PARALLEL WHITE ALBUM2(仮題)   作:双葉寛之

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改訂よりもこっちが先に進んでしまう。



EPISODE:15

「小木曽、せっかくの休みなのに付き合ってもらってありがとうな」

 

 メンバーの誰も持っていなかった音源”Feeling Heart”

 地元のレンタルCDショップで探すも生憎在庫が無く、御宿まで出掛けたところ。とあるショップで旧譜として格安で販売されていた中古品を見つけた土曜日。

 自分には必要のないモノなのに探すことに付き合ってくれた雪菜に春希は礼を述べた。

 

 

「ううん、わたしもきちんとした曲は持っていたほうがいいかなって思ってたし。

 動画投稿サイトの曲だとライブ版だったり、妙に劣化してたりするからね。やっぱりCDのほうがいいよ」

 

 気にしないでいいと伝える雪菜。

 拓未とかずさは曲を持ってなくてもそこらで流れているのを聴けばわかる。と言って付き合ってくれなかった。

 武也も春希と同じくCDを手に入れる必要があったのだが、今日はデートの予定があると言って春希に一任した。部長なのに。

 雪菜も歌うだけならネットで聞くだけでわかるだろうに付き合ってくれている。その優しさに改めて春希は感謝した。

 

 

「あー、やっぱり店内は涼しいよね。御宿のヤックなんて久しぶり」

 

「小木曽も? 行くとしても大体が南末次のグッディーズにヤックだもんな」

 

「そうそう。でも同じ都内でも離れているせいか御宿と南末次じゃ全然雰囲気違うよね」

 

「服装もおしゃれな格好をしている人が多いよな。三つ編みに厚いフレームの子なんかいやしない」

 

「もぉ! アレは変装なんだって!」

 

 歩きまわって疲れたのと昼時ということもあって近くのヤクドナルドに入る。

 案の定、休日のヤックは客で溢れごった返しているが運良く空きテーブルを見つけた二人はそれぞれのトレーを持って席につく。

 

 あぁ、涼しいといってノースリーブのブラウスをパタつかせる雪菜。無防備すぎるその姿にどぎまぎしながらも隠す為にあえて春希は軽口を叩く。

 それにうまくのってくれる雪菜。大丈夫、バレていないようだ。

 

 

「変装っていえば。北原くんってさ、去年のあの時、どうして黙ってくれてたの? 

 自分で言うのもおかしいけど、わたしがアルバイトしてるっていうのは男子には美味しい情報だと思うんだけど。

 ……最悪のパターンで、それをネタにいろいろ無理難題ふっかけられるのかなとか思ってたんだよ?」

 

「あぁ、あのバイトの子と小木曽が一致して思わず叫んでしまった日の事?

 別に大した理由なんてないよ。

 学園のアイドルのお嬢様だって実はこんなに苦労してるんだなぁって思って――てなんだよ無理難題って」

 

 ネタで脅すって、俺は何処のエロゲーの主人公だよ。と春希は嘆息する。いや、実際その手のカテゴリの主人公であることは間違いないのだが本人が気付くはずもない。

 

 顔をしかめた春希に覗き込むようにやや顔を寄せる雪菜。

 上目遣い気味なその角度が春希の鼓動を早くする。

 かずさに惚れているとはいえ、彼も男。学園のアイドルが誰もが羨む距離で自分を見てる。

 この状況でドキドキしないほうがおかしい。

 

 

「ふぅん……やっぱり、優しいんだね、北原くんは。

 私を見つけた二人とも優しい人でよかった。

 あ、でも北原くんはムッツリだからやっぱり怖いかなぁ」

 

「ムッツリって、瀬能のことか!

 アレは仕方がないだろ。あんな事されて、普通ならどういう態度取ればいいんだよ」

 

「あはは、鼻の下伸びすぎだったよねー。

 どんな態度って言われても、わたしは男の子じゃないからわかんないし。

 ……あ、でも拓未くんなら堂々と、もっと身体を寄せさせるくらいするかも?」

 

 どっちかというと飯塚くんも鼻の下伸ばしそうだよね。そう言ってケラケラと笑う雪菜。

 浅倉に抱きつく女。それこそ軽音楽同好会とその友人の女性しか考えられない。

 どうして雪菜がそういう発想に至るのか。

 

 

「小木曽はさ、その時くらいから浅倉と――」

 

「あ、待って。メール……拓未くんから。あれ、今御宿にいるんだって

 ね、北原くん。拓未くんと冬馬さん近くにいるっていうからさ、ココで合流しない?」

 

「あ、あぁ。そうだね。じゃあもう少しここで待ってようか」

 

――浅倉が、冬馬と……一緒に?

