PARALLEL WHITE ALBUM2(仮題)   作:双葉寛之

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参考資料として、原作を再びプレイしようとするも……。胃が痛くなって、一気に進めることが出来ません……。


EPISODE:7

「き、北原くん!!」

 

 かずさの身体から放たれたとは思えないほどの威力の蹴り――それをまともにうけた春希は雪菜の横をまさに吹き飛ばされるように浮いて倒れていった。

 

「小木曽、だよね。大丈夫だった? あいつに何かされた? ごめん、あたしの不注意だった。まさかこんなことをしでかす奴だったとは――」

 

「あ、あの……、違います。北原くんは何もしてないんです……。本当に」

 

 未だ誤解をしているかずさにそれまでのことを説明しつつ、雪菜は春希を看護する。幸い、頭は打っていないようで意識はあった。

 

「っつぅ……。冬馬ぁ……今回ばかりは俺は何も悪くないからな」

 

「悪かったよ、早とちりして……ごめん」

 

 強く怒られた訳ではないものの、さすがにバツが悪いかずさはシュンとしながらも謝る。

 

 上半身を起こし蹴られた辺りを手で抑えている春希をかずさは「立てるか?」と手を差し出す。「あんな蹴り男にだって食らったことないよ」と言いながら手を借りて立ち上がった。

 

 

「すごいキックだったよね。あんなに飛んでいくの初めて見た」

 

 あまりの展開に、もう笑うしかない雪菜は「こぉーんなに飛んでいった!」とアイドル然としていない素の状態で手を大きく振りながら先ほどの凄さを表現する。

 まぁ実際”男にだって……”の件はまともに喧嘩をしたことがない春希だから事実だったが――そんなことより、学園のアイドルらしからぬ素振りに意外を感じすぎて春希とかずさは、ぽかんと雪菜を見やった。

 

 

――あ、しまった……。

 

 普段の学園生活では見せない。あまりに幼稚な仕草をしてしまったことに気付いた雪菜は顔を赤くする。

 

 フォローしないといけない! 気を使った春希はとりあえず自己紹介をし直す。

 

「あー……あの、小木曽。あらためて自己紹介するけど、さっき下でギター弾いてた北原。

 そしてこっちのタイキック――いや、なんでもない。こっちの子は冬馬かずさ。さっきピアノを弾いていたのは冬馬なんだ」

 

「あ、こちらこそあらためまして。A組の小木曽雪菜です。――あなた達のことは少し前から聞いていました。依緒に」

 

「……水沢に?」

 

 

 意外な繋がりにそういったことに疎いかずさはよく理解しきれていなかったが、世の中は意外と狭いなと感じていた。

 

 

 

 

 

「なるほど、水沢と同じクラスの友達だったんだ」

 

 雪菜の説明にようやく把握し、納得したといった表情のかずさ。――それにしても先程のはよっぽどだが、今までの評判と随分と違う子だな。そんな印象を雪菜に見受ける。

 

「それに、先月くらいから北原くん達、学食で賑やかにしてたでしょ? だから何度か見かけたことはあるんだよ」

 

「いや、よっぽど小木曽の周りの方が沢山集まってたと思うけど……」

 

 2年連続ミスコン優勝者に仲良くなろうと寄る人だかりの多さ――それを何度も見たことがある春希は苦笑しながら雪菜程じゃないと答える。

 

 あまり嬉しくなさそう。そう思える笑みを雪菜は浮かべると、曖昧に返事をして話の話題を変えた。

 

「そ、そういうわけで。さっきは北原くんがスカウトしてこようとしてたの。

 ……わたしなんかで良ければ、是非歌わせていただきたいなと思うんだけど」

 

 Vo.(ヴォーカル)加入の件をすんなり受け入れようとする雪菜。――スーパー、公園、ブランコ、カラオケ、『これで……全部知られてしまいました――』何かいろいろとフラグが消滅していっていると、頭に流れ込んでくる変な意識を外に、皆がどのような反応をするか考える。

