提督物語   作:タガラシ

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3分割にしようと思ってたらいつの間にか一括で書いていた……

かなり長くなっているので読み応えあると思います(ポジティブ)

この話に出てくる「兄ちゃん」は「あんちゃん」読みです。

ルビの付け方わからんってなりましたねぇ




道中

写真を撮った後、みんなと握手をして車に乗る。

沙原先生の話では、俺が行く港までは20分程度で着くようだ。

 

「山田~さっきは凄かったぜホント!」

 

先生が運転しながら、いつもの口調で話しかけてくる。

でも俺には先生の態度の意図が最後まで読めなかった。あそこでみんなの恨みを買っても何もメリットは無いはずなんだけど…

 

「はは、どう見ても平時の先生の態度ではありませんでしたからね。…でも、杏璃の気持ちをを察した上でわざと的を外した回答をしたことは少し附に落ちませんが…」

 

 

「ん?……あー、あれは試したんだ。…お前達がこれから行く世界は思ったよりも黒い。その中で冷静さを欠けば足元を掬われる。それも新人となれば尚更な」

 

少しおどけた後、沙原先生が真面目な声で話す。

 

あぁ…いつもの授業の時もそうだった。

 

普段は冗談や自分の体験談を交えて面白おかしく、かつ分かりやすく説明する。

 

しかし命が関わるような、肝心なところでは決まって真剣な言葉で話す。

 

そうか…試した…か。そうなると合点が行く部分もあるかも。

 

「あのとき、本当に冷静だったのは山田だけだった。他のみんなは表現の仕方に差違はあれど、確かに瞬間的に俺達へ向かって軽蔑、怒りを向けていた。洋と海士はこっちの意図まで察していたから冷静とも言えたかもしれないが、明らかに語気も強かったし、捲し立てていた。表に出にくいだけで、杏璃に負けないぐらい怒っていただろうよ。」

 

それは…正直、杏璃と海士と天理はまだ予想できた。

 

しかし、学校生活で取り乱したことのない洋までその感情を先生達へ向けていたのは意外だった。

 

「だけど山田、お前はあの場で一番怒るべきだったのはお前なんだぜ?確かに期待してるのも事実だけどよ…天理の言った通り…隠してるのも事実なんだぞ?」

 

「どこの組織にも何かしら画策してる人は居るでしょうし、短絡的な理由で動く人も居るでしょう。…綺麗事だけで世界は回らない…ということは重々承知ですし…ま、大丈夫です、期待通り何とかして見せますよ!」

 

憂いを出した上で、グッとサムズアップして答える。こちとら最前線に着任となればそのくらいは覚悟の上っすよ。

 

「…クッハハ!相変わらず山田の「何とかする」はホントに何とかなりそうで困る!……っと、そうだ。これを渡しておかないとな。」

 

ほれ、と書類を渡される。…これは…

 

「孤島鎮守府の資料だ。施設的には他の鎮守府と何ら変わりないが…」

 

「各資源3000、高速修復材20に開発資材100、高速建造材10、所属艦娘「なし」…」

 

基本的な事項から目を通していく。

 

授業で習った最初期の鎮守府の条件は……原則各資源1500、高速修復材、高速建造材、開発資材が10ずつで艦娘も基本1隻からだったな。

 

資源的には結構優遇されている。

 

艦娘が無着任なのは…急造鎮守府だからだろう。

 

寧ろよく建造ドックや入渠ドックなどの基本施設が揃ったものだと思う。

 

艦娘は優遇した資源で建造しろってことかな。

 

「正直、その書類を貰ったときはふざけるなと言いたくなったが、今の状況を鑑みると…それが精一杯だ」

 

「いやいや、これなら十分何とかなりますよ。建造艦で艦隊編成組んで運用できるくらいは資源がありますし」

 

鎮守府が戦線上でなければ、という言葉が脳裏に過るけど、そんなのは無い物ねだりだろう。

 

これで精一杯優遇されていることには違いない。これで何とかするしかない。

 