 

 昨日拓未は用事があるとだけ言っていた。

 かずさは暑い、だるい、引き篭もりたい。と自宅警備を宣言していた。

 

 何故、二人が御宿に――

 

 

「北原くん? 北原くーん」

 

「――小木曽? うわっ、頬をつねるのはもうやめろって!」

 

「どうしたの? ボーっとして。それよりさっき何か言い掛けなかった?」

 

 ちぇっ、と残念そうな笑みを残しながら右手――妙にニギニギと親指と人差し指でつまむ仕草をしながら、つねろうとするのを諦める雪菜。

 先日の昼食時のあまりの痛さを思い出した春希は回避出来たことにホッと胸を撫でる。

 

 

「いや、小木曽って。去年から浅倉と仲がいいだろ。

 お世辞にも評判が良い奴じゃない浅倉と、どうしてそんなに仲良く出来ているのかなって」

 

「うーん……実際は意外と拓未くんも、北原くんとみたいに優しいから。かな

 高校で初めて出来た、本当の私を見てくれるお友達、だったし。

 あと。結構、私のことを一番に考えていてくれていた……ところとか」

 

 そう言いながら微笑む雪菜。

 だがそれとは裏腹に言葉に含まれる感情は、やや悲しげだったのは春希の気のせいだろうか。

 春希には雪菜の微笑みが、まるで昔のことだと言っているように思えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしは、家で怠惰を満喫したかったんだ……」

 

「相変わらず不健康だなお前……。楽器屋に寄るのも久しぶりだろ?」

 

 近年定着していた”NEET”の呼称が拓未の脳裏をチラつく。

 コイツは、進学出来るのか? 出来ないだろうな。ともすれば真のNEETになれるのではないか。

 誰もが夢見る境地に一番近い彼女、かずさをたまには楽器屋デートしようと無理やり連れ出してやってきたココ、御宿の○村楽器。

 

 ウダウダと文句を言っていたかずさだが、やはり楽器が好きなんだろう。先程までの隠さずにいた怠そうな態度を一変させる。

 

 

「あ、このメーカーの電子ピアノ。新しくなってる。

 うん、結構鍵盤が重くなってるな。

 ……ねぇ、拓未。ちょっと連弾しようよ」

 

「へぇ、感触が随分と本物っぽい。最近だとアップライトピアノより電子ピアノのほうが良いんじゃないか?

 連弾か、良いぜ。蒸し暑いから吹き飛ばすようなキーが良いな」

 

「じゃあKey=D(ニ長調)で、140くらいのテンポで」

 

「悪くないな。じゃあ右に詰めろよ。俺がセコンドやるから。かずさはプリモで」

 

 スタッカート気味に間隔を空け、跳ねるように低音部を弾き始める拓未。

 それに合わせてかずさ高音部を奏でる。

 Dのキーはやはり明るい曲が多い。自然とアレグロ気味に弾む鍵盤。

 

 

「拓未、それじゃまるで”SOUND OF DESTINY”じゃない。

 アドリブするんじゃなかったの?」

 

「あれ。いやお前がそういう風に持っていったんだろ。

 第一、俺は由綺派。お前が理奈派だろ?」

 

「ふん。緒方理奈の素晴らしさがわからないなんて、損しているな」

 

「おいおい、これじゃホントに”SOUND OF DESTINY”のメロディ――」

 

 楽器屋で男女で連弾――しかもお世辞抜きに上手いそれを決して他人に披露するつもりはなく、本人たちで楽しもうと盛り上がる二人。

 最初は二人の周りに人だかりが出来て「すごい」とか「上手い」とか「綺麗な子」とか辺りは騒いでいたが。

 段々とその仲の良い雰囲気に当てられて嫉妬のような殺気のような視線に変わっていった。

 

 

「――あー、お客さん? あんまり店内でイチャつかれては周りのご迷惑になるのですが?」

 

「あぁ? てめぇ客に文句を――って、あれ?」

 