 

 春希自身は、自ら声を掛けた人間だし、これ以上ピッタリの”WHITE ALBUM”は無いと思っていたので是非参加してもらいたかった。

 

 部長である武也だって、準ミスを大きく引き離したミスコン優勝者を連れてくるんだ。前回の反省があったら多少は渋るかもしれないが。まぁそんな部分で反省はすることはないだろう。

 

 依緒は同好会ではないが雪菜の友達だから歓迎するだろうし、募集しているとタレコんだ張本人だ。

 

 千晶は……、こいつはよくわからん。

 

 

 そしてかずさは不機嫌さを出していた。

 

「あんなしょうもないギターにホイホイ引っかかる女がミス峰城大付属だとはね……。おい北原、あんたステージで演奏したらミス峰城大も釣れるんじゃないか?」

 

 かずさは怒っているようだ。そりゃそうだろう。師匠の指示に弟子が従わず好き勝手した結果が今に至るのだ。理由はどうであれ機嫌を悪くして仕方ないかも。

 

 そういった部分を春希は感じ取ったのだろう。一応形だけ、かずさの皮肉に「お前もピアノを弾いていただろ」と返すだけにとどめた。

 

 まったく無駄な言い訳を無視して「だが……」とかずさは言葉を続ける。

 

「北原がいくらべた褒めで考えなしにスカウトしたとしても、あたしはこいつ(北原)の音楽センスの無さを知っているし、あたしは実際に小木曽の歌を聴いてみたことはないから「はいそうですか」と認めて受け入れるわけにはさすがにいかない」

 

 音楽における春希の才能を全くといっていいほど信用していない師匠に弟子は些か傷つく。

 

「ふーん、冬馬さん。わたしを認めないってこと?」

 

「だから、あたしはお前の歌を聴いたことがないから――」

 

「なら、これはもう、勝負(バトル)しかないワケだよね」

 

「なっ……! ……いいだろう、受けて立つよ」

 

 ――勝負って何?

 

 意味の分からない雪菜の誘導に、煽り耐性のないかずさが"バカにしないでくれる!?知ってるわよそのくらい!!"とエルフェンな登場人物の名台詞を彷彿させるようにホイホイと、意味もわからず喰らい付く。ワケのわからないデュエルの予感に春希はもう、まともに相手をする気力をなくしていた。

 

「じゃあ、そういうわけで。わたしはこれから用事があるから。冬馬さん明日の15時に末次町駅で待ち合わせだから!」

 

「あぁ……バイトか。頑張ってな。うん」

 

「……やっぱり北原くん。去年のあの時気付いていたんだね」

 

「まぁ、な。あんだけ大声出してしまったからさすがに小木曽にもバレてしまったとは思ってたけど」

 

「秘密にしてくれてて、助かったんだよ? それじゃあね」

 

 雪菜は軽快な足取りで去っていく。かずさは「勝負か……腕がなるな」と聞いていなかった。

 

 

「あれ、小木曽はどうしたんだ?」

 

「……バイトだってさ」

 

「小木曽がバイト? 何の?」

 

「駅までの帰り道のスーパーあるだろ「ごんだ」ってところ」

 

「あそこか……? あんなところに小木曽雪菜がいたっけ……」

 

 やはり、雪菜の変装は完璧なようだった。

 

 

「ま、冬馬。明日は頑張ってな」

 

 

 

 ちなみに、信じきっていないかずさを「なら見てみよう」とスーパーでアイスでも買って帰ろうと誘い、実際にレジに並んだ時にようやく雪菜の変装に気付いたかずさは「うあぁぁ、小木曽!?」と叫んでいた。雪菜は春希を変装に用いる眼鏡越しに睨む――早速バラしてごめん。 心の中で謝る春希だった。

 

 

 

 

 

 