「そう言ってくれると助かるよ。…にしても、お前らがもう卒業か…早いな」

 

「え、俺はめっちゃ長く感じたんですけど…最初は国の英雄になれる!って思って息巻いてましたけど、実際授業は地獄でしたし…正直卒業式の時なんて解放感感じましたよ」

 

ホントに地獄だった…もちろんそれだけじゃなかったけど、基本的にはそうだった…

 

「ふはっ!まぁ確かに頭も体も徹底的に鍛え上げるスタンスだったからな!」

 

「特に1年目の座学ですよ!覚えること多過ぎて頭爆発しそうでしたよ…敵艦種の把握、装備の把握、相乗効果…特に戦術学とかワケわからない感じでしたね!」

 

「俺も正直言うと最初、コイツはダメかな…って思ってたな!」

 

「えぇ、俺も入って3日で辞めようかなって考えてましたからね…我ながら、あの1週間に乗じてなかった自分を褒めちぎりたいくらいですよ」

 

授業が始まってから1週間はみんな何とかついていけていたけど、2週間目で一気に辞めていった。

 

アレで約200人が30人くらいになったんだよな…ホントにエグかった…

 

「あの一気に辞めていった1週間なぁ…予想はしてたんだ、でも実際に起こるとかなりショックだったぜアレは…遅かれ早かれ、少数に選別するにしても、ああも大人数が一気に辞めるとなぁ…」

 

先生は、はぁ~…と溜め息を吐きつつそう言った。

 

まぁ…日本全国から選りすぐって「適正アリ」と出て集められた提督の卵が一気に殆ど辞めていってしまったのだ。

 

沙原先生のみならず、学校の職員全員にとってショックだっただろう。

 

…多分、自分達は間違ったことをしているのでは、と不安にも駆られたはずだ。

 

「でもお前が首席で卒業とはな…1年目の6月からの伸びには目を見張ったぞ。」

 

「それは……その時期にどうせなら周りに流されて辞めるんじゃなくて、自分自身が本当に限界になるまでは頑張ろうって決めましたからね。」

 

まぁその他にも大きな理由があるんだけど…声を大にしては言えない。例え看破されていたとしても。

 

「他にも理由がありそうだがなぁ…まぁ大体察しはつくな。…アレだけ艦娘の授業に食いついてればなぁ」

 

「…そうですね」

 

やっぱバレバレか。海士達にも1年目でもうバレてたし。そんなに分かりやすかったかなぁ…

 

「他にもなー、最初の筆記テストの時なんかは――――――」

 

そんな感じで移動の間、2年間を振り返りながら話していた。そのおかげか、体感的にはすぐに港に着いた感じだ。

 

車を降りて、港へ向かう。

 

先生とはここで暫しのお別れとなるだろう。

 

「それじゃ、先生」

 

前へ出て。

 

振り返って敬礼をして。

 

「行ってきます!」

 

「あぁ、行ってこい!」

 

そして向き直り、鎮守府への送り船に歩を進めていく。

 

船へ乗る。

 

いよいよ、ここからは基本的に1人だ。自分を軸に孤島鎮守府を運営するのだ。

…やっぱり、不安もあるが…高揚が勝つ。

 

ワクワクする。

 

そんな感情を抱く中、背中を押すような出港の汽笛が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー☆ーーーーーーーーーーー☆ーーーーーーーーーーーー☆ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ドドォン!!ドバン!ドバァン!

 

「……ん?…何だ…?」

 

前方から轟音が響き、目が覚める。寝惚け眼を擦って時間を確認する。

 

……船に乗って1時間か。搭乗してから少し眠っていたが…

 

今の音は…砲撃音と着弾音…?

