暗く、深い森の奥。一人の男と幾百の異形の者達がいる。
「ふー、なんだってこんな山奥にあるんだ…」 男は疲労困憊っといった感じで、目の前のかつては鳥居だったであろう物を見上げる。 ここは、とある山奥。人一人居ず、ゆるやかに朽ち果てていっている神社の前に彼らはいるのだ。 「博麗神社、か。随分とボロいな…。ていうか、そんな事はどうでもいいんだった。」 男が一歩踏み出し他の者もそれに続く。 「よし、じゃあ行こうか!」 「楽園に、戦争を仕掛けにな!!」 ―幻想郷・博霊神社― 博麗大結界を管理する「博麗の巫女」が住まう所である。
なのだが、鬼がよく酒を飲みにくるわ、妖怪だらけの宴会が度々行われるわでただの人間からしたらまるで魔の巣窟状態である。 そんな場所に空から降りてきた白黒の魔法使い、霧雨魔理沙。
「霊夢~、いるか~?」
大声で巫女を呼びながら縁側に周る。
「いるわよ、だからそんな大声出さないでよ。あと、ちゃんと玄関から入ってきなさいよ」
「別にいいだろ。霊夢こそ来客なんだからせめてコタツから出るぐらいはしろよ」
「魔理沙が来るのも、それをこうやって迎えるのもいつもの事じゃない」
「それはそれでどうかと思うぜ…。ところで、霊夢はさっきから何をしてるんだ?」
魔理沙は先程から気になっていた事を尋ねる。
「見れば分かるでしょう?霊符を書いてるのよ。ついでに退魔針も清水に漬けてあるわ」
「はぁ、いやでもなんでそんなにたくさん?」
見れば、霊夢の傍には御札100枚セットが一ダースはある。
「勘よ、勘。近々大きな異変があるような気がしてね。そのための準備ってとこかしらね」
「霊夢が異変に備えるなんて、こりゃあこれ自体が既に小さな異変だぜ…」
「ちょっと、それはどういう意味よ」
「別に~?ただ珍しい事もあるもんだな、と思っただけだぜ。というか、幾ら霊夢の勘が人間離れしてるとはいえ、これで何も起こらなかったらどうするんだ?」
「いえ、既に異変は始まってるわ」
声のした方を二人が見るとまるで空間が裂けたかの様になっており、その切れ目から妖怪の賢者・八雲紫が上半身だけを出して胡散臭い笑みを浮かべていた。
「それで?異変が始まっている、ってのはどういう意味?」
霊夢が尋ねる。
「そのままの意味よ。あなただって分かっているのでしょう?昨日、多くの妖怪が幻想入りしたわ。藍。」
紫の声に、彼女の式神・八雲藍がスキマから出てきた。
「藍、説明を」
「はい、紫様」
一呼吸置いて藍は妖怪の一斉幻想入りの詳細を語りだす。
「既にご存知の通り昨夜未明、多くの妖怪が幻想入りしました。数はおよそ500」
「500?意外と少ないな」
予想と反した数字に魔理沙は言う。
それにたいして藍は
「まあ、そうですが…ただ大妖怪クラスの者が約半数を占めている様でしてね。分かりやすくいうと紫様が250人ぐらい居られるような感じですね」
「そ、それはかなりアレだな…」
「めんどくさい事この上ないわね」
「私で例えないでよ」
三者三様の反応を受け、藍は詳細の説明を再開する
「それで彼らは現在、無縁塚辺りに駐屯してる模様です。さらにはそこに、陣を構築。上空や木の上には見張りがいて、容易には接近出来ないでしょう。この事から彼らは組織的に行動する一個の集団だと判断できます。」
「ご苦労様、後は私から説明するわ」
紫は藍の語りを止め、
「それで、今はまだ目立った動きはないけど、流石に500が一気に動き何らかの侵略行為でもすると最悪幻想郷のパワーバランスが崩れ、幻想郷自体の破滅につながるわ」
「なるほどね、大体分かったわ。でも一つ聞くけどそいつらはスペルカード・ルールを理解しているのかしら?」
霊夢の疑問に紫は肩を竦め、
「さあ、でも理解はしてるでしょうね。しかしそれに従うかどうかは分からないわね。いえ、仮に侵略行為をするなら従わないでしょうね」
「そ、その場合って私達はどうするんだ?こっちがルールを無視する訳には行かないし…」
魔理沙の質問に対し、紫と霊夢は僅かに思案し答える。
「勝手な侵略行為に対してこちら側が都合を合わせる義理はないわ」
「その通りですわ。スペルカード・ルールが施行されてから既に多くの異変が起こりそしてルール通りに解決されましたし、今更それを変える訳にはなりません」
二人は幻想郷の管理者として同じ答えを出した。
「なるほどな。つまり、いつも通りやればいいだな」
「そういう事よ」
会話が途切れた瞬間。
「っ!紫様!!」
口を噤んでいた藍が声を上げる。
「…そうね、二人とも奴らが動き出したわ。そして…」
「ええ、来たわね。ここに」
4人が空を見上げると、まるで天狗の様なスピードで何かが振ってきて境内の石畳を着地の衝撃で吹き飛ばした。
「引越しの挨拶…な訳ないわよねぇ…」
霊夢は今この瞬間まで入っていたコタツから出て霊符と退魔針を装備し縁側から境内へと降り、他の3人も続いて落下物とある程度の距離の位置に行く。勿論臨戦態勢だ。
やがて衝撃によって舞いあげった砂煙が晴れ落ちてきた物、いや、者の姿が見えた。
「やあ、巫女と魔法使いと妖怪の賢者とその式でお出迎えかい?…でも歓迎はされてないようだね」
砂に汚れた服を叩きながら言う男。その姿は男であり、藍色の髪と灰色の瞳をしていたがなにより尖がった耳が特徴的だ。そして、笑みを浮かべまるで本当に挨拶に来たかのようだ。石畳が吹き飛んでいなかったらの話だが。
「えーと、まず自己紹介でもしましょうか?ああ、そちらの事は知っていますので大丈夫ですよ」
「紫みたいね」「本当だな、そっくりだな」「胡散臭いですね」
声を揃えて言う紫以外の3人。
「どういう意味よ…」
「そういう意味だぜ」
「ああー見抜かれるねー。やっぱこういうキャラじゃないしな。俺はハイネ。妖怪だ」
「聞いてないですよ」
「聞けよ」
「じゃあ、聞きましょう。あなた方の目的は何?そしてあなたはどういう立場なの?」
紫が妖気を漏らしながら、表面上は笑顔で聞く。
「目的は戦争。立場はリーダーだ、アレだ。黒幕って奴だ」
「戦争って…色々ヤバイじゃない…ま、なんであれ…」
霊夢が呆れた様な言葉と共に退魔針を飛ばす。
「おっと、危ない」
しかし、ハイネはそれを軽々と避ける
「霊夢!早まるな!」
「落ち着きなさい、まずは話を…」
「残念…お前らは敵対の意思を見せた。よって我らは幻想郷の敵となる。じゃ!また今度!」
そういい捨て、帰ろうとするハイネ。
「あっ、そうだ。六刻後に進撃を開始するから。色々と準備したければどうぞ」
そうして来たときと同じように石畳を吹き飛ばし飛翔していった。
後に残されたのは制限時間を設定された少女達。
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