 末次町きっての繁華街。そこに店を構えるカラオケハウス「メイフラワー」そこに連れて来られたかずさは、自分を連れてきた女――小木曽雪菜とバトルをする……。はずだった。

 

 

「……なぁ冬馬、なんで俺までいるんだよ」

 

「……スカウトした張本人を外すワケにはいかないだろ」

 

「……そりゃそうかもしれないけどさ」

 

 

 人間、だれでも意外な一面……というか本当の自分というのを隠しているもんだよな。目の前の光景をぼぉっと眺めがら、春希はそんな考えを始める。

 

 隣の、アイスコーヒーをストローで混ぜながら思考停止している彼女――かずさ。最初は孤独な一匹狼に見えたし、今でもそう思わせることはあるのだが。内面結構さみしがりやなのではないかと感じている。

 それと直情的で激情家でもあるが、それゆえに他を見落として単純なポカをしがちな一面も。あと飯は作らせてはいけない。

 

 そして目の前で歌っている彼女――小木曽雪菜はどうなのだろう。

 普段の学園のアイドルとして沢山の取り巻きの中心にいる彼女。

 苦学生なのだろうか、華やかな印象とは程遠い地味な格好でスーパーでレジを打ったりカゴ台車に在庫を乗せたりしている彼女。

 屋上で手を大きく振ってアホの子(失礼)みたいに表現してた彼女。

 

 そして今……。

 

 

 

 貸し出された部屋に入ってから、時刻は16時に差し掛かろうとしている中。彼女――小木曽雪菜は独走(マイクを独占)していた。

 

 その暴走っぷりを見せつけられ春希は現実逃避の人間分析とたまにタンバリンを揺するくらいしか出来ない。

 

 

 隣で同じく雪菜を見るだけのかずさは何を考えているだろうか。怒っているかもしれない――なんせ、この間5人で会話をしている時にかずさも結構カラオケが好きだと言ってたくらいだしな……。

 

 入って1度も歌わせてもらえない。その仕打ちにかずさが怒っても仕方がないと春希は思っていた。

 

 

 歌い終わり一息ついたー! とばかりに上機嫌な雪菜。次は新譜かなーと恐ろしいことも言っているが……。

 

「あ、北原くんと冬馬さんも何か飲む?」

 

「い、いや。俺は……いいよ」

 

「あたしも……特に」

 

――何歌う? とは当然聞かないよねー……。

 

 嬉しそうに喉乾いちゃったーと烏龍茶を頼む雪菜を見てかずさは当初からの疑問を口にした。

 

「なぁ。小木曽……。勝負ってのは、どうなったんだ……?」

 

「勝負? ……その話をする前に、ちょっと聞いてもらいたいことがあるんだけど」

 

 

 どういうこと? そう目を細めて疑問を浮かべるかずさを他所に雪菜は独白を続けた。

 

「あたし、週に一度はここに来て、ヒトカラやってるんだ。他の人と一緒だと5曲くらい続けただけで顰蹙かっちゃうし」

 

「ご……5曲……。次の順番が回ってくるまで待つんじゃダメなのかな、あはは……」

 

 そりゃ顰蹙くらいかって当然だろ。という気持ちをぐっと堪える春希。

 

「ダメなの、そんなの待ってたら時間あたりの曲単価が跳ね上がっちゃうじゃない。そんなのダメ、イライラしちゃう」

 

「あたしが言えることじゃないけど……さすがに空気読めてなさすぎじゃない?」

 

「うん、でも歌うことに関しては空気なんか読みたくない。それだけ歌うことが好きなの。誰にも負けたくない、譲れない部分なんだ」

 

「わたしね、学校じゃ仲の良い友達が居なくて。あ、依緒は結構話す方なんだけど――躊躇うところがあって、自分の気持ちを正直に出したくなかったの。

 それでも昨日、二人の"WHITE ALBUM”が流れてきたときはどうしても歌いたかった」

 

『――昨日の曲?(”WHITE ALBUM”)