 

一気に意識が覚醒した。すぐに身体を疾駆させる。

 

「不味い!」

 

小部屋から出てすぐ甲板部まで移動。砲撃音のした方向を見る。あれは…

 

「深海棲艦…!?」

 

すると何処からか乗組員の声が聞こえる。

 

 

「どうなってんだ!?ここの海域はあらかじめ深海棲艦を掃討していたはずじゃなかったのか!?」

 

「不味いぞ!奴等にはこっちの武器なんざ殆ど効かねぇ!」

 

「とにかく回避だ!粘るしかねぇ!」

 

 

……なるほど、この状況…敵ははぐれ艦隊か。

 

 

「すみません!少しいいですか!」

 

「ああ?………そうか!アンタがあの!済まないが急襲を受けた!サポートを頼む!」

 

声をかけると最初は怪訝そうな顔を向けられたが、鎮守府着任予定の提督と分かると希望を見つけたような顔に変わり、無線を渡される。

 

早速渡された無線を使って連絡を試みる。

 

敵はほぼ間違いなくはぐれ艦隊だろう。

 

さっき着弾音が前方からだけだったし、統率がとれていない艦隊特有の砲撃精度の低さが目立つ。

 

そして何よりの根拠はこの船が無事なことだ。

 

統率がとれている敵艦隊が相手ならばとっくに夾叉弾で補足されるか、一発で着弾させられているかしているだろう。

 

「聞こえますか!敵は恐らくはぐれ艦隊です!応答願います!」

 

「……!兄ちゃん!「はぐれ」って根拠は!?」

 

少しの間の後、無線から乗組員が聞き返してくる。

 

「統率のとれた艦隊ならば、もうこの船に損傷があるはずです!敵の砲撃は夾叉弾にすらなっていないところを見ると、動いている物を無造作に撃っています!」

 

「…わかった!だが兄ちゃん!敵の方が速ぇ!このままじゃ詰められて、いつかは命中しちまう!」

 

敵が遠くて艦種が分からない…!肉眼じゃ見えないか…!

 

「すみません!誰か双眼鏡を!」

 

「あいよっ!」

 

傍に居た乗組員に渡された双眼鏡で敵を視る。

 

…あの鯨のような見た目…1隻は駆逐イ級…もう1隻は形はイ級と同じだが…にやけているようなあの口元…駆逐ロ級か!

 

無線に向かって叫ぶ。

 

「敵は駆逐級深海棲艦2隻!分断を狙います!俺が指示したタイミングで砲を撃ってください!それまでは全速で回避運動を!」

 

 

「わかった!頼んだぞ兄ちゃん!」

 

そう応えて乗組員の何人かが砲撃準備に入る。

 

「……よし!兄ちゃん!いつでも撃てるぞ!」

 

暫くして、砲撃準備が整った旨が無線から聞こえた。そしてそれは…向こうも同じようだ。

 

 

あの敵艦は知性が殆どない。攻撃は敵の速度に合わせて単純に砲撃を航路上に撃つだけ。…ならここは…!

 

 

「船速を落として下さい!敵の砲撃が来ます!」

 

「ッッ!……わかった!速度落とせぇ!」

 

速度を落とす指示を無線に叫んだ直後、敵から砲撃が放たれる。放たれたと同時に、船速が落ちていくのを感じる。…よし、これなら……!

 

数秒後、航路上のかなり先に敵の砲撃が着弾する。前方に水柱が立ち、衝撃もあるが…損傷はないはずだ!

 

「回避成功だ!やったぞ兄ちゃん!」

 

「よし!すぐに砲撃用意して下さい!」

 

「おうよ!」

 

無線で指示を出し、双眼鏡で敵を視認しつつ、タイミングを図る。

 

 

………………頃合いだ!

 

「カウントに合わせて、砲撃行きます!…5!4!3!2!1!ってぇーー!」

 

ドォン!!!

 

砲撃音が鳴り響く。

 

砲撃で狙ったのは敵の目の前だ。ねらいは至近弾だ。直撃でもラッキーだろう。

 

至近弾で発生する水柱と衝撃によって敵がパニックになりさえすれば…!

 

 

狙い通り敵の直近に着弾する。どうだ…!?