 幾分冗談めかした、大袈裟な態度で注意をしてきた店員に食って掛かろうとした拓未。しかし見知った顔であるとわかると怒気を霧散させる。

 注意をしてきた店員。それはサポートとしてツアーについていったバンド。

 そのバンドの正規ギター、つまりそのバンドでの拓未の相方だった。

 

 

「ほらよ、これが参加の申請用紙。バンド名と人数。それとやる楽曲。オリジナルかコピーのチェック欄。それに気をつけてな」

 

 昨日、武也達と相談して決めたバンド名「峰城大付属高校軽音楽同好会」

 何のひねりもないつまらないその名前だが奇をてらうよりインパクトがあってわかりやすいだろうと全員賛成のもと、決まったそれをバンド名欄に書き込む。

 

 

「しっかし、いきなりサポート業辞めるって聞いてこっちは大慌てだったんだぜ?

 それが当の本人がいきなり現れては随分とまぁ髪型変えちまって。お陰で最初は拓未なんてさっぱりわかんなかったよ」

 

「すんません、上田さん。ちょっと下手くそなギターの面倒を見るために集中したくて」

 

「あぁ? そんな言い訳は要らねーよ。

 隣のめちゃめちゃ美人の彼女とイチャイチャしたくて休業宣言したんだろ。

 お前も一端の高校生なんだなぁ。音楽よりも学園生活を取るかァ」

 

「か、彼女!?」

 

 あ、バレました?そうなんですよ。と何でもないように返す拓未に、お前にはチケット3倍で売りつけると軽口で返す店員(上田)

 一方のかずさは彼女発言に顔を赤くさせながら口をパクパクと動かすことしか出来ない。

 

 

「ほい、確かに受け取ったよ。当日は俺もスタッフとして設営に回るから見させてもらうぜ?」

 

「あざっす――ガキの演奏ですよ。それなりに生暖かい目で見てやって下さい」

 

 ほら、いくぞ。とかずさに促す拓未。上田に挨拶し、店を出ようとする拓未にあわててかずさは追いつこうと駆け寄った。

 

 

「うはぁ……。やっぱ暑ぃな外は。

 あ、雪菜からメールが着てる」

 

「拓未。か、彼女だなんて肯定して、あんた一体どういうつもり」

 

「あー? あんなん社交辞令だって。お前のことを褒めてたんだよ。めちゃめちゃ美人って言ってたろ」

 

「なっ……。ふん、やっぱり見かけどおり随分とチャラいんだな。拓未は」

 

「いや、見かけを言われると否定しようがねぇが。それでもそれは前の髪型の話だろ……。

 そんなことより、北原と雪菜、御宿に来てるんだってよ。ヤクドナルドで落ち合おうぜ」

 

 特段の変化も見せず軽くあしらう拓未。

 やはり自分では彼の一番にはなれないのだろうか。

 

 そんな感情がかずさを襲うも「早く涼しいところに行きたい。ぼさっとしないで歩く!」とかずさは自分を押し殺して努めて明るく振る舞うことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、どうして俺達はココにいるんだ。浅倉」

 

「どうしてかって、これから雪菜と付き合っていくんなら小木曽家とも仲良くしねーとな」

 

「うわぁ、拓未さん。一緒にバンドやるとは聞いてたけど……その髪、どうしたの?」

 

「孝宏、前よりマシだけど似合ってないだなんて、拓未くんに失礼でしょ」

 

「いや姉ちゃん、誰もそんなボロクソに言ってないし……」

 

 以前、食事をしようと連れられてやってきた小木曽家。

 1週間と短い期間でまた訪れることになったこの家だが、妙に密度の濃い毎日を送っていたせいか、随分と久しぶりな気がする。と春希は多忙だったここ1週間を思い出していた。

 

 お茶を淹れるから部屋で待ってて、という雪菜に従い彼女の部屋に入る。

 かずさの家と違い、女の子らしい部屋。春希は勿論、なぜかかずさまで居心地悪そうにしているのを他所に拓未はさっさと座れと気楽に催促する。

 

 

「小木曽家はな、極道の方達よりも仁義を気にする家なんだ。筋は通さねぇとな」

 

 本人がいないからと勝手なことをいう拓未。だが実際あながち外れていない分、説得力がある。

 

 

「あたしは……こんなドラマみたいな画に書いたような家族は苦手だ」

 