 

 同時に答える春希とかずさ。

 

 

「うん、わたしの一番のお気に入りで、一番大好きな曲」

 

「あぁ、俺も一番最初に買った大好きな曲だよ」

 

「そうなんだ! だからなんだね。

 以前からギターとピアノのが合わせているのは屋上で聴いたことはあったんだけど。昨日はこう、なんだか一体感を感じるような音で。我慢できずに歌おうとしたら終わっちゃって……。

 録音していたのがまた、流れてきた時は本当に嬉しくてすごく気持ちよく歌っちゃってた」

 

 

 雪菜は続ける。

 

 

「ねぇ、冬馬さん。あたしね、ミスコンにエントリーされても強く断る事ができない自分が嫌だった。

 優勝しちゃって、どこにでもいる中流家庭なのに、ひっこみがつかなくなっちゃって「お嬢様」のイメージを守ろうとお洒落するために無理してアルバイトする自分が嫌だった。

 目立ってアイドルみたいに見られるのも嫌。

 でも……でもね。歌うことを諦めるのはもっと嫌なのっ」

 

 

「小木曽、あんた……」

 

「”WHITE ALBUM”……。楽しかった。録音とはいえだけど、他人に合わせて歌うのがこんなに気持ちいいんだって思えたのは初めてだった。

 だから、今日は知ってもらいたかったの。お嬢様でもアイドルでもないただの小木曽雪菜を……。

 歌うことが大好きな小木曽雪菜をどうか知ってもらって、そして……」

 

 

――そして……お願いするの。

 

 

「冬馬さん、北原くん。わたしを……軽音楽同好会に入れて下さい!

 バンドなんてしたことないし、実力不足かもしれないし。もしかしたら練習ってすごくきつかったりして、わたし泣いちゃうかもしれないけど、ステージで、皆に好奇の目に晒されて、笑われてしまうかもしれないけど。

 最後まで全力でやり通すから、お願いします! 歌わせて下さい!」

 

 

「小木曽……」

 

 名前をつぶやくことしか出来ない春希の横で、ふぅっと息を吐いたかずさは、やれやれ。といった表情で話す。

 

 

「……参ったね、そんなふうに言われたらあたしが断ったら悪者じゃないか」

 

 

「本当! 冬馬さん、ありがとう!」

 

 先程の涙目になりながらも必死だった顔はすっかり消え、喜びながらかずさの手を取り強く振る雪菜。

 わかったわかったといってかずさは止めさせると、雪菜はまたリモコンをとり、慣れた手つきで暗記してるのだろう――番号を入力すると画面の横に立った。

 

「小木曽……。まだ歌うのか」

 

 あたし、まだ一曲も歌ってないんだけど。そう言いたげなかずさ。

 

 イントロが流れると雪菜は言葉を紡ぐ

 

「わたしのすべてを知ってもらった二人に、昨日の歌を捧げます。

 軽音楽同好会に加入した記念に、わたしの勝負に勝った記念に。

 二人と出会えた記念の曲……”WHITE ALBUM”」

 

 

 

    『――すれ違う毎日が 増えてゆくけれど ――』

 

 

 

――本当、今日は圧倒されてばかりだったよな。それでも、小木曽がボーカルとして加入して、嫌じゃないだろ?

 

 

 隣の席で「今日の出来事すべてが勝負だったのか……。負けたよ」とボヤくかずさをみて春希は、同好会がうまく活動できそうな、そんな期待が沸き上がってきた。

 




雪菜は意識してもしなくても、計算高い女の子ですよね。そういう子も好きです。

ちなみに、小説で名称が出て来たカラオケ「メイフラワー」巡礼先だと「コート○ジュール」って名前らしいんですが、関連なさすぎてそれまでのLeaf系の名づけ方から考えると違和感を感じます。


本当はあと倍の話を入れたかったけど、字数をみて間を挟もうと思います。

続きはEPISODE:7.5に。
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