 

 

双眼鏡で視認。敵の船速は……よし!さっきより数段落ちてる!陣形も崩れているし、間違いなくパニックに陥っている!

 

「敵艦隊減速確認!敵艦隊の射程外に移動します!速度を上げて下さい!」

「あいよぉ!」

 

敵艦隊の速度が落ちているうちに距離を取らなければ…!だが、敵が持ち直して全速でこちらに向かってしまえば、そのうち敵射程内に入ってしまう…!

 

「頼む…!これで撒けてくれ…!」

 

生半可な近代兵器では深海棲艦に傷すら付けられない。先刻のような牽制くらいにしか使えない。ここで撒けなければ、乗組員の人が言っていた通り、いずれ距離を詰められて終わりだ。

 

背中に嫌な汗が流れる。そんな焦りを抱えて、双眼鏡で敵を視認し続ける。

…………くっ、ダメか!敵艦隊がこちらに向かってきている……!

 

「……くそ!敵艦隊、こちらに向かってきます!全速……で?」

「おい!どうした兄ちゃん!」

 

絶望の瞬間、双眼鏡に不思議な光景が映る。

この船と敵艦隊の間に、横から人影が1つ現れる。

腰ほどまでに伸びた綺麗な金髪、黒いセーラー服と、胸元の赤いリボンをはためかせて。

体格は華奢な少女そのもの。

しかしその体には、体格に不釣り合いな艤装が装備されていて。

その幻想的な光景に、俺は言葉を発することすら忘れた。

 

 

間違いないーーーーあれはーーーー!

 

 

 

「おい!兄ちゃん!どうした!」

「かっ、艦娘です!!この船と敵艦隊の間に、艦娘が1人!!」

「おお!艦娘か!」

 

どっ、と無線から歓声が聞こえる。かく言う俺も喜びを、歓びを隠せなかった。艦娘の艤装でなければ深海棲艦を撃沈することは難しい。正直打つ手はもう思い付かなかった。どこの所属でここからでは誰かもわからないが、このタイミングで良く来てくれた…!

 

乗組員が総出で甲板に出る。みんなが双眼鏡で視認し、その光景に目を奪われる。

 

威嚇射撃と言わんばかりに敵艦隊に砲を撃ち、注意を逸らす。

 

返す敵の砲撃を、金色の髪を美しく靡かせながら華麗に躱し。

 

距離を詰めてきた敵を見て、その艦娘がニヤリと笑ったような気がしてーーーーーー

 

 

 

 

ーーーーーー直後、迫る敵が爆発した。

 

 

 

 

 

「す、すげぇ…」

 

誰が言ったのか、どこからかそんな感嘆の声が聞こえた。

 

 

俺は、見惚れて声すら出せなかった。ただただ、心臓が高鳴っているのを感じていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「お、おい、あの艦娘こっちくるぜ…!」

「ヤベェよ、艦娘初めて生で見たぞ…!」

 

そんな声でハッと我に帰る。

こ、こっちに来る!?艦娘が!?

 

「せ、船速を落として下さい。停止した方がいいでしょう。進行方向だけ、目的地に着くように変えて下さい」

 

「あ、ああ。わかった。停めてくるぜ」

 

まだ呆け気味の頭で指示を出す。乗組員の1人が走って行く。

 

まさか鎮守府での建造より先に艦娘に会うなんて…

 

近づいてくる。こちらは停止しているため、距離はすぐに縮まる。距離が近づくにつれ、その艦娘の姿が鮮明に見える。

 

頭には黒いリボンを付け、瞳は澄んだ翠色。

黒基調のセーラー服の襟の部分と袖の部分が、白の生地をベースに赤い線が入っている。

 

あの姿は、学校の資料で見たーーーーー

 

「ーーーー夕立」

「どうした兄ちゃん?」

「あの艦娘は白露型4番艦の「夕立」です、間違いない…!」

 

