「やぁやぁ初めましてお嬢さん、俺の名前は童磨。今日は…良い夜だねぇ」
雪が降る深夜、私は奴に出会ってしまった。
任務に向かう途中に出会ったその鬼の七色の右目には“伍”と言う数字が刻まれており、左目には上弦と言う字が浮かんでいる。
【十二鬼月】…鬼舞辻無残の直属の鬼であり、他の鬼とは掛け離れた力を持っている。その力は通常の隊士では文字通り刃が立たない程だ。
それにしても運が悪い、頼れる仲間は皆他の任務に行ってしまったというのに上弦の鬼との会敵……情報を聞き出すにも一人では取り逃しかねない。
仕方があるまい、ここでこの鬼の首を断つ…
「夜の呼吸… “弐ノ型”」
腰の刀に手をかける。鬼の首に狙いを済ませ大きく息を吸う。
不気味に笑うその鬼は二対の扇を構え、こちらの出方を伺っている様だ。
「無眼残花•冷血」
「んん…見たことのない技だなぁ」
……受け止められた?
あの黄金の扇に私の弐ノ型が?
「君なかなかやる様だね、今のは俺でもちょっと危なかったかな」
「嘘つき」
「嘘なんてついてないぜ?今のが当たってたら半分くらい首が切られてたからな」
…やはり冷血じゃ首を削りきれない。
一発で、一撃で、胴体から首を分かつ一撃を放たなければあの鬼は倒せないだろう。
それに外気温の影響か呼吸をするのが苦しい。全集中の呼吸が乱れるのも時間の問題だろう。
ならば一番殺傷能力が高い漆ノ型で決めるしかない。
「…夜の呼吸」
この一撃で、首を断つ。あの扇ごと!
「月華葬儀•晩誕!!」
血気術 枯園垂り
ガキィィィン!!!
「凄いな、俺の腕を吹っ飛ばすなんて」
鬼は冷気を纏った扇を私の刀にぶつけて来た。
漆ノ型は諸刃の剣、ありったけの力を乗せて胴体ごと首を切ることも容易いのだ。
それなのにも関わらずこの鬼は一本の扇に左腕だけで首を守り切った。これが上弦の鬼、無残直属の最強の鬼……!
「次で…決めるッ!」
「(…無残様から頼まれた例の件、蔑ろにしてこの娘と戦ってるのは不味いかなぁ)」
「(この娘が使う呼吸…見た事がない、記憶しておこう)」
「(もう少し技を見させて貰いたいけど…時間もない)」
「俺には時間が無い、もう少しで日の出だ。」
「だから、君の相手はこの子にしてもらうよ」
血鬼術 結晶ノ御子
鬼に似た小さな氷の人形が二体、残った右手の扇から現れる。
「ごめんねぇお嬢さん、じゃあさようなら」
「待てッ!」
鬼はこちらに手を振ると冷気と共に姿を消していた。
残っているのは二体の氷人形。
さっさと片付けてあの鬼を…
血鬼術 蓮葉氷
血鬼術 散り蓮華
「なっ…」
氷人形が放った小さな氷の粒が足に突き刺さり体勢を崩してしまった。
先に放たれた大きな蓮の花のような氷に触れた瞬間瞬く間に左腕が凍結する。
「いっ…!」
血管に氷の針を刺されている様な痛みに思わず声を上げてしまう。
抜けようとしたが足に絡まった氷の蔓が邪魔をする。
血鬼術 蔓蓮華
呼吸も覚束ない、視界もぼやけてくる。
肺が凍えて、目が凍てつく。
薄れゆく意識の中、師匠の言葉を思い出す。
「…お前には…才能がある」
師匠はそう言ってくれた、私に剣の使い方を教えてくれた
それなのに私は貴方を超えて見せるって大口叩いて、このザマ。
上弦の鬼すらまともに倒せなかった。
ごめんなさい師匠。私は貴方に答えられなかった
「………………月詠……」
「……私を超えるのでは…無かったか…」
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