える事もさせたくありません。

 

 かつて、私はその願いのためにあらゆる分野で努力をし、様々なところでセイレーンと戦っていました。

 

 皆様が安心して航海できる海を作りたい一心で、各国で奮闘し一つまた一つとセイレーンから海を取り返しました。

 

 ですが、それだけでは平和にならず。いつしか私の存在が平和の海を脅かす存在になります。

 

 ある作戦によってそのことを知った私は、軍縮条約を機に上層部の命令に従い一線を退きました。平和が訪れることを願って……。

 

 しかし、数年が経ち戻ってみれば今度は国同士が争い、平和な海はどこにも無くなっていました。

 

 私が居ても居なくても海は変わらなかったのです。

 

 サディア艦隊の砲弾が氷壁を削り落とし、海に落ちた波の揺れで私は現実に戻されます。

 

 そうです、今は回想にふけっている場合ではありません。

 

 私を信じて付いてきてくれたアイリスの皆様は傷つき、リオン様は私達に砲弾を飛ばないようにと二隻の戦艦を相手に無理な立ち回りをしています。

 

 頼みの綱であった北方連合からの無線は苦戦している内容ばかり、このままでは全滅の恐れもあります。

 

 鉄血軍港より抜錨した鉄血の艦船(KAN-SEN)は逃亡を防ぐように周りを取り囲み始め、いつ乱入してくるかも分かりません。

 

 このままでは誰一人として守れない。

 

 絶望的な状態になっても最後まで諦めません。私は思考を巡らし打開策を考えていました。

 

 反撃のチャンスをうかがっていたその時、ピタッと私を攻撃していたサディアの方々の攻勢が止んだのを私は感じました。

 

 サディアの方々は同じ方角を向いて驚愕していました。私も同じ方角へと視線を向けます。

 

 そして、燃え盛る海と纏わりつくような硝煙の中で、私は水面に伏した艦船(KAN-SEN)とそれ沈めようとする艦船(KAN-SEN)を捉えるのです。

 

 水面に伏しているのはサディア艦隊の総旗艦にして、裏切ったはずのヴィットリオ・ヴェネト様。

 

 そして、彼女に今まさに止めを討とうとする艦船(KAN-SEN)が鉄血艦隊の指導者ビスマルク様。

 

 どうして今になって仲間割れを起こしたのか、今の私には分かりません。

 

 ですが、私にとってそれはとても許しがたい事で、何があっても阻止せねばならない事で。

 

 届かない手を伸ばしながら叫ぶサディアの方々を無視し、ビスマルク様の砲身は火を噴き砲弾がゆっくりと飛ぶ。

 

 また何も守れないの?

 

 蘇るかの大戦の記憶。目の前で■■する■■(■■■-■■■)、手を伸ばし叫ぶ私。

 

 鼓動するように私のメンタルキューブが反応し、私の足元の海面に黒い波紋を映し出す。

 

 もう二度と私は誰も失わせない!竜骨が歪み、艤装が砕け、私が消えるとしても!

 

 ゆっくり流れる時の中で、私から広がる黒い波紋は一瞬でビスマルク様の砲弾の所まで広がっていき――

 

「全て凍り付いてしまえば良い」

 

 ――その言葉でビスマルク様の砲弾も私の周りにいた艦船(KAN-SEN)足元の海も凍り付いて全ての動きを止める。

 

 全て凍り付かせれば誰も争う事は無い……。

 

 そんな言葉が脳内に響き、私の意識は刈り取られてしまいました。




今回はハボクックの視線でお話を書かせていただきました。
戦闘中の一人称の難しさに加えて、かの大戦での話、ハボクック個人の話、前回の話の続きを繋げる話を一話にまとめて書いたため大分、話がゴッチャゴチャになっています。
何回も読み返しているのですが、何度読んでも読みにくい感じが否めない……。
ですが、少しずつ(自分が想像した)過去に触れてきているので書いていてとても楽しいです。
もっと書きたいことを読みやすく伝えやすく書けたらなぁ……と思う作者でした。
何事もなければ次回は土曜日に更新予定ですので、楽しみにしていてください!
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