双眼鏡を降ろす。肉眼で見るとより鮮明にその姿はより鮮明に映った。

そして思ったよりも実距離が近かった。もうすぐそこまでの距離だった。夕立がこちらを見上げる形でこちらを見る。

……わっ、目が合った。

夕立はそのまま大きく息を吸って。

 

「おーい!大丈夫っぽいー!?何か損害があるようなら教えて欲しいっぽいー!」

 

と、大きな声で言い放った。

とても、さっき見事に深海棲艦を撃破したとは思えない程、あどけない声色だった。

これが、艦娘……かつての戦いの記憶を受け継ぎ、深海棲艦と唯一対等に渡り合える謎多き存在……

 

 

…………………

 

 

って、見とれてる場合じゃない!呼び掛けに応えないと!

 

「あぁ!助かったよ!お陰で損害が無くて済んだ!ありがとう!」

「それなら良かったっぽいー!あと、到着が遅れてごめんなさい!あと、掃討しきれなくってはぐれ艦隊を逃しちゃってごめんなさい!っぽい!」

 

にぱっと笑顔で答えた後、すぐに申し訳なさそうに頭を下げる夕立。

 

 

「大丈夫だ!なにも損害が無かったなら、何もなかったこととおんなじだからな!ホントに助かったよ!こちらこそ、ありがとう!」

 

そう言って手を振ると、夕立は頭を上げて、ぽかーんとした顔をした後、

 

「ふふっ、貴方、面白いこと言うっぽい!ふふふっ、あははっ!」

 

コロコロと笑いながらそう答えた。

……え?そんな可笑しなこと言ったかな?

 

「ふふっ、はははっ!……ふー、ふぅ、…あー、たっくさん笑ったっぽい!それじゃ私は、この周りにはぐれ艦隊が居ないか、哨戒してくるっぽい!」

 

ひとしきり笑った後、そう言って夕立は船から離れていく。姿がよく見えなくなったと同時に、船が発進し始める。

あれが艦娘…うおお…

 

感激に浸っていると、隣に人が来た。この人は…?

 

「……いやー、兄ちゃん、大したもんだな!助かった!咄嗟の事だっつーのにあの指揮!船長である俺の面目がねぇってもんだ!」

 

この声……無線でやり取りしていた人か!

船長…道理で不得手のはずの対深海棲艦の動きを抵抗なく行う決断力があるわけだ。

 

「あはは、この船は明らかに軍事用では無いですし、正直ギリギリでしたよ。船長さんが俺の指示に従ってくれたこともそうですが、夕立が来てくれなかったらどうなっていたことか…」

 

船長はかっかっか、と快活に笑いつつ俺の背中をバシバシと叩く。いたたたたた。

 

「……というか無線越しなのによく俺が提督養成学校の卒業生って分かりましたね」

 

「ん?そりゃ兄ちゃん、この船唯一の乗客を忘れるわけねぇさ。それに、敵がはぐれ艦隊って即看破したんだから誰でもすぐに分かったろうさ。……その上、対深海棲艦に心得が無い俺達にしてみれば、回避運動の動き、砲撃の使い方には驚かされたぜ!兄ちゃんがいなきゃあ、通らねぇ意味の無い砲撃を繰り返し、来た弾をひたすら全速で躱すとかしてたろうなぁ」

 

「……逆に俺が乗ったからこそ、深海棲艦が出現する恐れのあるこの海域を通るしかなかったという見方もあると思いますが…」

 

そう。そもそもこの人たちはあの港の周辺で漁をしてる漁師なのだ。戦いが不得手なのも当然。寧ろ初撃で落とされなかったのが幸いとも言えるんだけど…

 

そう言うと、船長はキョトンとした顔をした後、思いっきり破顔した。

 

「ぬあっははは!!俺は兄ちゃんが提督養成学校の生徒だっつーのを事前にセンセーから説明を受けた上で乗せてんだぜ!?危険な目に合わせたこっちが詫びこそすれ、兄ちゃんが悪いっつーことなんざありゃしねぇよ!………兄ちゃん、ホントに済まなかったな。ひとつ間違えてりゃ、無事じゃ済まなかった。この通りだ」