「俺も、家族ってのがわからないから。居心地は悪いかな」

 

「え……。北原くん、迷惑掛けちゃった。かな」

 

 タイミング悪く、お茶を持ってきた雪菜に話を聞かれてしまう春希。

 違う、小木曽を責めているわけじゃない……自分が異質なのだと念頭において、春希は言い訳じみた説明を始める。

 

 

「いや、そんなことはないよ……。

 ただウチは離婚して、母親とはもうずっと無関心を決め込んでいるから……」

 

 小学校の頃別れた両親。母親に引き取られ、彼女は仕事に打ち込み。自分は強く生きようと頑張ったが、結果はお互いのことが理解できないし、今更しようとは思わない。そんな戸籍上だけの関係に至ってしまっている。

 父親が名家の出で、そのお陰で養育費に困ることないのも相まって、こうやって私立に通えるから文句がいえる訳じゃないけど……。

 

 

――バカヤロウ。男が暗い雰囲気作ってどうするんだよ!

 

 しんみりと自分の生い立ちを語る春希を心のなかで詰りつつ、慌ててフォローに入ろうとする拓未。

 

 

「い、いやまぁ家庭ってそれぞれだし?

 テレビドラマみたいな家族が身近に見れるってのは中々ないことだぜ?

 おかげで雪菜はこんないい子に育ったんだしな!」

 

「拓未は、拓未は家のこと、嫌いじゃないのか?」

 

 かずさが、伺うような訪ね方で拓未に問う。まるでお前は私達の境遇の味方だよな、と。

 しかしその答えは彼女にとって裏切りのような形で返される事となる。

 

 

「いや、俺は家族のこと。親父のことは大切に思ってるよ」

 

「そ、そんな。あんた前に昔は祖父母のところで暮らしていたって言ってたじゃないか。

 普通、捨てられたとか思わないのか?」

 

「冬馬さん……」

 

 かずさのその問いに雪菜は言葉が詰まる。

 自分の家庭が普通だと思っていた。春希やかずさのような家庭は想像が付かなかった自分。

 二人に悪い印象を与えてしまったかな。

 拓未くんは片親だけどなんでもないように言ってたけど、本当は冬馬さんたちと同じように……。

 

 

「あぁ、昔は思ってたよ。っていっても主に小学生時代だが……。

 少なからずとも最後までそういった感情が引っ張っていたのは中3くらいまでかな。

 家すらも追い出されるのなら話は別だが。

 別に捨てられたくないとか、認められたいとか躍起になる必要はないんだよ。

 どんな親でも、子供は子供。どんな子供でも親は親。そう思うようになったら一気に関係は変わったよ」

 

 だから、と拓未は続ける。

 

 

「だからかずさも……そして北原も。そう思える日はきっと来る。それがいつかはわかんねーけどな。

 それに雪菜は今後、きっつーい反抗期がやってくるかもしれねーしな!」

 

 そうなった時の雪菜の父ちゃん、きっと見ものだろうなーと無理やり明るく務める拓未。

 

 

「ほら、話をしていたら晋さん、帰ってきたようだ。下に降りようぜ!」

 

 雪菜が淹れてくれた茶を飲むと、拓未は立ち上がって「謁見の時間だ」と二人を急かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋菜さん。今度御宿インテグラルのカフェにでも出掛けません?

 たまには主婦としての自分を忘れて息抜きしましょう」

 

「やだわ、こんなところ、主人に見られたら」

 

「大丈夫ですって。ただの息抜きです。何も悪く思うことなんて――へぶっ!」

 

「だから私を見るなりこれみよがしに妻を口説くんじゃない、浅倉くん」

 

 階段を降りて小木曽家の主、晋を一瞥すると拓未は雪菜の母、秋菜をナンパし始める。

 もちろんそれをわかった上で”いけない不倫ごっこ”に興じる秋菜だが……。

 わかっちゃいるがいい気分ではない。その原因である拓未に晋のげんこつが落ちた。

 ちなみに、その回数は生まれてから数えても孝宏より多い。

 

 

「つぅっ……。晋さん、こんばんは。おじゃましてます」

 

「髪型がずいぶんと変わったから心も変わったかと思えば……。君は普通に挨拶することも出来ないのかね」

 

「いやこれも一種の挨拶みたいなもんで、愛情表現ですよ……秋菜さんに――痛っ」

 