 

こっちの罪悪感を笑って吹き飛ばしつつ、頭を下げる船長。

……つくづくこの人はいい人だな。沙原先生に似てるかも。

 

「いえ、頭を上げて下さい。みんな無事で済んだんです。夕立にも言ったことですが、何もなかったことと同じですから」

 

「兄ちゃん……あぁ、そうだな!その通りだ!……そういや、まだ名乗ってなかったな。俺は坂田 継波っつーんだ。よろしくな!」

 

「俺は山田 敬一朗です。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

ぐっと握手をしてお互いに名乗る。……手、デカいな…

 

「兄ちゃんなら、きっと良い提督になるだろうよ。根拠はねーんだけど…そんな予感がするぜ」

「ははは、もちろんですよ」

「かかか!中々言うな!伊達に提督学校首席じゃねぇってか!」

 

またもバシバシと背中をはたかれる。あいたたたたた。

と、なんだかんだしていると前方に島が見えてくる。おそらくあれが孤島鎮守府のある島だろう。そこそこの大きさの島だ。

 

「っと、もう少しで島に着く頃だな。山田の兄ちゃん、荷物まとめてきた方がいいぜ」

「はい、それではまた」

「おう!」

 

軽く手を上げて挨拶して坂田船長と別れる。もと居た小部屋に戻り、荷物をまとめる。

座って暫しの休憩をとる。

……あんなことがあったからか……また眠くなってきたな……

呆気なく眠気に負けてしまい、すぐに意識が落ちた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「……ん!お…!………ゃん!おい!山田の兄ちゃん!着いたぞ!起きろー!」

「ん、あ?……坂田船長……?」

「おー!やっと起きたか!島に着いたぞ兄ちゃん!」

 

しまった。すっかり寝てしまっていた。これから鎮守府に着任だというのに、少し緊張感に欠けたなぁ…

 

体を起こし、荷物を持って甲板へ出る。

 

島から新しめの波止場が伸びていて、甲板の柵の出口からそのまま降りられそうだ。この波止場も孤島鎮守府を造る際に作られたのだろう。

波止場へ足を着く。船に2時間強も乗っていたから少し揺れている違和感がある。

 

「山田の兄ちゃん、いよいよ鎮守府に着任だな!気張ってけ!」

 

「えぇ、何とかしますとも」

 

握手をして、坂田船長の激励の言葉を受け取る。船長の大きい手から少しだけ元気がもらえた気がする。

 

「それじゃ兄ちゃん!武運を祈るぜ!」

 

坂田船長はそう言うと、船へ戻っていった。

 

「坂田船長たちも!道中お気をつけて!」

 

坂田船長はサムズアップで応えて船へ搭乗した。程なくして船が発進する。

 

「……よし!いよいよ鎮守府に着任か。腕が鳴るな!」

 

左手を右肩にあて、右肩をぐるぐる回しながら波止場の先にある鎮守府を見る。

 

この最前線から、俺の提督人生が始まると思うとワクワクが止まらないな!

 

そう意気込んで、一歩、踏み出した。

 

 




軽く人物紹介


坂田 波継(さかた なみつぐ)
大型武装漁船「坂田丸」船長2代目。40歳くらいのいいおっちゃん。体格は海士と同じくらいの身長で、海士より筋肉質。性格は明るく豪気。頭にバンダナをしており、立派な髭が生えている。髭のイメージとしてはFateのイスカンダルが近い。

一応補足として、はぐれ艦隊を仕留めた方法は魚雷です。夕立は砲を撃って敵の注意が夕立に向いた瞬間に、敵が突進してくると読み、魚雷を敵航路上に撃って見事に仕留めましたね。ちなみに山田は夕立に見惚れ過ぎてどうやって仕留めたかには思考が回りませんでした。夕立可愛いからね、仕方ない。
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