「もうお父さんやめて!これ以上頭叩いたら拓未くんの唯一の取り柄さえも忘れちゃう!」

 

 親しい者には容赦がない雪菜。これもコミュニケーションの1つではあるが……。

 

 

「雪菜、この方たちは? 紹介しなさい」

 

 

 

 

 

「そうか、浅倉くんも交えて部活をすることになったのか」

 

 話を聞く限り春希のほうがよっぽど拓未より信用できそうだ。そう言いながら雪菜と”友達として”仲良くしてやってくれ。と告げる晋。

 無言のプレッシャーを受けながらも「コチラコソ、ヨロシクオネガイシマス」と答えるのに精一杯の春希。

 

「父さんああはいうけど拓未さんのこと信用してるからなー。北原さんはそれより更にかな?」

 

「あらあら、二人が雪菜を取り合うの? もしかしてあの綺麗な子から雪菜が奪ったのかしら?」

 

「母さん、話が全然脈絡ないから……」

 

 そんな親子のひそひそ話を耳に挟みながら、晋は軽く咳払いをする。

 慌ててキッチンに隠れる母と息子。

 

 ちなみにかずさは怯えた犬のようにプルプルと大人しい。相変わらず人見知りが激しい。

 

 

「それで、それだけなら私にこんな形式張った挨拶することもないだろう?まさか、何か雪菜を――」

 

「いやいや何考えてんすか、晋さん。

 雪菜を部活動に加入させることを許してくれたお礼と。あとはまた勝手な事ですが、報告を」

 

「報告?」

 

 よもや、まさか……!

 交際だけならまだ許せるが……。そんなとんでもないことを言い始めた晋に、だから違いますってと拓未は話を続けた。

 

 

「初陣のご報告です」

 

 

 

 

 

 お邪魔しました。そういって小木曽家を後にする一同。

 見送るから、という雪菜に拓未は断りをいれる。かわりにしっかりとお父さんを納得させろと伝えながら。

 

 

「はぁ……。親父ってのはあんなものだっけ」

 

「いやぁ、晋さんはだいぶ特殊だからなぁ。

 あの人家族が第一仕事が第二って人だからな。多少排他的な気はある」

 

「あたしはやっぱりあの家族ってのは苦手だ。

 わけがわからないよ。勝手にしていいだろうにどうして一つ一つにいちいち干渉するの?」

 

「ま、あそこまで極端なのは珍しいが、かずさもきっとわかる日が来るさ」

 

 辺りは薄暗くなりつつある。世間ではすっかり晩御飯の時間帯である。

 小腹を空かせた春希は空気を一新しようと提案をする。

 

 

「浅倉、冬馬。二人とも腹空かしてないか? どこかで夕食でも――」

 

「なぁ、北原。今日はライブ参加の申請書を出した。

 雪菜も出演の説得を今日中に終わらせる。

 周りの準備は出来つつある。

 なら、お前の今からすることは……?」

 

「……ギターを弾くこと、です」

 

 現実を突きつけられ項垂れ気味に答える春希。

 その仕草がおかしかったのかかずさが笑い出す。

 

 

「そんなにしょぼくれないでよ北原。

 あんたはギターをとってきなよ。その間に何かご飯買っておくからさ」

 

「お、なら俺が飯作ってやろうか。お前ら何が食いたい?」

 

「拓未作ってくれるの? あたしアイスバインがいい」

 

「よしかずさ、お前は1週間飯抜きな。北原には腕によりを掛けて作ってやる」

 

「浅倉、お前が? 食えるのか?」

 

「北原、お前も結構酷いこというのな。俺の腕前は主婦(秋菜さん)を唸らせる程だっての。

 お前は飯の心配よりギターの心配をしろよ。なんせ先生が二人も付いているんだからな」

 

 軽口を叩き合いながら末次駅を目指す3人。

 

 雪菜は必ず説得を終える。自分も頑張らなくては。

 他の部員の期待に応えなくてはいけない。そう春希は決意を新たにしたのであった。

 

 

 

 




内容が薄いしさらりと述べただけですが。
今小説では拓未と雪菜はEPISODE:9.5で拓未の作ったおかずがきっかけで仲良くなっていると明かしています。
案外、男の料理ってのも悪くないもんですよ。

少なくとも私は慣れました……この孤独に(´;ω;`)ブワッ
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